[文書名] 第6回日タイ貿易合同委員会共同コミュニケ
1 第6回日・タイ貿易合同委員会は,1973年12月11日から14日まで東京において開催された。閣僚会議に先立ち,事務会議が閣僚会議の準備のため開催された。
2 閣僚会議においては,日本側から中曾根康弘通商産業大臣を首席とする代表団が,また,タイ側からチャンチャイ・リーターオン商務大臣を首席代表とする代表団が出席した。
事務会議においては,日本側より高島益郎外務省アジア局長を首席代表とする代表団が,また,タイ側からサノ・ウナクーン商務次官補を首席代表とする代表団が出席した。
3 チャンチャイ・リーターオン商務大臣は田中角榮総理大臣を儀礼訪問し,貿易その他の両国にとつて相互に関心のある問題に関し,意見の交換を行なう機会をもつた。
4 両国代表は,最近の国際貿易情勢は,急激な世界的食糧不足,石油危機及び全世界的な物価の上昇等の一時的性格の深刻な不安定要因の影響を受けていることを認めた。タイ国と日本国との間の緊密な経済及び貿易関係の見地より,両国代表は現下の情勢から生ずる諸困難を克服するにあたり可能な限りの相互協力を行なうべきことに合意した。
両国代表はかかる状況の下に,日・タイ貿易合同委員会は両国にとつて有益な方法をもつて相互貿易の振興をはかる上で益々重要かつ,効果的役割を有するものであることに意見の一致をみた。
両国代表は,さらに国際貿易情勢が急激に変動しつつある現状に照らし,情勢の推移により対話が必要と認められる場合には,1974年の中頃を目途として,タイ国政府関係当局と日本国大使館との間で情勢を検討する機会を持つことが両国にとつて有意義であることに合意をみた。
5 両国代表は,1973年4月バンコックにおいて両国のハイレベルの財界指導者及び専門家が参加した日・タイ民間協力委員会の会合が開催され,同会合において有益な討議が行なわれたことに満足をもつて留意した。また,両国代表は,本委員会の半年毎のレビューのための会合が貿易合同委員会の前回会合の勧告に基づき1973年10月バンコックにおいて開催されたことを評価した。
6 両国代表は,1973年1〜10月の両国間の貿易について検討した。不均衡が依然として相互貿易上の重要な問題として残存することを認める一方,両国代表は,メイズの対日輸出が不作のため幾分減少したにもかかわらず,右期間におけるタイの輸出は全般的に伸長を続けたことに留意した。両国代表は,例えばタピオカでんぷん,パイナップルかん詰及び天然ゴムのような品目の対日輸出が右期間において,前年同期よりもそれぞれ75パーセント,55パーセント及び83パーセント増加したことに特に留意した。しかしながら,タイ代表はかかる成果は一時的性格のものであつたかも知れず,従つてかかる好ましい傾向を維持する通常の貿易パターンを確立するためたゆまぬ努力を行なうべきであることを指摘した。
7 今後の展開に関し,日本代表は日本経済が労働力不足,生産費の上昇及び外国為替レートの調整による構造的変化をきたしており,その結果日本国とタイ国を含む東南アジア諸国との間の相互補完的な貿易関係の機会が増大するであろう旨を述べた。日本代表は,タイ工業製品の日本への輸入が1973年1〜10月の期間には前年同期のほぼ三倍に達し,その金額は,繊維製品27.2百万米ドルを含め71百万米ドルに達したことに対し注意を喚起した。
8 タイ代表は,タイ産品輸入増加の結果をもたらした日本のこれまでの輸入拡大措置に感謝をもつて留意する一方,タイの対日輸入の増加及びタイの第三国向け輸出の増加のため一層の措置を執るよう日本に対し要請した。両国代表は次の了解に達した。
(1) 米
(イ) 日本代表は,1974年上半期に40,000トンのもち米を供給することをタイ代表に要請した。タイ代表はタイ政府がこの要請に応ずるべく努力する旨を述べた。
(ロ) 日本代表は,日本政府がKR食糧援助のためタイ米その他の外米を利用するよう最大限の努力を払う旨を繰り返し述べた。タイ代表はタイ国がこの目的のために米を供給する用意がある旨を述べた。
(ハ) タイ代表は,米の長期的生産及び輸出政策に関する日本の立場を明らかにするよう要請した。日本代表は,現下の米の生産政策の詳細を説明し,さらに,日本国は伝統的な米の輸出国と競合する意図を全く有しない旨述べた。
(2) タピオカでんぷん,冷凍煮沸牛肉及びパイナップル罐詰
日本代表は,タピオカでんぷん,冷凍煮沸牛肉及びパイナップル罐詰の輸入割当が日本国の本会計年度においてかなり拡大されるであろう旨を述べた。
(3) 鶏肉及び果物
(イ) 日本代表は,タイ当局発行の現行鶏肉輸出検疫証明書が日本の基準に合致するものである旨を述べた。
(ロ) 日本代表は,日本国政府は,要請があれば,果物の病疫管理に関する専門家をタイへ派遣するため最大の努力を払うであろう旨を述べた。
(4) 工業製品
日本代表は,特に家具に重点を置いた工業デザイン,繊維品規格及び工業製品包装の各分野における援助のためタイへ専門家を派遣する可能性を検討する旨を述べた。
9 タイ代表は,タイの輸出者に対し日本の一般特恵関税制度をより一層周知せしめるとともに同制度を改善する必要性がある旨を指摘した。日本代表は,ジェトロが同制度とその実施に関するセミナーを1974年初めにバンコックで開催するであろう旨を述べた。この点に関し,両国関係当局間により緊密な接触及び協力が必要であることが合意された。
10 タイの対日特定輸出可能商品の開発についての日・タイ間の緊密な協力が両国経済の調和ある発展ならびに貿易の不均衡の是正に大いに寄与するであろうとのバンコックにおける第五回貿易合同委員会の会合で到達した指導理念に留意して,両国代表は,1972−73年に開始された各種の計画のフォロー・アップ状況を検討した。両国代表は,エビの養殖,冷凍煮沸肉,家畜病疫撲滅及び市場調査に関する諸計画に関し進展をみたことに満足をもつて留意した。
11 両国代表は,タイの対日輸出振興のための一層の技術協力の可能性を広く討議した。日本代表は,大豆開発の強化及び輸送面に重点を置いたメイズ生産の推進の研究に好意的考慮を払う旨を述べた。タイ代表は,山岳民族の農業開発及び日本市場に適合した産品の開発の可能性を探究するための専門家の派遣についての要請に関し説明した。日本代表は,養蚕研究及び訓練センターの拡大のためのタイ側の要請に留意した。日本代表は,BAAC借款の実施に関し技術協力が必要である旨及び日本政府は要請があれば専門家の派遣を考慮するであろう旨の見解を表明した。日本代表は,あらたなタイの優先的輸出工業製品の日本における市場調査を1974年に行なうであろう旨述べた。
12 タイ代表は,日本政府が前回の会合において到達した了解に基づき,インドシナに対する人道上及び民生安定目的の日本の無償援助におけるタイの産品及び役務の調達を可能ならしめるための措置を執つたことに留意した。日本代表は日本政府が日本国の本会計年度におけるより規模の大きい同様の対インドシナ無償援助に対し現行の政策を継続するであろう旨を再確認した。
13 両国代表は,両国間貿易の促進に関連して海運につき幾つかの問題が存することを認めた。タイ代表は,タイからの積荷とくに現在船積み待ちの状態にある多量のゴムの輸送を促進するよう日本国に要請した。日本代表は,輸送及び荷揚げ問題の解決策としてパレット輸送及びユニット輸送を示唆した。日本代表は,深水港の欠除が日本の大型貨物船の入港を妨げており大型貨物船の使用により運賃が大幅に削減されうるであろう旨を指摘した。
14 両国代表は,本会合が成功裡に終了したこと,及び率直かつ有益な意見の交換が行なわれたことに満足の意を表明した。
15 両国代表は,1974年後半の日・タイ両国政府が合意する時期にバンコックにおいて第七回日・タイ貿易合同委員会を開催することに合意した。
16 タイ代表は,本会合への同代表団に対する日本国政府及び日本国民の暖かい歓迎に対して深甚の謝意を表明した。