[文書名] 第9回東南アジア開発閣僚会議共同コミュニケ
1. 第9回東南アジア開発閣僚会議は,1974年11月14日より16日までマニラで開催された。閣僚レベルの会議に先立ち,高級官吏会合が1974年10月9日より11日までマニラで開催された。
2. 従来より会議に参加して来た12カ国,即ち,豪州,ビルマ,インドネシア共和国,日本,カンボディア共和国,ラオス王国,マレイシア,ニュー・ジーランド,フィリピン共和国,シンガポール共和国,タイ及びヴィエトナム共和国の全ての代表が列席した。
3. 会議には,豪州のドナルド・ロバート・ウィルシー外務大臣,ビルマのウ・ニョー・トウン駐フィリピン特命全権大使,インドネシアのJ・B・スマルリン行政管理担当国務大臣兼開発企画庁副長官,日本の木村俊夫外務大臣,カンボディア共和国のリー・チンリー駐フィリピン特命全権大使,ラオス王国のティアントーン・チャンタラシー外務副大臣,マレイシアのテンク・アーマット・リタディーン外務担当大臣,ニュー・ジーランドのT・M・マクィガン保健大臣,フィリピン共和国のセサール・E・ヴィラタ大蔵大臣,シンガポール共和国のオン・パン・ブン労働大臣,タイのチャルン・パン・イサランクン・ナ・アユタヤ外務大臣,ヴィトナム共和国{前8文字ママ}のヴォンヴァン・バック外務大臣が首席代表として出席した。
4. 会議には,また,オブザーバーとして井上四郎アジア開発銀行総裁,L・S・ソディ東南アジア家族人口計画政府間調整委員会事務局長,アポン・スリブヒブハット東南アジア漁業開発センター事務局長,吉川重蔵東南アジア貿易・投資・観光促進センター事務局長,アルフェド・T・カガワン東南アジア運輸通信開発局運輸経済局次長及びドナルド・R・バーグストウロム国連開発計画駐在代表が出席した。
5. 会議は,フェルディナンド・E・マルコス・フィリピン大統領により開会され,同大統領はフィリピン政府及び国民を代表してすべての代表及びオブザーバーに対しあたたかい歓迎の意を表明した。
大統領は,世界のすべての国がエネルギーの高いコスト,きびしいインフレ圧力及び悪化しつつある食糧不足に特色付けられる世界的規模の経済危機によつて影響を受けたと述べた。大統領は,国際経済秩序の不安定が,国際関係の伝統的な構造を急激に変えたことを指摘した。すべての国がその開発において後退を蒙むつたが,開発途上諸国が世界的な経済危機により最も影響を受けた。
大統領は,世界の諸国の救済の方策は利己心のない相互依存の増大,相互利益のための協力及び調和の精神に基づく先進国諸国と開発途上諸国の密接な協力に求められることを強調した。進歩と開発を加速する一方,共通の脅威に対処することを可能にする実際的な方策が工夫さるべきである。閣僚会議は,東南アジア開発途上諸国の開発目標達成を援助する使命を負つていることにかんがみ,大統領は会議が国家的開発計画にはつきりしたつながりを持ち,かつ地域の開発途上諸国の自立強化に寄与するプロジェクトを推進すべきことを示唆した。
大統領は,更に,会議が貿易,限られた原材料の供給,地域の資源の適正な活用と開発,ならびに人口管理,都市化,農業生産,投資及び技術移転の如き社会経済開発を促進,奨励する他の開発を指向した開発分野に関連する諸問題について協調的行動をとることを示唆した。
大統領は,この地域の開発に関する考えを交換するための協議の場としての会議の有益性を確認した。大統領は更に設立後9カ年の間に会議が地域協力の柱となつたことを述べた。
6. 第6回国連特別総会で採択され,もし実施される場合には国際経済秩序の不公平及び脆弱性を是正し得ることのあるべき新経済秩序確立のための宣言及びこれに付随する行動計画について会議の注意が喚起された。
7. 会議は,世界全体,特に東南アジアをとらえている深刻な経済問題すなわち急激なインフレ,エネルギー危機,食糧不足,景気後退の傾向及び国際収支の困難に留意した。
8. 会議は,これらの経済問題は諸国間の相互依存を強調することとなつたものであり,また,開発途上諸国及び先進諸国の間の更に大きな協力を要求するものであることに合意した。従つて会議は真に国際的な問題に対処するためには地域の諸国の間におけるより密接な協議と協力を通ずるより大きな調和の精神が必要であることに留意した。
9. 会議は,これらの厳しい経済的諸困難は貿易を抑圧し,開発途上諸国の経済に悪影響を与える恐れのある制限的措置を先進国にとらせるような結果をもたらし得ることに重大な懸念を表明した。
10. 開発途上諸国の貿易を拡大する必要性を認識し,会議は,先進諸国の一般特恵制度が一層改善され,世界貿易における開発途上国のシェアの実質的増加及びこれら諸国の外貨収入の増加が計られるよう示唆した。会議は更に関税及び非関税障壁の除去による市場アクセスの条件改善及び交易条件の改善がなされるよう,また開発途上諸国の産品の価格の安定が計られるよう示唆した。
11. 会議は,来たるべき多角的貿易交渉について注意を喚起し,本交渉が東京宣言の原則及び目的に従い一層の貿易自由化をもたらすよう希望を表明した。会議は,先進諸国に対し多角的貿易交渉において開発途上諸国の発展の必要性を考慮するよう求めた。
12. インドシナ諸国の特別の問題と必要については,会議は,戦禍で荒廃したこの地域に対する更に積極的な貢献を行うことを考慮するよう求められた。会議は,これら諸国が自足を達成するために払つている努力及び同地域の共通の事業への貢献を歓迎した。会議は,また,これら諸国の復興と再建のためのより幅広いかつ大きな国際的援助を要請した。
13. 会議は,ヴィエトナム共和国代表の発言に注目した。会議は,更に,この地域において自足を達成し,同地域の共通の事業に貢献し得る試みとしてインフレを抑制し失業率を低下せしめ国内生産を増加し,また民間投資を奨励するために大胆なイニシアティヴがとられていることに注目した。
14. 会議は,また,カンボディア共和国及びラオス王国における諸問題に関するこれら諸国の代表の発言に注目した。
15. 会議は,豪州の特恵関税スキーム及び市場援助部局の設立によつて開発途上諸国から豪州への輸出を増加させるための努力,1974−75年予算における開発援助計画が全体として31%増加し,341百万豪州ドルに達していること,開発途上諸国に対する豪州の民間投資を勧奨する諸スキームの導入及び資源と原材料の問題に豪州が払つている配慮の如き豪州のこの地域に対する援助に感謝をもつて注目した。
16. 会議は,拡大された開発援助計画を維持するためのニュー・ジーランドの断固とした努力を感謝をもつて注目した。会議は,ニュー・ジーランドの1974−75年の援助予算が4,400万NZドルに増加したこと及び今後2年間に更に実質的増加が見込まれることを喜びをもつて知つた。会議は,また,1974年より77年の間ニュー・ジーランドの東南アジア諸国に対する二国間プロジェクト援助の配分が885万NZドルより64%増加して1,450万ドルNZ{前4文字ママ}に増大するであろうとのニュー・ジーランドの発表を歓迎した。
17. 会議は,1973年に日本によつて達成された開発途上諸国への経済協力の目覚しい拡大と改善,特に国民総生産の1.42%に達した資金の流れ総量の増加,10億ドルを越えた政府開発援助量及び援助条件の顕著な改善を歓迎した。二国間政府開発援助に占める東南アジアの割合は53.8%であつた。
18. 会議は,日本国政府がこの地域の諸国との良き隣人関係の促進強化のためにこれら諸国のそれぞれの自主性を尊重し,相互理解を一層増進させることを外交の基本方針として再確認したことに注目した。会議は,日本がエネルギー問題による多くの困難に直面しているのにもかかわらず,政府開発援助の拡充を中心として開発途上諸国の開発努力に対する協力を能う限り進める意図を表明したことを感謝をもつて注目した。
19. 会議は,また,貿易自由化及び一般特恵制度改善を含む種々の措置を通じ,開発途上諸国特に東南アジアの開発途上国との貿易を拡大するため引続き努力する旨の日本国政府の確たる意図に注目した。
20. 会議は,東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC)事務局長による昨年の第8回閣僚会議以降の同センターの活動と運営において達成された進捗に関する報告に感謝をもつて注目した。
会議は,また,SEAFDECの資金を増大するための外部よりの拠出金の獲得と同プロジェクトへの参加国増大に関する事務局長の提案に注目した。会議は,SEAFDECに対するニュー・ジーランド及び豪州の28,000NZドル及び20,000豪州ドルの拠出の決定を歓迎した。
21. 会議は,東南アジア運輸通信開発局(SEATAC)の進展及び同局の同地域全体にわたる開発に対する重要な役割を満足をもつて注目した。
会議は,また,SEATACをして地域の海運業におけるより大きな役割を果たさせるようとの提案に注目した。
会議は,同プロジェクトに対する豪州,ニュー・ジーランド及び日本の援助ならびにADB,UNDP等の国際機関及びUSAIDによる継続せる支持を感謝をもつて注目した。会議は,SEATACに対するニュー・ジーランド及び豪州それぞれ55,000NZドル及び20,000豪州ドルの拠出の決定を歓迎した。
22. 会議は,東南アジア貿易・投資・観光促進センター(SEAPCENTRE)のプロジェクトの進展に満足をもつて注目した。
会議は,地域の開発途上国の貿易投資及び観光産業のニーズに,より効果的に資するため本センターの活動を継続的に拡大すべきことに合意した。
会議は,更に,本センターを日本と本センターの開発途上参加諸国との間の貿易投資及び観光の事項に関する情報センター及びクリアリング・ハウスにすべきであるとのフィリピンの提案に注目した。
会議は,豪州が同国内における貿易促進及び展示センターを設置しつつあることに注目した。会議は,更に,開発途上参加諸国の利益となる関係分野において本センターと協力する旨の豪州の表明した意図に注目した。
23. 会議は,第8回閣僚会議共同コミュニケ第22項に従い,1974年10月1日より3日まで東京において開催された東南アジア農業開発専門家会合の報告に満足をもつて注目した。会議は,この会合における討議が東南アジアにおける農業開発にかかわる問題を明らかにし,これ等の問題の可能な解決方法を探究するための意見交換を容易にする上で非常に有益であつたことを認めた。
会議は,東南アジアにおける農業開発問題を討議することを目的とし,必要に応じ参加政府間の協議を通じて更に会合を開催すべきであるとする専門家会合の勧告に満足の意をもつて留意した。
会議は,国際イネ研究所の研究分野における貢献と米の高収量種子の多くの国における必要を満す役割に注目した。会議は,同研究所に研究活動を推進することが可能となるよう追加的な財政支持を与える必要性を認めた。
24. 会議は,アジア租税行政及び調査に関する研究グループの報告に満足をもつて留意した。会議は,本研究グループが地域の諸国の粗税制度を改善する方法について意見と情報の交換の場として,その活動を継続することを認めるべきであるとの提案への支持を表明した。
会議は,本研究グループ第5回会合を主催とするとのタイ国政府の配慮ある申し出に謝意を表明した。会議は,租税行政及び調査のためのアジア・センター設立に関するフィリピン提案が第4回SGATAR会合より一時的に撤回されたことに注目した。会議は更に,租税行政分野における訓練に関する豪州の援助申し出,及び租税行政にかかわるそれぞれの経験及び情報交換を行うための豪州による参加国高級租税官吏の招待についても留意した。
25. 会議は,東南アジア家族人口計画政府間調整委員会(IGCC)のプロジェクト進展にかかわる報告に感謝をもつて注目した。
会議は,特に,世界人口年である本年において人口問題に取り組む必要性を認めた。
会議は,IGCCが家族計画問題を詳細にわたり論議しおいたが故に,保健,地域社会開発,移住及び人間環境の他の側面との関連で人口を扱うとの全総合的開発手法に向うべきであると提案した。
26. 会議は,日本国政府が東南アジア医療保健機構(SEAMHO)の設立に必要な準備を行うため,これまでにとつてきたイニシアティヴに謝意を表明した。会議は,SEAMHO設立のため更に必要となる措置をとるかどうかは参加国の広範囲にわたる支持にかかつているという日本政府の見解に注目した。
会議は,カンボディア,ラオス,フィリピン,シンガポール及びヴィエトナム共和国がSEAMHOに参加する用意があることに注目した。
更に会議は,インドネシア及びマレイシアの同機構には参加出来ないことならびにタイ及びビルマがSEAMHOの設立について立場を未だ策定する立場にないことに注目した。
27. 会議は,ヴィエトナム共和国政府が東南アジア工科大学プロジェクトについてのフィジビリティ調査を終了し,去る9月サイゴンにおいて国際専門家会合を主催したことにつき同政府に対し謝意を表明した。会議は,また,ヴィエトナム共和国政府が同大学の設立委員会を設立するための措置をとること及び同大学の設立協定を起草することにおいて責を担う用意があることに注目した。
会議は,本プロジェクトは特にインドシナ諸国における工学卒業生に対する需要に応ずることが出来るため有望であることを考察した。
会議は,本プロジェクトの実施特にその財政面につき参加国間で更に協議することに同意した。
28. 会議は,閣僚会議の役割と範囲について検討し,この会議を地域の経済開発のためにより有効な手だてとするために,参加国間でより定期的な協議が行われるべきであることに合意した。この目的を達成するために会議における提案及び作業をモニターし,地域プロジェクトの報告を検討し,かつ各会議の準備作業を行うため参加国の高級官吏がより頻繁に会合することとなろう。
会議は,高級官吏の第1回会合を,1975年の初めにバンコクで開催することに合意した。高級官吏会合は,年間を通じてその活動を閣僚会議に報告するであろう。
29. 会議は,第10回閣僚会議を,1975年10月または11月のいずれかの時期に主催するとのシンガポール政府の配慮ある申し出を感謝をもつて受諾した。
30. 会議は,代表及びオブザーバーに与えられた接遇と会議のためになされた取り計らいについてフィリピン政府及び国民に対し感謝の意を表明した。