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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 三木内閣総理大臣によるスハルト大統領(インドネシア)歓迎晩餐会における挨拶

[場所] 
[年月日] 1975年7月7日
[出典] 三木内閣総理大臣演説集,164−165頁.
[備考] 
[全文]

 スハルト大統領閣下

 スハルト令夫人閣下各位

 並びに御列席の皆様

 日本政府及び国民を代表致しまして、スハルト大統領閣下御夫妻に対し心から歓迎の意を表したいと存じます。スハルト大統領閣下御夫妻には、一九六八年に初めてわが国を公式訪問されて以来、今回は四回目の御訪日であると承知致しておりますが、これは日本とインドネシアとの友好関係強化に対する、閣下の御関心の並々でないことを示されたものとして、日本政府及び国民の等しく光栄とすところであります。

 日本とインドネンアとの間には、第二次大戦後一貫して友好関係が堅持されて来ていることは洵に喜びに堪えません。過去三十年に亘り、戦火の絶えることのなかったインドシナ半島も、漸く砲声の聞かれない日々が訪れ、アジアは今や新しい時代を迎えつつあります。日・イ両国は、アジアにおける二大友好国として政治、外交あるいは経済の各分野において、永続的な平和と繁栄を確保するため、今後一層その協力関係を強めるべく、あらゆる努力を傾注すべきであると考えます。

 およそ、国際の平和と安全は、軍事力のみで達成し得るものではなく、閣下の御持論でもある、個個の国のナショナル・レジリエンスの増強を通ずるリージョナル・レジリエンスの増強こそが、これからの世界の平和と安全を維持するための決め手であると確信致します。このような意味で、日・イ両国がそれぞれの立場で、アジアの永続的な平和と繁栄を追求し、これに貢献するという共通の目的の上に、新しい両国関係をきずき上げなければならないと考えます。

 私共は、スハルト大統領閣下が、インドネシアの国政を担当されて以来、内外数多くの困難にもかかわらず、新しい政策を勇敢に推進して来られたことに対し、心から敬意を表するとともに、またその成行を注意深く見守って参りました。一九六八年大統領御就任直後の閣下に、当時外相として初めてお会いしたのが、つい昨日のように思えてなりませんが、今般、久方振りにお会いし、びんの辺りに白いものをお見受けして、その間の閣下の御苦労の程をお察し申し上げている次第です。

 スハルト大統領閣下の英邁かつ献身的な御指導の下に、インドネシア国民が推進している国造りの努力の将来は、洵に輝かしいものと確信致します。日本と致しましても、今後とも引続きインドネシア国民の国造りの大業に対して、側面より積極的協力を続けて行くつもりであり、アジアの平和と繁栄のため、両国相携えて努力を傾注できる一層緊密な協力関係の樹立に努めたいと思います。

 終りに、スハルト大統領閣下御夫妻の末永き御健康と御幸福、インドネシア共和国の繁栄並びに日本とインドネシア共和国の友好関係の一層の強化を祈念して乾杯致したいと存じます。