データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アジア開発銀行における福田内閣総理大臣のスピーチ

[場所] マニラ
[年月日] 1977年8月17日
[出典] 福田内閣総理大臣演説集,128−130頁.
[備考] 
[全文]

 本日ここにアジア開発銀行の本部を訪問し、吉田総裁を始め銀行幹部の皆様方にお目にかかれる機会を得ましたことは、私の喜びとするところであります。

 今、皆様の前にこうして立って話をしておりますと、十年にわたる私のアジア開発銀行とのお付き合いの一つ一つが思い出されて感無量であります。一九六六年東京における当銀行設立総会において議長を務めさせていただき、またそれ以後もシドニー、シンガポール、クアラルンプールにおける年次総会に総務として出席し、成長するアジア開発銀行の姿を目のあたりに見ることが出来たことを非常に誇りに感じております。

 この最初の十年間にアジア開発銀行は着実に発展をとげ、アジア地域の開発援助において国際的な指導的役割を果たすべく、その基礎的な体力を十分つけて来たことは、同じアジアに住み、アジアの人々の平和と繁栄を願う者として非常に頼もしく思っております。

 アジア地域は世界の人口の約二分の一をかかえ、その社会、経済開発の重要性がクローズアップされてくるとともに、その開発の必要性は人類の平和と繁栄のために益々大きくなってきており、その面からも当銀行に期待される役割は大なるものがあると言えましょう。本日、本部を訪れて、職員の皆様がその使命と期待を受けとめ、希望に燃えて仕事に専念されている様子を拝見し、第二の十年−更に充実した活動への十年の成功を確信しております。

 わが国としても当銀行の活動には引続き積極的に協力する考えであり、既にわが国は第一番目に増資応募寄託書簡を七月二十九日に提出し、あとは友邦の協力により増資が早急に発効するのを待つばかりとなっております。またアジア開発基金の第二次資金補充についても大きな成果を期待しております。私事にわたり恐縮ですが、私が総理に就任する際、国民に私の私有財産を公開したことがございます。その中に、アジア開発銀行円建債が入っているのが報道されました。その金額が自慢する程大きくないのは、私にとっても銀行にとっても残念ですが、将来再び銀行が円建債を売り出す時には、少ないながらもできるだけ協力しようと思っていることをお伝え致します。これによって、皆様に私がいかに当銀行に肩入れしているかがお分かりいただいたと思います。

 勿論、アジア開発銀行に肩入れしているのは私個人ばかりではなく、日本としても、銀行の今後の一層の発展のため、今後とも最大限の協力を惜しまないつもりであることを付け加えさせていただきたいと思います。総裁はじめ皆様方のご健闘をお祈りするとともに、今回フィリピン訪問に当たってアジア開発銀行訪問の機会を得られたことを感謝して、私の短いご挨拶を終わります。