[文書名] 園田外務大臣とASEAN外務大臣との会談に関する共同プレス・リリース
1.園田直日本国外務大臣は,ASEAN常任委員会議長たるウパディット・パチャリャンクン・タイ国外務大臣の招請に応じて,1978年6月17日,パタヤにおいてASEAN加盟国外務大臣と会談した。
2.日本国外務大臣との会談には,モフタル・クスマアトマジャ・インドネシア共和国外務大臣,アハマド・リタウディン・マレーシア外務大臣,カルロス・ロムロ・フィリピン外務大臣,S・ラジャラトナム・シンガポール共和国外務大臣及びウパディット・パチャリャンクン・タイ国外務大臣が出席した。
3.ASEAN諸国の外務大臣と日本国外務大臣は,アジア情勢をレビューし,アジアの安定と繁栄がASEANと日本のために不可欠であることを再確認し,日本とASEAN諸国は東南アジアにおける平和と繁栄を促進するため,積極的な努力を続けることに意見の一致をみた。
4.ASEAN諸国の外務大臣と日本国外務大臣は,主要な国際経済問題について意見を交換し,世界経済の景気回復,保護主義の抑制及び自由貿易の促進が,ASEAN諸国の経済の発展のため不可欠であることに意見の一致をみた。
これに関連し,日本国外務大臣は,1978年7月のボンにおける来たるべき主要国首脳会議での日本の立場を概説したが,その立場はASEAN諸国の関心事を考慮に入れたものとなろう。
5.ASEAN諸国の外務大臣と日本国外務大臣は,ASEANと日本との間の協力関係の進捗状況をレビューした。ASEAN諸国の外務大臣は,日本政府によつてとられたいくつかの積極的な措置を感謝の意をもつて留意した。このような措置には,第五次国際錫協定の緩衝在庫に対する日本の任意供与,ASEAN産品のための累積原産地制度の採用及び日・ASEAN貿易・観光・投資促進協力センターを東京に設立するために行われている諸準備が含まれる。ASEAN諸国の外務大臣と日本国外務大臣は,1977年8月7日のクアラルンプールにおけるASEAN諸国の首脳と日本国総理大臣との会談の共同声明にうたわれた諸分野におる進捗を促進する必要性についても意見の一致をみた。
6.日本国外務大臣は,討議の過程で,ASEAN諸国のためのSTABEX制度に関する日本の関心を再度表明した。日本国外務大臣は,ASEANに対し,日本は共通基金に関する第3回全権交渉会議の成功を確保するため,積極的に貢献する所存であることを保証した。日本国外務大臣は,また,日本はMTNに関するASEAN側の要請に好意的に回答するであろうと述べた。ASEAN諸国の外務大臣は,これらのASEAN側要請に対する日本側の回答が,積極的かつ実体のあるものとなるようにとの希望を表明した。日本国外務大臣は,ASEAN工業プロジェクトに関し,1977年8月7日のクアラルンプールにおけるASEAN諸国の首脳と日本国総理大臣との会談で発表された共同声明の実施について,日本がASEANプロジェクトの実現のため,種々の形での資金援助を行う用意がある旨,またこれらのプロジェクトに必要な技術援助を引続き供与する用意がある旨を再確認した。この関連で,日本国外務大臣はASEAN諸国の外務大臣に対し,ASEAN工業プロジェクトとして確定したASEAN尿素プロジェクト(インドネシア)及びASEAN尿素プロジェクト(マレーシア)に対する資金援助に関しては,ASEAN側との協議の下に,具体的な諸措置がとられていくこととなろう旨通報した。
7.文化協力の分野においては,ASEAN諸国の外務大臣と日本国外務大臣は,文化協力に関するASEAN・日本合同研究グループ(JSGCC)の設立及び同グループによつて達成された進展を,満足の意をもつて留意した。日本国外務大臣は,日本がASEAN域内文化協力を促進する上でのASEAN側の努力を援助するため,ASEAN文化基金に対し50億円を年賦で拠出する用意がある旨再確認した。
8.ASEAN諸国の外務大臣は,第11回ASEAN閣僚会議の結果を踏まえ,ASEANの地域協力の進捗状況を説明した。日本国外務大臣は,かかる進展を歓迎するとともに,日本が対等の協力者として,ASEAN諸国との協力をさらに促進する旨の日本の決意を表明した。
9.日本国外務大臣とASEAN諸国の外務大臣は,本会談が協力の諸分野に関する討議及び相互に利益となる事項についての理解の促進にとつて,貴重な機会を提供したことに意見の一致をみた。
10.日本国外務大臣は,タイ国の政府と国民が日本国外務大臣及び代表団に示された暖かい歓迎に深甚なる感謝を表明するとともに,今回の会談のためのゆきとどいた準備に対して,衷心よりの謝意を表明した。