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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中越紛争に関する関係各国の声明等,新華社声明

[場所] 
[年月日] 1979年2月l7日
[出典] 日本外交主要文書・年表(3),1027−1028頁.北京周報・l7巻8号,8−9頁.
[備考] 
[全文]

 新華社は中国政府の命により、一九七九年二月十七日、つぎのごとく声明する。

 べトナム当局はさいきん、中国側の再三の警告を無視し、連続的に軍隊をくりだして中国領土を侵犯し、中国国境警備要員および国境地帯住民を襲撃し、情勢を急激に悪化させ、わが国の国境地帯の平和と安全に重大な脅威を与えている。中国国境警備部隊はもはや忍びがたき状況下に反撃に決起せざるを得なくなった。

 ここ二年いらい、ベトナム当局は反中国と華僑排斥に狂奔すると同時に、たえず中国国境地帯で武力挑発をおこない、敵対行動をとってきた。中国側は、中国・べトナム人民の友情に重きをおき、ずっと自制と忍耐の態度をとり、事態の拡大を回避するため、再三べトナム当局に勧告と警告をくりかえしてきた。だが、ソ連に後押しされるベトナム当局はトラの威をかり、中国側の自制と平和への期待を弱さの現われとみなし、ますますほしいままにふるまい、中国国境地帯にたいする武力侵犯行為をたえずエスカレートさせた。ベトナム当局は中国・ベトナム国境ぞいに大軍を集結し、何度も中国領土を侵犯した。かれらは公然と中国領内に地雷を埋め、陣地を築き、ほしいままに銃砲撃を加えて、わが方の村落を破壊し、兵員や住民を殺傷し、財物を略奪し、列車を襲撃して重大な流血事件をひき起こした。ここ半年間だけで、ベトナムの武力挑発は七百回余に達し、中国の国境警備要員および国境地帯住民三百人余を殺傷した。べトナム当局のこうした気違いじみた侵略行動は、中国南部の国境地帯で軍事衝突をひき起こし、情勢をさらに悪化させ、中国の社会主義的現代化をぶちこわそうとするものである。もしもベトナムの侵略行為を抑止しないなら、東南アジアそしてアジア全域の平和と安定をも脅やかすことは疑いない。

 中国政府と人民の一貫した立場は、「相手がおかしてこなければ、こちらもおかさないが、相手がおかしてくれば、こちらもかならずおかす」である。中国国境警備部隊がもはや忍びがたい状況のもとで反撃に立ちあがったのはまったく正義の行動である。われわれは自国を建設しなければならず、われわれは平和な国際的環境を必要とし、戦争を欲しない。われわれは、ベトナムの一寸の土地をも求めないが、同時に、他国がわが国領土をほしいままに侵犯することも決して許さない。われわれに必要なのは平和で安定した国境だけである。ベトナム侵略者にしかるべき反撃を加えたのち、中国国境警備部隊は祖国の国境の守りを固めるであろう。中国のこの立場は、平和を愛し、正義の側に立つすべての国と人民の共感と支持を得るものとわれわれは信じる。

 中国・ベトナム両国人民は長期にわたる革命闘争の中で、互いに共鳴しあい、支援しあい、深い友情をつちかった。いま中越間に発生したかくも重大な武力衝突は、まったくべトナム当局が中越両国人民の意思に背いて一方的につくりだしたものである。中国政府と中国人民は、中越人民の友情を大切にし守りたい。以前もそうであり、今もそうであり、将来もそうである。

 中国政府は、ベトナム当局がただちに中国国境地帯にたいする武力侵入といっさいの挑発、破壊活動を停止し、不当に占拠している中国領土からすべてのベトナム武装要員を撤収し、中国の主権と領土保全を尊重するよう厳しく要求する。中国政府は従来、平和的交渉によって両国間の紛争を公正かつ合理的に解決するよう主張してきた。だが、ベトナム側がいささかの誠意も示さなかったため、これまでの何回かの交渉はなんら実をあげ得なかった。中国政府はいま、双方がすみやかに、双方の合意する地点で適当なクラスの代表による交渉をおこない、両国国境地帯の平和と安定を回復し、さらには国境と領土にかんする問題をめぐる紛争を解決するよう再度提議するものである。中国政府は、両国国境の平和と安定を確保し得るすべての建設的な方法について具体的な話し合いをする用意がある。

 中国国境警備部隊がベトナムの武力侵入に反撃を余儀なくされたこの時点において、中国政府はベトナム当局が正道に立ち返り絶壁の前で足を止め、誤った道を歩みつづけぬよう呼びかける。