[文書名] 中越紛争に関する関係各国の声明等,安倍勲国連大使のステートメント
議長
私は、国際の平和と安全の維持に紛れもなく決定的重要性をもつ問題につき、発言することを許可されたことに対し、議長及び安保理メンバーに対し感謝の意を表明したい。わが国も、先に安保理会合の開催を積極的に支持する旨明らかにしたこともあり、安保理が一昨日以降会合することを決定したことを歓迎する。
議長
私は、貴下が2月の安保理議長に就任されたことにつき、心からの祝意を表明いたしたい。現在行われている審議のごとく困難な審議には、貴下のような人の最も有能な采配がどうしても必要なことは、ここに出席の皆様方も同感であると確信する。
議長
御承知のとおり、安保理が先月カンボジア問題を審議した際、わが国は、アジアにおける平和と安定に関する深い懸念の故に、特に、カンボジア領からのあらゆる外国軍隊の即時全面撤退につき強い希望を表明した次第である。わが国は、また、情勢が更に悪化しないよう、すべての関係当事国に対し、本情勢の対処にあたっては、最大限の自制を行うよう強く訴えた。同様の見解が本安保理メンバー及び非メンバーのその他多くの国より表明された。
しかしながら、カンボジア情勢は未だ何らの改善の兆候も見せるに至っておらず、同地域では戦闘が激しく継続している。更に、今や大規模な武力衝突が中国とベトナムとの間で勃発した。
議長
わが国はインドシナにおける現在の情勢を極めて遺憾であると考え、また、この情勢が更に悪化すれば、アジアのみならず世界全体の平和と安定に悪影響を生ずるであろうとの深い懸念を有している。1979年2月22日わが国が安保理の緊急会合招集につき強い希望を表明したのもかかる考慮に基づくものである。わが国は、国連憲章により国際の平和と安全の維持のための主要な責任を与えられている安保理が、万一、悪化しつつある情勢に有効に対処し得ないままでいるならば、国連の理想と目的は大きく損われると信ずる。
議長
わが国の園田外務大臣は、l979年2月l8日以下の声明を行った。
「中越国境における最近の緊張状態については、日本政府としては、中越双方に対し、累次にわたって、これが平和的解決を要望し、武力紛争に発展しないよう自重方強く申し入れてきたが今般このような事態に立ち至ったことは極めて遺憾である。日本政府としては、中越双方が平和的な方法で速やかに事態を収拾するとともに、インドシナ全域において一日も早く平和が回復されることを引き続き強く希望するものである。……。」
インドシナ全域に平和を回復することを希求しつつ、わが国は、ベトナム政府に対し、敵対行為の即時停止及びカンボジア領からのそのすべての軍隊の撤退を通じて平和的解決に貢献するよう申し入れた。わが国は、中国政府に対し、敵対行為の即時停止及びベトナム領からのそのすべての軍隊の撤退を通じて平和的解決に貢献するよう申し入れた。わが国は、ソ連政府に対し、アジアにおける平和と安定のため自重と自制を要請した。
これに関連して、私は、日本政府は、インドシナにおける全紛争当事者に対し直ちにすべての敵対行為を停止し、すべての外国軍隊を撤退することを訴えた1979年2月20日、ASEAN常設委員会議長の声明を全面的に支持することを付言したい。
議長
私は、この機会をとらえて、全ての関係諸国に対し、以下の2点に留意するよう訴えるとともに、日本政府としては、安保理が最終的にいかなる種類の措置をとるにしても、これらの点が最低必要事項としてその措置の中に含まれることを切望することを表明致したい。
第一に、全ての紛争当事国は、即時に全ての敵対行為を中止すべきである。全ての外国軍隊は、インドシナのすべての紛争地域から撤退すべきである。そして、全ての関係当事者は、国連憲章の基本的諸原則、就中、他国の国内問題に対する不干渉及び武力不行使の原則に従って、平和裡に紛争を解決するための交渉を緊急に開始すべきである。
第二に、インドシナ域外の全ての諸国、就中、大国は、紛争が全世界の平和に対する脅威に発展することのないよう最大限の自重と自制を行うべきである。
日本政府は、l979年2月22日事務総長により行われた、平和的解決のための斡旋に関する時宜に適った申し出を心から歓迎することを付言したい。
議長
日本政府は、現下のインドシナの重大な情勢に鑑み、国連が本問題解決にあたり真に効果的役割を果たし、また、安保理がインドシナ半島に平和と安全を回復するために最大限の努力をすることが不可欠であると確信する。従って、私は、現在の安保理審議の結果私がただ今提案したラインに沿った適切な行動が採られ、できる限り早期に全紛争地域に平和と安全が回復されることを日本が強く希望している旨繰り返し述べたい。
議長
私の発言を終える前に、私は、昨日の安保理においてある加盟国の代表が行った以下の発言について一言申し述べたい。
「北京当局は、日中平和条約署名と米国との国交正常化に続いて、●{トウ・登るにおおざと}小平がその訪問中にベトナムに対する戦争を公然とうたった米国及び日本からの帰国の直後に、ベトナムに対する侵略戦争を開始した。情報によれば、ワシントンと東京が、北京のベトナムに対する侵略に関しこれを勧奨まではしなかったにせよ、同意を与えたことは明らかである。」
私は、圧倒的大多数の加盟国は、日本に関する限り、そのような発言が全く明白に事実に反するものであることを十分承知しているものと確信する。
しかし、私は、この機会に国連加盟諸国に対し、再度関連事実をお知らせしておきたい。
第一に、日本政府は、わが国と中国との平和的、友好的関係を一層増進し、もってアジアひいては世界の平和に寄与するという基本的目的をもって、中華人民共和国との間に、平和友好条約を締結したものである。
第二に、中華人民共和国副首相が米国からの帰途、わが国に立ち寄った際、大平総理大臣は、中越間の緊張の高まりに対するわが国の重大な懸念を示すとともに、同副首相に対し、平和的解決のために一層の努力を行い、現在の情勢に対処するに際し、最大限の自重と自制を行うよう訴えた。同様の呼びかけは、同じ機会に園田外務大臣から黄華外相に対しても行われた。
私が今申し述べた関連事実は、既に広く一般に知られていることであり、何か裏に隠されているわけではないので、これらの事実によってすべての誤った解釈や誤解が十分除去されるものと考える。