[文書名] 日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約,議定書
日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約(以下「条約」という。)に署名するに当たり、下名は、条約の不可分の一部をなす次の規定を更に協定した。
1 条約第一条の規定に関し、「居住」には永住を含まないこと及び永住の許可に関するすべての事項は条約の範囲外であることが了解される。
2 条約第一条の規定に関し、いずれの一方の締約国も、他方の締約国が相互主義に基づく特別の取極により第三国の国民に対して与えており又は将来与えることがある旅券及び査証に関する事項についての利益の享受を要求する権利を与えられない。
3 条約において「会社」とは、営利を目的とする事業活動に従事する社団法人、組合、会社その他の団体をいう。
4 条約第三条1の第三国に与える待遇よりも不利でない待遇の許与に関する規定に関し、いずれの一方の締約国も、不動産に関する権利及び自由職業に従事する権利の享有については、前記の不利でない待遇が相互主義に服すべきことを要求することができる。
5 条約第三条1及び条約第十条の規定に関し、いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、投資の許可、会社の組織並びに支店、代理店その他の事務所の設置及び維持について、第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
6 条約のいかなる規定も、著作権及び工業所有権に関し、いかなる権利も許与し又はいかなる義務も課するものと解してはならない。
7 条約の規定は、すべての審級にわたり裁判所の裁判を受ける権利及び行政機関に対して申立てをする権利を除くほか、いずれか一方の締約国が、第三国の国民がその所有又は管理について直接又は間接に支配的利益を有する他方の締約国の会社に対して条約に定める利益を拒否することを妨げるものと解してはならない。
8 条約第四条の規定に関し、いずれの一方の締約国の国民及び会社の投資財産も、他方の締約国の領域内において、公用若しくは公益又は国民の福祉若しくは国防のため正当な補償が不当に遅延することなく行われる場合を除くほか、収用、国有化又はこれらと同等の制限の対象とはならない。
9 条約のいかなる規定も、いずれか一方の締約国が、関税及び貿易に関する一般協定若しくは国際通貨基金協定又はこれらを改正し若しくは補足する多数国間の協定の締約国として有しており又は有することがある権利及び義務については、両締約国が当該協定の締約国である限り、影響を及ぼすものではない。いずれか一方の締約国がそのいずれかの協定の締約国でなくなつた場合には、両締約国は、その時の事情に照らし、条約の貿易、為替又は関税に関する規定について改正を必要とするかどうかを決定するため、直ちに相互に協議する。
10 条約第六条3及び条約第十三条(a)の規定に関し、「関係国際協定」とは、関税及び貿易に関する一般協定及びこれを改正し若しくは補足する多数国間の協定をいうことが了解される。
11 条約第七条の規定の適用上、次に掲げるものは、一方の締約国の領域を原産地とする産品とする。
(a)当該一方の締約国の船舶によつて採捕された魚類その他の天然の海産物
(b)海上において当該一方の締約国の船舶内で魚類その他の天然の海産物から生産され又は製造された産品
この11の規定は、いずれの一方の締約国の国民及び会社に対し、他方の締約国の漁業管轄権の下にある漁業資源その他の水産資源を利用し及び開発し、又はその管轄権の及ぶ水域においてこれらの資源に関して工船を運転するいかなる権利又は特権も与えるものと解してはならない。
l2 条約第十一条2及び3の規定に関し、両締約国は、外国船舶の待遇について国際的に行われている海運上の慣行を遵守する。
13 条約第十一条6の規定に定める海運の発展のための相互協力には、両国間の積荷の輸送についての両国の海運業による公正でかつ相互に有利な参加のための協力が含まれる。
l4 条約第十二条の規定に関し、いずれか一方の締約国の船舶により、他方の締約国の環境を害し又は害するおそれがある油その他の汚染物質が排出された場合には、当該一方の締約国は、当該他方の締約国の要請があるときは、可能な範囲内でかつ自国の法令に従い、その排出の影響を押さえ、統御し又は最小にすることにつき当該他方の締約国を援助するためすべての可能な措置をとる。
15 条約第十三条(b)の規定にいう利益は、フィリピン共和国がインドネシア共和国及びマレイシアに対して与えるものを指す。
16 条約のいかなる規定も、フィリピン共和国に対し、日本国が、専ら、千九百五十一年九月八日にサンフランシスコ市で署名された日本国との平和条約第二条の規定に基づいて日本国がすべての権利、権原及び請求権を放棄した地域に原籍を有する者に対して与えており又は将来与えることがある権利及び特権の享受を要求する権利を与えるものと解してはならない。
以上の証拠として、下名は、この議定書に署名調印した。
千九百七十九年五月十日にマニラで、日本語、フィリピン語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。
日本国のために
大平正芳
園田直
フィリピン共和国のために
フェルディナンド・E・マルコス
カルロス・P・ロムロ