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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ネ・ウイン・ビルマ大統領歓迎晩餐会における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] 飯倉公館
[年月日] 1981年4月13日
[出典] 鈴木演説集,252−253頁.
[備考] 
[全文]

 ウ・ネ・ウイン大統領閣下、並びに御列席の皆様

 大統領閣下の五度目の御訪日を心から歓迎いたします。

 かねてより、私は、国際問題について卓越した見識を持たれ、かつ、ビルマの国づくりに当たっても英邁な指導力を発揮されている大統領閣下にお会いし、国際情勢及び日緬関係について、隔意なき意見交換を行いたいと思っておりました。今度、大統領閣下の訪問により、かかる機会を得ましたことは、真に喜びに耐えません。

 今日、日緬両国の関係は、国民各層間の強い友好の絆を基礎として極めて親密な間柄にあります。本夕御出席のビルマの皆様の中にも、日本事情を知悉されている方々がおられると耳にしており、また、国立ラングーン外国語学院においては、諸外国の言葉を学習する青年のうち、日本語を学習する青年が最も数多いと承知しております。大統領は、先に、ビルマ独立の実現に協力した日本人七名を叙勲されたと聞いておりますが、恩義ある人を決して忘れない、と言う大統領閣下の心の優しさに触れ、深い感銘を受けた次第です。かかる心の優しさこそ、わが国民をビルマにひきつけてやまない魅力なのでありましょう。現に、わが国官民中、貴国に一度でも足を印した者は例外なく、 貴国の魅力の虜{トリコとルビ}となり、貴国を心の故郷{フルサトとルビ}としています。このように、両国国民間に心情的結びつきが存することは、今後の両国関係増進上、誠に心強いことであります。

 貴国においてはかねてから、大統領閣下の指導の下に、独自の方式で新しい社会を建設すべく、孜々として努力しておられますが、貴国がこの目的実現のため、今後とも力強い歩みを続けられることを心から念願し、また必ずや成功を収められるものと、信じて疑いません。近年日本とビルマとの間の経済協力関係は着実に発展しており、いまやわが国にとって、ビルマは、経済協力の分野における最重点国の一つとなっております。わが国が、このような形で、ビルマの新社会建設にいささかなりとも寄与できることを嬉しく思っております。

 今回の大統領閣下の御訪問を通じて、閣下と私との間に確立された個人的友好信頼関係は、今後両国関係の一層の発展・強化に大きく貢献することを、確信しております。将来、再び、この個人的友好信頼関係を温める機会が持てることを楽しみにしております。

 この挨拶を終えるに当たり、私は列席の皆様とともに杯を挙げ、大統領閣下の御健康、ビルマの繁栄、そして日緬両国の友好関係のために乾杯いたしたいと存じます。