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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] プレム・タイ王国首相歓迎晩餐会における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] 首相官邸
[年月日] 1981年11月5日
[出典] 鈴木演説集,263−264頁.
[備考] 
[全文]

 プレム首相閣下、並びに御列席の皆様

 今夕ここにタイ王国のプレム首相をお迎えして、歓迎の宴を催すことができましたことは、私の大きな慶びとするところであります。

 本年一月、私がアセアン諸国歴訪の一環としてタイ国を訪問した際、貴首相を始め、貴国官民の熱烈な御歓待を受けました。緑豊かな古都チェンマイの離宮で国王、王妃両陛下に拝謁の栄に浴したこと、チェンマイ空港での数百人の乙女の踊り、行く先々で日・タイ両国の小旗を振って迎えてくれたタイの少年少女達、そして何より全行程を通じて貴首相閣下御自身の細やかな心配り、これら全ては生涯忘れることのできない良き思い出であり、今でも妻と私にとって尽きることのない楽しい話題となっております。

 私は、あの旅行で得た何よりも貴重なもの、即ち洋々と流れるメナム河のように心広く、またさんさんと輝く南国の太陽のように心暖かいタイ国民の友情をいつまでも大切にしたいと思っております。その意味で本日ここに閣下をお迎えして友情を新たにすることができるのは何にも増して嬉しいことであります。

 首相閣下

 現在貴国は、貴首相の秀れた指導の下に挙国一致で国づくりに邁進し、地域の平和と安定達成のために真摯な努力を払い、多大の成果を挙げておられます。我が国はこれ迄も貴国官民が払っておられるこのような御努力に対し幅広い協力を行って来たところでありますが、今後ともあらゆる支援を惜しむものではありません。このことを閣下御来日の機会にあらためて明確に御約束致したいと思います。

 また、本日両国外相間で技術協力協定が署名されましたが、本協定は我が国の貴国に対する支援の主要な一分野である技術協力を一層促進する上で、意義深いものであります。

 首相閣下

 振り返ってみますと、タイの交易船がすでに日本に渡来していたといわれる十三世紀以降培われてきた日・タイ友好関係は今や立派な大木として揺るぎない大地にしっかりと根を下ろすまでに成長したのであります。貴首相の今回の御訪問はこのような両国関係を益々緊密にし、両国間の末長き友好協力関係の大きな節目となることを確信いたしますとともに、短時日の御訪問ではありますが、御滞在が快適で愉快なものであることをお祈りいたします。

 貴国は、明年四月にチャクリ王朝二百年祭を迎えられると聞き及んでおりますが、私は貴国王室の御繁栄を御祈りするとともに、タイ国国王陛下のため、また貴首相の御健康、日・タイ両国の末長き友好のために乾杯したいと思います。