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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] スハルト・インドネシア大統領主催晩餐会における宮澤内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1993年1月11日
[出典] 宮沢演説集,115−116頁.
[備考] 
[全文]

 スハルト大統領閣下、令夫人並びに御列席の皆様

 本夕は、私どものためにかくも盛大な晩餐会を催して頂き、また、只今は大統領閣下より心温まるご挨拶を頂き、厚くお礼申し上げます。

 私は、丁度二十五年前、経済企画庁長官としてスハルト政権の発足を見、また、創設まもないIGGIに関わって以来、様々な立場で貴国の発展、日・イ関係の進展と共に歩んでまいりました。その過程でインドネシアが達成しつつある目覚ましい成果を感嘆の思いで見つめてまいりましたが、本日、改めて貴国の明るく自信に満ちた人々の様子を目の当たりにして貴国の希望に満ちた将来を実感したところであります。

 この二十五年間におけるインドネシアの発展は、スハルト大統領閣下の賢明な指導と国民各位の真剣な努力によって成し遂げられたものであり、ここに深い敬意を表します。また、明年よりは新たな飛躍に向かって第二次の二十五か年長期開発計画を開始されようとしておられますが、その成功を心から祈念致します。

 貴国の力強い発展は、国際的な場にも現われています。昨年九月、当地ジャカルタにおいて、世界百八か国が加盟する非同盟運動の首脳会議が開催されました。同会議は、閣下の賢明な舵収りの下、建設的な対話路線を打ち出し、歴史的な成功を収めたと聞いております。この会議の現実的な成果の背景には、議長国たるインドネシアが、開発途上国にとっては、一見華々しいイデオロギーやレトリックではなく、地道な開発努力による民生の向上こそが最重要であることを、この二十五年間の実績をもって証明したことが挙げられると思います。

 我が国の重要なパートナーであるインドネシアの成功は我が国の喜びでもあり、今後とも、我が国は、貴国の一層の開発のために積極的に協力して行く所存です。さらに、私は、今後は国際情勢の大きな変化の中で、日イ両国が国際社会への貢献という目標を共有しつつ新たなパートナーシップを構築することができると確信します。我が国とインドネシアの位置するこの地域が来たる二十一世紀において世界の平和と繁栄を支える地域となるよう、長期的、世界的な視野から対話を深め、共に考え行動したいと思います。

 大統領閣下

 両国の関係が密接なものとなるにつれ、お互いに相手に対する関心を深めていくことが大事です。我が国の地方自治体や民間団体による貴国との自発的な交流が年を追う毎に活発化し、両国間の訪問者数も急増の一途を辿っています。我が国ではガメランやワヤンの同好会が生まれ、インドネシアの最新の歌が紹介され始めています。私は、この傾向を歓迎し、政府としても今後とも経済、政治関係を越えて文化、学術、社会等々あらゆる分野で幅広い交流を促進して両国の国民が互いに尊重し合い、友情を実感できる環境を育てたいと思います。このようにして両国がこれまでの成果に満足することなく、国民的なレベルでの共感と信頼感を強め、繁栄と安定、さらには悩みと痛みをも分かち合える幅と深みのある関係を発展させて行くことを念願致します。

 御列席の皆様

 スハルト大統領ご夫妻のご健康、インドネシア共和国の繁栄そして両国の友好協力の一層の前進を祈って杯を挙げたいと思います。

 スラマット・ミヌム(乾杯)。