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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ゴー・チョクトン・シンガポール共和国首相夫妻のための晩餐会における宮澤内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1993年5月10日
[出典] 宮沢演説集,167−169頁.
[備考] 
[全文]

 ゴー・チョクトン首相閣下、令夫人並びに御列席の皆様

 このたびゴー・チョクトン首相閣下を我が国にお迎えし、ここに晩餐を共にする機会を得ましたことは、私にとって大きな喜びであります。

 閣下は一九九〇年十一月に首相に就任されて以来、従来の政策目標の一層の追及と国民の生活基盤の充実を主眼としたNEXT、LAP(次の時代)と銘打った施政方針を発表され、さらに近年ではシンガポールを「メジャーリーグ」即ち、先進国の仲間入りさせる方針を発表されました。私自身もこれまで何度か貴国を訪れましたが、その度に、シンガポールの驚異的な開発の成果に改めて印象づけられました。その繁栄をさらに発展させるとともに、国際社会の中で貴国の活動領域を広げて行こうと努力されていることに賞賛の念を禁じ得ません。

 首相閣下

 二十一世紀はアジア・太平洋の時代と言われて久しく、またアジア・太平洋はそうした予測に違わぬ発展を遂げてまいりました。その中で我が国と貴国との貿易投資関係は順調な発展を続けています。昨年の二国間の貿易総領は二十年前の十四倍、我が国の直接投資も十二年前の六倍にも達しています。また、在留邦人も二万人に及ぶと言われ、昨年一年間で貴国を訪れた日本人は百万人を超えました。このことは我が国と貴国の関係の深化を象徴するものと言えましょう。こうした我が国の貴国への信頼と将来への確信は今後益々強まることは間違いありません。

 地方、世界に目を向ければ冷戦の終結にも拘らず、カンボディア、旧ソ連、旧ユーゴー、ソマリア、朝鮮半島等で様々な問題が生じています。この他、環境、気候変動といった地球的規模の問題も山積しており、これらの課題に取り組むため各国の適切な貢献が求められています。

 我が国としては、過去の厳しい反省に立ち、これまでの平和国家としての路線を堅持しつつ、世界の永続的平和と繁栄のためにより積極的に貢献していく考えであります。この点では閣下ご自身が最近行われた演説で、先進国たることはグローバルな視点をもって黙々と国際貢献を行うことと定義されています。我が国としても志を同じくするものであります。

 首相閣下

 今日の歴史的転換期において、世界は多くの問題を抱える一方、技術、思想、文化の一層の発展と交流により、より自由で、より平和で、より豊かな未来を創造し得る絶好のチャンスを迎えていると申せましょう。本年のG7サミットの議長たる私としては、ASEAN議長国たるシンガポールの首相である閣下をここにお迎えし、二国間関係に止まらず、二十一世紀のアジア・太平洋、さらには世界の平和と安定とさらなる発展に向けて両国が、あるいは日本とASEANがなにをなし、いかなる協力をしていくかにつき膝を交えて話し合えたことは、誠に時宜を得たものと考えています。こうした意見交換は、また、共に考え共に行動する日・ASEANパートナーシップをさらに推進することに資するでしょう。二十一世紀に向け、日本とシンガポール、日本とASEANの間の協力関係がアジアで、そして世界で、大きく花開いていくことを切望します。

 首相閣下、令夫人並びに御列席の皆様

 ここに、皆様と共に杯を上げ、ゴー首相閣下、令夫人のご健康とご多幸、シンガポール国民の皆様の一層のご発展とご繁栄、そして日・シンガポール両国の友好・協力関係の一層の強化を祈念して乾杯致したいと存じます。

 乾杯。