[文書名] カンボディアにおける制憲議会選挙に対する宮澤内閣総理大臣のコメント
カンボディアの将来を決する制憲議会選挙投票が昨日終了し、本日明石国連事務総長特別代表より、UNTACとして同選挙は、公正且つ自由なものであった旨パリ協定に従い正式に認証された。
投票の過程では、当初危惧されていた重大な選挙妨害も発生せず、概ね順調に取り行われたことは、明石代表をはじめ、全UNTAC職員の日夜を分かたない懸命の努力の賜物であり、我が国としては、これを高く評価している。開票作業も円滑に進むことを期待している。
ここに至るまでに、UNTAC要員に犠牲者が出たことは誠に遺憾であった。就中、文民警察官の高田晴行警視、国連ボランティアの中田厚仁氏が尊い命を落されたことは真に残念であり、痛恨の極みであるが、我が国から派遣された国際平和協力隊の諸君の真に勇敢且つ献身的な職務遂行がこの選挙の成功に大きく貢献したものと確信している。私は、国際平和協力隊の諸君の努力に対して最大限の敬意を表し、これを誇りに思うとともに、最後まで恙なく任務を果たされるよう衷心から祈念している。
カンボディアの平和な国づくりに協力するという今回の活動は、我が国の国際貢献にとって試金石とも言えるものであり、その意味で今後の検討課題もあるが、憲法の平和理念に基づいて国際的な責任を果たすことができたと思う。この点について、国民の皆様のご理解とご支援に感謝したい。
今回の選挙が九十パーセントにも及ぶ圧倒的多数のカンボディア人の熱意ある参加を得て実施されたことは、平和と民主主義に対するカンボディア国民の熱望の表れであると考える。今回の選挙の勝利者はカンボディア国民であり、かかる圧倒的多数の参加の下、自由且つ公正に実施された選挙の結果は、真にカンボディア国民の声として重みを持つものであり、民主主義の礎を築くものとしてカンボディア各派がその結果を尊重するよう強く訴えたい。
国連事務総長もその報告の中で述べていたが、この選挙は和平プロセスの終着点ではなく、カンボディアにおける平和と民主主義の実現に向けた第一歩である。永続的平和確立への道程は依然険しく、脆弱でもある。カンボディアの再建と復興のためにはカンボディア国民自身の自助努力がなによりも重要である。祖国の再建と復興に向けたカンボディア国民の努力への国際社会の全面的支援を強く呼び掛けたい。我が国も引き続き積極的に協力していく考えである。