データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ラモス・フィリピン大統領主催晩餐会における村山内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1994年8月23日
[出典] 村山演説集,126−127頁.
[備考] 
[全文]

ラモス大統領閣下、令夫人、並びに御列席の皆様、

今宵は、私共のために、このような盛大な晩餐会を催していただき、また只今は、ラモス大統領閣下から暖かい歓迎のお言葉を賜り、心から御礼申し上げます。

大統領閣下、

 今回の東南アジア諸国訪問は、私にとり初めてのこの地域への旅であります。私は、貴国が我が国と同じく、多くの島からなる緑多き島国だと聞いており、今回の訪問を大変楽しみにしておりました。今日、[飛行機の窓から貴国を眺めて]まさにその通りであることを自分の目で確かめることができ、大変嬉しく思った次第であります。

 私は、日本における今回の連立政権の発足にあたり、政治改革、行政改革、地方分権化、経済・税制改革など、新しい内閣の課題を明らかにしました。今回貴国を訪問するにあたり、これらの課題が、「フィリピン二〇〇〇」構想の下で新たな国造りを進められている貴国が、現在、取り組まれている課題と共通するところが少なくないことを知り、深く共感を覚えるものであります。

 貴国と日本は、地理的にも近く、長い交流の歴史があります。今日では、両国とも民主主義の重要性と市場経済の有用性を信じ、人権と平和を共に大切にしています。我々両国は、投資や貿易といった経済の面で深い相互依存の関係を有するのみならず、教育・文化をはじめとする様々な分野での交流を深めております。昨年三月には、ラモス大統領閣下御夫妻が国賓として訪日され、緊密な両国関係を一層促進させるのに大きな役割を果たしました。このような貴国との緊密な関係を維持し発展させていくことは、わが国外交の一貫した方針であります。

 貴国は、ラモス大統領の賢明な御指導の下、新たなる国造りに取り組み、目に見える成果を挙げておられます。例えば、二、三年前にはマニラでも停電が頻発する状況にあったと聞いておりますが、ラモス大統領の懸命の御努力により、概ね解決されたことは、誠に喜ばしい限りであります。私は、わが国が、今後とも、貴国の経済社会開発の努力を可能な限り最大限支援していく方針であることを、改めて申し上げたいと思います。

 私は、両国の共通の関心事項について、明日、大統領閣下と率直かつ有益なお話ができることを楽しみにしています。そして今回の訪問を契機に、大統領閣下と共に、両国間の友好協力関係の発展のために努力していきたいと思っております。

 最後に、大統領閣下、令夫人を始めとするフィリピンの皆様の、私たち一行に対する暖かい歓迎と種々の御心配りに改めて御礼申し上げ、皆様の御健康と私たち両国の友好関係の一層の発展を祈念して、杯を上げたいと思います。

 乾杯。ありがとうございました。