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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ボルキア国王主催晩餐会における橋本内閣総理大臣の挨拶(東南アジア諸国訪問)

[場所] ブルネイ
[年月日] 1997年1月7日
[出典] 橋本内閣総理大臣演説集(上),278−280頁.
[備考] 
[全文]

ボルキア国王陛下、(サレハ王妃陛下、マリァム王妃殿下)並びにご列席の皆様、

 本夕は我々一行のためかくも盛大な晩餐会を催していただき、また只今は国王陛下より温かい歓迎のお言葉を賜り、心からお礼を申し上げます。一昨年九月、私は、アセアン経済閣僚会議の折、通産大臣としてブルネイを訪問しましたが、再びここに日本の総理としてのアセアン訪問の第一歩として、美しい貴国を訪問することができましたことは、私にとってこの上ない喜びであります。

 貴国で昨年盛大に祝賀行事がとり行われました国王陛下の生誕五十周年並びにラシダ王女のご成婚に対し、あらためてお祝い申し上げます。また、昨年九月には常陸宮同妃両殿下が日本の皇族として初めてブルネイを御訪問され、国王陛下、サレハ王妃陛下、マリアム王妃殿下をはじめとし、王族、政府、国民の皆様方の温かい歓迎を受けられたことに対して、この席をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。

国王陛下、

 ブルネイ・ダルサラームは、国王陛下の二十九年間に及ぶ卓越した指導の下に、数々の偉業を成し遂げてこられました。貴国がいま平和と繁栄を享受しておられるのは、国民の福祉に対する国王陛下のご関、心の賜物であります。貴国は我が国にとり、近隣の友人であり、我が国は貴国より石油及び天然ガスを安定的に供給していただいております。また、我が国は貴国貿易の最大のパートナーであり、共に互いの経済発展のために協力を重ねてまいりました。さらに、青年交流や、各種文化交流など幅広い分野での人の往来も推進され、日本・プルネィ両国関係はますます緊密の度を深めつつあります。この友好関係をさらに発展させていくことが私の大きな願いであります。

 本日の首脳会談で国王陛下と私は、二国間関係の緊密化のみならず、幅広く国際情勢につき有意義な意見交換を行いました。その過程で、今後両国が、一層の関係促進のため、目指すべき姿も明らかになってきたように思います。

国王陛下、

 貴国は、人的資源の開発、インフラの整備等を推進し、経済の多角化に熱心に取り組んでおられます。これらの目標に向けての貴国のご努力に対して、我が国もこれまで技術協力等を通じて幅広い協力を行って参りました。今後は我が国としても、貴国が新たに目指している一次産品、製造業、サービス、観光等の産業育成政策を十分検討し、新たな形での技術協力、産業協力を進めるため、官民双方の協議と交流を一層強化することが重要であると考えます。

 また、経済面での相互協力の一層の強化のためにも、文化、教育面を始めとする幅広い分野での交流の促進を図って参りたいと考えます。

 貴国はまた、アセアンを始めとする地域協力を重視し、そのためにますます重要な役割を果たしつつあります。一昨年には、アセアンの議長国として優れたりーダーシップを発揮され、また、西暦二〇〇〇年にはAPECの議長国になられる旨を明らかにしておられます。本年はアセアン設立三十周年に当たりますが、地域の安定と発展のため、今後更に、大きな役割を果たしていくことが期待されているアセアンの中にあって、貴国がますます活躍されることを願うとともに、それに伴って我が国との協力や交流の幅が広がっていくことを期待しております。

 今回のアセアン諸国訪問により、二十一世紀に向けた東アジア地域内外の平和と一層の繁栄のため、日本とアセアン諸国の間の政治、経済、文化等幅広い分野の協力、交流の推進により、新たなるパートナーシップの確立を目指したいと考えております。

国王陛下、

 来る二十一世紀に、平和で繁栄した住み良い国際社会の環境づくりをしていくため、この地域の隣人同士が共に考え、共に行動して、アジア太平洋、ひいては国際社会全体の活力を生み出していかねばならないと考えます。

 アジアにおける隣人同士として、また、地域の発展のパートナーとして、我々二国間の友好、協力関係は今後とも発展し続けるものと私は確信します。

 最後に国王陛下、サレハ王妃陛下、マリァム王妃殿下をはじめ、ブルネイ・ダルサラーム国民の皆様の一層のご繁栄とご多幸をお祈り申し上げます。

 ありがとうございました。