[文書名] マハティール・マレーシア首相歓迎晩餐会における橋本内閣総理大臣の挨拶
マハデイール首相閣下、令夫人並びにご列席の皆様
この度マハディール首相閣下及び令夫人を我が国に親しくお迎えし、ここに晩餐を共にする機会を得ましたことは、私どもにとって大きな喜びであります。
私は本年一月にマレイシアを訪問いたしましたが、その際、貴首相をはじめ貴国関係者の方々から、心温まるおもてなしを受けました。このことに対して、まず、心よりお礼を申し上げたいと思います。
首相閣下
先程まで行いました首脳会談におきまして、私たちは率直かつ有意義な意見交換を行いました。貴首相との首脳会談は今回で三回目になりましたが、会談を重ねるに従い、お互いの信頼関係がますます深まってきたことを実感しております。
貴国は本年のASEANの議長国として、ASEANの更なる発展のために積極的な活動を行ってきておられる他、さまざまな国際協力の分野においても重要な役割を果たしてきておられます。このような貴国の国際社会における大いなる貢献の姿に、改めて敬意を表したいと思います。
首相閣下
日本・マレイシア関係は、貴首相提唱になる「東方政策」への協力、貿易・投資関係、文化交流等、広範囲にわたり発展してまいりました。両国友好関係の象徴ともなっている「東方政策」については、これまで十四年間にも及ぶ実績が着実に積み上げられてきており、人造り政策の模範として高く評価されるものと考えております。貴首相が西暦二千年以降の継続を表明された同政策に、我が国としても今後とも出来る限り協力していく所存であります。
マレー語の格言に、「船 大きくして、波 高し。」という意味の「ブサール カパル、ブサール グロンバン。(Besar kapal, besar gelombang.)」という表現があると伺っています。これは、船体が大きくなる−すなわち交易や交流関係が増大する−にしたがって、波も高く大きくなる−すなわち対処すべき事態や責任なども大きくなってくる−という意味の金言であると承知しております。日本とマレイシアの関係をみると、まさにこの格言のとおり、双方の国際社会における役割と責任の拡大に伴って、その関係はますます緊密になりつつあり、今後両国間で協議すべき課題も増えてきております。そのために、既に両国関係者間の建設的な協議が活発に行われていることは誠に喜ばしい状況です。このような協議や対話の努力によって、両国はどのような大波も無事に乗り越えて、向かうべき進路を開拓していくことが出来ると私は確信しております。
首相閣下
閣下は、先月下旬の貴政府定例閣議の開催場所として日本式の茶室を選ばれ、茶の湯に親しまれたと伺っております。日本の伝統文化や精神といったものに対する閣下のご造詣の深さに常々感銘を受けております。更に閣下は、マルチメディア・スーパー・コリドー構想等との関連で、日本の先端技術にも多大の関心を示されているものと承知しております。今回のご訪日に際しましては、日本の伝統的な面のみならず、現代日本の顔といったものに関しても、閣下が更にご洞察を深められますことを心より願っております。
首相閣下、令夫人並びにご列席の皆様
最後に、マハディール首相閣下、令夫人のご健康とご多幸、マレイシア国民の皆様の一層のご発展とご繁栄、そして、日本・マレイシア両国の友好・協力関係の一層の強化を祈念して、乾杯いたしたいと存じます。
乾杯