[文書名] 日・ASEAN首脳会議共同声明,21世紀に向けた日・ASEAN協力
1.日本国総理大臣とASEAN加盟国元首・首相は、日本とASEAN諸国が長年に亘り緊密な協力関係を醸成し、アジア太平洋地域の平和、安定及び繁栄に貢献してきたことを満足を以て留意した。日・ASEAN関係の基礎をより強固なものとしていくことの必要性、並びに、この地域及び世界が直面する共通の諸問題に対処するための協調的努力の重要性を認識しつつ、首脳は、より幅広くかつより奥深い関係を築くべく、現在の友好関係を更に強化することにより、21世紀へ向けた日・ASEAN協力を一層推進していくことを決意した。
パートナーシップ強化のための対話の緊密化
2.首脳は、将来の世代が平和と安定の中に暮らし、社会的及び経済的な開発を持続していけるよう協力していくとの決意を表明した。より強固なパートナーシップを醸成すべく、首脳は、あらゆるレベルでの対話と交流を緊密化することを決定した。首脳は、ハイレベルでの対話の重要性に特に留意し、可能な限り頻繁に首脳会談を開催することを決定した。首脳は、政治及び安全保障に関する対話及び交流を強化していくことの重要性を認識した。
人と人との交流及び文化交流の促進
3.首脳は、政策決定者のレベルのみならず、他の分野、特に青年や有識者間での人と人との直接のふれあいを、交流計画を通じて一層促進することを決定した。首脳は、日・ASEAN双方の有する豊かな伝統や文化を維持し、発展させていくとともに、文化面での交流や協力を通じて相互理解を深めていくことの重要性を認識した。この関連で、首脳は、多国籍文化ミッションの目的とこれまでの作業の進展を歓迎し、同ミッションによる提言への期待を示した。
地域の平和と安定の促進
4.首脳は、地域の平和と安定を促進するための緊密な協力の重要性を認識した。この関係で、首脳は、安全保障協力および安全保障体制を含む安全保障に関する事項についての見方及び展望についての意見交換を行った。首脳は、また、ASEAN地域フォーラム(ARF)において協力を強化する意図を確認した。日本側は、ASEAN側が東南アジア平和・自由・中立地帯(ZOPFAN)に重要性を付与していることについて認識した。日本側は、東南アジア非核兵器地帯(SEANWFZ)条約の発効が、この地域の安全保障の強化に向けたASEANの重要な努力であるものとして歓迎した。
経済面での協力の強化
5.首脳は、貿易と投資の拡大及び産業協力の緊密化に照らして、日本とASEANとの間の相互依存が増大していることを認識した。首脳は、このため、この地域の発展及び共有された繁栄を持続させることを目指し、緊密な経済関係を一層堅固なものとすることを決定した。
6.日本側は、ASEANが力強い経済ファンダメンタルズを有していることから、現在の経済的困難にもかかわらず、経済成長を持続するダイナミックな地域であり続け、日本とASEANとの間の経済面における協力を強化するための大きな機会を提供するとの信頼を表明した。日本側及びASEAN加盟国側は、各国経済の競争力を一層強化するための経済構造改革の重要性を強調した。
7.首脳は、97年12月2日のクアラ・ルンプールにおける会合において、日本とASEANの蔵相が、現下の地域の金融情勢に対処するための各国における努力及び地域的・国際的協力につき議論したことを留意した。首脳は、マニラ・フレームワークの早急な実施に関する蔵相間の合意を、地域の金融安定促進に向けた建設的な一歩であるとして支持した。首脳は、マニラ・フレームワークの下でのイニシアティブを推進し、IMF、世銀、ADB、国際的金融監督機関と緊密に協力するため、アジア蔵相・中央銀行総裁代理会合を98年の早期に日本が開催することに留意した。ASEAN諸国は、最近の金融パッケージに対する日本の貢献に感謝の意を以て留意し、双方は、日・ASEANの蔵相間で経済・金融問題についての協力を推進することの重要性を再確認した。
8.ASEAN側は、日本により供与された有益かつ効果的な援助に感謝の意を表明した。日本側は、政府開発援助(ODA)や他のプログラムを通じてASEAN諸国の努力を引き続き支援するとともに、民間部門のイニシアティブを促進していくとの政策を再確認した。日本とASEANは、協力に当たり、以下の点を優先事項とする。
●市場のアクセスや産業分野の構造変化につき取り上げていき、日・ASEAN貿易のバランスのとれた発展を促進
●高度技術及び環境に優しい技術を含むASEANへの技術移転を促進
●特に次の事項を通じ、ASEANの競争力を強化
‐ハード面及びソフト面のインフラストラクチャーの整備
‐裾野産業の強化
‐中小企業の近代化及び他の産業協力
‐人材育成。この関連で、日本はASEANから5年間で2万人を対象とした総合的な人材育成のためのプログラムを提案した
‐環境管理及び環境保全に係る改善
●この地域のマクロ経済及び金融市場の安定の促進
●ASEAN内の経済格差及び貧困の軽減、並びにASEANの経済発展及びグローバリゼーションのメイン・ストリームへのASEAN新規加盟国の統合を促進
●地域及びサブリージョンのプログラム、特に大メコン圏におけるプログラムを促進及び支援
●日・ASEANフォーラムの枠内において、又は同フォーラムと緊密に協力する形での適切なメカニズムを設置。例えば、日・ASEANの開発協力案件に関する意見・情報交換を行うための日・ASEAN開発ラウンドテーブルの新設や、産業協力の推進、ASEAN競争力の改善、新規加盟国への開発協力支援のために既存のAEM‐MITIの下にCLMワーキング・グループ改組により、大臣レベルを両議長とする新しい組織を設置。
9.首脳は、ASEAN自由貿易地域(AFTA)とASEAN産業協力(AICO)スキームの着実かつ完全な実施により、ASEAN内部の経済的連携が強化され、投資・生産基地としての競争力と魅力が高められるであろうとの見解を共有した。
10.首脳は、強化された多角的自由貿易体制が将来の繁栄に不可欠であることを認識し、開発途上国の経済状況を勘案しつつ、世界貿易機関(WTO)、アジア太平洋経済協力(APEC)等における活動を推進することにより、貿易の一層の自由化・円滑化を図るための作業を行っていく用意があることを確認した。この関連で、首脳は、公的部門と民間部門との間のより強化された相互連関と緊密な関係を促進することを決定した。
国際問題についての協力
11.世界全体及び特にこの地域の平和、安定及び繁栄に貢献するための努力において、首脳は、国際連合(UN)の諸機能の強化、特に国連安全保障理事会を含む国連の改革、及び軍縮と不拡散体制のための国際的努力の促進に向け、行動していくことを決意した。この関連で、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の進展を歓迎し、同機構の活動への継続的支援を再確認した。首脳は、特に次の分野における共同の努力を通じて、次世紀の諸課題に協力して対処していくことの必要性を強調した。
●環境保全の強化
●エネルギー資源の効率的及び持続的な使用の促進
●保健と福祉の向上
●国際テロリズム、小火器の不正取引、薬物、その他国際的組織犯罪への対処の強化
●ASEANの経済成長の経験を開発途上国と分かちあうための南南協力の強化
12.日本側は次世紀の挑戦に対応していくASEANの活力と決意を表すASEANビジョン2020の採択を歓迎した。