[文書名] 第2回日メコン外相会議議長声明
1.第2回日メコン外相会議は、10月3日にカンボジア王国のシアムリアップにおいて開催された。同会議はハオ・ナムホン・カンボジア王国副首相兼外務国際協力大臣が議長を務め、日本国の岡田克也外務大臣、ラオス人民民主共和国のトンルン・シースリット副首相兼外務大臣、ミャンマー連邦のニャン・ウイン外務大臣、タイ王国のカシット・ピロム外務大臣及びベトナム社会主義共和国のダオ・ヴィエット・チュン外務次官が出席した。
2.外相は、友好、相互理解及び協力の精神の下、メコン地域及びより広い地域である東アジアにおける平和、発展及び繁栄のために日メコン協力を更に促進するため、日メコン協力の進展及び今後の方向性を含めた、共通の関心事項である様々な案件につき詳細な意見交換を行った。外相は、地域及び地球規模の共通の課題についても意見交換を行った。
3.外相は、2007年の「日本・メコン地域パートナーシップ・プログラム」立ち上げ及び2008年1月に東京で開催された第1回日メコン外相会議以降、日本とメコン地域諸国間の協力全体が様々な協力の分野で著しく発展していることを確認した。外相は、メコン地域は近年発展を見せているが、可能な限り早期に克服する必要がある諸課題に未だ直面していることを確認した。この点につき、外相は、経済が更に発展し、また自然災害や感染症など、人間及び人間の尊厳を脅かす様々な脅威に対する社会の対応力の強化を通じて人間の安全保障が高まることの重要性を強調した。外相は、ASEAN憲章の前文で規定される諸原則を承認しつつ、メコン地域で平和、安全、安定及び持続可能な発展及び繁栄が持続することが、ASEAN共同体及び長期的な開かれた東アジアの共同体の構築のために非常に重要であるとの見方を共有した。メコン地域各国の外相は、特に開発協力及び人間の安全保障に関する諸イニシアティブにつき日本が同地域において積極的な役割を担っていることを高く評価した。
パートナーシップ
4.外相は、開発パートナー及び主要拠出国である日本およびタイが一部の財政拠出を行っているアジア開発銀行(ADB)を含む拠出国機関の役割を認識した。外相は、すべての財政資源を引き出す道筋及び方法を探し出し、メコン地域開発の方向性を決めることの重要性に気づいた。また、外相は、地域交通網の強化から人材開発支援まで、様々なメコン地域開発に対するタイの強いコミットメントにつき、満足の意とともに留意した。
5.外相は、メコン河委員会(MRC)、ASEAN-メコン流域発展協力(AMBDC)、大メコン圏経済協力プログラム(GMS)、エーヤワディー-チャオプラヤ-メコン経済協力戦略(ACMECS)、インドとのメコン-ガンガ協力(MGC)及び最近実施された米国-メコン下流域閣僚会合等、メコン地域の発展及び繁栄促進を相互に補い合ってきた、複数地域にまたがる協力メカニズムが存在していることにつき、満足の意とともに留意した。外相は、地域におけるより良い協力を実現するため、それぞれの枠組みの役割を強化することへのコミットメント、及びすべての関係者の間でのハイレベルの対話とその他の協議を促進していくことの重要性を改めて確認した。
6.また、メコン地域諸国の外相は、政府開発援助、インフラ改善のための貿易保険及び今後2年間の貿易保険円滑化を通じた、現在の金融経済危機に対し脆弱なセクター及び人々を支援しつつ、アジアの成長力強化及び国内内需拡大を目的とする日本の最近のイニシアティブを歓迎した。この点に関し、メコン地域諸国は日本がメコン地域を日本の新しいイニシアティブにおける「優先地域」として扱う日本のコミットメントを評価した。
7.外相は、2009年11月6-7日に東京で開催され、日本及びメコン地域諸国の首脳が日メコンパートナーシップ及び協力を最高レベルにまで進展、拡大及び強化させるという政治的コミットメントを示すことになる第1回日メコン首脳会議の開催に対する期待を示した。
8.外相は、共通の課題である地域及び地球規模の問題につき緊密に協力していくこと、及び地域の平和、安定及び発展のために既存の日メコン協力及び日ASEAN、ASEAN+3、東アジアサミット(EAS)及びASEAN地域フォーラム(ARF)といった他の枠組みの下での協力を深化・拡大させることにつき、決意を改めて確認した。
9.外相は、一体性、相互尊重及び相互理解を高めるために人物交流及び文化交流、特に青少年及び有識者間の交流をさらに促進することの重要性を強調した。この点に関し、メコン地域諸国の外相は、東京で開催された第1回日メコン外相会議の際に、2007年に立ち上げた21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYS)を含む各種スキームにて、今後5年間に1万人以上のメコン地域諸国の青少年を受け入れるとした日本のイニシアティブを評価した。
10.外相は、日メコン交流年がメコン地域における大きな機会を強調する活動を促進する優れたツールであること、また日本とメコン地域諸国の人々の間でパートナーシップ及びより良い相互理解を醸成するための強い推進力であることを確認した。
発展
11.メコン地域諸国の外相は、「日本・メコン地域パートナーシップ・プログラム」の下、インフラ開発、人材育成、環境保護及び貧困削減を含め、過去3年間に日本のメコン地域諸国に対するODAが拡大し続けていることを特に評価した。外相は、日ASEAN統合基金(JAIF)を用いた「CLV開発の三角地帯」及び東西・南部経済回廊の物流効率化支援のような、地域プロジェクト実施における進展に留意した。
12.メコン地域諸国の外相は、以下の要素、すなわち「ASEAN地域における災害管理及び緊急対応」、「ASEAN地域における金融危機に関連した緊急支援」などを主たる実施内容とする、2009年3月のJAIFへの9000万ドルの追加支援を含めた、様々な形による日本のASEAN統合に向けた協力を高く評価した。
13.外相は、貿易、投資及び観光の促進並びにASEAN市場の潜在能力に対する一般の関心喚起における日ASEANセンターの役割を評価した。外相は、日本とメコン地域諸国の間の経済関係、特に貿易及び投資における最近の進展を歓迎し、またこの関係を更に強化するための重要な潜在的能力があることを確認した。この点に関し、外相は、日本とメコン地域各国との間の既存のメカニズム及び日ASEAN包括経済連携協定を通じ貿易及び投資を促すためには官民の連携が不可欠であるとの見方を共有した。また、外相は、関係者間の緊密な協議を通じて、貿易及び投資を加速するために、各国及び地域全体としてのビジネス環境を改善することの重要性を改めて確認した。
14.外相は、より統合された地域を作り上げるという目的を達成するためには、地域におけるハード及びソフトインフラに着目することが重要であると信じる。この点に関し、外相は、メコン地域のインフラ開発における日本の重要な役割、特に日本が他のパートナーとともに東西及び南部の道路網を「経済回廊」に進化させる重要な役割を確認し、またこれらの重要な回廊の未整備部分におけるインフラ開発の重要性を認識した。
15.新型インフルエンザA(H1N1)の発生を受け、外相は様々な地域的及び多国間の国際会議において更なる協力を強化し、特に感染症に関する時宜を得た情報共有、調査、準備及び対応の点につき強化する必要があることを確認した。外相は、日本が、鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザA(H1N1)対策でシンガポールに備蓄している50万人分の抗ウイルス薬に加え、ASEAN加盟各国に50万人分の新たな抗ウイルス薬を供与したことを評価した。
16.外相は、メコン地域が水力発電開発及び生物多様性について、世界で最も生産性に富んだ地域の一つであることを確認した。また、外相は、環境及び生物多様性の保護、特に水資源の保存とメコン河下流域国の社会的・経済的懸念につき十分考慮に入れるとの条件で、した新たな水力発電開発の可能性を追求するとの見方で一致した。
17.メコン地域諸国の外相は、日本の地球環境保護イニシアティブに対する支持を再確認し、日本の新しい提案であり、鳩山総理がニューヨークで開催された国連気候変動サミットで言及した、国際交渉の進展に合わせ、途上国のための財政・技術支援を高めることを目的とする「鳩山イニシアティブ」に対する評価を表明した。
18.外相は、洪水及び旱魃の発生増加、森林破壊の加速等、気候変動のインパクトはメコン河流域にとって真の問題になっていることを確認した。これらの新たに発生している課題に対処するため、外相はメコン河におけるいかなる発展も環境問題を考慮すべきであるとの見方を共有した。この点に関し、メコン地域諸国の外相は、日本がメコン河流域で植林支援を進めていることを評価し、また日本に洪水予知システム、メコン河の洪水及び旱魃の管理及び減少に向けた更なる支援を求めた。
19.また、外相は、メコン河流域の持続可能な開発及び保護におけるメコン河委員会(MRC)の役割の重要性を確認した。メコン地域諸国の外相は、MRCに対する日本の財政及び技術支援を評価し、日本は引き続きMRCを通じて支援を行う意思を表明した。
地域・国際情勢
20.ミャンマー情勢に関し、外相は来たる2010年の総選挙が透明性を有し、民主的かつ包括的なものになることを信じた。外相は、7000人の受刑者釈放を含めた、ミャンマー政府による民主化プロセスに向けた最近の前向きな動きを歓迎した。
21.朝鮮半島に関し、外相は朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)に対し、関連の国連安保理決議を完全に履行し、六者会合における義務を完全に実施するよう促した。外相は朝鮮民主主義人民共和国に対し、依然として朝鮮半島の平和と安定を実現する主たるメカニズムである六者会合が即座にかつ無条件で再開するよう強く求めた。また、外相は朝鮮民主主義人民共和国が拉致問題を含む国際社会における人道上の懸念に対し取り組む必要があることを強調した。
22.外相は、関連する国連総会決議及び決定に示された国連改革、特に常任・非常任理事国双方の拡大を通じた安保理改革が緊急に必要であることを再確認した。日本は、メコン地域諸国が、日本が国連安保理の常任理事国になることを引き続き支持することを評価した。
23.外相は、2010年NPT運用検討会議の成功に向けて協力し、また、CTBT早期発効やIAEA包括的保障措置協定の追加議定書普遍化をはじめとする取組を通じ、国際的軍縮・不拡散体制の強化に取り組んでいくことを確認した。外相は、クラスター弾及び対人地雷の人道上の懸念の対応に向けて取り組む必要があることを強調した。外相は、来年クラスター弾に関するオスロ条約の第1回締約国会議を開催するとのラオスの提案を歓迎した。
日メコン会合
24.外相は、過去数年の間に日メコン協力が相当な進展を見せたとの見方を共有した。この点に関し、外相は日メコン協力を効果的に前進させるため、日メコン会合が頻繁に実施されるべきであることを確認した。外相は、日メコン外相会議の開催が定例化され、またSOMは毎年開催されるべきであるとの考えであった。