データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本・メコン地域諸国首脳会議共同記者会見

[場所] 東京
[年月日] 2009年11月7日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

■冒頭発言

鳩山総理

 昨日の夕刻から今日の午前中にかけて、日本において初の日本・メコン地域諸国首脳会議を開催いたしました。日本とメコン地域は400年ほど前から大変親交があったわけですが、新たにこのような形でメコンの地域と日本の間の信頼関係が構築されることは大変すばらしいことだと考えています。2日間にわたって率直な意見交換を行うことができました。その成果として、先ほど東京宣言と63の項目からなる行動計画を採択しました。

 メコン地域においては、ご案内のとおり、まだ様々な格差がありますが、その格差を是正するための地域間の協力が進んでいるなか、日本がどのような役割を果たすべきなのかという点が、大変重要なことだと思っています。将来にむけてASEANの統合が促進されるわけでありますし、私自身が構想している開かれた透明性のある東アジア共同体において、いかにして地域間格差を是正し共に発展するかという意味において、鍵となる地域、それがメコン地域であると考えています。

 今回は、まずは総合的なメコン地域の発展、それから「グリーン・メコン」という言葉を使いましたが、環境・気候変動問題に関する「鳩山イニシアティブ」、そのなかに含まれる形で、メコン地域での気候変動問題に努力する国々への様々なプロジェクトへの協力の形として、例えば水資源管理などを含めて、「グリーン・メコン」という発想のイニシアティブを提案し、採択されました。さらに脆弱性克服への対応といった問題、さらに協力・交流の拡大という3つの柱での取組を強化し、「共通の繁栄する未来のためのパートナーシップ」を構築するとの認識を共有できたと考えています。

 こういった取組を今後もすすめるために、メコン地域を我が国のODAの重点地域として、メコン地域全体、なかでも特にカンボジア・ラオス・ベトナムに対するODAを拡大し、地域全体で今後3年間で合計5000億円以上のODA支援を実施することを予定しています。

 また、我が国の官と民の知見及び資産を動員して、この地域への協力を推進していきます。

 最後に提案し一致しましたが、3年に1度、日メコン首脳会議を日本で開催します。日本で開催されない間の2年については、ASEAN首脳会議を活用して、そのような機会に日メコン首脳会議を開催することにも合意しました。また、日メコン外相会議、さらには経済大臣会合を日メコンの間で定例化することにも合意しました。さらに日メコンの協力の発展のために、高級実務者会合(SOM)を積極的に開くことにも合意しました。

ブアソーン・ラオス首相

 メコン地域諸国の首脳を代表して申し上げます。まず鳩山総理及び日本に御祝意を申し上げます。今回、歴史的な日メコン首脳会議を開催していただきました。これは、非常に重要な会議で、成功裏に終了しました。日メコン首脳会議を高く評価します。

 会議は率直かつ建設的な雰囲気の中で開催され、深い理解とコンセンサスに到達しました。私たちのコンセンサスの総括として、先ほどの議長の総括を支持し、また「東京宣言」と採択済みの「行動計画」も支持します。

 会議は完全に成功しました。私たちは、共通のコミットメントをもって、これからも協力関係を強化していきます。その目的は、様々な課題を克服し、「行動計画」にうたわれた内容を実現していくというものです。

 日本国民の皆様に、心から感謝申し上げます。メコン諸国にこれまでODAを提供してくださいました。その重要な役割に感謝します。また、日本が、今後3年間の間に、5000億円のODAによる支援をして下さる、また、青少年を含む3万人を招聘し研修を受けさせてくださることに感謝いたします。また、民間企業がメコン諸国に一層投資して下さることに感謝いたします。

 日本とメコン諸国の間には、共有する利益があると考えます。日本の指導的な役割に感謝します。

■質疑応答

(問)

 鳩山総理に質問申し上げます。日本は長年、政治・経済・文化など多方面にわたりメコン地域に対する協力を行ってきました。一方、最近では、貿易・投資や経済支援などあらゆる分野で中国の影響力が増大しています。また米国のオバマ政権も、対ミャンマー政策の見直しを図るなど東南アジアへの関与を強めています。こうした中で、日本がこの地域でのプレゼンスを強化するために、どのようなことを行っていく必要があるのでしょうか。

 鳩山総理が提唱する「東アジア共同体」構想との関連で、メコン地域との協力はどのように位置づけられるのでしょうか。

(鳩山総理)

 まさにそのような国際的な環境の変化があるだけに、日メコン首脳会議を毎年定期的に開催することが大変な意義があると申し上げます。日本とメコンの間の交流は昔から大いにあります。その交流をさらに活性化させるために、例えば3年間で青少年含む3万人を日本に招聘します。こういった交流の拡大によって日本への信頼を高めていただく、また私たちがメコン地域に対する信頼を、投資を含めて増やしていくのが大変重要だと考えています。

 一方で、中国の関与の高まりについてですが、日本と中国の間の協力について議論を始めています。これは決して、中国がメコンに対して力を入れるから日本に不利だとかいう、そういう話ではありません。日本と中国が互いの利益になるような協力を作り出していくことが極めて重要だと考えています。

 米国の関心が高まっていることは、むしろ歓迎しています。ミャンマーが民主化のために努力していることを会議の中でも評価しましたが、総選挙が見事に全ての方々の参加のもとで成功されることを祈念すると申し上げてきました。そのためにも、米国がミャンマーに関心をもって、民主化が進められていくことは、メコン全体の利益をも補強するものです。

 米国、さらに中国がメコン地域に対し協力的な関係を高めていくことは、決して日本にとっても悪いことではありません。むしろ、そのことをお互いにウィン・ウィン・ウィンの関係にしていくための大変大きな期待をもって、協力関係を作りあげていくことが望ましいと思います。

 私の東アジア共同体構想において鍵を握るのがメコン地域だと先ほど申し上げました。経済的な意味で格差の大きい地域、そういった地域がいかにその困難を克服するか、克服していくことによって共同体の意識が高まるわけでありますし、またそのプロセスのなかで共同体意識が信頼関係のなかで高まっていくと思います。私の東アジア共同体構想は、必ずしもどこの国が入る、入らないということを申し上げている段階ではありませんが、ASEANの中でもメコン地域が、私の東アジア共同体構想のなかで鍵を握る重要な地域であるということは改めて申し上げます。

(問)

 ズン首相に質問ですが、日メコン間の協力をどのように評価しますか。

(ズン・ベトナム首相)

 この会議において、メコン地域諸国の首脳と日本の首脳によって、日メコン間に、急速に成長する実際的な協力関係があることは喜ばしいということが表明されました。ベトナムは、他のメコン地域諸国も含めてですが、メコン地域に対する日本の友好協力関係を高く評価します。

 鳩山総理のイニシアティブによって、日メコン首脳会議が開催されたことを評価します。第一回首脳会議は、鳩山総理の議長としての指導力の下で成功裏に終了しました。その成果を喜ぶものであります。

 メコン地域諸国の首脳と日本の首脳は、以下の同じ見解を共有します。私たちは、日本とメコンの協力関係が、実際的な利益を、すべての関係国に同じようにもたらすという点で意見を共有しました。この協力関係は、ASEANと日本の間における協力関係を促進するためにも貢献するものです。また同時に、より広い範囲の地域の安定に貢献するものでもあります。

 ベトナムは、いつも信頼に足るパートナーであり、日メコン友好協力関係に貢献する国でありたいと願っています。