データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] バリ民主主義フォーラム共同議長記者会見

[場所] バリ島
[年月日] 2009年12月10日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

‐冒頭発言

ユドヨノ大統領

 鳩山総理が私とともにBDFの共同議長を務めていただいたことは、インドネシアにとって名誉である。今朝、鳩山総理との間で行われた二国間会談は大変に生産的であった。二国間会談ではいくつか重要な問題を話し合った。友好関係の増進や経済連携協定をはじめとする経済関係の強化についていくつかの合意を見た。会談の中で、鳩山総理はニアス島および西ヌサ・トゥンガラ州の橋梁についての無償援助、併せて2,200億ルピアの援助について言及があった。また、気候変動対策の枠組や緊急財政支援を目的とした4兆ルピアの円借款への言及があったが、これらはすべて二国間関係の良好な関係から行われたものである。このほか、投資の問題について、インドネシアへの投資機会の増進と種々の経済セクターへの投資促進についても協力していくことで意見の一致を見た。我々はエネルギー分野やそのほかの分野でも協力を進め、相互に利益を与えるものとなることを期待している。気候変動問題についても、COP15に向けて協力することで意見が一致した。インドネシアは、2020年までに二酸化炭素排出を26%減少させるとの目標を掲げた。二国間会談の最後には、防災分野での協力について、両国はARF災害救援実動演習をマナドで共催し、協力することに合意した。以上が先ほどの二国間関係でお話した点であり、鳩山総理は二国間の協力関係の今後のさらなる増進にコミットしている。では、次に鳩山総理から一言お願いしたい。

鳩山総理

 BDFの共同議長を務めさせていただき、大統領のお招きによりインドネシアのバリを訪問することができたことを心から光栄に思っている。なお、BDFの途中で失礼することになり申し訳ない。民主主義と開発というテーマで議論し、それぞれの国に多様な民主主義があるということに話がおよび、そのため、民主主義は発展させていかなければならないということ、それぞれの国にそれぞれの歴史があり、その歴史の中でお互いに認め合わなければならないことがあるということがわかり、BDFは大変に意義のあるものだということが確認できた。民主主義と開発の相乗作用を起こすためには何が必要であるのかということの議論では、そのためには法の支配とか、政府の説明責任、国民参加、報道の自由なども重要だと考えている。再度大統領からのお招きを受けて喜んで参加し感謝申し上げる。両国の間にはもともと良好な関係があり、3カ月のなかで毎月一度以上のペースで首脳会談を行うのは大変恵まれていると思っている。今日、ユドヨノ大統領との首脳会談で、今、大統領が述べたことの中で、二国間協力できるものとして、コペンハーゲンのCOP15を成功させようということがある。そのために日本も提案したが、インドネシアもすばらしい提案をし、その中で他の主要排出国に対して成功に導くための協力を行っていこうではないかということで、これに相当の時間を割いて議論した。また、二国間の話の中で日本としては、鳩山イニシアティブを提案し、途上国を支援することが先進国の義務であるということ、ユドヨノ大統領は途上国にも責任があるという中で、その協力の中でしっかりとCOP15を成功させるため日本としても提案した。このほか、インドネシアは日本の企業が大変進出しやすい環境であり、EPAというものが機能することによってさらに投資環境の整備などを十分にやって、日本の企業がさらに進出しやすい環境を作っていくということでやっていきたい。また、私の方からは、アサハン・アルミ製錬所プロジェクトに関して、2013年以降に関しても、日本とインドネシアで何とか連携をとって協力していただきたいと申し上げたところ、これに対して、民間レベルだけでなくて、政府間でもよく連携をとっていこうという話をいただいたところである。このように日本とインドネシアは大変、ある意味での価値観を共有する二国がさらに共通の価値観というものを高め合いながら、世界の様々な課題に対して協力していこう努力していこうという大変に一段と高みに上る会談を行うことができたのではないかと思っている。ユドヨノ大統領からお招きをいただいたことに重ねて感謝を申し上げる。トゥリマ・カシ。

‐質疑応答

(問)

 大統領、総理双方に伺う。まずはユドヨノ大統領に、二国間会談で鳩山総理と日本の対インドネシア投資についてコミットメントはあったのか。毎年インドネシアは2000兆ルピアの投資が必要であるということであるが、インドネシアの投資環境についてどう認識しているか。日インドネシアEPAは2008年に合意されているが日本のビジネス界のEPAについての反応は如何。

ユドヨノ大統領

 今朝の首脳会談では鳩山総理と一対一で話をした。これからも日本の対インドネシア投資をふやすことについて話をした。2000兆ルピアの投資が必要というのは7%成長達成のため必要な額であり、インドネシアはこれからも経済発展させていくに際して、日本からの投資に参加いただくということである。2000億ドルのうち半分は国内からまかなえるが残りの半分はほかのビジネスパートナーから投資いただくことが必要である。インドネシアとしては企業投資環境の改善を進める。ライセンシングプロセスの改善とか、投資しようとする企業の活動に資するような改善をする。具体的な投資期待は申し上げないが、様々な分野、たとえばエネルギーでは再生可能エネルギー、運輸インフラ、食料安全保障等でも投資機会がある。インドネシアはこれからも発展成長を進めるということである。

鳩山総理

 EPAの発効によりさらにお互いに経済関係が円滑になった。インドネシアに投資できる環境がさらに増した。すでにインドネシアは親日的であり企業が進出しやすい労働環境など考えれば日本が厳しい経済状況を乗り越えて、世界に、海外に進出していくその時に、真っ先にインドネシアを思い浮かべられるような投資環境となることを期待している。ユドヨノ大統領からも話しがあったとおり、具体的な数字はなかったが、環境整備という点からは日本企業にとり着実に促進されているのではないかと思う。そのためにEPAが果たす役割は大きいと考えている。気候変動について、ユドヨノ大統領からは、大変思い切った、しかし、必ず実現できるという意味で、26%の削減を目標として掲げ、途上国も貢献すべきとの主張をしているところ、日本政府としても評価したい。先ほどお話しのように、COP15を絶対に失敗させてはいけないので、成功に導くため、お互いに立てた提言を実現させていけるためにコペンハーゲンで協力をしながらリーダーシップを発揮していこうではないかということを誓い合ったところである。

(問)

 鳩山総理にお伺いしたい。総理のご発言の民主化支援を通じてどのように東アジア共同体構想実現に繋げていかれるお考えか具体的な説明をお願いしたい。特に、地域で相互に選挙を視察しあうプロジェクトについての具体的な実施時期などについての説明いただきたい。また、ユドヨノ大統領には、鳩山総理の掲げる東アジア共同体についてのどのようにお考えか伺いたい。

鳩山総理

 自分からは、民主化が進められることにより東アジア共同体構想がより確かになると確信すると申し上げた。今回のセッションでも、それぞれの国で特有の民主主義があり、必ずしもアジアにおいても民主主義が完璧とはいえない国、進んでいない国がある。このような国もバリ民主主義フォーラムのような議論を通じてより進んだ民主主義の経験を学ぶことができる。貿易、経済面での協力、防災、医療、環境、金融など様々なレベルで協力を促進していくことにより実現に近づくと考えている。民主化が東アジア共同体構想に向けて前進してゆくということになる。 選挙をお互いに監視し、お互いに見ることにより、民主的な手続きというものを進めていくことができるのではないかと提案した。この点については、来年はミャンマーにおいて民主的な手続きに則り選挙が行われることと伺っている。私は、ミャンマーが来年のこの選挙を成功に導くことはミャンマーの今後に大変大きな影響を与えると考えている。まずは来年のミャンマーの選挙に対してそれぞれの国が選挙に関して相互に関心を持って協力するとの場を作ることは、アジア全体の民主化のプロセスに大きなプラスの影響を与えるものであると確信する。

ユドヨノ大統領

 自分の東アジア共同体についての見解について、見解を申し上げる前に理解しなくてはいけないことは、いくつかの地域協力の枠組みがあるということである。ASEANのほかにASEAN+3や+4というのもある。東アジアサミットというのもあり、さらに広い枠組みとしてAPECがある。こういった地域のアーキテクチャーは他にもあり、協力の方向性についてさらに話し合っていきたいと思う。既存のものとどのように関連つけていくのか。どのような視点であってもポジティブにすべての国に便益をもたらすように、経済、非経済の双方の分野で発展を続けていくことである。