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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] メコン地域における官民協力・連携促進フォーラム第2回日メコン全体会合山根副大臣によるご挨拶

[場所] 東京
[年月日] 2011年11月9日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 皆様、おはようございます。外務副大臣の山根隆治でございます。

 本日は、御多忙な中、「メコン地域における官民協力・連携促進フォーラム第2回日メコン全体会合」に御出席いただき、誠にありがとうございます。メコン5か国の皆様の訪日を、心より歓迎いたします。

 本日は、メコン地域の経済成長を促進するため、地域で活動している日本企業の視点も加えて、意見交換を行います。本日の結果は、来週インドネシアで開催される、第3回の日メコン首脳会議に報告されます。

(東日本大震災・震災復興)

 私からは、まず、東日本大震災の際に、メコン各国をはじめとする世界中の方々からお見舞いや支援が寄せられたことに、深く御礼申し上げます。これらの支援は、メコン各国の方々からの日本に対する友情と連帯の表明であり、多くの国民が勇気づけられました。

 一方、現在、タイでは、洪水により大きな被害が生じています。洪水で亡くなられた方々に衷心よりお悔やみを申し上げると共に、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 東日本大震災とタイの洪水という自然災害により、2つのことがあらためて明らかになりました。1つは、我が国とメコン地域の経済は、サプライチェーンを通じて一つにつながっていることです。地震・津波により、東北地方で生産され、東南アジアでの組立てのために供給されていた部品の生産が止まり、今はまた、タイで組み立てられ日本に供給されてきた製品の生産が、停止を余儀なくされています。2つ目に、本日の分科会でも取り上げる防災及び環境の観点から、いかなる備えをしておくかが、我が国とメコン各国の共通の大きな課題であるということです。

 同時に、本年は、メコン地域で多くの政治的な動きがあった年としても記憶されます。具体的には、ラオス、ベトナム、タイでの新政権の発足、そしてミャンマーの新政府樹立といった動きがあり,新しい風が吹いています。本年は多くの人に様々な意味で記憶される年となるでしょう。

(新成長戦略とアジアの発展)

 我が国とメコン各国の経済が一つであるという認識は、我が国の「新成長戦略」でも明確となっています。

 「新成長戦略」には、7つの戦略分野があります。その1つが「アジア経済戦略」であり、具体的な政策課題として、「アジア拠点化の推進」、「グローバル人材の育成・交流」、「日本ブランドの再構築」、「自由貿易体制」、そして「パッケージ型インフラ海外展開」等があります。こうした政策を進める中で、日本は、これまでの経済発展の過程で学んだ多くの経験を、アジア諸国と共有し、アジアと共に成長・繁栄していくことを目指しています。

 現在のASEANにとっての最重要課題は、2015年を目標としてASEAN共同体を構築することであると認識しております。これは、アジア地域の繁栄と安定を確保するための大きな前進であり、我が国もこれを強く支持します。このASEAN共同体構築において、豊富な労働力や資源を有するメコン地域の活性化が果たす役割は、非常に大きなものです。

 潜在能力を持つメコン地域への注目は大きく、現在、メコン地域に対する外国からの投資が増えています。日本も、すでに相当の投資実績があるタイ、ベトナムに加え、近年、カンボジア、ラオス、ミャンマーへの日本企業の関心も高くなっています。

 一方で、特に後者の3か国における物流やエネルギーのインフラ、法制度といったビジネス環境が、一層向上することを願う企業があるのも事実です。このような視点をふまえ、本日の第2セッションでは、カンボジア、ラオス、ミャンマーに焦点を当て、特に、「投資環境整備の現状と課題」について意見交換をすることと致しました。

 また、午後は、議論をさらに掘り下げるため、「連結性の向上」や「環境・気候変動対策」といった、具体的な課題に関して、分科会に分かれて議論いたします。特に、強いサプライチェーンの実現を考えた時、ハードインフラ整備だけでは不十分であることが、東日本大震災や、タイを中心とした大洪水で、あらためて明らかになりました。企業にとって、自然災害等の緊急時に備えた事業継続計画を持つことが重要であるということが再確認されています。

 東日本大震災の発生後、日本では多くの企業が、事業継続計画の見直しを行いましたが、本日の分科会で、その経験を紹介いたします。日本の経験が、メコン各国での企業活動の良い参考となれば幸いです。

(日メコン協力の取り組み)

 さて、最後に、日メコン協力の現状について、我が国の最新の取り組みを紹介いたします。

 御案内のとおり、2009年の第1回日メコン首脳会議では、10分野63項目にわたる行動計画に合意しております。このうち、「総合的なメコン地域の発展」においては、東西・南部経済回廊のミッシング・リンクを整備するとともに、それに沿った工業団地の整備、港湾・空港整備への協力を、オールジャパンで進めております。昨年度の全体会合で御紹介した、ベトナムのラックフェン港の建設計画につきましては、去る10月31日に、円借款の供与のための交換公文の締結に至りました。

 また、「環境・気候変動」分野においては、緑あふれるメコンの実現をめざし、2010年から10年間を視野に入れた取り組みを展開しています。具体例として、今年6月に、タイとの共催で、バンコクにおいて「グリーン・メコン・フォーラム」を開催しました。そこでは、地方自治体及び日本の民間団体の積極的な参加も得て活発な議論が行われ、環境問題に取り組むに当たっての官民協力の重要性を再確認しました。引き続き、我が国の強みである環境技術を活かしたパッケージでのインフラ整備を、アジア地域に展開・浸透させることで、アジア諸国の経済成長に伴う環境への負荷の軽減を支援します。

「協力・交流の拡大」についても、JENESYS(ジェネシス)プログラムを活用した青少年交流や観光促進等の取り組みを、引き続き推進していきます。

 日メコン協力は、その取り組みを一層促進する為に、様々な場で定期的にフォローアップが行われています。今年7月にインドネシアで開催された、第4回日メコン外相会議では、日メコン協力の重要課題として、環境・気候変動、官民連携を通じた投資等の促進、及び、脆弱性対策に関する協力が確認されました。また、8月にインドネシアで開催された、第3回日メコン経済大臣会合では、ハードインフラの整備、貿易円滑化、中小企業の強化、サービス産業・新産業の強化の各分野で、着実な進展が見られたことが確認されました。

(結語)

 以上のとおり、昨年の全体会合以降、官民連携によるメコン開発は、着実に進んでおります。来週開催される第3回日メコン首脳会議に向けて、本日の全体会合では、この歩みをスピードアップする為の、一歩進んだ、活発な議論や意見交換が行われることを期待して、私からの御挨拶とさせていただきます。

(了)