[文書名] 第3回日本・メコン地域諸国首脳会議共同声明
我々,日本国,カンボジア王国,ラオス人民民主共和国,ミャンマー連邦共和国,タイ王国及びベトナム社会主義共和国の首脳は,2011年11月18日にインドネシア・バリにおいて,第3回日本・メコン地域諸国首脳会議のために一同に会した。
我々は,メコン地域諸国及び日本との間の関係及び協力が実質的に進展していることを深い満足感をもって了知した。メコン地域諸国首脳は,2011年3月に発生した東日本大震災後においても,日本がメコン地域諸国に対する貢献を継続していることに対し深い感謝の意を表明した。日本は,メコン地域諸国の政府及び人民により示された力強い支援及び連帯に対し感謝し,世界に対し開かれた形で復興を実施しながら,メコン地域との絆を強化するとの決意を改めて表明した。この文脈において,日本は,防災分野の経験と技術をもって,地域のさらなる発展に関与していく意思を強調した。
我々は,「日メコン行動計画63」の実施及び達成をレビューし,かつ,「東京宣言」及び「行動計画63」において定められている2012年までの達成目標に向け強化すべき分野の優先付けを行うことが重要であることを強調した。
我々は,共通の関心である地域及び地球規模の課題についても意見交換を行った。我々は,メコン地域及び東アジアの平和,発展及び反映のための協力を継続するとのコミットメントを強化することとした。
I メコン地域の包括的かつバランスのとれた持続可能な開発に向けた日メコン協力
総合的なメコン地域の発展
1.我々は,2015年のASEAN共同体構築というASEANの目標を支援するため,日メコン協力とASEAN連結性向上のための他の努力との間で更なる相乗効果を示すことが重要であることを再確認した。メコン地域諸国首脳は,メコン地域における連結性向上に対する日本の貢献を評価するとともに,重要な経済回廊,特に東西経済回廊及び南北経済回廊におけるインフラのミッシングリンクを解消することが重要であることを再確認した。この観点から,メコン地域諸国首脳は,日本がミャンマーにおいて,日・ASEAN統合基金(JAIF)を用いて東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)が開始した実行可能性調査の実施を決定したことは,ASEAN及びメコン域内連結性の向上にとって大きな貢献となるものであり,これに謝意を表明した。
2.我々は,CLVの枠組みの下での協力の実施の進捗に留意した。この関連で,メコン地域諸国首脳は,「CLV開発の三角地帯」の開発に対する日本の支援を高く評価し,日本が「CLV開発の三角地帯」のための支援を継続することへの希望を表明した。
3.我々は,第2回日本・メコン地域諸国会議において採択された「日メコン経済産業イニシアティブ(MJ-CI)行動計画」の着実な実施を評価した。我々は,2011年7月,第4回日メコン産業政府対話が実施され,ビジネスコミュニティがMJ-CI行動計画の進捗状況をレビューし,ビジネス部門の視点から,将来の優先的な取組を特定したことを高く評価した。我々は,2012年の第4回日メコン産業経済大臣会合において,優先分野のロードマップが提出されることを期待した。我々は,MJ-CI行動計画,及び,CLMV経済大臣会合で採択されたCLMV行動計画との間の重複を避けるため,かつ,地域の均質な発展と繁栄に向けてCLMVと他のASEAN諸国との間の発展の格差を是正するため,MJ-CI行動計画及びCLMV行動計画の間の可能な調整に関する日本といくつかのCLMV諸国との間の有益な協議を歓迎した。
4.我々は,メコン地域諸国のさまざまな分野における協力計画の効果的実施に資する官民協力を更に促進する必要性に留意した。この観点から,メコン地域諸国及び日本は,官民の参加者を得て,2010年12月に官民協力・連携促進フォーラム第1回日メコン全体会合,2011年11月に第2回会合を実施し,官民のより幅広い協力を開いた。我々は,メコン地域諸国と日本との間の物流の構築並びに貿易及び投資がより促進されるよう,更なる努力を行うとの認識を共有した。
人間の尊厳を重んじる社会の構築
5.我々は,最近広範なメコン地域,特にタイを襲った大洪水を念頭に,メコン地域に於ける防災のための協力を一層強化する重要性を再確認した。この文脈において,メコン地域諸国の首脳は,2011年7月の日ASEAN外相会議の際に提案したASEAN防災ネットワークを通じ,メコン地域において防災に係る支援を強化するとの日本の決定を高く評価した。メコン地域諸国の首脳は,ASEAN防災緊急対応協定(AADMER)の実施に向け,ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)を設立するための日本の力強くかつ完全な支援に感謝した。カンボジア,タイ,ミャンマー,ベトナム及びラオス首脳は,洪水被害に対する時宜を得た日本の支援に深く感謝した。また,メコン地域諸国は,タイと日本により表明された,地位の能力を向上させるため,神戸のアジア防災センター(ADRC)及びバンコクのアジア災害予防センター(ADPC)との連携を強化するとのイニシアティブを歓迎した。
6.我々は,環境・気候変動問題に取り組むための協力を一層強化し,また,メコンの水管理に関する協力を促進する必要性を認識した。この観点から,我々は,2011年6月24日にバンコクにおいて,「行動計画63」のフォローアップメカニズムとして設けられ,メコン地域諸国,民間部門,及び地方公共団体からの代表者の参加を得て日本とタイ政府共催で実施された「グリーン・メコン・フォーラム」の開催など,2010年の第二回日本・メコン地域諸国首脳会議で採択された「緑あふれるメコン(グリーン・メコン)に向けた10年イニシアティブに関する行動計画」に従った協力の達成を高く評価した。我々は,このフォーラムが参加者の間のより広い協力を開いたことを評価した。我々は,メコン河の水及び関連する資源の持続可能な発展,利用,保存及び管理を促進するため,関連する地域及び国際機関,特にメコン河委員会(MRC)との協力及び協調を強化することが必要であることを強調した。
7.我々は,日本及びいくつかのメコン地域諸国との間で二国間オフセット・クレジット・メカニズムに関する有益な協議が行われていることを歓迎するとともに,更なる議論がなされることの重要性を共有した。メコン地域諸国は,EASのアーキテクチャーを通じ「東アジア低炭素パートナーシップ」を推進するとの日本のイニシアティブを高く評価した。
8.我々は,人間の安全保障の問題が日メコン協力の最も重要な問題の一つとなるべきであるとの見方を共有した。我々は,また,食料安全保障,食品安全性,母子保健及び感染症が,メコン地域において,脆弱性を克服し,ミレニアム開発目標(MDG)を達成するための優先課題であるとの見方を共有した。この文脈において,日本の総理は,日本が人間の尊厳の問題に対する支援を継続する意思を表明した。メコン地域諸国首脳は,母子保健及び感染症分野においてメコン地域諸国と日本からの専門家間の交流について,全てのメコン地域諸国に開かれた訓練コースの提供及び専門家会合の開催等を通じ,強化するという日本の努力を歓迎した。
協力と交流の拡大
9.我々は,2011年,政治,安全保障,経済,文化,観光,環境,防災,及び青少年交流などの広範な分野における草の根からシニアレベルにわたる人物交流につき有意義な結果が得られたことを歓迎した。メコン地域諸国首脳は,2010年から3年間でメコン地域より,青少年を含め,3万人を日本に招待する計画を日本が着実に実施していることを評価した。メコン地域諸国首脳は,新たな青少年交流プログラムを検討するとの日本の意図を歓迎した。
II 地域・国際情勢
10.我々は,共通の関心である地域及び地球規模の課題に関する緊密な協力を向上し,地域の平和,安定及び繁栄を確保するために既存の日メコン協力を深めるとともに拡大するとの決意を再確認した。
11.我々は,関連の国連安保理決議及び2005年の六者会合共同声明に従い,北朝鮮がすべての核兵器及びウラン濃縮計画を含む既存の核計画を廃棄しなければならないことを強調した。また,我々は,拉致問題などの国際社会が有する人道上の懸念に取り組むことの重要性を強調した。我々は,関連の国連安保理決議を完全に遵守する必要性を改めて強調した。
12.我々は,大量破壊兵器及びその運搬手段の軍縮及び不拡散,並びに大量破壊兵器関連物資及び小型武器の不法移転や不法取引との闘いの分野における協力を強化することの重要性を強調した。
13.我々は,国連改革に対する支持を再確認し,この関連で安全保障理事会をより21世紀の地政学的な現実により応えたものにするため,常任理事国及び非常任理事国枠双方の拡大及び作業工程の改善を含め安保理の早期改革への支持を改めて表明した。日本の総理は,改革される安保理において日本が安保理常任理事国となることに対するメコンの継続した支持を高く評価した。
14.我々は,国際的な公共財としての海洋の重要性を認識した。我々は,2002年の「南シナ海における関係国の行動に関する宣言」(DOC)への支持を再確認し,DOCに関するガイドラインの採択を歓迎するとともに,南シナ海に関する行動規範(COC)の最終的な締結を期待する。我々は,アジア太平洋の平和,安定及び発展のため,1982年に採択された国連海洋法条約を含む,普遍的に認められた国際法の原則へのコミットメントを再確認した。
2012年における日メコン協力
15.我々は,「日メコン行動計画63」に代わり,現状を反映し,2015年のASEAN共同体構築に貢献する,2013年から2015年という次の3年間を対象とする日メコン協力の新たな柱を作ることを決定した。
16.我々は,2012年の適切な時期に,第4回日本・メコン地域諸国首脳会議を日本で開催することを再確認した。