[文書名] 第7回日メコン外相会議議長声明
1.第7回日メコン外相会議は,2014年8月10日にミャンマーのネーピードーにおいて,第47回ASEAN関連閣僚会議に際して開催された。同会議では,日本国の岸田文雄外務大臣が議長を務め,カンボジア王国のハオ・ナムホン副首相兼外務国際協力大臣,ラオス人民共和国のトンルン・シースリット副首相兼外務大臣,ミャンマー連邦共和国のワナ・マウン・ルイン外務大臣,タイ王国のシーハサック・プアンケートケーオ外務次官兼外務大臣代行,ベトナム社会主義共和国のファム・ビン・ミン副首相兼外務大臣が出席した。
2.外相は,2015年のASEAN共同体の構築に向け,ASEAN域内の連結性の強化,経済統合の推進及び格差是正のため,メコン地域開発が重要であることを強調し,日メコン間で協力を強化していく決意を改めて確認した。
また,外相は,メコン地域のインフラ整備をハードとソフト両面で更に推進することの重要性を共有し,この分野における日本の支援を,メコン諸国自身の維持管理能力を高めること等を通して,長期的な使用にも耐え得る,強靱で質の高いインフラ整備を実現するものとして,高く評価した。更に,外相は,ODAを含む公的資金のみならず,民間資金を大いに活用することにより,メコン地域におけるインフラ整備の資金需要に応えていくことで一致した。外相は,メコン地域における官民双方の取組を通じたインフラ投資に際し,経済的利益をできるだけ多くの人々が享受できる包摂性,気候変動・自然災害等に対する社会の強靱性の向上,現地の人々の能力構築を重視した人間中心の投資を推進するとの日本の考え方を支持した。
3.外相は,今次会合開催に関し,本年度のASEAN議長国としてのミャンマーの尽力に謝意を表明するとともに,民主主義への移行過程にある同国において,政治,経済,行政,民間部門の発展に向けた改革が進められていることを歓迎した。
4.外相は,2013年12月の第5回日本・メコン地域諸国首脳会議において採択された,「東京戦略2012」の中間評価及び「東京戦略2012の実現のための行動計画」改訂版に基づく日メコン協力の進展について評価した。外相は,同協力の「連結性の強化」,「共に発展する」,「人間の安全保障及び環境の持続可能性確保」という3つの柱に則して実施された,本年前半の約2240億円に上る日本の貢献を歓迎した。外相は,2015年に向けて日メコン協力をさらに強化するとの決意を再確認した。
5.外相は,ビジネス連結性の向上に向けて,8月の日メコン経済大臣会合において,「行動計画」改訂版に基づき,「メコン開発ロードマップ」の進捗をレビューするとともに2015年まで及びその後を見据えた中長期のメコン地域の経済発展戦略の策定について議論を行い,進捗状況を本年ミャンマーで開催される日メコン首脳会議に報告するよう,経済閣僚に要請した。
6.外相は,2015年早期までに「シングル・ストップ・シングル・ウィンドウ」審査(SWI/SSI)を東西経済回廊(EWEC)のラオバオ・デーンサワン間の国境検問所において完全に実施するためのベトナム政府及びラオス政府の取組を評価した。この文脈において,外相は,「東京戦略2012の実現のための行動計画」改訂版で言及されたとおり,「アジア・カーゴ・ハイウェイ」構想の下で,メコン地域の国境を越えた物流の促進と迅速化に取り組む日本の貢献を評価し,この分野,特に同地域の経済回廊開発における日本の更なる支援を期待した。
7.外相は,日・ASEAN友好協力40周年に際しての安倍総理のASEAN全加盟国歴訪,日ASEAN特別首脳会議の開催とビジョン・ステートメントの発出を通じて高まった関係緊密化の機運を受け,岸田外務大臣が,本年3月にミャンマー,6月にカンボジア,7月にベトナムをそれぞれ訪問するなど,日本とメコン諸国との関係緊密化に関する昨年の成果を閣僚級で精力的にフォローアップしていることを高く評価した。
8.外相は,全てのメコン諸国の関係閣僚が出席したOECD閣僚理事会において,OECD東南アジア地域プログラムが立ち上げられたことを歓迎するとともに,パートナーシップと相互学習を基盤として,OECDと東南アジアとの関係を強化していくことの重要性について一致した。また,外相は,本年後半に,メコン諸国を含む東南アジアで開催される一連の地域政策ネットワーク会合を通して,パートナーシップの更なる発展への期待を表明した。
9.外相は,2014年2月に東京において開催された第4回日メコン官民協力・連携促進フォーラムの成果を歓迎し,同フォーラムで採択された議長総括に留意した。外相は,日本が引き続き官民協力に関する同フォーラムを開催していくことを評価した。この関連において,外相は,農業ビジネス,収穫後処理技術,観光の近代化といった分野におけるビジネス対話及び日・メコン諸国の官民協力を促進するとの提案に留意した。
10.外相は,日本がJENESYS2.0等の様々な取組を通じてメコン各国との間で人的交流促進に取り組んでいることを評価した。外相は,全てのメコン諸国に対する2013年の査証緩和措置の決定に続き,日本が201
4年1月にミャンマーに対し査証緩和を実施したこと及び6月にベトナムに対する更なる査証緩和を決定したことを歓迎した。外相は,6月に日本がカンボジアとラオスとの間でそれぞれ航空協定が実質合意に至ったことに示された,日本と全てのメコン諸国との航空協定締結に向けた進展を歓迎した。
11.外相は,8月7日の日ミャンマー投資協定の発効により,日本がすべてのメコン諸国との間で投資に関する法的枠組みを締結したことを歓迎し,OECD投資政策レビューを通した支援や4月のビエンチャンにおけるJETRO事務所の新設等,日本がメコン各国との投資・経済交流促進に積極的に取り組んでいることを評価した。
12.外相は,低炭素成長の推進,気候変動に強い社会の構築,メコン地域の自然環境の保全により人間の安全保障及び持続可能な開発を実現することの重要性を強調した。これに関連し,外相はまた,「東京戦略2012」及び「グリーン・メコンに向けた10年」イニシアティブの行動計画に基づく取組を実施し着実に進展させることへのコミットメントを再確認した。また,外相は,2011年及び2013年の開催地であるタイの支援を得て,日本が継続的にグリーン・メコン・フォーラムを開催していることに謝意を表明した。
13.外相は,4月の日米首脳会談において,安倍総理大臣とオバマ米大統領が,二国間関係における優先事項として,東南アジア諸国との日米による共同の関与と協力を確認し,日米両国が,日本の日メコン協力と,米国主導の
「メコン河下流域イニシアティブ」「メコン河下流域フレンズ」との間の緊密な連携を通じたメコン地域における取組を含め連結性の強化に取り組んでいることを,高く評価し歓迎した。また,外相は,女性のエンパワーメントや地雷除去・不発弾処理の分野でメコン諸国を支援するにあたり日米が互いの協力を更に進めること及び「日メコン協力」とその他の地域協力メカニズムとの更なる調整への期待を表明した。
14.外相は,2015年にマレーシアで行われるASEAN関連外相会議において第8回日メコン外相会議を開催することを確認した。