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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第12回日本・メコン地域諸国首脳会議共同声明

[場所] 第12回日本・メコン地域諸国首脳会議共同声明
[年月日] 2020年11月13日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1.2020年11月13日、日本国、カンボジア王国、ラオス人民民主共和国、ミャンマー連邦共和国、タイ王国及びベトナム社会主義共和国の首脳は、ビデオ会議形式で開催された第12回日本メコン地域諸国首脳会議のために一堂に会した。

2.首脳は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック及び2020年10月10日以降カンボジアとラオス、ベトナムにおいて影響を及ぼしている熱帯低気圧リンファ及びナンカ、台風モラベによる生命の損失及び苦しみに深い哀悼とお見舞いの意を表明した。

3.首脳は、共通の脅威に対する国際社会の連帯と連携を賞賛し、COVID-19のパンデミックによってもたらされた前例のない厳しい課題を克服する上での連帯と集団での行動の必要性を強調した。首脳は、COVID-19のワクチンが全人類のための国際公共財として、利用可能で、手頃な価格で安全なものとなるように、研究・開発・製造・供給における連携の強化を呼びかけた。この点に関し、首脳は、2020年4月14日に開催されたCOVID-19に関するASEAN+3特別首脳テレビ会議において、「COVID-19に関するASEAN+3特別首脳会議共同声明」が採択されたことに満足の意を表明した。

4.首脳は、世界保健機関(WHO)の調整によるCOVID-19に対する国際的な保健対応から学んだ経験と教訓を検証するための、公平で独立した包括的な評価の段階的な検討プロセスを開始することをWHO事務局長に対して求める第73回世界保健総会にて採択された決議をフォローアップすることの重要性を確認した。

5.首脳は、2020年7月9日に開催された第13回日メコン外務大臣会議及び2020年8月27日に開催された第12回日メコン経済大臣会合における成果を評価し、「東京戦略2018」の下で、メコン地域の持続可能な開発のための協力を更に推進していくとのコミットメントを再確認した。

6.メコン諸国の首脳は、メコン地域への日本の強いコミットメントを高く評価した。メコン諸国は、COVID-19による悪影響に対処するための支援だけでなく、往来を止めないという日本の先鞭性と決意を称賛した。首脳は、10月の菅首相のベトナム訪問及び8月の茂木外務大臣のメコン地域訪問を含む要人の訪問が、COVID-19の中での、日本のこの地域におけるコミットメントに対する一層強い信頼をもたらしたことを強調した。

東京戦略2018の三本柱の元での連携

生きた連結性

7.首脳は、「東京戦略2018」に沿って、メコン地域における「ハード連結性」、「ソフト連結性」及び「産業連結性」を更に強化することの重要性を再確認した。

8.首脳は、ベトナムと日本の共同議長国の下で、2020年12月に開催される第2回日ASEANスマートシティ・ネットワークハイレベル会合を歓迎した。メコン諸国と日本は、ASEANスマートシティ・ネットワークの枠組みに基づき、スマートシティを実現するため、緊密な連携を継続するという意思を表明した。

9.首脳は、日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定の実施を含む貿易、投資関係の更なる深化・拡大を図ることを決意し、サービスの貿易、人の移動及び投資に関する規定を追加する、AJCEP協定第一改正議定書が2020年8月1日に発効したことを歓迎した。首脳は、グローバル化の恩恵を認識し、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定がインドに開かれていることを改めて再度表明しつつ、自由で、開かれた、包括的で、質が高い、ルールに基づく、多国間貿易システムを支持するという強いコミットメントを示す、現代的、包括的、機能的、互恵的なRCEP協定に署名することへの期待を示した。

(ハード連結性)

10.首脳は、2019年に開催されたG20大阪サミットにおいて承認された「質の高いインフラ投資に関するG20原則」に示されている開放性、透明性、ライフサイクルコストを考慮した経済性及び債務持続可能性といった原則の重要性を認識しつつ、国際スタンダードに沿った質の高いインフラの推進を通じた、連結性の向上にかかる協力を引き続き強化することへコミットメントを再確認した。さらに首脳は東西・南部経済回廊に焦点を当てた、メコン地域の連結性の強化に寄与する、日本が新たに立ち上げた日ASEAN連結性イニシアティブを歓迎した。首脳は、また、第三国での協力や力強く効果的な連結性の発展に関する官民連携(PPP)を奨励した。

11.首脳は、メコン地域の連結性を強化する、シハヌークビル港新コンテナターミナル整備、カンボジアにおける国道5号線の改修、ベトナムにおけるホーチミン市都市鉄道(ベンタイン-スオイティエン間(5号線))の建設、タイのバンコクにおける大量輸送網(レッドライン)の整備、ミャンマーにおける東西経済回廊(バゴー・チャイトー間新道路)の建設、ベトナムにおけるロンタイン国際空港及びミャンマーにおけるハンタワディ新国際空港整備計画準備調査を含む、鍵となる質の高いインフラプロジェクトの着実な進展を歓迎した。

12.首脳は、二国間及び地域間電力取引及び統合を促進するためのイニシアティブとしての日米メコン電力パートナーシップ(JUMPP)及び、2020年9月8日に日本の外相及び米国国務長官によって採択された、「日米メコン電力パートナーシップ(JUMPP)に関する日米閣僚共同声明」を歓迎した。メコン諸国の首脳は、タイでの国境を越えた電力融通及び電力取引を促進するためのプロジェクト、ミャンマーでの送電容量拡大と系統信頼性向上のためのプロジェクト、カンボジアのプノンペン市での送電線拡張と変電所建設のためのプロジェクト、ラオスでの一連の技術協力を通じた持続可能な電力セクターの発展を支援するプロジェクトなどを通じた日本のイニシアティブの進展を賞賛した。

ソフト連結性

13.首脳は、ICTはメコン地域の連結性を高めるために最も重要な要素の一つとなったという認識を共有した。この点に関し、首脳は、ICT分野、サイバーセキュリティー及び放送分野における、日本が資金提供をするプロジェクトや、アジア・太平洋電気通信共同体(APT)における様々な活動及びモバイルネットワーク事業を通じた通信インフラ整備における日本の貢献を含む「ソフト連結性」の強化に関連する様々なプロジェクトの進展を歓迎した。

14.首脳は、郵便ネットワーク及びサービスの近代化のような、デジタル政府、スマートシティ、デジタルインフラ及び郵便サービスの分野における協力の進展を歓迎した。メコン諸国の首脳は、能力開発のための技術協力プログラム、特に、貿易円滑化分野における税関職員のための能力開発プログラムに関する日本の貢献を認識した。また、メコン諸国の首脳は、新型コロナウイルスパンデミックの下での電子取引の役割の増大する役割に改めて言及し、メコン諸国がFTAやRTAの利益を効果的に利用することができるように、電子取引のコミットメントを履行や遂行のための日本の支援を呼びかけた。

15.首脳は、構造化され、十分に計画されたマスタープランを通じ、また、税関、出入国及び港湾関連データのための電子システムを積極的に導入することを通じた、東西・南部経済回廊の連結性強化の重要性を強調した。このような観点から、メコン諸国の首脳は、電子化を通じたミャンマーの税関システムの近代化のための日本の継続的な支援、また、カンボジア及びミャンマーの港湾部門のマスタープランを作成する日本の意志、技術協力を通じて、ラオスのビエンチャン国際空港の能力強化を図るとの日本の取組を歓迎した。

16.首脳は、デジタル経済の発展のために、適用される国内法、国際法枠組み及び規則を尊重しながら、信頼性のある自由なデータ流通を促進し、消費者及びビジネスの信頼を強化することの重要性を含め、データの潜在能力を最大限に活用し、デジタル経済の機会を活用することの重要性を認識した。また、首脳は、ポストコロナの時代にこの分野における新たなルールを創出するための協力促進に期待を示した。

産業連結性

17.首脳は、2020年8月に開催された日メコン経済大臣会合において、国境物流の改善、デジタル変革の加速化、及びメコン地域の社会問題への対応を通じて、産業連結性を更に向上する、メコン産業開発ビジョン2.0(MIDV2.0)ワークプログラムが承認されたことを歓迎した。首脳は、コネクティビティ、デジタルイノベーション、SDGsの3つの柱で構成されるMIDV2.0の実施は、サプライチェーンの強靱化やデジタル経済の促進など、COVID-19の発生によって明らかとなった課題に対処する先見の明のある見通しであることを強調した。

18.首脳は、日メコン産業政府対話、メコン地域における官民連携促進のためのフォーラム及びACMECSビジネス委員会を含む、様々なプラットフォームを通して、地域のサプライチェーンへの投資や産業連携を促進する重要性を強調した。首脳は、予期せぬ危機が発生した場合に重要な財や原料の供給が途絶するリスクを最小化するために、特にアジア地域において、生産拠点の多元化を通じた持続可能で信頼性の高い供給システムを確立する必要性を強調した。この点に関し、首脳は、2020年7月29日に開催された、新型コロナウイルスに関する日ASEAN経済大臣特別会合(テレビ形式)で発出した「日ASEAN経済強靱化アクションプラン」の下でのメコン諸国におけるプロジェクトの進展を歓迎し、日本の「海外サプライチェーン多元化等支援事業」において、特に医療用品、自動車部品等のプロジェクトがメコン諸国向けに採択されたことを歓迎した。

19.首脳は、メコン地域の社会経済課題、特にCOVID-19のパンデミックへの対応に関し、社会に解決策を提供する様々なビジネスにおける、デジタルトランスフォーメーションの重要性を確認した。首脳は、「日ASEAN経済強靱化アクションプラン」に位置づけられた、日ASEAN企業連携のための、アジアDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトを含むデジタルイノベーションを加速化するイニシアティブを歓迎した。首脳は、産業連結の更なる強化及びデジタル経済から更に潜在的な利益を得るために、インダストリー4.0の課題を取り上げることの重要性を強調した。首脳は、メコン小地域における製造・サービス産業への日本の投資が果たす重要な役割に再度言及した。

20.メコン諸国の首脳は、開発途上国の経済の維持と活性化を目的とした新型コロナウイルス危機対応緊急支援円借款の設立を含む日本のイニシアティブを歓迎した。この取組において、日本はミャンマーとカンボジアの間でそれぞれ約2億7000万ドル、約2億3000万ドルの融資を行うための交換文書に署名した。

人を中心とした社会

(人材)

21.首脳は、人を中心としたアプローチがメコン地域の経済発展をよりバランスのとれた持続可能なものにすることを強調した。首脳は、メコン諸国の専門家間の技術力の格差を縮めるために、地域全体の技術およびデジタル協力を促進することの重要性を強調した。この点に関して、首脳は、技術協力に関する日本国政府とASEANとの間の協定に基づき、2020年1月に東京で開催されたサイバーセキュリティに関する研修の成功裡の終了を歓迎した。メコン諸国の首脳は、ASEAN加盟国及び他のパートナー向け産業制御システム(ICS)に関わる日米サイバーセキュリティ演習の実施を通じた、サプライチェーンリスクマネジメントの推進及び日本の重要インフラのサイバーセキュリティ強化への貢献を歓迎した。日本は、最近署名した日タイパートナーシッププログラム(フェーズ3)のもとで実施される将来の技術協力プロジェクトを含むそのような協力を強化する意向を表明した。

22.メコン諸国の首脳は、グローバル金融連携センター(GLOPAC)のような個別の研修やフェローシッププログラムを通じて、メコン諸国の金融規制当局や中央銀行に技術支援を提供する日本の継続的な取り組みを歓迎した。メコン諸国の首脳は、文化遺産保護の分野における人材育成を推進する日本の長期的な取り組みを歓迎した。首脳は、人道支援と災害救援に関するキャパシティ・ビルディング・プロジェクト(HA/DR)、軍事医療、捜索救助、国連PKOなどの防衛当局間の協力の重要性を認識した。

(ヘルスケア)

23.首脳は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に向けた進展を加速化するコミットメントを再確認した。これに関して、アジア健康構想(AHWIN)の下で健康的な生活を実現する医療、高齢者ケア、予防、社会開発など、医療関連産業を推進するため、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)と連携を奨励した。

24.首脳は、メコン諸国それぞれのニーズに応えた医療物資及び機材の提供と技術協力の実施を目的とする、総額1億2500万米ドル相当の無償協力を歓迎した。

25.首脳は、新型コロナに関するASEAN対応基金への100万米ドルの拠出及び将来の感染症の予防・検出・制御及び対応を強化するために、日本が全面的に支持するASEAN感染症センター(ACPHEED)の設立を正式に発表したことを歓迎し、この点に関する緊密な協調と協力を継続するための強い支持を再確認した。

26.首脳は、「国境を越えた医療ネットワークシステムを通じた経験の共有と知識移転に関するプロジェクト」に関するタイ国際協力開発機構(TICA)の下でのタイのイニシアティブなど、公衆衛生能力構築とパンデミックへの備えにおける諸国間協力のための取組みを歓迎した。

(教育)

27.首脳は、持続可能な開発教育の推進、高等教育協力、生涯にわたる学習、専門知識の共有など、アジア・カケハシ・プロジェクト(アジアの高校生の日本留学)を含むさまざまな取り組みを通じて教育分野での協力を促進する意志を再確認した。首脳は、アジアの若手世代が日本の最先端の科学技術を体験する機会を提供する日本・アジア青少年サイエンス交流事業を歓迎した。このプログラムを通じ、2014年以降メコン諸国の若い学生・研究者7982人が来日した。メコン諸国の首脳は、(1)就業前・就業研修(PRESET及びINSET)の教員研修、(2)技術研修、研究所の建設、一般研究関連施設の設置、都市部及び農村部における一般・技術高校の科学用機材の導入において、日本の更なる技術・資金支援に高い期待を表明した。首脳は、メコン諸国の学部生・大学院生・政府関係者が日本に留学するための奨学金を継続する日本の強いコミットメントを高く評価した。

(法律及び司法協力)

28.メコン諸国の首脳は、法の支配及びグッドガバナンスの強化を目的とした、日本のメコン諸国に対する法制度・司法の改革及び刑事司法実務家その他の法律専門家の能力構築に向けた法律及び司法分野における技術支援を高く評価した。また首脳は、前述の分野における技術支援を含む、日本の国際協力を継続する意向を再確認した。首脳は、日本が2021年3月に第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)を開催することを歓迎し、その成果のメコン地域でのフォローアップに向けた日本のリーダーシップに期待した。

29.メコン諸国の首脳は、メコン諸国と日本とのインド太平洋地域の平和と繁栄の基盤となる、これらの国々における各国の法の支配を確立するための法制度整備の分野での継続的な協力を高く評価した。この点に関して、首脳は、日本からの継続的な法的助言により、2020年5月にラオスで初めての民法典が施行されたことの重要性を強調した。

(グリーンメコンの実現)

30.首脳は、「日ASEAN環境協力イニシアティブ」の下の海洋プラスチックごみの削減、持続可能な都市の推進、脱炭素化の推進など、メコン地域におけるSDGsの実現に向けた環境問題に関する日本の協力を評価した。首脳は、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向けた海洋プラスチックごみに関する取組を推進することの重要性を強調し、「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」と「海洋ごみに関するASEAN行動枠組み」との相乗効果を歓迎した。また首脳は東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)が運営する海洋プラスチックごみナレッジセンターの設立、モニタリング・対策実施の能力開発、「ASEAN各国の行動計画策定及び陸域・海域の統合政策アプローチを通じた海洋ごみ削減のための能力強化」の実施を歓迎した。首脳は、地域におけるSDGsの推進に貢献するSDGsフロントランナー都市の取組を認め、2021年にラオスで開催される第12回持続可能な都市ハイレベルセミナーへの期待を表明した。2020年11月10日から11日に開催された電話会議を通じて開催された、アジア地域における環境的に持続可能な交通(EST)の実現を目指すアジアEST地域フォーラム、また、フルオロカーボンライフサイクルマネジメントに関するイニシアティブを含むフルオロカーボンのライフサイクル管理を進めるための協力を歓迎した。

(防災及び気候変動)

31.首脳は、自然災害と人為的災害の両方が持続可能な開発に及ぼす重大な結果について共通の認識を共有した。これに関して、首脳は、「仙台防災フレームワーク2015-2030」を踏まえ、メコン地域の災害予防と減災のために緊密に協力することを約束し、東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF)の最初の成果であるラオスとミャンマーの災害リスク保険プールの運用化に向けた進展を歓迎した。首脳は、経済と環境の好循環を作り出すことによって、対応能力と強靱性を強化し、地域にグリーンな社会をもたらす、気候変動に取り組むための努力を再確認し、自国が決定する貢献(NDC)を含め、パリ協定を完全に実施するという強いコミットメントを改めて表明した。この文脈において、首脳は、パリ協定第6条に基づき、二国間クレジット制度(JCM)の推進に関する協力を継続する意向を表明した。

32.首脳は、メコン地域が災害の二重負担、すなわち気候変動や極端な気象事象による負荷と脅威やカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムにおける継続した干ばつの影響に直面していることを念頭に置きつつ、干ばつへの適応の強化に関するASEAN宣言に留意した。この点に関して、ASEAN災害管理委員会(ACDM+日本)及びASEAN災害管理閣僚会議(AMMDM+日本)メカニズムの設立に関するASEANと災害管理分野の協力、ならびにグローバルな取組とアジェンダへの貢献を歓迎した。

(水資源管理)

33.首脳は、水関連問題に取り組むために、持続可能な水資源管理のための協力や、日メコン協力とメコン河委員会(MRC)との協力を強化するためのコミットメントを強調した。この点に関して、メコン諸国首脳はメコン河流域の洪水・干ばつ管理プロジェクトに対して375万米ドルの無償の協力を提供する、日本のMRCへの寛大な支援に対して感謝の意を表明した。

2030年に向けたSDGsのための日メコンイニシアティブ

34.首脳は,メコン諸国の特異性を考慮しつつ,とりわけ人間の安全保障の理念に基づいた「誰一人取り残さない」社会を実現するための持続可能な開発目標(SDGs)の推進が、メコン地域をより持続可能で、多様で、包括的なものとする鍵であると再確認した。首脳は、持続可能な開発のための国連2030アジェンダを進める努力を継続するコミットメントを確認した。首脳は、第11回日メコン首脳会議で採択された「2030年に向けた日メコンイニシアティブ」の実現が、メコン諸国と日本の両方において、将来の世代にとって非常に重要であることを再確認した。首脳は、グリーンメコンフォーラムから格上げされた第1回メコン・ジャパンSDGsフォーラムが近い将来開催され、世代を超えたセクター間の参加者が議論に参加し、メコン地域におけるSDGsの推進に向けた様々な課題について意見交換を行うことに高い期待を示した。首脳は、加盟国間でSDGsを達成するための知識と最善策の交換を促進するために、第1回日メコンSDGsフォーラムを共同開催する日本とタイの準備を賞賛した。

35.首脳は、民間セクターによる開発プロジェクトを支援し、メコン地域の持続可能な開発を実現するためのJICAの海外投融資を活用した「メコン・SDGs出融資パートナーシップ」の発表を歓迎し、また、タイのロジャナ・ラヨン2工業団地の複合サイクルガスタービン発電所プロジェクト、ベトナムのタイニン省における太陽光発電所プロジェクト、中小零細事業者開発プロジェクトのための、カンボジアのハッタ・バンク(HB)との融資契約の締結などの民間主導、プロジェクト策定をさらに加速させていくこととした。

36.首脳は、メコン地域の社会経済発展を支援することを目的とし、草の根・メコンSDGsイニシアティブとして、2020年度に10億円規模の草の根・人間の安全保障無償資金協力を実施する日本の取組を歓迎した。首脳はまた、同イニシアティブの発表以来、全体で500万米ドル相当の約37のプロジェクトの採択を歓迎した。

日メコン協力と自由で開かれたインド太平洋

37.首脳は、自由で開かれた、透明性のある包摂的でルールに基づく地域的枠組みの構築を維持するための継続的な努力の重要性を再確認した。この文脈において、首脳はインド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)の重要性を強調し、AOIPと、日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想が、平和と協力を促進する上で関連する本質的な原則を共有していることに留意した。そのため首脳は、相互信頼、相互尊重、相互利益の促進、地域の平和、安定、繁栄に貢献するため、AOIPに沿ったメコン諸国の努力を支援することに対する日本の再コミットメントを歓迎した。

38.首脳は、インド洋と太平洋を結ぶメコン地域は、インド太平洋の平和、安定及び繁栄の実現によって大きな恩恵を受けるという地理的優位性を有することを強調した。この点、メコン諸国の首脳は、地域と世界の平和、安定、繁栄に貢献するために、自由で開かれたインド太平洋を推進する日本のビジョンを評価しつつ留意した。首脳は、地域における平和、安定、繁栄を促進するための日メコン協力プロジェクトを着実に実施する決意を表明した。

39.首脳は、日メコン協力と共通の原則及び利益を有する他の小地域協力の枠組みとの間の共通原則とASEAN社会の発展過程に利益を伴うより大きな相乗効果を促進する必要性を認識した。首脳は小地域協力と全地域的開発戦略との間の補完性を調整し促進するASEANの努力に対する日本の積極的な支援を歓迎した。

エーヤワディー・チャオプラヤー・メコン経済協力戦略(ACMECS)

40.首脳は、日メコンの協力を通じてACMECSを支援する意志を改めて表明した。第9回ACEMCSサミットの議長として、メコン諸国、特にカンボジアは、ACMECSイニシアティブを支援する日本の積極的な役割に高い期待を表明した。首脳は、ACMECSと日本の共同開発計画の策定、国境を越えた協力の実施を含む、ACMECSマスタープラン(2019-2023)の実現を加速するために、統一的な努力をする決意を再確認した。

2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会

41.首脳は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会はスポーツ分野での協力を深める多くの機会を提供することを強調した。メコン諸国の首脳は、2020年東京大会を開催する責任を果たすという日本の決意を歓迎した。この点に関して、首脳は2014年以降メコン諸国から600万人以上が参加した日本のスポーツを通じた国際的な貢献策であるスポーツ・フォー・トゥモロー(SFT)の進展を歓迎した。

42.首脳は、「ホストタウン・イニシアティブ」に基づく、日本の地域社会とメコン諸国の代表チーム及び国民との友好関係を賞賛し、東京2020大会がメコン諸国と日本の人と人とのつながりを築く絶好の機会になることを強調した。

アジア欧州会合(ASEM)

43.首脳は、2021年半ばにカンボジアプノンペンで開催される第13回アジア欧州会合の開催地であるカンボジアへの支援を表明した。同会合には、メコン諸国及び日本が他のASEMパートナーと共に、多国間主義を追求し、地域・世界の台頭する課題に対処しつつ、アジアと欧州のパートナーシップを促進するに当たり、連帯を更に強化するために参加する。

次回会議

44.メコン諸国は、2021年に第13回日メコン首脳会議を日本で開催することに同意し、首脳は日本とメコンの関係を次のレベルに引き上げる手段として、首脳会談に高い期待を表明した。