データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ハジ・ハサナル・ボルキア・ムイザディン・ワダッラー・ブルネイ国王陛下訪日に際する日・ブルネイ共同プレスステートメント

[場所] 東京
[年月日] 2023年12月16日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

1. ハジ・ハサナル・ボルキア・ムイザディン・ワダッラー・ブルネイ国王陛下は、日本・ASEAN友好協力50周年特別首脳会議の機会に日本を公式に訪問した。この訪問時に、2023年12月15日、国王陛下は皇居において天皇陛下と御会見を行った。

2. 2023年12月16日、岸田文雄日本国総理大臣閣下は、首相官邸において、国王陛下のために、ワーキングランチを主催した。この会談において、両首脳は、1984年の外交関係開設以来の長きにわたる協力を賞賛した。両首脳は、外交関係開設40周年を記念すべく2024年を日・ブルネイ交流年とすることで一致し、両国にとって重要な節目を祝うためのハイレベルの往来や活動を期待した。

3. この観点から、両首脳は、ハジ・アル・ムタデ・ビラ皇太子殿下兼ブルネイ・ダルサラーム首相府上級大臣が40年にわたる友好関係を祝うために日本を訪問することへの期待を共有した。

4. 両首脳は、エネルギー、人的交流、海洋安全保障、法の支配及び気候変動並びに双方の関心事項である地域・国際的な課題における二国間協力を深化することへのコミットメントを再確認した。二国間関係の潜在性を十分に実現するべく、両首脳は、事務方に対して、二国間関係を戦略的パートナーシップに格上げする可能性を検討するよう指示した。両首脳は、近い将来に、第2回政策協議を実施することを期待した。

人的交流

5. 両首脳は、文部科学省国費留学制度、東南アジア青年の船(SSEAYP)、JENESYS、日本語パートナーズプログラムを含む国際交流基金による文化のWAプロジェクト及びその後継となる新たな事業をはじめとする、両国の、特に若い世代の相互理解を深め、二国間関係の強固な土台を築くような両国間の知的、文化的及び人的交流プログラムの重要性を再確認した。また、両首脳は、これらの有意義な協力を更に推進することへのコミットメントも表明した。

6. 両首脳は、両首都間の航空直行便の再開を歓迎するとともに、両国間の人的交流を更に促進するために、一般旅券所持者に対して上陸許可時に30日間滞在を認める査証免除措置が最終的に実現することを期待した。

防衛・海洋協力及び法の支配

7. 両首脳は、2023年2月3日の防衛協力・交流に関する協力覚書の署名を歓迎するとともに、この覚書に基づき、2023年6月に第1回防衛政策対話が速やかに開催されたことを歓迎した。 両首脳は、ブルネイ・ダルサラームと日本の間の防衛・安全保障関係が着実に進展し、相互訪問や部隊間交流等により今後も強化されることを強調した。また両首脳は、地域の平和と安定の維持に向けた、特にASEAN主導の防衛メカニズムを通じた地域レベルの緊密な防衛協力を賞賛した。

8. 国王陛下は、特に、国際法への理解及び国連海洋法条約(UNCLOS)の履行を深化させる上での、ブルネイ政府職員の能力構築イニシアティブをはじめとする海洋法執行に係る日本の継続的な協力に謝意を表明した。また、両首脳は、日本の海上保安庁とカウンターパートとなるブルネイ・ダルサラームの機関との間の交流を推進する意思も表明した。

エネルギ-・気候変動

9. 両首脳は、50年以上にわたる、エネルギー分野における長年の協力を歓迎し、この分野での二国間協力を更に向上していくコミットメントを再確認した。岸田総理閣下は、ブルネイ・ダルサラーム国の日本に対するLNGの安定供給に謝意を表明し、国王陛下は、双方にとって有益な契約に基づきこの協力を継続することへのコミットメントを改めて表明した。

10. 両首脳は、2023年9月、ブルネイ・ダルサラーム国首相府エネルギー省及び日本国経済産業省による、「ASEANのエネルギーシステムの脱炭素化に向けたロードマップの研究:ブルネイ・ダルサラーム国のための最適技術選択モデル及び分析」の完了を歓迎した。

11. 両首脳は、2023年12月15日、日本国経済産業省とブルネイ・ダルサラーム国首相府との間で署名されたエネルギー・トランジションの実現に関する協力覚書に基づき、エネルギー協力を更に向上させる意図を表明した。

12. 両首脳は、第1回アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合の実施を歓迎し、経済成長とエネルギー安全保障を確保しつつ、温室効果ガスのネット・ゼロに向けてAZECパートナー国間のより緊密な連携を促進することを確認した。

13. 両首脳は、森林保全に関する二国間協力の進展を歓迎した。両首脳は、両国間の知識交換や専門知識を促進するために必要な取決めを行う意向を確認した。

他分野での協力

14. 両首脳は、相互協力を包摂する覚書の作成に関する日本の大阪大学とブルネイ保健省との間の現在進行中の議論を歓迎した。

15. また、両首脳は、知的財産権分野において日本国特許庁により提供されている能力構築協力に関する継続も歓迎した。

地域及びクローバルな課題

16. 両首脳は、本年がパートナーシップの50周年を迎える中、ASEAN・日本の対話関係における重大な進展を認識し、2023年12月16日-18日の日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議が成功裏に開催されることを期待した。

17. 両首脳は、9月の日ASEAN包括的戦略的パートナーシップの立ち上げに喜びを表明し、同パートナーシップが、実質的で有意義かつ互恵的なものとなることを確保すべく引き続き緊密に協働していくことを期待した。

18. 両首脳は、「日ASEAN友好協力に関するビジョン・ステートメント:共に描き、共に生き、共に歩む」の実施計画改訂版の実施の実質的な進展により、全ての活動や事業が既に履行されていることに満足の意を表明した。また、両首脳は、特別首脳会議における、日ASEAN関係の将来の方向性を示す文書となる、新たな共同ビジョン・ステートメント及びその実施計画の採択を期待した。

19. 両首脳は、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定及び日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定の透明性のある履行を通じたものを含む、貿易及び投資を拡大する重要性を強調した。その文脈で、両首脳は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に関する両国間の協力を歓迎し、CPTPPの戦略的価値を堅持しハイスタンダードを維持する重要性を再確認した。

20. 国王陛下は、日ASEANスポーツアクション、スポーツ・フォー・トゥモロー及び文化のWAプロジェクトをはじめとする様々なプログラムを通じた、文化、教育、スポーツ及び人的交流の促進における日本の価値ある支援に謝意を表明した。また、国王陛下は、ASEANジュニア・フェローシップ・プログラム(AFJP)に対する日本の支援にも謝意を表明した。両首脳は、将来に向けて、相互信頼、互いへの敬意、相互利益及び平等なパートナーシップに基づく二国間関係を引き続き強化することへのコミットメントを再確認した。

21. 岸田総理閣下は、関係する政府、地域・国際機関とASEAN加盟国との間での気候変動に係るイニシアティブに関する協力や調整を促進するために極めて重要な役割を担い、ASEAN加盟国に対して気候変動に対応するための政策的な助言を提供するであろうブルネイ・ダルサラームにおけるASEAN気候変動センターに対する日本の支持への期待を表明した。

22. 両首脳は、国際的・地域的平和、安定及び繁栄に貢献する上での国際法の堅持の重要性を強調した。両首脳は、多国間主義及び法の支配に基づく国際秩序の強化への力強いコミットメントを強調した。また両首脳は、「インド太平洋に関するASEAN・アウトルック(AOIP)」及び「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の共通する目標を実現すべく協働するとのコミットメントを再確認した。

23. 両首脳は、地域における平和、安全及び安定を維持すること並びに国際法、特に国連海洋法条約((UNCLOS)に整合する形での、南シナ海における航行及び上空飛行の自由に対するコミットメントの重要性を再確認した。両首脳は、緊張を複雑化又は高め、平和と安定に影響し得るいかなる行動も避けるよう関係国に対して強く求め、国際法、特にUNCLOSに従って紛争の平和的解決を追求する必要性を再確認した。

24. 両首脳は、中東、特にパレスチナにおける状況について意見交換し、現場において多くの無辜の人々の命が失われていることに深刻な懸念を表明した。両首脳は、2023年12月12日の国連総会決議「民間人の保護及び法的・人道的義務の堅持」の採択を歓迎した。また、両首脳は、暴力の地域への潜在的な波及を防止する重要性を強調し、パレスチナ国家の独立達成に向けた「二国家解決」へのコミットメントを再確認した。

25. 北朝鮮による、先月の弾道ミサイル技術を用いた発射を含む進行中の核兵器及び弾道ミサイルの開発は、国連安保理決議に違反するものであり、地域における平和と安定を脅かす懸念すべき事態である。両首脳は、関連する国連安保理決議を遵守することや拉致問題の即時解決を含む人権及び国際社会の人道上の懸念の問題に対処することの重要性を強調した。

26. また、両首脳は、国際的な核軍縮・不拡散や地域の安定をはじめとする、国際の平和及び安全にとって重大な課題も議論し、両者がこれらの問題に対処するべく引き続き協働することを再確認した。

(了)