データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日ラオス間の包括的・戦略的パートナーシップの下での協力分野(日ラオス共同声明付属文書)

[場所] 東京
[年月日] 2025年1月21日
[出典] 外務省
[備考] 和文仮訳
[全文] 

政治・安全保障

1 両首脳は、政府ハイレベル間の頻繁な往来及び活発な議会・政党間交流を歓迎し、二国間関係及び地域・国際場裡の協力を含め、政治・安全保障分野の協力を一層促進していくことで一致した。そのため、両首脳は、新たに外務次官級協議を立ち上げ、政治対話を促進することで一致した。第1回会合の日時、開催地及び議題については今後外交ルートを通じて議論される。

2 両首脳は、これまで3回実施された局長級の日ラオス安全保障対話を含め、両国間の安全保障分野における対話の深化を歓迎するとともに、両国がともに直面する安全保障上の課題について更に意思疎通を深めていく観点から、同対話に加え、新たに防衛次官級協議を立ち上げ、双方にとって適当な時期に第1回会合を開催することで一致した。また、2019年に署名された防衛分野における協力・交流に関する覚書の実施を評価し、両国の安全保障協力の拡大に向けて取り組むことを確認した。両首脳は、ラオス国防省に対する人道支援及び災害救援(HA/DR)に資する資機材の供与に向けた検討を加速していくことで一致するとともに、二国間の防衛協力の更なる進展を反映して、防衛駐在官の配置を検討することを確認した。

3 両首脳は、両国間の議会交流を歓迎し、友好議員連盟や地方議会を含むこれらの交流の更なる強化への期待を表明した。さらに、セミナーやワークショップを通じて、対面及びオンラインの両方で、立法に関する事項及び相互に関心を持つ事項についての経験とベストプラクティスの情報交換を行う可能性、並びに地域及び国際的な議会フォーラムでの相互支援の重要性に言及した。加えて、両首脳は政府間協力を含む方法を通じて法技術支援を継続する重要性についての認識を共有した。

経済・社会分野の協力

4 両首脳は、ラオスにおける第10次国家社会経済開発計画の策定と実践に向け緊密に連携していくことで一致した。石破総理大臣はラオスの財政安定化、インフラ整備、農業、教育、保健・医療、気候変動対策、不発弾除去等の分野における協力を含め、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けたラオスの取組を引き続き後押しする意向を表明した。

5 両首脳は、脱炭素化、経済成長及びエネルギー安全保障を同時に実現し、多様な道筋の下でネット・ゼロを達成するという共通の目標に向けて取組を進めることの重要性を認識した。両首脳はまた、ラオスが均衡のとれた都市・地方開発を通じた格差是正等の開発課題の解決を目指すに当たり、こうした脱炭素化の取組を含めグリーン成長の促進に配慮した形で両国による具体的な協力が進むことへの期待を表明した。

6 両首脳は、ラオスの有する豊富な水資源を活用したクリーン電力の活用及びメコン地域向け輸出の潜在性を考慮し、ラオス国内における電力供給の安定化を推進するとともに、将来的に同国が域内におけるクリーンエネルギーの供給ハブとして地域の脱炭素化に貢献できるようにするための協力について、二国間で議論を継続することを確認した。

7 石破総理大臣は、ラオスにおける喫緊の課題である財政安定化に向けた財政管理能力及び公的債務管理能力の強化、財政改革等に係る協力、並びに財政持続可能性のための手段となる民間投資促進、観光振興等による雇用創出、農業分野の生産性及び質の向上によるラオスの産業多角化及び地域の経済金融協力の後押しに係る協力を通じ、ラオスの自律的で質の高い経済成長を引き続き力強く後押ししていく意向を表明した。

8 両首脳は、メコン地域において大雨及び洪水被害が頻発しており、防災対策による強じん性向上が重要な課題であることを認識し、今後の防災分野における協力を検討していくことを確認した。

9 両首脳は、インドシナ戦争中のラオス爆撃時から残る不発弾が今日も住民生活を脅かし、農地拡大やインフラ整備の阻害要因となっている現状を認識し、不発弾除去の重要性を強調した。石破総理大臣は、同様の課題を抱える他のメコン域内諸国での事業とも連携しつつ、ラオスに対する協力を強化する意向を表明した。

貿易・投資

10 両首脳は、2015年以降ラオスで活動する日系企業数が着実に増加し、日系企業がラオスの雇用拡大に貢献していることを評価した。また、両首脳は、日系企業の投資促進を通じた二国間の互恵的な経済関係の構築に向け、ラオスの投資環境の改善に向けたラオスの努力を引き続き共に推進していくことを確認した。

11 両首脳は、メコン地域の中心に位置し同地域の陸と海をつなぐルートの結節点であるラオスが同地域の連結性向上のためにより積極的な役割を担っていくため、ラオスの「Land-locked」から「Land-linked」への転換戦略を引き続き推進していくことを確認した。具体的には、両首脳は、同地域の連結性向上において戦略的重要性を有する東西経済回廊について、ハード及びソフトの両面から質の高いインフラの整備を実施していくとの観点から、橋梁改修や過積載対策等の支援に向けた検討を進めることを確認した。さらに、両首脳は、ビエンチャン国際空港整備を含む、空の連結性向上のための協力の重要性に留意した。

12 両首脳は、2025年大阪・関西万博の機会を通じた投資機会の創出や人的往来を促進することで一致した。また、投資機会や人的往来の拡大に向けた双方の努力による需要の拡大を前提に、将来的な直行便の実現への期待を表明した。両首脳はまた、2027年国際園芸博覧会(於:横浜)の成功に向けても協力することを確認した。

13 両首脳は、起業家・経営者の能力開発支援並びにマルチ及び国際的な経済連携の推進に取り組むことを確認した。また、特定技能制度を通じたラオス人材の日本への受入れに向けた協力を継続することで一致した。

14 両首脳は、ラオスにおける法の支配に基づく市場経済化への転換の重要性を強調し、1998年以降日本がラオスに対して継続的に実施してきた法制度整備支援の具体的な成果を高く評価した。両首脳は、外交関係樹立70周年の機会において、ラオスにおける法制度整備に係る共同研究の成果の公表に向けて協力することで一致するとともに、引き続き同分野における協力の継続の重要性について一致した。

人的・文化交流、人材育成

15 両首脳は、過去70年にわたる両国国民同士の交流の歴史を両国の貴重な財産として評価し、未来に向け、両国の若い世代間の絆を構築していくことの重要性を強調した。また、両首脳はJICA青年海外協力隊(JOCV)のラオスへの派遣60周年を祝福し、JOCVがラオス社会の発展と人的交流に大きな役割を果たしてきたことを再確認した。

16 両首脳は、「次世代共創パートナーシップ-文化のWA2.0-」等を通じた知的・文化交流の更なる活性化、日本語教育の推進、青少年交流の促進に取り組むことを確認した。

17 両首脳は、ラオスの経済成長を担う高度人材の育成に向けた人材育成奨学計画(JDS)、国費留学生、JICA開発大学院連携等を含む協力の重要性に留意し、国際機関を含む他ドナー等とも連携しつつ、当該協力を強化していくとの方針を確認した。

18 両首脳は、今後、ODAを通じてバリアフリー機能等を備えた設備へと改築されるチャオ・アヌウォン・スタジアムを拠点として、障害者の社会参加やスポーツ・文化活動の振興の促進及び地域活性化に向けて、引き続き協力していくことを確認した。

19 両首脳は、観光分野の振興を通じた人的交流拡大のため、両国がともに取り組んでいくことを確認し、両国の関連省庁間の協力をさらに強化する意向を確認した。さらに、ラオス側は、日本の一般旅券所持者に対するビザ免除の滞在期間を15日から30日に延長することを前向きに検討した。

地域・国際社会における協力

20 両首脳は、互いの懸念事項に対処するに当たっての、地域、国際場裡及び二国間における相互の支持と協力を高く評価した。両首脳は協力を促進し、平和、安定及び繁栄を達成するため、国連憲章を擁護するとの原則や法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を強調した。

21 両首脳は、地域の未来を共創するため、共同ビジョン・ステートメント及び実施計画を含む日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議における成果の効果的な実施への期待を表明した。この文脈で、石破総理大臣は成功裏に終わった2024年のラオスのASEAN議長国としての役割を称賛した。

22 両首脳は、国際的な犯罪、不拡散・軍縮を含む共通の関心及び懸念事項である安全保障上の課題に対応するに当たり、協力を強化することで一致した。

23 両首脳は、海洋領域における平和、安全保障、安定、安全及び航行・上空飛行の自由の維持と促進は、あらゆる国にとって共通の利益と懸念であることを再確認した。両首脳は、地域における最近の情勢に留意しつつ、相互の信頼と信用を高め、紛争を複雑化又は悪化させ平和と安定に影響し得る活動の実施を自制し、状況を更に複雑化させ得る行動を回避し、国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法に従って紛争の平和的解決を追求する必要性を再確認した。

24 両首脳は、弾道ミサイルの発射を含む、朝鮮半島において増大する緊張に懸念を表明し、朝鮮半島の平和、安全及び安定の維持は非常に重要であるとの見解を共有するとともに、関連する国連安保理決議に従った朝鮮半島の非核化を求め、関連する国連安保理決議及び2005年の六者会合共同声明を完全に履行することの重要性を再確認した。また、両首脳は、拉致問題を含む、国際社会の人道上の懸念に対処することの重要性を強調した。

25 石破総理大臣は、ASEANの中心性と一体性、特に、地域の平和、安全及び安定に資するミャンマーによるミャンマー主導の包摂的で永続的な平和的解決をミャンマーの人々が達成することを支援し、ミャンマーにおける政治危機に対処するための主要な拠り所であり続けるASEAN首脳の「5つのコンセンサス」の早期かつ完全な履行のためにASEANが一致した対応をとることへの日本の支持を再確認した。両首脳は暴力の停止、人道支援の継続的な提供、及び、当事者間の建設的な対話を求めた。

26 両首脳は、ウクライナ情勢について、国連憲章を含む国際法に従い、公正かつ永続的な平和を確立することが必要であるという重要性を強調した。

27 両首脳は、人質の解放とガザ地区における停戦に関する合意が当事者間で成立したことを歓迎し、耐えがたい苦しみに終止符を打つべく、関係者に対して本件合意の誠実かつ着実な履行を求めた。石破総理大臣は、パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)へのラオスのメンバー入りを歓迎し、国際法並びに関連する国連安保理決議及び国連総会決議に従った二国家解決を支持し、中東和平の進展に貢献するために、ラオス及び他の地域メンバーと協力する意向を表明した。さらに、両首脳は中東地域全体の安定と繁栄を実現する重要性を強調した。

28 両首脳は、現在の国際社会の現実をより良く反映するため、常任及び非常任理事国議席双方の拡大を伴う国連安保理の改革を実現する緊急の必要性を再確認した。石破総理大臣は、日本が国連安保理の常任理事国となることに対するラオスの建設的な関与と支持に謝意を表明した。

29 両首脳は、「日メコン協力戦略2024」の下、日メコン協力を着実に推進していくことで一致した。両首脳は、メコン河流域における水資源及び関連資源の持続可能な開発及び管理の重要性を確認し、日メコン協力メカニズムを推進するとともに、メコン河委員会を含むメコン地域の機関との緊密な協力及び協調を促進する意向を共有した。

30 両首脳は、水棲生物資源の科学的根拠に基づく持続可能な利用の実現に向け、両国間の協力関係を一層強化することで一致した。

31 両首脳は、2024年10月のラオスにおける第2回アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合の成功を踏まえ、AZEC構想を活用し、アジアにおけるエネルギー移行を推進することで一致した。この文脈で、両国は同会合の成果を活かし、地域における脱炭素化、経済成長及びエネルギー安全保障の同時実現に向けて積極的に貢献していく意向を表明した。