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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本とシンガポール共和国間の戦略的パートナーシップ立上げに関する共同声明

[場所] 
[年月日] 2026年3月18日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

1. 日本とシンガポール共和国の外交関係樹立60周年を記念して、日本の高市早苗首相とシンガポールのローレンス・ウォン首相は、2026年3月18日に日本とシンガポールとの間の戦略的パートナーシップの立上げを発表した。

2. 日本とシンガポールは、共通の利益と同等の認識に基づき、長年にわたる永続的なパートナーシップを享受している。我々は、法の支配に基づく国際秩序、ルールに基づく多角的貿易体制、自由で開かれた、透明性があり、強靱で、包括的で、ルールに基づく地域構造を堅持する。

3. 我々は、ASEAN中心性及びインド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)への揺るぎない支持を含む、一貫した包括的な関与を通じて、日本が、ASEANの「信頼できるパートナー」として、地域の平和、安定、繁栄及び統合に貢献してきていることを認識する。我々は、AOIPと自由で開かれたインド太平洋(FOIP)が本質的な原則を共有し、AOIPの推進及び実施が法の支配に基づく国際秩序と自由で開かれたルールに基づくインド太平洋の促進にも寄与するという相互理解を共有する。その観点から、我々はAOIPとFOIPの相乗効果を確認し、AOIPとFOIPが共有する本質的な原則に資する具体的なAOIPの事業及び活動の推進及び実施に向けた我々のコミットメントを再確認する、AOIPの更なる推進及び実施に関する第28回日ASEAN首脳共同声明の採択を歓迎する。

4. 日本とシンガポールとの間の戦略的パートナーシップは、我々の実質的かつ多面的な関係の基盤を深め、以下の5つの優先分野を含む将来を見据えた分野での協力を拡大する。それはまた、特に国際の安全保障環境及び多国間貿易システムがますます重大な課題に直面している中で、国際舞台における多数の問題に関する協力を強化する。

I. 自由貿易と経済協力の推進

5. 我々は、自由で開かれた貿易、経済の強靱性、相互の繁栄へのコミットメントを再確認する。日・シンガポール経済連携協定は、我々の実質的かつダイナミックな経済関係の礎である。これは、以下のような優先分野での協力強化を議論するためのハイレベルなプラットフォームである日・シンガポール経済対話によって補完される。

5.1. WTO電子商取引共同声明イニシアティブの共同議長国として緊密に協力することを含め、デジタル貿易の促進、データ関連問題への対処、企業と消費者の信頼を築くためのルールと標準の設定などの分野で、デジタル経済における二国間協力を拡大する。

5.2. Enterprise Singaporeと日本貿易振興機構間の協力覚書(MOC)を更新することにより、貿易と投資の流れを強化する。

5.3. 産業間の補完性を活用して経済安全保障における協力を進めるとともに、優先分野の特定から協力を始め、サプライチェーン強靱化と将来の混乱に備えた準備を補強する。

5.4. オープンイノベーションと共創を促進し、スタートアップ協力を強化するとともに、技術の展開可能性を検討し、デジタル及びグリーン・トランジション、ディープテック(AI、自動化、量子コンピューティング、核融合エネルギーを含む)、安全なデジタルシステムなどの分野における技術導入に関するベストプラクティスを共有する。

6. 我々は、現在の及び新たな貿易課題に対処する上でWTOが引き続き有意義かつ効果的であることを確保するために、WTO改革への支持という共通のコミットメントを表明する。我々は、自由で開かれた貿易への共通のコミットメントを推進するために、アジア太平洋経済協力(APEC)などの地域経済フォーラムでの調整を深めるために協力する。我々は、地域統合を深め、より大きな地域の貿易・投資を促進し、イノベーションを育成し、成長機会を創出するために、日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)の完全かつ効果的な実施を確保する。我々は、CPTPPの高い水準を維持・強化し、締約国の拡大のための議論を主導するコミットメントを再確認する。

7. 我々は、日本の金融庁とシンガポール金融管理局間の協力枠組みを基盤として、フィンテックとデジタル資産における協力を強化する。両国はまた、相互に関心のあるフィンテックイベントとデジタル資産イニシアティブに参加する。

8. 日本の農林水産省とシンガポールの持続可能性・環境省間のMOCを更新することにより、農業食料貿易の促進を含む、農業及び食品分野協力を強化する。

II. デジタル化と技術

9. 研究開発(R&D)、イノベーション、デジタル化、テクノロジーにおけるそれぞれの強みにより、我々は、以下の方法で、新興技術を今後活用し、責任ある方法で開発するための協力の機会を認識する。

9.1. 日本の総務省とシンガポールのデジタル開発・情報省間でICT政策対話を確立し、ICT協力に関するMOCの更新を検討し、デジタルインフラ開発を含むデジタル分野での協力を模索する。

9.2. 安全、安心で信頼できるAIエコシステムを構築するために、AIに関する協力を深める。これには、日ASEAN・AI共創イニシアティブなどを通じた、AIの安全性、AIガバナンス、現地語・文化を尊重するAIモデルなどの分野における協力が含まれる。

9.3. 日本の国土交通省とシンガポール協力公社(SCE)との間で署名された協力覚書の枠組みにおいて、協力の可能性がある分野を模索しながら第三国でのデジタル及びスマートシティプロジェクトにおける協力を推進する。

9.4. 2026年1月に日本の内閣府とシンガポールのデジタル開発・情報省の間で署名された量子科学・技術・イノベーションに関するMOCの実施を通じて、量子に関する協力を深める。

9.5. 半導体、特に次世代半導体技術の研究開発における協力を深める。

9.6. 日本の内閣サイバーセキュリティセンター(現在の国家サイバー統括室)とシンガポールのサイバーセキュリティ庁(CSA)間のMOCを更新することにより、情報交換、能力構築、その他の協力活動を含むサイバーセキュリティ分野の協力を強化する。

9.7. CSAと経済産業省の間で、モノのインターネット(IoT)のサイバーセキュリティ認証制度の相互承認に関する協力覚書を確立することにより、サイバーセキュリティ標準を調和させる。

9.8. 日本のデジタル庁とシンガポールのGovTechとの間での交流及び知識共有を通じ、MOCの更新の検討も含め、デジタル政府分野における協力を進める。

9.9. 2026年に日本の個人情報保護委員会とシンガポールの個人データ保護委員会間で署名されるMOCにより強化される、情報交換やその他の協力活動を含む個人情報保護において協力する。

9.10 .2026年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)とシンガポール国立宇宙庁(NSAS)との間で署名される宇宙協力に関するMOCの実施を通じて、宇宙に関する協力を拡大する。

9.11. 日本、シンガポール、ASEANパートナー間の国際共同研究、研究者及び人材の交流、マルチステークホルダーの協力を促進することにより、AI、量子、将来の通信などの最先端分野を推進するための研究協力を推進する。これは、日ASEAN科学技術・イノベーション協働連携事業(NEXUS)を通じて行われる。

III. 安全保障と防衛

10. 我々は、ますます厳しさを増す安全保障環境に加え、開かれた海上交通路が両国にとって極めて重要であることを認識しつつ、海上安全保障を含む地域の平和と安定に関する共通の利益を有する。また、安全保障上の脅威への対処及び災害管理において、関係当局間の安全保障面での関係及び緊密かつ実務的な連携を深化させるために、以下の方法で協力を強化する。

10.1. シャングリラ・ダイアローグの機会における定期的な閣僚級会合を含む、防衛当局間のハイレベル交流を促進する。

10.2. 二国間及び多国間演習を通じたものを含む、運用当局間の協力を深化する。

10.3. 共通のプラットフォーム、省人化の構想、無人システムなど、相互に関心を有する分野における交流の一層促進する。

10.4. 防衛装備品・技術移転協定を活用した防衛装備・技術協力の強化。また、必要に応じて、防衛産業・技術分野における専門家交流を通じた協力を深化する、スタートアップ間の協力を通じたイノベーションを促進する。

10.5. 公共安全関連の応用における科学技術協力を模索する。

10.6. 法執行機関間の交流を強化し、薬物密売、オンライン詐欺、マネー・ローンダリング、人身取引、サイバー犯罪を含む国境を越えた犯罪、テロ及び、暴力的過激主義と闘う努力を強化する。

10.7. 災害管理に対処する機関間の交流を強化する。

10.8. 核兵器不拡散条約(NPT)運用検討サイクルの文脈を含む、軍備管理及び軍縮に関する協力を強化する。

IV. グリーン移行とエネルギー協力

11. 我々は、気候変動とその影響を緩和するための共同行動を強化することの重要性を再確認する。我々は、アジア・ゼロエミッション共同体などのプラットフォームを通じて、グリーン経済への移行を促進するための協力を強化する。

11.1. 日本の経済産業省とシンガポールの貿易産業省との間のエネルギー・持続可能性・気候変動協力枠組みなど、日本とシンガポールのネットゼロ目標を支援するための二国間枠組みを確立する。

11.2. エネルギー安全保障を維持しつつ、グリーンエネルギーとエネルギー移行、及び脱炭素技術に貢献するプロジェクトに関する協力を拡大する。水素/アンモニア、洋上風力、民生用原子力、二酸化炭素回収・貯留、バイオ燃料、持続可能な航空燃料、LNG、海底ケーブルなどがその分野に含まれる。

11.3. アジアのトランジション融資パートナーシップやASEANパワーグリッドの開発などのサステイナブル・ファイナンス、トランジション・ファイナンスへの参加機会を拡大する。

11.4. 日本の環境省とシンガポールの持続可能性・環境省間の環境問題に関するMOCの更新を含め、環境分野における協力を深める。我々はまた、改訂された日ASEAN気候・環境戦略プログラム(SPACE)2025の運用を継続する。これには、コ・イノベーションのための透明性パートナーシップ(PaSTI)、ASEAN・日本グローバルストックテイク(GST)レポート、日ASEAN資源循環パートナーシップ(ARCPEEC)、昆明・モントリオール生物多様性枠組実施支援などのイニシアティブが含まれる。

11.5. 日本の国土交通省とシンガポールの運輸省との間のグリーン・デジタル海運回廊に関するMOCに基づき、海運の脱炭素化とデジタル化に関する協力を強化する。

11.6.日本の国土交通省とシンガポールの持続可能性・環境省との間のMOCの範囲を拡大することを含め、気候科学と気候適応に関する協力を深める。

V. パートナーシップと交流

12. 我々は、相互の信頼と理解が、制度的、社会的、芸術・文化、青少年、学術交流を含むあらゆるレベルで、増加する定期的な交流を通じて維持されなければならないことを認識する。我々は、以下の方法で制度面での関係を強化することに同意する。

12.1. 両国関係を評価し、協力を強化するために、両国の外務省による年次の日・シンガポールシンポジウムを継続する。

12.2. シンガポール外務省(MFA)の招待により日本の政府高官がシンガポールを訪問する年次のラッフルズプログラムの下で、当局者間の理解を促進する。

12.3. 国際協力機構とMFAによる21世紀のための日本・シンガポール・パートナーシップ・プログラム(JSPP21)の下で、開発途上国向けの第三国研修プログラムの提供において引き続き協力する。

12.4. 日本の人事院とシンガポールの首相府公務員局との間の知見交換プログラムを通じて、公務員交流を強化する。

13. 我々は、家族とこどもの育成、ヘルスケア(健康安全保障、ヘルスケア技術と研究開発、高齢者介護、健康規制、感染症対策を含む)などの社会問題における協力を強化することに同意する。

14. 我々は、以下の方法で人と人とのつながりを強化することに同意する。

14.1. 青少年交流の機会を拡大し、学校間のパートナーシップと学生交流、JETプログラム、東南アジア青年の船(SSEAYP)を含む教育分野における二国間協力を促進する。我々は、2026年2月の第49回SSEAYPのシンガポール寄港と、対日理解促進交流プログラムJENESYSへのシンガポールの継続的な参加を歓迎した。

14.2. ジャパン・クリエイティブ・センターが主催する行事を含む、展示会、公演、共同プログラムを通じた、芸術・文化交流を促進の継続する。

14.3. 2025年に日・シンガポール間の年間往来観光客数が約136万人に達したことを歓迎しつつ、両国間の旅行者の往来をさらに拡大するための、協力を一層強化する。

14.4. 日本の航空局とシンガポールの民間航空庁との間の日本・シンガポール航空協力対話を活用し、日本とシンガポールとの間の航空接続性を強化することを含め、民間航空における協力を深化する。

実施

15. 我々は、関係閣僚及び事務方に、日本・シンガポール戦略的パートナーシップの実施に取り組むよう指示する。外務大臣は実施の進捗状況を監督する。パートナーシップは、二国間協力が引き続き適切な、将来に備えたものであことを確実にするために定期的に見直される。