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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約(日・フィリピン新租税条約)

[場所] 
[年月日] 2026年5月28日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約


 日本国及びフィリピン共和国は、

 両国間の経済関係の一層の発展を図ること及び租税に関する両国間の協力を強化することを希望し、

 所得に対する租税に関して、脱税又は租税回避を通じた非課税又は租税の軽減(第三国の居住者の間接的な利益のためにこの条約において与えられる租税の免除又は軽減を得ることを目的とする条約漁りの仕組みを通じたものを含む。)の機会を生じさせることなく、二重課税を除去するための条約を締結することを意図して、

 次のとおり協定した。

   第一条 対象となる者

1 この条約は、一方又は双方の締約国の居住者である者について適用する。

2 この条約の適用上、いずれかの締約国の租税に関する法令の下において全面的若しくは部分的に課税上存在しないものとして取り扱われる団体若しくは仕組みによって又はこのような団体若しくは仕組みを通じて取得される所得は、一方の締約国における課税上当該一方の締約国の居住者の所得として取り扱われる限りにおいて、当該一方の締約国の居住者の所得とみなす。

3 この条約は、第七条3、第九条2、第十九条、第二十一条、第二十四条から第二十六条まで及び第二十九条の規定に基づいて認められる特典に関する場合を除くほか、一方の締約国の居住者に対する当該一方の締約国における課税に影響を及ぼすものではない。

   第二条 対象となる租税

1 この条約は、一方の締約国が課する所得に対する租税(課税方法のいかんを問わない。)について適用する。

2 総所得又は所得の要素に対する全ての租税(財産の譲渡から生ずる収益に対する租税、企業が支払う賃金又は給料の総額に対する租税及び資産の価値の上昇に対する租税を含む。)は、所得に対する租税とされる。

3 この条約が適用される現行の租税は、次のものとする。

 (a) 日本国においては、

  (i) 所得税

  (ii) 法人税

  (iii) 復興特別所得税

  (iv) 防衛特別所得税

  (v) 地方法人税

  (vi) 防衛特別法人税

     (以下「日本国の租税」という。)

 (b) フィリピンにおいては、フィリピンの内国歳入法に基づいて課される所得に対する租税(以下「フィリピンの租税」という。)

4 この条約は、現行の租税に加えて又はこれに代わってこの条約の署名の日の後に課される租税であって、現行の租税と同一であるもの又は実質的に類似するものについても、適用する。両締約国の権限のある当局は、各締約国の租税に関する法令について行われた重要な改正を相互に通知する。

   第三条 一般的定義

1 この条約の適用上、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、

 (a) 「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されている全ての領域(領海を含む。)及びその領海の外側に位置する区域であって、日本国が国際法に基づいて主権的権利を有し、かつ、日本国の租税に関する法令が施行されている全ての区域(海底及びその下を含む。)をいう。

 (b) 「フィリピン」とは、フィリピン共和国をいい、地理的意味で用いる場合には、フィリピン共和国の群島(全ての島及びそれらに囲まれた水域を含む。)並びにフィリピン共和国がフィリピン共和国の法令及び国際法(特に、海洋法に関する国際連合条約)に基づいて主権、主権的権利又は管轄権を有する他の全ての区域によって構成されるフィリピン共和国の国家の領域であって、フィリピン共和国の陸地、河川及び空域並びに領海、海底及びその下、大陸棚並びに他の海域によって構成されるものをいう。

 (c) 「一方の締約国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又はフィリピンをいう。

 (d) 「者」には、個人、法人及び法人以外の団体を含む。

 (e) 「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をいう。

 (f) 「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは、それぞれ一方の締約国の居住者が営む企業及び他方の締約国の居住者が営む企業をいう。

 (g) 「国際運輸」とは、船舶又は航空機による運送(当該船舶又は航空機が一方の締約国内の地点の間においてのみ運用され、かつ、当該船舶又は航空機を運用する企業が当該一方の締約国の企業でない場合における運送を除く。)をいう。

 (h) 「権限のある当局」とは、次の者をいう。

  (i) 日本国においては、財務大臣又は権限を与えられたその代理者

  (ii) フィリピンにおいては、財務大臣又は権限を与えられたその代理者

 (i) 一方の締約国についての「国民」とは、次の者をいう。

  (i) 当該一方の締約国の国籍又は市民権を有する全ての個人

  (ii) 当該一方の締約国において施行されている法令によってその地位を与えられた全ての法人、組合又は団体

 (j) 一方の締約国の「公認の年金基金」とは、当該一方の締約国の法令に基づいて設立される団体又は仕組みであって、当該一方の締約国の租税に関する法令の下において独立した者として取り扱われ、かつ、次の(i)又は(ii)の規定に該当するものをいう。

  (i) 専ら又は主として、個人に対する退職手当及び補助的若しくは付随的な手当又は他のこれらに類する報酬を管理し、又は給付することを目的として設立され、かつ、運営される団体又は仕組みであって、当該一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって規制されるもの

  (ii) 専ら又は主として、当該一方の締約国の他の公認の年金基金の利益のために投資することを目的として設立され、かつ、運営される団体又は仕組み

   一方の締約国の法令に基づいて設立される団体又は仕組みが、当該一方の締約国の租税に関する法令の下において独立した者として取り扱われるとしたならば(i)又は(ii)の規定に基づいて公認の年金基金に該当することとなる場合には、当該団体又は仕組みは、この条約の適用上、当該一方の締約国の租税に関する法令の下において公認の年金基金として取り扱われる独立した者とみなし、かつ、当該団体又は仕組みの全ての資産及び所得は、他の者ではなく、当該独立した者によって保有される資産及び取得される所得として取り扱う。

2 一方の締約国によるこの条約の適用に際しては、この条約において定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合又は両締約国の権限のある当局が第二十六条の規定に基づいて異なる意義について合意する場合を除くほか、この条約の適用を受ける租税に関して当該一方の締約国の法令において当該用語がその適用の時点で有する意義を有するものとする。当該一方の締約国において適用される租税に関する法令における当該用語の意義は、当該一方の締約国の他の法令における当該用語の意義に優先するものとする。

   第四条 居住者

1 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、一方の締約国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、設立場所、事業の管理の場所その他これらに類する基準によって当該一方の締約国において租税を課されるべきものとされる者をいい、当該一方の締約国、当該一方の締約国の地方政府又は地方公共団体及び当該一方の締約国の公認の年金基金を含む。ただし、「一方の締約国の居住者」には、一方の締約国内に源泉のある所得についてのみ当該一方の締約国において租税を課されるべきものとされる者を含まない。

2 1の規定によって双方の締約国の居住者に該当する個人については、次のとおりその地位を決定する。

 (a) 当該個人は、その使用する恒久的住居が存在する締約国の居住者とみなす。その使用する恒久的住居を双方の締約国内に有する場合には、当該個人は、その人的及び経済的関係がより密接な締約国(重要な利害関係の中心がある締約国)の居住者とみなす。

 (b) その重要な利害関係の中心がある締約国を決定することができない場合又はその使用する恒久的住居をいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、その有する常用の住居が存在する締約国の居住者とみなす。

 (c) その常用の住居を双方の締約国内に有する場合又はこれをいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、当該個人が国民である締約国の居住者とみなす。

 (d) 当該個人が双方の締約国の国民である場合又はいずれの締約国の国民でもない場合には、両締約国の権限のある当局は、合意によって当該事案を解決する。

3 1の規定によって双方の締約国の居住者に該当する者で個人以外のものについては、両締約国の権限のある当局は、その者の本店又は主たる事務所の所在地、その者の事業の実質的な管理の場所、その者が設立された場所その他関連する全ての要因を考慮して、この条約の適用上その者が居住者とみなされる締約国を合意によって決定するよう努める。そのような合意がない場合には、その者は、この条約に基づいて与えられる租税の軽減又は免除を受けることができない。

   第五条 恒久的施設

1 この条約の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っているものをいう。

2 「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。

 (a) 事業の管理の場所

 (b) 支店

 (c) 事務所

 (d) 工場

 (e) 作業場

 (f) 鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他の天然資源を採取する場所

3 「恒久的施設」には、次のものを含む。

 (a) 建築工事現場若しくは建設、組立て若しくは据付けの工事又はこれらに関連する監督活動。ただし、これらの現場、工事又は活動が六箇月を超える期間存続する場合に限る。

 (b) 企業が行う役務の提供(コンサルタントの役務の提供を含む。)であって、使用人その他の職員(当該役務の提供のために採用されたものに限る。)を通じて行われるもの。ただし、このような活動が、単一の又は関連するプロジェクトにつき当該課税年度において開始し、又は終了するいずれかの十二箇月の期間において合計百八十三日を超える期間一方の締約国内において行われる場合に限る。

 (c) 一方の締約国内に存在する天然資源の探査又は開発に関連して当該一方の締約国内において行われる活動。ただし、当該活動が、当該課税年度において開始し、又は終了するいずれかの十二箇月の期間において合計九十日を超える期間行われる場合に限る。

  (a)に規定する活動の期間は、二以上の密接に関連する企業が一方の締約国内の同一の場所において行う活動の期間(それぞれ三十日を超えるものに限る。)を合計して決定する。ただし、一の企業が当該一方の締約国内において行う活動とその密接に関連する企業が当該一方の締約国内において行う活動とが関連している場合に限る。(a)に規定する活動の期間の決定に当たり、二以上の密接に関連する企業が同時に活動を行っている期間は、一度に限り算入する。

4 1から3までの規定にかかわらず、次の活動を行う場合には、「恒久的施設」に当たらないものとする。ただし、その活動((f)の規定に該当する場合には、(f)に規定する事業を行う一定の場所における活動の全体)が準備的又は補助的な性格のものである場合に限る。

 (a) 企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。

 (b) 企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。

 (c) 企業に属する物品又は商品の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有すること。

 (d) 企業のために物品若しくは商品を購入し、又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

 (e) 企業のためにその他の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

 (f) (a)から(e)までに規定する活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

5 4の規定は、事業を行う一定の場所を使用し、若しくは保有する企業又は当該企業と密接に関連する企業が当該一定の場所又は当該一定の場所が存在する締約国内の他の場所において事業活動を行う場合において、次の(a)又は(b)の規定に該当するときは、当該一定の場所については、適用しない。ただし、当該企業及び当該企業と密接に関連する企業が当該一定の場所において行う事業活動又は当該企業若しくは当該企業と密接に関連する企業が当該一定の場所及び当該他の場所において行う事業活動が、一体的な業務の一部として補完的な機能を果たす場合に限る。

 (a) この条の規定に基づき、当該一定の場所又は当該他の場所が当該企業又は当該企業と密接に関連する企業の恒久的施設を構成すること。

 (b) 当該企業及び当該企業と密接に関連する企業が当該一定の場所において行う活動の組合せ又は当該企業若しくは当該企業と密接に関連する企業が当該一定の場所及び当該他の場所において行う活動の組合せによる活動の全体が準備的又は補助的な性格のものでないこと。

6 1及び2の規定にかかわらず、7の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国内において企業に代わって行動する者が、そのように行動するに当たって、次の(a)又は(b)の規定に該当する場合には、当該企業は、その者が当該企業のために行う全ての活動について、当該一方の締約国内に恒久的施設を有するものとする。ただし、その者の活動が、4に規定する活動であって、事業を行う一定の場所(5の規定が適用されることとなるものを除く。)を通じて行われたとしても4の規定により当該一定の場所が恒久的施設とはされないこととなるもののみである場合は、この限りでない。

 (a) 反復して契約を締結し、又は当該企業によって重要な修正が行われることなく日常的に締結される契約の締結のために反復して主要な役割を果たす場合において、これらの契約が次の(i)から(iii)までの規定のいずれかに該当するとき。

  (i) 当該企業の名において締結される契約

  (ii) 当該企業が所有し、又は使用の権利を有する財産について、所有権を移転し、又は使用の権利を与えるための契約

  (iii) 当該企業による役務の提供のための契約

 (b) 当該一方の締約国内において物品又は商品の在庫を恒常的に保有し、かつ、当該在庫か

7 6の規定は、一方の締約国内において他方の締約国の企業に代わって行動する者が、当該一方の締約国内において独立の代理人として事業を行い、かつ、当該企業のために通常の方法で当該事業を行う場合には、適用しない。ただし、その者は、専ら又は主として一又は二以上の自己と密接に関連する企業に代わって行動する場合には、当該企業につき、この7に規定する独立の代理人とはされない。

8 一方の締約国の居住者である法人が、他方の締約国の居住者である法人若しくは他方の締約国内において事業(恒久的施設を通じて行われるものであるか否かを問わない。)を行う法人を支配し、又はこれらに支配されているという事実のみによっては、いずれの一方の法人も、他方の法人の恒久的施設とはされない。

9 この条の規定の適用上、ある者又は企業とある企業とは、全ての関連する事実及び状況に基づいて、一方が他方を支配している場合又は両者が同一の者若しくは企業によって支配されている場合には、密接に関連するものとする。いかなる場合にも、ある者又は企業とある企業とは、一方が他方の受益に関する持分の五十パーセントを超えるもの(法人の場合には、当該法人の株式の議決権及び価値の五十パーセント又は当該法人の資本に係る受益に関する持分の五十パーセントを超えるもの)を直接若しくは間接に所有する場合又は他の者若しくは企業がその者及びその企業の若しくはその二の企業の受益に関する持分の五十パーセントを超えるもの(法人の場合には、当該法人の株式の議決権及び価値の五十パーセント又は当該法人の資本に係る受益に関する持分の五十パーセントを超えるもの)を直接若しくは間接に所有する場合には、密接に関連するものとする。

   第六条 不動産所得

1 一方の締約国の居住者が他方の締約国内に存在する不動産から取得する所得(農業又は林業から生ずる所得を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 「不動産」とは、当該財産が存在する締約国の法令における不動産の意義を有するものとする。「不動産」には、いかなる場合にも、不動産に附属する財産、農業又は林業に用いられる家畜類及び設備、不動産に関する一般法の規定の適用がある権利、不動産用益権並びに鉱石、水その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価として料金(変動制であるか固定制であるかを問わない。)を受領する権利を含む。船舶及び航空機は、不動産とはみなさない。

3 1の規定は、不動産の直接使用、賃貸その他の全ての形式による使用から生ずる所得について適用する。

4 1及び3の規定は、企業の不動産から生ずる所得及び独立の人的役務を提供するために使用される不動産から生ずる所得についても、適用する。

   第七条 事業利得

1 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内に存在する恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の企業が他方の締約国内に存在する恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、2の規定によって当該恒久的施設に帰せられる利得に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 この条及び第二十四条の規定の適用上、各締約国において1に規定する恒久的施設に帰せられる利得は、企業が当該恒久的施設及び当該企業の他の構成部分を通じて果たす機能、使用する資産及び引き受ける危険を考慮した上で、当該恒久的施設が同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行う分離し、かつ、独立した企業であるとしたならば、特に当該企業の他の構成部分との取引においても、当該恒久的施設が取得したとみられる利得とする。

3 一方の締約国が、いずれかの締約国の企業の恒久的施設に帰せられる利得を2の規定によって調整し、それに伴い、他方の締約国において租税を課された当該企業の利得に租税を課する場合には、当該他方の締約国は、その利得に対する二重課税を除去するために必要な範囲に限り、その利得に対して当該他方の締約国において課された租税の額について適当な調整を行う。この調整に当たり、両締約国の権限のある当局は、必要があるときは、相互に協議する。

4 他の条で別個に取り扱われている所得が企業の利得に含まれる場合には、当該他の条の規定は、この条の規定によって影響されることはない。

   第八条 国際海上運送及び国際航空運送

1 一方の締約国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得に対しては、当該利得が他方の締約国内において取得される場合には、当該他方の締約国においても租税を課することができる。ただし、その租税の額は、次の(a)又は(b)に掲げる額のいずれか少ない額とする。

 (a) 当該他方の締約国の法令によれば当該利得に対して課されることとなる租税の額の六十パーセント

 (b) 当該他方の締約国内において取得される総収入の額の一・五パーセント

3 1及び2の規定は、共同計算、共同経営又は国際経営共同体に参加していることによって取得する利得についても、適用する。

   第九条 関連企業

1 次の(a)又(b)はの規定に該当する場合であって、そのいずれの場合においても、商業上又は資金上の関係において、双方の企業の間に、独立の企業の間に設けられる条件と異なる条件が設けられ、又は課されているときは、その条件がないとしたならば一方の企業の利得となったとみられる利得であってその条件のために当該一方の企業の利得とならなかったものに対しては、これを当該一方の企業の利得に算入して租税を課することができる。

 (a) 一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営、支配又は資本に直接又は間接に参加している場合

 (b) 同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営、支配又は資本に直接又は間接に参加している場合

2 一方の締約国が、他方の締約国において租税を課された当該他方の締約国の企業の利得を当該一方の締約国の企業の利得に算入して租税を課する場合において、その算入された利得が、双方の企業の間に設けられた条件が独立の企業の間に設けられたであろう条件であったとしたならば当該一方の締約国の企業の利得となったとみられる利得であるときは、当該他方の締約国は、その利得に対して当該他方の締約国において課された租税の額について適当な調整を行う。この調整に当たり、この条約の他の規定に妥当な考慮を払うものとし、両締約国の権限のある当局は、必要があるときは、相互に協議する。

   第十条 配当

1 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 一方の締約国の居住者である法人が支払う配当に対しては、当該一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。ただし、その租税の額は、当該配当の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、次の(a)から(c)までに掲げる額を超えないものとする。

 (a) 当該配当の受益者が、当該配当の支払を受ける者が特定される日を含む六箇月の期間を通じ、次の(i)又(ii)はに掲げるものの九十パーセント以上を直接又は間接に所有する法人である場合には、当該配当の額の五パーセント。当該期間の計算に当たり、当該配当を支払う法人の株式を所有する法人又は当該配当を支払う法人の合併、分割その他の組織再編成の直接の結果として行われる所有の変更は、考慮しない。

  (i) 当該配当を支払う法人が日本国の居住者である場合には、当該法人の議決権

  (ii) 当該配当を支払う法人がフィリピンの居住者である場合には、当該法人の資本

 (b) 当該配当の受益者が、当該配当の支払を受ける者が特定される日を含む六箇月の期間を通じ、次の(i)又(ii)はに掲げるものの十パーセント以上を直接又は間接に所有する法人である場合には、当該配当の額の十パーセント。当該期間の計算に当たり、当該配当を支払う法人の株式を所有する法人又は当該配当を支払う法人の合併、分割その他の組織再編成の直接の結果として行われる所有の変更は、考慮しない。

  (i) 当該配当を支払う法人が日本国の居住者である場合には、当該法人の議決権

  (ii) 当該配当を支払う法人がフィリピンの居住者である場合には、当該法人の資本

 (c) その他の全ての場合には、当該配当の額の十五パーセント

3 2の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者である法人の支払う配当が当該一方の締約国における当該法人の課税所得の計算上控除される場合には、当該配当に対しては、当該一方の締約国において、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。ただし、その租税の額は、当該配当の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該配当の額の十五パーセントを超えないものとする。

4 2及び3の規定は、配当を支払う法人のその配当に充てられる利得に対する課税に影響を及ぼすものではない。

5 この条において、「配当」とは、株式その他利得の分配を受ける権利(信用に係る債権を除く。)から生ずる所得及び他の権利から生ずる所得であって分配を行う法人が居住者である締約国の法令上租税に関し株式から生ずる所得と同様に取り扱われるものをいう。

6 1から3までの規定は、一方の締約国の居住者である配当の受益者が、当該配当を支払う法人が居住者である他方の締約国内において当該他方の締約国内に存在する恒久的施設を通じて事業を行う場合又は当該他方の締約国内において当該他方の締約国内に存在する固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。

7 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国内において利得又は所得を取得する場合には、当該他方の締約国は、当該法人の支払う配当及び当該法人の留保所得については、これらの配当及び留保所得の全部又は一部が当該他方の締約国内において生ずる利得又は所得から成るときにおいても、当該配当(当該他方の締約国の居住者に支払われる配当及び配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該他方の締約国内に存在する恒久的施設又は固定的施設と実質的な関連を有するものである場合の配当を除く。)に対していかなる租税も課することができず、また、当該留保所得に対して租税を課することができない。

   第十一条 利子

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 一方の締約国内において生ずる利子に対しては、当該一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。ただし、その租税の額は、当該利子の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該利子の額の十パーセントを超えないものとする。

3 2の規定にかかわらず、一方の締約国内において生ずる利子であって次の(a)から(c)までの規定のいずれかに該当するものに対しては、他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 (a) 当該利子の受益者が、当該他方の締約国、当該他方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体、当該他方の締約国の中央銀行又は当該他方の締約国若しくは当該他方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって全面的に所有される機関である場合

 (b) 当該利子の受益者が当該他方の締約国の居住者であり、かつ、当該利子が当該他方の締約国、当該他方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体、当該他方の締約国の中央銀行若しくは当該他方の締約国

  若しくは当該他方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって全面的に所有される機関によって保証された債権、これらによって保険の引受けが行われた債権又はこれらによって行われた間接融資に係る債権に関して支払われる場合

 (c) 当該利子の受益者が当該他方の締約国の居住者であり、かつ、当該利子が当該他方の締約国の居住者によって行われる信用供与による設備若しくは物品の販売又は役務の提供の一環として生ずる債権に関して支払われる場合

4 この条において、「利子」とは、全ての種類の信用に係る債権(担保の有無及び債務者の利得の分配を受ける権利の有無を問わない。)から生ずる所得、特に、公債、債券又は社債から生ずる所得(公債、債券又は社債の割増金及び賞金を含む。)及び他の所得であって当該所得が生ずる締約国の法令上租税に関し貸付金から生ずる所得と同様に取り扱われるものをいう。前条で取り扱われる所得及び支払の遅延に対して課される損害金は、この条の規定の適用上、利子には該当しない。

5 1から3までの規定は、一方の締約国の居住者である利子の受益者が、当該利子の生ずる他方の締約国内において当該他方の締約国内に存在する恒久的施設を通じて事業を行う場合又は当該他方の締約国内において当該他方の締約国内に存在する固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該利子の支払の基因となった債権が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。

6 利子は、その支払者が一方の締約国の居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとする。ただし、利子の支払者が一方の締約国内に恒久的施設又は固定的施設を有する場合において、当該利子の支払の基因となった債務が当該恒久的施設又は固定的施設について生じ、かつ、当該利子が当該恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものであるときは、当該利子の支払者がいずれかの締約国の居住者であるか否かを問わず、当該利子は、当該恒久的施設又は固定的施設の存在する当該一方の締約国内において生じたものとする。

7 利子の支払の基因となった債権について考慮した場合において、利子の支払者と受益者との間又はその双方と他の者との間の特別の関係によって、当該利子の額が、その関係がないとしたならば当該支払者及び当該受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうちその超過する部分に対しては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上で、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

   第十二条 使用料

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる使用料に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 一方の締約国内において生ずる使用料に対しては、当該一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。ただし、その租税の額は、当該使用料の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該使用料の額の十パーセントを超えないものとする。

3 この条において、「使用料」とは、文学上、芸術上若しくは学術上の著作物(映画フィルム及びラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィルム又はテープを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受領される全ての種類の支払金をいう。

4 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である使用料の受益者が、当該使用料の生ずる他方の締約国内において当該他方の締約国内に存在する恒久的施設を通じて事業を行う場合又は当該他方の締約国内において当該他方の締約国内に存在する固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該使用料の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。

5 使用料は、その支払者が一方の締約国の居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとする。ただし、使用料の支払者が一方の締約国内に恒久的施設又は固定的施設を有する場合において、当該使用料を支払う債務が当該恒久的施設又は固定的施設について生じ、かつ、当該使用料が当該恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものであるときは、当該使用料の支払者がいずれかの締約国の居住者であるか否かを問わず、当該使用料は、当該恒久的施設又は固定的施設の存在する当該一方の締約国内において生じたものとする。

6 使用料の支払の基因となった使用、権利又は情報について考慮した場合において、使用料の支払者と受益者との間又はその双方と他の者との間の特別の関係によって、当該使用料の額が、その関係がないとしたならば当該支払者及び当該受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうちその超過する部分に対しては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上で、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

   第十三条 譲渡収益

1 一方の締約国の居住者が第六条に規定する不動産であって他方の締約国内に存在するものの譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産を構成する財産(第六条に規定する不動産を除く。)の譲渡又は一方の締約国の居住者が独立の人的役務を提供するため他方の締約国内においてその用に供している固定的施設に係る財産(同条に規定する不動産を除く。)の譲渡から生ずる収益(当該恒久的施設の譲渡、企業全体の譲渡の一部としての当該恒久的施設の譲渡又は当該固定的施設の譲渡から生ずる収益を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

3 船舶又は航空機を国際運輸に運用する一方の締約国の企業が当該船舶若しくは航空機の譲渡又は当該船舶若しくは航空機の運用に係る財産(第六条に規定する不動産を除く。)の譲渡によって取得する収益に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

4 一方の締約国の居住者が法人の株式又は同等の持分(組合又は信託財産の持分を含む。)の譲渡によって取得する収益に対しては、当該株式又は同等の持分の価値の五十パーセント以上が、当該譲渡に先立つ三百六十五日の期間のいずれかの時点において、第六条に規定する不動産であって他方の締約国内に存在するものによって直接又は間接に構成される場合には、当該他方の締約国において租税を課することができる。

5 1から4までに規定する財産以外の財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者である締約国においてのみ租税を課することができる。

   第十四条 独立の人的役務

1 一方の締約国の居住者である個人が自由職業その他の独立の性格を有する活動について取得する所得に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。ただし、次の(a)又は(b)の規定に該当する場合には、当該所得に対しては、他方の締約国においても租税を課することができる。

 (a) 当該個人が、自己の活動を行うため通常その用に供している固定的施設を当該他方の締約国内に有する場合。この場合には、当該所得のうち当該固定的施設に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

 (b) 当該個人が、当該課税年度において開始し、又は終了するいずれかの十二箇月の期間において合計百八十三日以上の期間当該他方の締約国内に滞在する場合。この場合には、当該所得のうち当該個人が当該他方の締約国内において行う活動によって取得する部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 「自由職業」には、特に、学術上、文学上、芸術上及び教育上の独立の活動並びに医師、弁護士、技術士、建築士、歯科医師及び公認会計士の独立の活動を含む。

   第十五条 給与所得

1 次条及び第十八条から第二十条までの規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者がその勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、勤務が他方の締約国内において行われない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。勤務が他方の締約国内において行われる場合には、当該勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)から(c)までに規定する要件を満たす場合には、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 (a) 当該課税年度において開始し、又は終了するいずれの十二箇月の期間においても、当該報酬の受領者が当該他方の締約国内に滞在する期間が合計百八十三日を超えないこと。

 (b) 当該報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。

 (c) 当該報酬が当該他方の締約国内に雇用者が有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでないこと。

3 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が、船舶又は航空機の通常の乗組員の一員として、国際運輸に運用される船舶内又は航空機内において行う勤務(他方の締約国内においてのみ運用される船舶内又は航空機内において行う勤務を除く。)について取得する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

   第十六条 役員報酬

 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の取締役会又はこれに類する機関の構成員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

   第十七条 芸能人及び運動家

1 第十四条及び第十五条の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が演劇、映画、ラジオ若しくはテレビジョンの俳優、音楽家その他の芸能人又は運動家として他方の締約国内において行う個人的活動によって取得する所得に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 芸能人又は運動家としての個人的活動に関する所得が当該芸能人又は運動家以外の者に帰属する場合には、当該所得に対しては、第十四条及び第十五条の規定にかかわらず、当該芸能人又は運動家の活動が行われる締約国において租税を課することができる。第十八条 退職年金次条2の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者に支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

   第十九条 政府職員

1(a) 一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体に対して提供される役務について、個人に対して、当該一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって支払われる給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 (b) もっとも、当該役務が他方の締約国内において提供される場合において、当該個人が次の(i)又は(ii)の規定に該当する当該他方の締約国の居住者であるときは、その給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

  (i) 当該他方の締約国の国民

  (ii) 専ら当該役務を提供するため当該他方の締約国の居住者となった者でないもの

2(a) 1の規定にかかわらず、一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体に対して提供される役務について、個人に対して、当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって支払われ、又は当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体が設立し、若しくは拠出した基金から支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 (b) もっとも、当該個人が他方の締約国の居住者であり、かつ、当該他方の締約国の国民である場合には、当該退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

3 一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体の行う事業に関連して提供される役務について支払われる給料、賃金、退職年金その他これらに類する報酬については、第十五条から前条までの規定を適用する。

   第二十条 教員、教授及び研究員

1 一方の締約国内にある大学、学校その他の公認された教育機関において教育又は研究を行うため当該一方の締約国内に一年を超えない期間滞在する個人であって、引き続き他方の締約国の居住者であるものは、その教育又は研究について取得する報酬であって当該他方の締約国において租税を課されるものにつき、当該一方の締約国において租税を免除される。

2 1の規定は、主として特定の者の私的利益のために行われる研究から生ずる所得については、適用しない。

   第二十一条 学生

 専ら教育又は訓練を受けるため一方の締約国内に滞在する学生又は事業修習者であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付(当該一方の締約国外から支払われるものに限る。)に対しては、当該一方の締約国においては、租税を課することができない。事業修習者の場合には、この条に定める租税の免除は、当該一方の締約国内において最初に訓練を開始した日から一年を超えない期間についてのみ適用する。

   第二十二条 匿名組合

 この条約の他の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が匿名組合契約その他これに類する契約に基づいて行う出資について取得する所得に対しては、当該所得が他方の締約国内において生じ、かつ、当該他方の締約国における当該所得の支払者の課税所得の計算上控除される場合には、当該他方の締約国において、当該他方の締約国の法令に従って租税を課することができる。

   第二十三条 その他の所得

1 一方の締約国の居住者が受益者である所得(源泉地を問わない。)であって前各条に規定がないものに対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 1の規定は、一方の締約国の居住者である所得(第六条2に規定する不動産から生ずる所得を除く。)の受益者が、他方の締約国内において当該他方の締約国内に存在する恒久的施設を通じて事業を行う場合又は当該他方の締約国内において当該他方の締約国内に存在する固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該所得の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、当該所得については、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。

3 1に規定する所得の支払者と受益者との間又はその双方と他の者との間の特別の関係によって、当該所得の額が、その関係がないとしたならば当該支払者及び当該受益者が合意したとみられる額を超える場合には、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、当該所得の額のうちその超過する部分に対しては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上で、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

   第二十四条 二重課税の除去

1 日本国においては、二重課税は、次の方法によって除去される。

 日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令の規定に従い、日本国の居住者がこの条約の規定に従ってフィリピンにおいて租税を課することができる所得をフィリピン内において取得する場合には、当該所得について納付されるフィリピンの租税の額は、当該居住者に対して課される日本国の租税の額から控除する。ただし、その控除の額は、日本国の租税の額のうち当該所得に対応する額を超えないものとする。

2 フィリピンにおいては、二重課税は、次の方法によって除去される。

 フィリピンの居住者がこの条約の規定に従って日本国において租税を課することができる所得を取得する場合には、フィリピンは、日本国において納付される日本国の租税の額を当該居住者の所得に対するフィリピンの租税の額から控除する。ただし、その控除の額は、当該控除が行われる前に算定されたフィリピンの租税の額のうち、日本国において租税を課することができる所得に対応する部分を超えないものとする。

   第二十五条 無差別待遇

1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、租税又はこれに関連する要件であって、特に居住者であるか否かに関して同様の状況にある当該他方の締約国の国民に課されており、若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外のもの又はこれらよりも重いものを課されることはない。この1の規定は、第一条の規定にかかわらず、いずれの締約国の居住者でもない者についても、適用する。

2 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設に対する租税は、当該他方の締約国において、同様の活動を行う当該他方の締約国の企業に対して課される租税よりも不利に課されることはない。この2の規定は、一方の締約国に対して、家族の状況又は家族を扶養するための負担を理由として当該一方の締約国の居住者に認める租税上の人的控除、救済及び軽減を他方の締約国の居住者に認めることを義務付けるものと解してはならない。

3 第九条1、第十一条7、第十二条6又は第二十三条3の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の企業が他方の締約国の居住者に支払った利子、使用料その他の支払金については、当該一方の締約国の企業の課税利得の算定に当たり、当該一方の締約国の居住者に支払われたとした場合における条件と同様の条件で控除するものとする。

4 一方の締約国の企業であってその資本の全部又は一部が他方の締約国の一又は二以上の居住者によって直接又は間接に所有され、又は支配されているものは、当該一方の締約国において、租税又はこれに関連する要件であって、当該一方の締約国の類似の他の企業に課されており、若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外のもの又はこれらよりも重いものを課されることはない。

5 この条の規定は、第二条の規定にかかわらず、一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体が課する全ての種類の租税について適用する。

   第二十六条 相互協議手続

1 一方又は双方の締約国の措置によりこの条約の規定に適合しない課税を受けたと認める者又は受けることとなると認める者は、その事案につき、当該一方又は双方の締約国の法令に定める救済手段とは別に、いずれかの締約国の権限のある当局に対して申立てをすることができる。当該申立ては、この条約の規定に適合しない課税に係る措置の最初の通知の日から三年以内に、しなければならない。

2 1に規定する申立てを受けた一方の締約国の権限のある当局は、当該申立てを正当と認めるが自ら満足すべき解決を与えることができない場合には、この条約の規定に適合しない課税を回避するため、他方の締約国の権限のある当局との合意によってその事案を解決するよう努める。成立した全ての合意は、両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず、実施されなければならない。

3 両締約国の権限のある当局は、この条約の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義を合意によって解決するよう努める。両締約国の権限のある当局は、また、この条約に定めのない場合における二重課税を除去するため、相互に協議することができる。

4 両締約国の権限のある当局は、2及び3に規定する合意に達するため、直接相互に連絡すること(両締約国の権限のある当局又はその代表者によって構成される合同委員会を通じて連絡することを含む。)ができる。

5(a) 一方又は双方の締約国の措置によりある者がこの条約の規定に適合しない課税を受けた事案について、1の規定に従って当該者が一方の締約国の権限のある当局に対して申立てをし、かつ、

 (b) 当該事案に対処するために両締約国の権限のある当局が要請した全ての情報が両締約国の権限のある当局に提供された日から二年以内に、2の規定に従い両締約国の権限のある当局が当該事案を解決するための合意に達することができない場合において、

 当該者が書面により要請するときは、当該事案の未解決の事項は、仲裁に付託される。ただし、当該未解決の事項についていずれかの締約国の裁判所又は行政審判所が既に決定を行った場合には、当該未解決の事項は、仲裁に付託されない。当該事案によって直接に影響を受ける者が、仲裁決定を実施する両締約国の権限のある当局の合意を受け入れない場合を除くほか、当該仲裁決定は、両締約国を拘束するものとし、両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず、実施されなければならない。両締約国の権限のある当局は、この5の規定の実施方法を合意によって定める。

6(a) 一又は二以上の同一の事項に関する事案について裁判所又は行政審判所において手続が係属中であることを理由として、一方の締約国の権限のある当局が、当該事案について、1及び2の規定に従って両

締約国の権限のある当局の合意によって事案を解決するための手続(以下この条において「相互協議手続」という。)を停止した場合には、5(b)に規定する期間は、当該事案に係る裁判所若しくは行政審判所の手続が停止され、又は当該事案に係る訴訟若しくは審査請求が取り下げられるまで、進行を停止する。

 (b) 事案の申立てをした者及び一方の締約国の権限のある当局が、相互協議手続を停止することについて合意した場合には、5(b)に規定する期間は、当該相互協議手続の停止が解除されるまで、進行を停止する。

 (c) 事案によって直接に影響を受ける者が5(b)に規定する期間の開始の後にいずれかの締約国の権限のある当局によって要請された追加の重要な情報を適時に提供しなかったことについて両締約国の権限のある当局が合意する場合には、当該期間は、その要請された情報の提出の期限とされた日に開始し当該情報が提供された日に終了する期間と等しい期間延長する。

7(a) 仲裁人の任命については、次の規則を適用する。

  (i) 仲裁のための委員会は、国際租税に関する事項について専門知識又は経験を有する三人の個人である仲裁人によって構成される。

  (ii) 各締約国の権限のある当局は、一人の仲裁人を任命する。このようにして任命された二人の仲裁人は、仲裁のための委員会の長となる第三の仲裁人を任命する。仲裁のための委員会の長は、いずれの締約国の国民又は居住者でもあってはならない。

  (iii) 仲裁人は、それぞれ、任命を受諾する時において、両締約国の権限のある当局、税務当局及び財務省並びに事案によって直接に影響を受ける全ての者及びその顧問に対して公平でなければならず、かつ、これらの者から独立していなければならず、当該事案に係る仲裁手続を通じて、その公平性及び独立性を維持しなければならず、並びに当該仲裁手続の後の妥当な期間において、当該仲裁手続に関して仲裁人が公平であり、かつ、独立しているという外観を損なうおそれのある行為を行ってはならない。

 (b) 両締約国の権限のある当局は、仲裁人及びその職員が、仲裁手続の実施に先立って、次条2及び両締約国の関係法令に規定する秘密及び不開示に関する義務に従って仲裁手続に関する情報を取り扱うことについて書面によって合意することを確保する。

 (c) この条及び次条の規定並びに情報の交換、秘密及び行政支援に関する両締約国の法令の適用上、仲裁人及びその職員(仲裁人一人について三人までに限る。)並びに仲裁人の候補者は、情報(当該候補者については、当該候補者が仲裁人の要件を満たすことができることを確認するために必要な範囲に限る。)の開示を受けることができる者又は当局とみなす。仲裁のための委員会又は仲裁人の候補者が受領する情報及び両締約国の権限のある当局が仲裁のための委員会から受領する情報は、次条1の規定に基づいて交換された情報とみなす。

8(a) 仲裁決定は、最終的なものとする。

 (b) 仲裁決定は、いずれかの締約国の裁判所による最終的な決定によって当該仲裁決定が無効とされる場合には、両締約国を拘束しない。この場合には、5に規定する仲裁の要請は、行われなかったものとし、仲裁手続(7(a)及び(c)並びに11の規定に係るものを除く。)は、行われなかったものとする。この場合には、両締約国の権限のある当局が新たな仲裁の要請は認められないことについて合意する場合を除くほか、新たな仲裁の要請を行うことができる。

 (c) 仲裁決定は、先例としての価値を有しない。

9(a) 事案によって直接に影響を受ける者が、仲裁決定を実施する両締約国の権限のある当局の合意を受け入れない場合には、当該事案について、両締約国の権限のある当局による更なる検討は、行われない。

 (b) 事案によって直接に影響を受けるいずれかの者が、当該事案に係る仲裁決定を実施する両締約国の権限のある当局の合意についての通知がその者に送付された日の後六十日以内に、裁判所若しくは行政審判所に対し当該合意において解決された全ての事項に関する訴訟若しくは審査請求を取り下げない場合又は当該合意と整合的な方法によって当該事項に関する係属中の訴訟手続若しくは行政手続を終了させない場合には、当該合意は、当該事案によって直接に影響を受ける者によって受け入れられなかったも

のとする。

10 この条の規定の適用上、仲裁の要請が行われてから仲裁のための委員会がその決定を両締約国の権限のある当局に送付するまでの間に、次の(a)から(c)までの規定のいずれかに該当する場合には当該事案に関する仲裁手続は終了し、次の(a)又は(b)の規定に該当する場合には当該事案に関する相互協議手続も終了する。

 (a) 両締約国の権限のある当局が、2の規定に従い当該事案を解決するための合意に達する場合

 (b) 当該事案の申立てをした者が、仲裁の要請又は相互協議手続の申立てを撤回する場合

 (c) 当該事案の未解決の事項についていずれかの締約国の裁判所又は行政審判所が決定を行う場合

11 各締約国の権限のある当局は、自らの費用及び自らが任命する仲裁人の費用を負担する。両締約国の権限のある当局が別段の合意をする場合を除くほか、仲裁のための委員会の長の費用その他仲裁手続の実施に関する費用は、両締約国の権限のある当局が均等に負担する。

12 5からまでの11規定は、第四条3の規定に該当する事案については、適用しない。

   第二十七条 情報の交換

1 両締約国の権限のある当局は、この条約の規定の実施又は両締約国若しくは両締約国の地方政府若しくは地方公共団体が課する全ての種類の租税に関する両締約国の法令(当該法令に基づく課税がこの条約の規定に反しない場合に限る。)の運用若しくは執行に関連する情報を交換する。情報の交換は、第一条及び第二条の規定による制限を受けない。

2 1の規定に基づいて一方の締約国が受領した情報は、当該一方の締約国がその法令に基づいて入手した情報と同様に秘密として取り扱うものとし、1に規定する租税の賦課若しくは徴収、当該租税に関する執行若しくは訴追、当該租税に関する不服申立てについての決定又はこれらの監督に関与する者又は当局(裁判所及び行政機関を含む。)に対してのみ開示される。これらの者又は当局は、当該情報をそのような目的のためにのみ使用する。これらの者又は当局は、当該情報を公開の法廷における審理又は司法上の決定において開示することができる。第一文から第三文までの規定にかかわらず、一方の締約国が受領した情報は、両締約国の法令に基づいて他の目的のために使用することができる場合において、当該情報を提供した他方の締約国の権限のある当局がそのような使用を許可するときは、他の目的のために使用することができる。

3 1及び2の規定は、いかなる場合にも、一方の締約国に対して、次のことを行う義務を課するものと解してはならない。

 (a) 当該一方の締約国又は他方の締約国の法令及び行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること。

 (b) 当該一方の締約国又は他方の締約国の法令の下において又は行政の通常の運営において入手することができない情報を提供すること。

 (c) 営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密若しくは取引の過程を明らかにすることとなる情報又は公開することが公の秩序に反することとなる情報を提供すること。

4 一方の締約国がこの条の規定に従って情報の提供を要請する場合には、他方の締約国は、当該情報が自己の課税目的のために必要でないときであっても、当該情報を入手するために必要な手段を用いる。第一文に規定する義務は、3に定める制限に従うが、その制限は、いかなる場合にも、当該情報が自己の課税目的のために必要でないことのみを理由として、締約国が情報の提供を拒否することを認めるものと解してはならない。

5 3の規定は、いかなる場合にも、提供を要請された情報が銀行その他の金融機関、名義人、代理人若しくは受託者が有する情報又はある者の所有に関する情報であることのみを理由として、締約国が情報の提供を拒否することを認めるものと解してはならない。

   第二十八条 租税の徴収における支援

1 両締約国は、租税債権の徴収について相互に支援を行う。この支援は、第一条及び第二条の規定による制限を受けない。両締約国の権限のある当局は、この条の規定の実施方法を合意によって定めることができる。

2 この条において、「租税債権」とは、次に掲げる租税(その課税がこの条約又は両締約国が当事国となっている他の取極の規定に反しない場合に限る。)の額並びに当該租税の額に関する利子、行政上の金銭罰及び徴収又は保全の費用をいう。

 (a) 日本国においては、

  (i) 第二条3(a)に掲げる租税

  (ii) 復興特別法人税

  (iii) 消費税

  (iv) 地方消費税

  (v) 相続税

  (vi) 贈与税

 (b) フィリピンにおいては、

  (i) 第二条3(b)に掲げる租税

  (ii) 付加価値税

  (iii) その他の百分率税 遺産税

  (iv) 贈与者税

  (v) 物品税

  (vi) 印紙税

 (c) その他の租税で両締約国の政府が外交上の公文の交換によって随時合意するもの

 (d) (a)から(c)までに掲げる租税に加えて又はこれらに代わってこの条約の署名の日の後に課される租税であって、これらの規定に掲げる租税と同一であるもの又は実質的に類似するもの

3 一方の締約国の租税債権が当該一方の締約国の法令に基づいて執行することができるものであり、かつ、その徴収における支援の要請の時において当該租税債権を負担する者が当該一方の締約国の法令に基づいて当該租税債権の徴収を停止させることができない場合には、当該租税債権は、当該一方の締約国の権限のある当局の要請に基づいて、他方の締約国の権限のある当局によって徴収のために引き受けられるものとする。当該租税債権は、この3の規定に基づいて当該他方の締約国が要請することができる条件を満たす当該他方の締約国の租税債権であるとした場合と同様に、当該他方の締約国により、当該他方の締約国の租税の執行及び徴収について適用される当該他方の締約国の法令に従って徴収される。

4 一方の締約国の租税債権が当該一方の締約国の法令に基づきその徴収を確保するために当該一方の締約国が保全の措置をとることができるものである場合には、当該租税債権は、当該一方の締約国の権限のある当局の要請に基づいて、他方の締約国の権限のある当局によって保全の措置のために引き受けられるものとする。当該他方の締約国は、その保全の措置をとる時において当該租税債権が当該一方の締約国において執行することができないものである場合又は当該租税債権を負担する者がその徴収を停止させる権利を有する場合であっても、当該租税債権が当該他方の締約国の租税債権であるとした場合と同様に、当該租税債権について、当該他方の締約国の法令に従って当該保全の措置をとる。

5 3及び4の規定にかかわらず、3又は4に規定する徴収又は保全の措置のために一方の締約国の権限のある当局によって引き受けられた租税債権は、当該一方の締約国において、当該一方の締約国の法令の下において租税債権であるとの理由によって適用される時効の対象とされず、また、その理由によって適用される優先権を与えられない。3又は4に規定する徴収又は保全の措置のために一方の締約国の権限のある当局によって引き受けられた租税債権は、当該一方の締約国において、他方の締約国の法令の下において当該租税債権について適用される優先権を有するものではない。

6 3又は4に規定する徴収又は保全の措置のために一方の締約国の権限のある当局によって引き受けられた租税債権の徴収に当たって当該一方の締約国がとった措置は、当該措置が他方の締約国によってとられたならば当該他方の締約国の法令に従い当該租税債権について適用される時効を停止し、又は中断する効果を有することとなる場合には、当該他方の締約国の法令の下において同様の効果を有する。当該一方の締約国の権限のある当局は、当該一方の締約国が当該租税債権の徴収についてとった措置について当該他方の締約国の権限のある当局に通知する。

7 一方の締約国の租税債権の存在、有効性又は金額に関する争訟の手続は、他方の締約国の裁判所又は行政機関に提起されない。

8 一方の締約国の権限のある当局が3又は4の規定に基づいて要請した後、他方の締約国が関連する租税債権を徴収し、当該一方の締約国に送金するまでの間に、当該租税債権が次の(a)又は(b)の規定に該当しなくなった場合には、当該一方の締約国の権限のある当局は、当該他方の締約国の権限のある当局に対してその事実を速やかに通知し、当該他方の締約国の権限のある当局の選択により、当該一方の締約国の権限のある当局は、その要請を停止し、又は撤回する。

 (a) 3の規定に基づく要請については、当該租税債権が、当該一方の締約国の法令に基づいて執行することができるものであり、かつ、当該租税債権を負担する者が当該一方の締約国の法令に基づいて当該租税債権の徴収を停止させることができないものであること。

 (b) 4の規定に基づく要請については、当該租税債権が、当該一方の締約国がその法令に基づきその徴収を確保するために保全の措置をとることができるものであること。

9 この条の規定は、いかなる場合にも、一方の締約国に対して、次のことを行う義務を課するものと解してはならない。

 (a) 当該一方の締約国又は他方の締約国の法令及び行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること。

 (b) 公の秩序に反することとなる措置をとること。

 (c) 他方の締約国がその法令又は行政上の慣行に基づいて徴収又は保全のために全ての妥当な措置をとっていない場合に支援を行うこと。

 (d) 当該一方の締約国の行政上の負担が他方の締約国が得る利益に比して明らかに不均衡である場合に支援を行うこと。

   第二十九条 外交使節団及び領事機関の構成員

 この条約のいかなる規定も、国際法の一般原則又は特別の協定に基づく外交使節団又は領事機関の構成員の租税上の特権に影響を及ぼすものではない。

   第三十条 特典を受ける権利

 この条約の他の規定にかかわらず、全ての関連する事実及び状況を考慮して、この条約に基づく特典を受けることが当該特典を直接又は間接に得ることとなる仕組み又は取引の主たる目的の一つであったと判断することが妥当である場合には、そのような場合においても当該特典を与えることがこの条約の関連する規定の目的に適合することが立証されるときを除くほか、その所得については、当該特典は、与えられない。

   第三十一条 効力発生

1 この条約は、両締約国のそれぞれの法令上の手続に従って承認されるものとし、その承認を通知する外交上の公文の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずる。

2 この条約は、次のものについて適用する。

 (a) 日本国においては、

  (i) 課税年度に基づいて課される租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の租税

  (ii) 課税年度に基づかないで課される租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に課される租税

 (b) フィリピンにおいては、

  (i) 源泉徴収される租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に取得される課税対象額

  (ii) その他の租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に生ずる所得その他の課税対象

3(a) 2の規定にかかわらず、第二十六条5から12までの規定は、次の事案について適用する。

  (i) 両締約国の政府が外交上の公文の交換によって合意する日以後に第二十六条1の規定に従って申し立てられた事案

  (i) (i)に規定する日の前に第二十六条1の規定に従って申し立てられた事案。この場合には、当該事案の未解決の事項は、同日から二年を経過するまでは、仲裁に付託されない。

 (b) フィリピンが第二十六条5からまでの規定を実施するための国内的な根拠及び手続を導入した場合又はフィリピンが、この条約の署名の日の後に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための協定であって、仲裁に関する規定(同条1の規定に相当する当該協定の規定に従って事案の申立てをする者からの要請にのみ基づいて日本国以外の国又は地域とフィリピンとの間で適用されるものに限る。)を含むものを締結する場合には、両締約国の政府は、(a)(i)に規定する日について合意する。フィリピンの権限のある当局は、これらの場合に該当することとなった後直ちに、日本国の権限のある当局に対してその旨を通知する。

4(a) 2の規定にかかわらず、第二十七条及び第二十八条の規定は、これらの規定の対象となる租税が課される日又は当該租税に係る課税年度にかかわらず、次に掲げる日から適用する。

  (i) 第二十七条の規定に関しては、この条約の効力発生の日

  (ii) 第二十八条の規定に関しては、両締約国の政府が外交上の公文の交換によって合意する日

 (b) フィリピンが第二十八条の規定を実施するための国内的な根拠及び手続を導入した場合又はこの条約の署名の日の後に、フィリピンが当事国である他の国際文書の規定であって当該国際文書の他の当事国に対して租税債権の徴収について支援を行うことをフィリピンに求めるものの適用が開始される場合には、両締約国の政府は、(a)(ii)に規定する日について合意する。フィリピンの権限のある当局は、これらの場合に該当することとなった後直ちに、日本国の権限のある当局に対してその旨を通知する。

5 千九百八十年二月十三日に東京で署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約及び議定書(二千六年十二月九日にマニラで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約を改正する議定書による改正を含む。)(以下「旧条約」という。)は、2及び4の規定に従ってこの条約が適用される租税について、この条約が適用される日以後、適用されなくなる。

6 この条約の効力発生の時において旧条約第二十条又は第二十一条の規定に基づく特典を受ける権利を有する個人は、この条約の効力発生の後においても、旧条約がなおその効力を有するとした場合に当該特典を受ける権利を失う時まで当該特典を受ける権利を引き続き有する。

7 旧条約は、1から6までの規定に従って適用される最後の日に終了する。

   第三十二条 終了

 この条約は、一方の締約国によって終了させられる時まで効力を有する。いずれの一方の締約国も、この条約の効力発生の日から五年の期間が満了した後に開始する各暦年の末日の六箇月前までに外交上の経路を通じて他方の締約国に対して終了の通告を行うことによって、この条約を終了させることができる。この場合には、この条約は、次のものについて適用されなくなる。

 (a) 日本国においては、

  (i) 課税年度に基づいて課される租税に関しては、当該通告が行われた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の租税

  (ii) 課税年度に基づかないで課される租税に関しては、当該通告が行われた年の翌年の一月一日以後に課される租税

 (b) フィリピンにおいては、

  (i) 源泉徴収される租税に関しては、当該通告が行われた年の翌年の一月一日以後に取得される課税対象額

  (ii) その他の租税に関しては、当該通告が行われた年の翌年の一月一日以後に生ずる所得その他の課税対象

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

二千二十六年五月二十八日に東京で、英語により本書二通を作成した。

日本国のために
  遠藤和也

フィリピン共和国のために
  ミレーン・ガルシア=アルバノ



議定書

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約(以下「条約」という。)の署名に当たり、日本国及びフィリピン共和国は、条約の不可分の一部を成す次の規定を協定した。

1(a) 一方の締約国の企業が他方の締約国内に恒久的施設を有する場合には、当該恒久的施設に帰せられる利得(船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得するものを除く。)に対しては、当該利得が当該恒久的施設から当該他方の締約国外に存在する当該企業の他の構成部分に送金される時に、当該他方の締約国において、当該他方の締約国の法令に従って付加的な租税を課することができる。ただし、その租税の額は、その送金される利得の額の十パーセントを超えないものとする。

 (b) 条約第二十五条のいかなる規定も、いずれかの締約国が(a)に規定する租税を課することを妨げるものと解してはならない。

2 条約第八条2の規定に関し、フィリピンが、条約の署名の日の後に、日本国以外の国又は地域との間の協定であって、船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得に対するフィリピンにおける課税について同条2に規定する取扱いよりも有利な取扱いを規定する規定を含むものを締結する場合には、両締約国は、日本国の要請に基づき、その取扱いを条約に規定することを目的として交渉を開始する。フィリピンの権限のある当局は、この場合に該当することとなった後直ちに、日本国の権限のある当局に対してその旨を通知する。

3 条約第十条2(a)及び(b)の規定に関し、フィリピンの居住者である法人についての「配当の支払を受ける者が特定される日」とは、配当の支払を受ける者を特定するために設定される当該法人の株主の記録日をいうことが了解される。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。

二千二十六年五月二十八日に東京で、英語により本書二通を作成した。

日本国のために
  遠藤和也

フィリピン共和国のために
  ミレーン・ガルシア=アルバノ



{漁に「あさ」とルビあり}