[文書名] 日・マレーシア共同声明
1. 2026年6月10日、東京において、高市早苗内閣総理大臣とアンワル・イブラヒム・マレーシア首相は、建設的かつ生産的な二国間首脳会談を開催した。
2. 両首脳は、2023年12月に構築された包括的・戦略的パートナーシップの下で、安全保障、経済、人材育成を含む幅広い分野において二国間協力が進展していることを確認し、このパートナーシップを更に強化していくことに同意した。
3. 両首脳は、日本とマレーシアの長年にわたる友好とパートナーシップの礎としての東方政策の重要な役割を再確認するとともに、両国が2027年の国交樹立70周年を迎えるに当たり、各分野での交流と協力を通じて互いの知識、経験、専門知識を活用することにより、相互に資する、より深いパートナーシップへとこの政策を更に発展させていくことを確認した。
4. 両首脳は、本質的原則を共有する日本の「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)ビジョンとインド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)との相乗効果を、ASEANの中心性と一体性を尊重しつつ深化させること及び法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて協力することへのコミットメントを再確認した。アンワル首相は、高市総理大臣が2026年5月2日に行った演説で表明した進化したFOIPのビジョンを歓迎し、これが両者のコミットメントを促進し、地域における平和、自由及び繁栄に貢献する重要なイニシアティブであると認識した。
安全保障・安全分野に関する協力
5. 両首脳は、国際連合憲章の原則に基づく地域内外の平和、安定及び繁栄へのコミットメント並びに国際法の堅持へのコミットメントを再確認した。両首脳はまた、安全保障協力の一層の推進に対するコミットメントを改めて表明し、次官級二国間協議及び2024年に立ち上げられた戦略対話の次回会合を早期に開催する意向を確認した。
6. 両首脳は、2023年以来の日本による政府安全保障能力強化支援(OSA)を通じた安全保障協力の深化を歓迎し、長期的な協力の展望を見据え、引き続き案件形成を実施していくことを確認した。
7. 両首脳は、海上自衛隊とマレーシア海軍との二国間訓練が継続して実施されていることを歓迎した。両首脳はまた、両国の防衛当局間の対話を継続し、両者間の訓練及び交流を更に促進していく意向を確認した。両首脳はさらに、2018年に締結された日・マレーシア防衛装備品・技術移転協定の枠組みの下で具体的案件の策定を加速することを決定した。アンワル首相は、新たな枠組みが両国間の防衛協力の可能性を大幅に拡大することから、日本政府による防衛装備移転三原則及びその運用指針の見直しを歓迎した。
8. 両首脳は、海上保安庁とマレーシア海上法令執行庁間の海上保安協力の深化を認識し、本首脳会談の機会に両機関間の協力覚書(MOC)が署名されたことを歓迎した。両首脳は、両国間の更なる協力が、マラッカ海峡及び南シナ海を含むアジアの海域における安全かつ自由な航行及び上空飛行の確保、並びに強靱で強固かつ統合されたサプライチェーンの構築に貢献することへの期待を表明した。
9. 両首脳は、オンライン詐欺、薬物犯罪、資金洗浄を含む国境を越える犯罪、並びにテロ及び暴力的過激主義の分野において二国間協力を強化し、推進し、深化させることを決定した。
経済・人的交流
10. 両首脳は、日本とマレーシアの長年にわたる二国間協力の重要性を強調し、2023年に包括的・戦略的パートナーシップが構築されて以来、経済・貿易関係が深化していることを歓迎した。両首脳は、それぞれの経済成長戦略に基づき、戦略的優先事項が緊密に連携され、強力な相乗効果を生み出し得る協力を一層深めるという共通のコミットメントを再確認した。両首脳は、両国の産業政策を考慮に入れつつ、官民の産業協力を更に発展させることで一致した。この点に関し、両首脳は、ハイブリッド自動車(HEV)の促進に関する協力を含むプロドゥアとダイハツ工業の協力に代表される、マレーシアの自動車産業への日本企業による積極的な投資を歓迎した。両首脳はまた、日本・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定、及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)の完全かつ効果的な実施を確保することに引き続きコミットする。
11. 両首脳は、4月の「パワー・アジア」(アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ)の立上げの重要性への両者の認識を歓迎し、再確認した。両首脳は、中東情勢に起因する世界のエネルギー供給の不安定化や地政学的リスクを踏まえ、地域のエネルギー安全保障を強化することへのコミットメントを確認した。アンワル首相は、LNGをはじめとする不可欠なエネルギー供給や、ナフサ、尿素及び医療用手袋などの石油・化学製品を含め、日本への開かれた安定的な貿易の流れを促進することについてマレーシアの最大限のコミットメントを表明した。両首脳は、マレーシアの国内の優先順位及び利用可能な余剰能力に沿って日本のニーズを支援する方策の検討を含め、この分野におけるマレーシアと日本の協力を強化することで一致した。
12. 両首脳は、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の枠組みの下で、域内におけるエネルギー安全保障、経済成長及び脱炭素化の同時実現に向け、協力の深化を歓迎するとともに、更に強化していくことで一致した。両首脳は、ここに言及された取組が、エネルギー安全保障及び経済強靱化の観点を考慮し、「パワー・アジア」及びAZEC2.0に組み込まれることへの期待を表明した。この観点から、エネルギー安全保障及びエネルギー移行分野における協力に関する意向表明文書(LOI)と、環境及び持続可能性の分野における協力覚書(MoC)の署名を、かかる協力を前進させる上での重要な一歩として歓迎した。両首脳は、二国間クレジット制度(JCM)を通じたカーボン市場メカニズムに関する二国間協力を強化する機会を歓迎し、世界初のアンモニア専焼ガスタービン発電の取組みのための生産設備の建設開始及び持続可能な航空燃料(SAF)を含むバイオ燃料に関する民間セクターの取組のための生産設備の建設開始を歓迎するとともに、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術に関するコミュニケーションを推進することで一致した。更に、JBICとテナガ・ナショナル、サラワク・エナジー、ペトロナスなどマレーシア側のカウンターパートとの協力の下でのASEANパワーグリッド構想に関する二国間協力、マレーシアにおける初のニアリー・ゼロ・エナジー・ビルディング(NearlyZEB)がエネルギー効率化に向けた重要な一歩であること、並びにミドリ・インフィニティを通じた日本及びマレーシアの大学間における農業分野の温室効果ガス削減に関する共同研究及び能力構築の進展を、高く評価した。
13. 両首脳は、原子力安全、核セキュリティ及び核不拡散の最高水準を確保するとともにマレーシアにおける原子力の平和的利用の促進に向けて協力していくことで一致した。高市総理大臣は、日本の支援計画を策定する上での基礎として、原子力技術の選択肢、立地選定、事業面及び制度面の取決めを含む、原子力導入に向けたマレーシアの準備状況に関するアップデートの共有を歓迎した。両首脳は、原子力分野における日本のマレーシアへの能力構築支援を歓迎した。
14. 両首脳は、経済安全保障の分野における協力を強化するとの見解を共有した。両首脳は、あらゆる形態の経済的威圧、政策及び慣行の利用及び世界のサプライチェーンに重大な悪影響を及ぼし得る恣意的な輸出規制に懸念を表明した。両首脳は、重要物資を含むサプライチェーンの強靱性を強化するための協力を深化させ、信頼できるパートナー間で、透明で、多様で、安全で、持続可能な、信頼できるサプライチェーンを促進することで一致した。この観点から、両首脳は、JICA、JOGMEC及びJBICによる継続的な協力、並びに両国の関係法令および政策や優先事項に従った規制手続の合理化のための措置を通じて、レアアースなどの重要鉱物のサプライチェーンの強靱性を強化することで一致した。さらに、両首脳は、レアアースを含む重要鉱物分野において、オーストラリアやフランスなど同志国との協力を促進することで一致した。両首脳はまた、ARCPEEC(電気・電子機器廃棄物(e-waste)、使用済自動車(ELV)及び重要鉱物に関する日ASEAN資源循環パートナーシップ)を通じて、重要鉱物の資源循環に関する協力を深化することで一致した。マレーシアは、日本が、アジア開発銀行(ADB)がマレーシアを含むアジアにおける重要鉱物のサプライチェーンを強化するために立ち上げた「重要鉱物-製造業資金パートナーシップ・ファシリティ(CMM-FPF)」に2,000万米ドルを拠出する旨を発表したことを歓迎した。アンワル首相はまた、マレーシアを含むASEANにおける重要鉱物のサプライチェーンを強化するための世界銀行グループの「RISE(強靱で包摂的なサプライチェーンの強化)パートナーシップ」を歓迎した。
15. 両首脳は、宇宙が持続可能な経済成長とイノベーションを促進する戦略的分野であると認識し、宇宙経済における日・マレーシア協力を一層強化することで一致した。両首脳はまた、地球観測データを含む衛星データの活用を様々な産業分野において促進することの重要性を確認した。
16. 両首脳は、自国のAIに関する能力を強化し、安全、安心で、信頼できるAIエコシステムを構築することの重要性を認識し、日ASEAN・AI共創イニシアティブの下で更なる協力を模索することで一致した。この文脈において、両首脳は、主に日本及びマレーシアのスタートアップを含むAI関連企業間で、社会課題解決やその他の協力を行う枠組として、日マレーシアAIプラットフォームを設立することで一致した。両首脳は、グリーン・トランスフォーメーションに貢献するAI及び半導体関連分野における日・マレーシア協力のための民間主導の戦略的連携枠組みを歓迎した。また、アンワル首相は、日本政府が設けたプログラムを通じてマレーシアへ進出する日本のスタートアップの増加を歓迎し、両首脳は、マレーシア企業の日本進出を含むスタートアップ分野での協力を進めることで一致した。
17. 両首脳は、パーム油を含む持続可能で責任あるサプライチェーンを強化するため、日本企業とマレーシアのステークホルダーが関与する共同の取組としての協力を歓迎した。また、両首脳は持続可能な熱帯林及び持続可能なパーム油産業の実現を目指す共同研究を歓迎した。さらに、こうした協力の強化を通じた農産・食品貿易の拡大を歓迎した。
18. 両首脳は、両国間の通貨スワップ契約が地域のセーフティネットの一部として重要な役割を果たしてきたことを再確認し、その強化に向けた更なる議論を指示した。また、二国間貿易・投資におけるものも含め現地通貨決済の利用促進に向けた取組を検討することで一致した。両首脳はまた、地域金融セーフティネットの強化やDRF(災害リスクファイナンス)の促進に向けた取組を含む、地域金融協力の重要性を再確認した。
19. 高市総理大臣は、2027年3月19日から9月26日まで日本・横浜で開催される2027年国際園芸博覧会へのマレーシアの参加を歓迎した。両首脳は、園芸博成功のために最善を尽くすことを確認した。
20. 両首脳は、東方政策の下での両国間の人的交流が二国間関係の礎となっていることを改めて確認した。高市総理大臣は、JENESYS、さくらサイエンスプログラム、国費外国人留学生制度を含む既存のプログラムを引き続き推進し、人材交流の促進を継続するとの日本の意向を確認した。両首脳は、相互交流を促進することで東方政策をアップデートする意向を確認した。日本とマレーシアの二国間共同研究について、両首脳は、NEXUS(Networked Exchange, United Strength for Stronger Partnerships between Japan and ASEAN)やMSE(Malaysia Science Endowment)といったプログラムを活用して両国共通の国家的課題の解決に向けてイノベーションを推進し、人材の国際流動を促進することで一致した。両首脳はまた、2024年9月の筑波大学マレーシア校の開学を歓迎し、マレーシア日本国際工科院(MJIIT)2.0コンセプトの実現に向けた協力を加速させ、文化及びスポーツ分野での交流を促進することで一致した。
21. 両首脳は、2025年の相互訪問者数が約105万人に達したことを歓迎した。両首脳は人的交流の拡大で一致するとともに、両国を結ぶ新たな航空路線の就航を歓迎した。
地域・国際社会における協力
22. 両首脳は、東シナ海及び南シナ海の情勢について意見を交換し、懸念を認識した。両首脳は、南シナ海における平和、安定、安全保障、並びに航行及び上空飛行の自由を維持することの重要性を再確認した。更に、国際法、特に1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)に従って、全ての関係当事者が、自制し、紛争の平和的解決を追求することの重要性を改めて強調した。
23. 両首脳は、中東情勢、特にイラン及びパレスチナについて意見を交換し、地域情勢の悪化に深刻な懸念を表明した。両首脳は、事態の早期沈静化実現のため、外交努力の継続が極めて重要であることを再確認し、緊密な連携を継続する意向を確認した。ホルムズ海峡における自由で安全な航行が一刻も早く確保されるよう、引き続き連携して対応することで一致した。両首脳は、パレスチナにおける包括的、公正かつ永続的な和平及び二国家解決の実現へのコミットメントを再確認した。両首脳は、2025年7月にパレスチナ開発のための東アジア協力促進会議(CEAPAD)閣僚会合を共同主催し、「第4回CEAPAD閣僚級会合クアラルンプール行動計画」を発表したことを踏まえ、当該及びその他の枠組みを通じたパレスチナへの支援を継続することで一致した。
24. 高市総理大臣は、マレーシアが2025年のASEAN議長国としての年を成功裏に締めくくったことに祝意を表し、ASEANの中心性と一体性に対する日本の揺るぎない支持を再確認した。両首脳はまた、ミャンマー情勢についても意見を交わし、平和、安定及び民主主義の回復の重要性を改めて再確認した。両首脳は、「5つのコンセンサス」の着実な履行を確保するため、情勢の改善に向けた取組を一層強化することを再確認した。マレーシアは、カンボジア・タイ国境地域に派遣されたASEAN停戦監視団の活動のために、日本がOSAを通じて機材を供与したことを高く評価した。
25. 両首脳は、北朝鮮の核・ミサイル計画及び悪意あるサイバー活動に対する深い懸念を共有し、全ての関連する国連安全保障理事会(安保理)決議の完全な履行を含む平和的な方法による朝鮮半島の完全な非核化へのコミットメントを確認するとともに、拉致問題の即時解決の重要性を再確認した。
26. 両首脳は、今日の国際社会の現実を真に反映する形で、安保理を含む国連を改革する緊急の必要性を再確認した。特に、常任理事国及び非常任理事国双方の議席カテゴリーの拡大を通じて、国連安保理の代表性、実行性、透明性及び包摂性を強化することの重要性を強調した。高市総理大臣は、日本の国連安保理の常任理事国入りに対するマレーシアの継続的な支援に深い謝意を表明した。両首脳は、国連安保理非常任理事国選挙について、マレーシアの2036年~2037年の任期及び日本の2033~2034年の任期に関し、相互の支持を表明した。
結語
27. 両首脳は、本声明で大枠が示された広範な取組が、両国の強靱性を高め、安全保障と経済において自らの意思で決定する自由を促進するのみならず、二国間及び多数国間の協力を更に強化することにも資することを確認した。両首脳は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の構築に貢献することを改めて表明した。
(了)