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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 金属製造工業のための職業訓練センター設置に関する日本国政府と中華民国政府との間の協定

[場所] 台北
[年月日] 1969年12月5日
[出典] 二国間条約条約集(昭和四十四年)143‐151頁
[備考] 
[全文]

(訳文)

 金属製造工業のための職業訓練センター設置に関する日本国政府と中華民国政府との間の協定

 日本国政府及び中華民国政府は、両国間の経済及び技術協力を推進することを真摯に希望して、次のとおり協定した。

第一条

 両政府は、相互に協力して基隆支所及び高雄支所から成る金属製造工業のための職業訓練センター(以下「センター」という。)を中華民国に設置する。センターは、中華民国に澄ける金属製造工業の発展に寄与するため、次の業務を行なう。

(a) 公営及び私営の企業の需要に応ずるため前記の工業の次の職種における熟練工を訓練すること

 (i)冷作工

 (ii)機械加工

 (iii)組立て仕上げ(取付け、組立て及び修理)

 (iv)溶接

 (v)電気機器工

 (vi)製図

(b) 前記の工業に澄ける現在の技能水準を向上させることを目的として訓練制度及び訓練基準を発展させること

第二条

(1) 日本国政府は、日本国において施行されている法令に従い、センターに澄ける附表Iに掲げる日本人の専門家(以下「専門家」という。)の役務を自己の負担において供与するため必要な措置を執る。

(2) 専門家及びその家族は、中華民国において附表IIに掲げる特権、免除及び便宜を与えられる。専門家は、同様の状況の下において中華民国において勤務する第三国の専門家に与えられるよりも不利でない特権、免除及び便宜を与えられる。

第三条

(1) 日本国政府は、日本国において施行されている法令に従い、附表IIIに掲げるセンターの実習場の設置に必要な設備、機械、工具及び予備部品を自己の負担において供与するため必要な措置を執る。

(2) 前記の物品は、陸揚港においてc・i・f建てで中華民国の関係当局に引き渡された時に、中華民国政府の財産となる。

(3) 前記の物品は、中華民国の関係当局に引き渡される前に課されることのある関税、内国税その他の課徴金を中華民国において免除される。

(4) 前記の物品は、専門家の助言により、センターの目的のためにのみ使用される。

第四条

 日本国政府は、日本国に澄いて施行されている法令に従い、専門家に対応する一定数の中華民国側の要員に対して日本国における適当な技術訓練の便宜を自己の負担に澄いて供与するため必要な措置を執る。

第五条

 中華民国政府は、中華民国における専門家のこの協定に定める職務の善意の遂行に起因し、その遂行中に発生し、又はその他その遂行に関連する専門家に対する請求が生じた場合には、その請求に関する責任を負うことを約束する。

第六条

(1) 中華民国政府は、次のものを自己の負担において供与するため必要な措置を執る。

 (a)附表IVに掲げる必要な中華民国側の職員

 (b)附表Vに掲げる必要な土地及び建物並びにこれらの土地及び建物に必要な附帯施設

 (c)第三条にいう設備、機械、工具及び予備部品の代替品並びにセンターの運営に必要なその他の資材の補充品

 (d)専門家及びその家族のための家具付きの適当な宿舎並びに専門家のための交通の便宜

(2) 中華民国政府は、次のものを負担するため必要な措置を執る。

 (a)第三条にいう物品の中華民国における輸送並びにそれらの物品の据付け、操作及び維持に必要な経費

 (b)センターの運営に必要なすべての運営費(専門家の公務上の国内旅行費用を含む。)

第七条

(1) 中華民国側の理事長は、センターの運営に関する全般的管理について責任を有し、基隆及び高雄支所の中華民国側の理事は、おのおのの支所の管理について責任を有する。

(2) 専門家のうちの一名は、首席顧問としてセンターの運営に関する全般的な技術的事項について責任を有し、基隆及び高雄支所の専門家の長は、各支所の運営に関する技術的事項について責任を有する。

第八条

 両政府は、センターの運営の成功を確保するため、相互に協議を行なう。

第九条

(1) センターの運営は、この協定の効力発生の日から一年以内に開始される。

(2) 第二条にいう専門家の役務が供与される期間は、三年をこえないものとする。

第十条

(1) この協定は、署名の日に効力を生じ四年間効力を有する。

(2) この協定は、相互の合意により、さらに特定の期間延長することができる。

 千九百六十九年十二月五日に台北で、英語により本書二通を作成した。

日本国政府のために

中華民国駐在特命全権大使 板垣修

中華民国政府のために

経済部長 孫運セン{センは王へんに濬のつくり}

附表I 専門家

 (1) 首席顧問

 (2) 冷作工、機械加工、組立て仕上げ、溶接、電気機器工、製図に関する専門家

附表II 特権免除及び便宜

 (1) 海外から受け取る報酬に対して又はそれに関連して課される所得税その他の課徴金の免除

 (2) 身回品及び家財(専門家一人につき一台の自動車、一台の冷蔵庫、小電気器具及び光学器具を含む。)に対する輸入税、輸出税その他の課徴金の免除

 (3) 専門家及びその家族に対する無料の医療役務及び便宜

附表III 実習場

 (1) 冷作工実習場

 (2) 機械加工実習場

 (3) 組立て仕上げ実習場

 (4) 溶接実習場

 (5) 電気機器工実習場

 (6) その他の実習場

附表IV センターの中華民国側職員

 (1) 理事長(経済部国営事業委員会執行秘書)

 (2) 理事及び副理事

 (3) 必要な数の指導員

 (4) タイピスト、事務員、電話交換手、警備員、運転手、メッセンジャー等を含む必要な事務及び業務職員

附表V センターの土地

 (1) 主たる建物

 (2) 専門家の長のための事務室

 (3) 専門家のための事務室

 (4) 事務所

 (5) 実習場及び教室

 (6) 車庫

 (7) 倉庫

 (8) 図書館

 (9) 寄宿舎