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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 馬英九総統が斎藤正樹・日本交流協会台北事務所代表と会見

[場所] 台北
[年月日] 2008年8月1日
[出典] 台北駐日経済文化代表処
[備考] 台北駐日経済文化代表処仮訳
[全文]

8月1日、馬英九総統は総統府において、新任の斎藤正樹・日本交流協会台北事務所代表と会見した。

馬総統はその中で「台湾と日本はいずれも中国大陸との関係改善を行っており、これにより台湾と日本はそれぞれ同時に中国との双方間でも友好関係を保持することができ、これは戦後60年間にはなかった新しい状況である。これは東アジアの平和に対してきわめて遠大な影響をもたらし、また、米国の多くのシンクタンクおよび研究者の間においてもコンセンサスを形成しており、多くの人々が両岸関係の改善が東アジアの安定と平和をもたらすという見通しに対し、慎重で楽観的な態度を持っていることがわかる」との見解を示した。

馬総統はさらに「斎藤代表は1966年に来台し中国語を学ばれ、日本においてはきわめてキャリアを積み重ねてこられた外交官であり、かつてニュージーランド大使、駐中国大使館公使を歴任された。このたび日本政府がこのように豊富な経歴があり華人社会に対しても深い理解のある外交官を台湾へ派遣されたことに、歓迎の意を表する」と述べた。

台日両国における観光客が大幅に成長していることについて、馬総統は評価の意を示し、「日本を訪れる外国人観光客数の中で、韓国人が第一位であり、第二位が台湾からの旅行客である。日本人も台湾を訪れる外国人観光客の第一位であり、今後も引き続き増加するよう希望している。また、台日両国における自動車免許証の相互承認も双方の関係が良好であることを象徴している」と強調した。

馬総統は「私の総統就任後2カ月あまりにおいて、台日は双方関係のより一層の改善を期待している。2年前に私が日本を訪問した時、当時国会議員の一人であった福田康夫首相と会見する機会があった。その時の会見で、私は福田先生およびそのご同輩の数多くの日本の政治関係者に対し深い印象を持った。当時、私は福田先生に対し、台湾主流の民意は『統一せず、独立せず、武力行使せず』であると述べ、福田先生はこれを聞いた後、『日本の一部のメディアおよび政治関係者はこのような内容に対して深く理解しているわけではない。私が日本各地へ行く機会にこれらの情報を広く伝え、日本社会に対し現在の台湾の民意の方向性を十分に理解させたい』と表明された」と当時を回顧した。

馬総統は続けて「当時、私は福田先生に『もし国民党が政権を獲得したならば、中国大陸との関係は改善されるはずであり、平和と繁栄の前提の下、双方の交流が促進されるよう希望している』と述べた。このような見方について、日本の一部メディアは私を『親中』と指摘したが、福田先生はそのようには認識されず、また、私と接触したことのある多くの日本の著名な政治関係者も私が『親中』であるとは認識せず、台湾がもし大陸と関係改善ができ、海峡両岸の平和が達成されたならば、基本的には日本の国家利益にも合致するものであると指摘された。当時、私は福田先生の見方にきわめて敬服し、その観察については、福田先生が首相に就任後、大陸政策面においては十分に当時の談話の観点を体現化しており、日本と中国大陸との関係の改善が見られる」と評価した。

馬総統は「この2年足らずの間に、日本と中国のトップ間の相互訪問は頻繁となり、軍艦さえも相互訪問しており、さらには東シナ海におけるガス田問題についても、双方が資源を共に享受し、共同開発を行うコンセンサスを達成させた。これらは戦後60年来にはなかった成果であり、このような発展は東南アジアの平和に対し、きわめて大きく役立つものである」と述べた。

また、6月10日に発生した台湾の遊漁船「聯合号」が日本の海上保安庁の巡視船と接触、沈没した事件について、馬総統は「当時、多くの人々がこの事件が台湾と日本の友好関係に影響することを危惧したが、その後の10日間あまりの発展状況から見ると、この事件は双方の協議の下で、平和的で冷静な方向に向かって一歩ずつ解決しており、対立の状況が発生したものの、衝突することはなかった。福田首相が平和的冷静な方法で対応するよう公開で呼びかけた時、私もただちにこれを支持する声明を発表した。また、池田維・前代表の努力と仲介により、台湾人船長の諒解を順調に得て、双方は現在賠償問題について引き続き協議しているところである。さらには、これについて高村正彦外相もわが国の対処方法に対し公開で評価の意を示し、私はきわめて嬉しく安堵した」と強調した。

馬総統はこの事件の処理過程を回顧し「双方のトップの相互信頼が大切であると言える。実際にも双方における漁業権争議は長期にわたり存在している問題であり、もし我々が双方のトップの相互信頼により、すみやかに協議を再開し、双方が共に受け入れることのできる解決方法を探し出すことができれば、類似した事件の発生は必ずや大幅に減少するであろう」との認識を示した。

馬総統は「斎藤代表が、台湾と日本との関係において新しい時代に邁進するというその良い機会に台湾に赴任された。双方が今後誠意をもって注意深く各問題に対処するよう希望するものであり、それにより両国の関係は必ずや大きく邁進するであろう」と期待の意を示した。

斎藤代表は「台日両国の関係は、双方のビザ免除措置の実施、両国の観光客による相互訪問の頻繁さを含め、きわめて良好である。毎年双方の国民による相互訪問は250万人に達しており、経済貿易面で、日本は台湾にとり第2位の貿易パートナーであり、台湾は日本にとり第4位の貿易パートナーである。このような良好な環境の下で、私は駐在期間中に台日関係がより一層発展することを衷心より期待し希望するものであり、これを私の任務として双方の交流の相互連動を推し進めていくつもりである。また、両岸関係の改善は台日間の活動空間を拡大することに役立つものであると評価しており、それにより今後、台・日・中の三方がいずれも恩恵をこうむる状況を共に創出していくことができるものと信じている」との考えを示した。