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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 投資の自由化、促進及び保護に関する相互協力のための財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め(日台民間投資取決め)

[場所] 台北
[年月日] 2011年9月22日
[出典] 財団法人交流協会
[備考] 
[全文]

第1条

 財団法人交流協会及び亜東関係協会(以下「双方」という。)は,1972年12月26日に作成した「財団法人交流協会と亜東関係協会との間の在外事務所相互設置に関する取決め」の第3項(1)及び(7)に関連し,以下第2条から第26条までに規定する事項について必要な関係当局の同意が得られるよう相互に協力する。

第2条

この取決めにおいて,

 (1)「投資財産」とは,投資家により,直接又は間接に所有され,又は支配されている全ての種類の資産であって,投資としての性質を有するものをいい,次のものを含む。

  (a)企業及び企業の支店

  (b)株式,出資その他の形態の企業の持分(その持分から派生する権利を含む。)

  (c)債券,社債,貸付金その他の債務証書(その債務証書から派生する権利を含む。)

  (d)契約(完成後引渡し,建設,経営,生産又は利益配分に関する契約を含む。)に基づく権利

  (e)金銭債権及び金銭的価値を有する契約に基づく給付の請求権

  (f)知的財産権(著作権及び関連する権利,特許権並びに実用新案,商標,意匠,集積回路の回路配置,植物の新品種,営業用の名称,原産地表示又は地理的表示及び開示されていない情報に関する権利を含む。)

  (g)法令又は契約により与えられる権利(例えば,特許,免許,承認,許可。天然資源の探査及び採掘のための権利を含む。)

  (h)他の全ての資産(有体であるか無体であるかを問わず,また,動産であるか不動産であるかを問わない。)及び賃借権,抵当権,先取特権,質権その他の関連する財産権投資財産には,投資財産から生ずる価値,特に,利益,利子,資産利得,配当,使用料及び手数料を含む。投資される資産の形態の変更は,その投資財産としての性質に影響を及ぼすものではない。

 (2)「投資家」とは,次の自然人及び企業であって,他方の側の区域内において投資を行おうとし,行っており,又は既に行ったものをいう。

  (a) 交流協会については,

   (i) 日本国の国籍を有する自然人

   (ii) 営利目的であるか否かを問わず,また,民間のものであるか否かを問わず,日本国の法令に基づいて適切に設立され,又は組織される法人その他の事業体(社団,信託,組合,個人企業,合弁企業,団体,組織又は会社を含む。)である企業

  (b) 亜東関係協会については,

   (i)台湾の市民権を有する自然人

   (ii)営利目的であるか否かを問わず,また,民間のものであるか否かを問わず,台湾の法令に基づいて適切に設立され,又は組織される法人その他の事業体(社団,信託,組合,個人企業,合弁企業,団体,組織又は会社を含む。)である企業

 (3)「投資活動」とは,投資財産の設立,取得,拡張,運営,経営,維持,使用,享有及び売却その他の処分をいう。

 (4)「区域」とは,

  (a) 交流協会については,日本国をいう。

  (b) 亜東関係協会については,台湾をいう。

 (5)「現行の」とは,本取決めの発効の日において効力を有することをいう。

 (6)「自由利用可能通貨」とは,国際通貨基金協定に定義する自由利用可能通貨をいう。

 (7)「世界貿易機関設立協定」とは,1994年4月15日にマラケシュで作成された世界貿易機関を設立するマラケシュ協定をいう。

第3条

1.一方の側の投資家及びその投資財産は,他方の側の区域内において,投資活動に関し,他方の側の投資家及びその投資財産に対し同様の状況において与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

2.1の規定にかかわらず,他方の側の投資家の投資活動に関連して特別な手続が定められることがあることが了解される。ただし,当該手続が,双方がこの取決めの下で当該投資家に与えられるべきと認める待遇を実質的に害するものではないことを条件とする。

第4条

1.一方の側の投資家及びその投資財産は,他方の側の区域内において,他の国又は地域の投資家の投資財産に対し同様の状況において与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

2.1にいう待遇には,紛争解決制度に関して他の国又は地域の投資家及びその投資財産に対して与えられる待遇であって,国際条約又は国際協定において規定されるものは含まれない。

第5条

1.一方の側の投資家の投資財産は,他方の側の区域内において,国際法に従った待遇(公正かつ衡平な待遇並びに十分な保護及び保障を含む。)を与えられる。

2.一方の側の投資家の投資財産の運営,経営,維持,使用,享有及び売却その他の処分は,他方の側の区域内において,恣意的な措置により阻害されてはならない。

3.一方の側の区域における当局が他方の側の投資家の投資財産及び投資活動に関し義務を負うこととなった場合には,当該義務は遵守される。

第6条

 一方の側の投資家は,他方の側の区域内において,投資家の権利の行使及び擁護のため全ての審級にわたり裁判所の裁判を受け及び行政機関に対して申立てをする権利に関し,同様の状況において他方の側の投資家又は他の国若しくは地域の投資家に対して与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第7条

1.いずれの一方の側の区域内においても,他方の側の投資家の投資活動の条件として次の要求が課せられ,又は強制されてはならない。

 (a) 一定の水準又は割合の物品又はサービスを輸出すること。

 (b)一定の水準又は割合の現地調達を達成すること。

 (c)当該一方の側の区域内において生産された物品若しくは提供されたサービスを購入し,利用し,若しくは優先し,又は当該一方の側の区域内の自然人若しくは法人その他の事業体から物品若しくはサービスを購入すること。

 (d) 輸入数量又は輸入価額を,輸出数量若しくは輸出価額と又は当該投資家の投資財産に関連する外国為替の流入の量と何らかの形で関連付けること。

 (e)当該投資家の投資財産により生産される物品又は提供されるサービスの当該一方の側の区域内における販売を,輸出数量若しくは輸出価額と又は外国為替収入と何らかの形で関連付けることにより制限すること。

 (f)輸出又は輸出のための販売を制限すること。

 (g)特定の国籍又は市民権を有する者を取締役,理事又は役員に任命すること。

 (h)技術,製造工程その他の財産的価値を有する知識を当該一方の側の区域内の自然人又は法人その他の団体に移転すること。ただし,次のいずれかの場合を除く。

  (i)当該要求が,競争法の違反に係る救済措置として司法裁判所,行政裁判所又は競争当局によって行われる場合。

  (ii)当該要求が,世界貿易機関設立協定附属書1C知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(以下「貿易関連知的所有権協定」という。)に反しない方法で行われる知的財産又は知的財産権の移転に関するものである場合。

 (i)当該一方の側の区域内に当該投資家の特定地域又は世界市場に向けた事業本部を設置すること。

 (j)一定の数又は割合の特定の国籍又は市民権を有する者を雇用すること。

 (k)当該一方の側の区域内において一定の水準又は価額の研究開発を達成すること。

 (l)当該投資家が生産する物品又は当該投資家が提供するサービスの一又は二以上を,特定地域又は世界市場に向けて当該一方の側の区域のみから供給すること。

2.1の規定にかかわらず,いずれの一方の側の投資家の投資活動に関しても,利益の付与又はその継続の条件として,1(g)から(l)までに規定する要求のいずれかに従うことが求められることがあることが了解される。

第8条

1.次のものについては第3条,第4条及び第7条の規定の対象とならないことが了解される。

 (a)次の機関により維持されるこれらの規定に適合しない現行の措置であって,附属書Ⅰのそれぞれの側の表に記載されるもの。

  (i) 中央当局

  (ii)日本国の都道府県

  (iii) 台湾の直轄市,市又は県

 (b)(a)(ii)及び(a)(iii)に規定するもの以外の地方当局により維持されるこれらの規定に適合しない現行の措置

 (c)(a)及び(b)に規定する措置の継続又は即時の更新

 (d)(a)及び(b)に規定する措置の改正又は修正(当該改正又は修正の直前における当該措置と第3条,第4条及び第7条の規定との適合性の水準を低下させないものに限る。)

2.附属書IIのそれぞれの側の表に記載される分野,小分野又は活動に関して採用され,又は維持される措置については,第2条,第3条及び第7条の規定の対象とならないことが了解される。

3.いずれの一方の側の区域内においても,他方の側の投資家は,この取決めの効力発生の日の後に附属書IIの表の対象となる措置が採用される場合には,他方の側の投資家であることを理由として,当該措置が効力を生じた時点で当該措置が採用される一方の側の区域に存在する投資財産を売却その他の方法で処分することを要求されない。

4.いずれの一方の側も,この取決めの効力発生の後に,附属書Iの自らの表に記載される現行の措置が改正され,若しくは修正される場合又は附属書IIの自らの表に記載される分野,小分野若しくは活動に関する新たな若しくは一層制限的な措置が採用される場合には,その改正若しくは修正又は当該新たな若しくは一層制限的な措置が実施される前に,又は例外的な状況においては実施された後できるだけ速やかに,次のことを行う。

 (a)当該改正若しくは修正又は当該措置の詳細な情報を他方の側に通報すること。

 (b)他方の側の要請があった場合には,相互の満足を確保することを目的として,他方の側との間で誠実に協議を行うこと。

5.いずれの一方の側の区域内においても,適当な場合には,附属書I及び附属書IIの関連する表に掲げられた留保が削減され,又は撤廃されるための努力が払われる。

6.貿易関連知的所有権協定第3条及び第4条の規定に基づく義務の例外又は特別の取扱いとして貿易関連知的所有権協定第3条から第5条までに明示的に規定する範囲内にあるいかなる措置についても,第3条,第4条及び第7条の規定の対象とならないことが了解される。

7.次の事項についていずれか一方の側の区域内において採用され,又は維持されるいかなる措置についても,第3条,第4条及び第7条の規定の対象とならないことが了解される。

 (a) 政府調達

 (b) 一方の側の区域における当局又は当局により所有若しくは支配される企業により与えられる補助金又は贈与(当局が助成する貸付け,保証及び保険を含む。)

第9条

1. 一方の側の区域における法令,行政上の手続,一般的に適用される行政上の決定及び司法上の決定は,速やかに公表され,又は公に利用可能なものとされる。

2.一方の側は,他方の側の要請があった場合には,1に規定する事項に関して,速やかに,他方の側の個別の質問に応じ,及び他方の側に情報(一方の側の区域における当局が投資に関して締結する契約に関連する情報を含む。)を提供する。

3.1及び2の規定は,いずれの側に対しても,秘密の情報であって,その開示がいずれか一方の側の区域における当局による法令の実施を妨げ,その他公共の利益に反することとなり,又は私生活若しくは正当な商業上の利益を害することとなるものの開示を義務付けるものと解してはならない。

第10条

 いずれの一方の側の区域においても,緊急の場合又は純粋に軽微なものである場合を除くほか,当該区域における法令に従い,一般に適用される規制であって,この取決めの対象となる事項に影響を及ぼすものが採用され,改正され,又は廃止される前に,公衆による意見提出のための合理的な機会が与えられる。

第11条

 いずれか一方の側の自然人が投資活動を行うことを目的として他方の側の区域に上陸し,滞在し,及び居住するため申請を行う場合には,当該申請には,他方の側の区域における関係法令に従い,好意的な考慮が払われる。

第12条

 1.いずれの一方の側の投資家の投資財産に対しても,収用又は収用と同等の措置(以下「間接的な収用」という。)は,実施されない。ただし,次の全ての条件を満たす場合は,この限りではない。

 (a) 公共の目的のためのものであること。

 (b)差別的なものでないこと。

 (c) 4から6までの規定に従って迅速,適当かつ実効的な補償の支払を伴うものであること。

 (d) 正当な法の手続及び第5条の規定に従って実施されるものであること。

2.1に規定する間接的な収用とは,当局による一又は一連の措置であって,権原{前1文字ママ}の移転又は明白な差押えなしに収用と同等の効果を有するものをいう。

3.いずれか一方の側の区域における当局による一又は一連の措置が特定の事実関係において間接的な収用を構成するか否かを決定するに当たっては,特に次の事項を考慮し,事案ごとに,事実に基づいて調査される。

 (a) 当該措置の経済的な影響(ただし,当局による当該措置が投資財産の経済的価値に悪影響を及ぼすという事実のみをもって間接的な収用が行われたことが確定するものではない。)

 (b) 当該措置が投資から生ずる明確な及び合理的な期待を害する程度

 (c) 当該措置の性質

 (d) 当該措置の目的(当該措置が公共の福祉及び安全並びに公衆の衛生の保護,環境の保護及び保全その他の正当な公共の目的のために行われるか否かを含む。)

4.補償は,収用が公表された時又は収用が行われた時のいずれか早い方の時における収用された投資財産の公正な市場価格に相当するものでなければならない。公正な市場価格には,収用が事前に公に知られることにより生じた価格の変化を反映させてはならない。

5.補償については,遅滞なく支払われるものとし,支払の時までの期間を考慮した商業的に妥当な利子が含まれるものとする。当該補償については,実際に換価すること,自由に移転すること及び収用の日の市場における為替相場により自由利用可能通貨に自由に交換することができるものとする。

6.収用の影響を受ける投資家は,当該投資家の事案及び補償の額に関し,この条にいう原則に従って速やかな審査を受けるため,収用が行われる区域における裁判所の裁判を受け,又は当該区域における行政機関に対して申立てをする権利を有するものとする。ただし,第17条の規定の適用を妨げない。

第13条

1.一方の側の投資家であって,他方の側の区域における武力紛争又は革命,暴動,内紛若しくはこれらに類する事件その他の緊急事態により投資財産に関して損失又は損害を被ったものは,原状回復,損害賠償,補償その他の解決方法に関し,他方の側の投資家又は他の国若しくは地域の投資家に与えられる待遇のうちいずれか有利なものよりも不利でない待遇を与えられる。

2.1に規定する解決方法の手段としての支払が行われる場合には,実際に換価すること,自由に移転すること及び市場における為替相場により自由利用可能通貨に自由に交換することができるものとする。

第14条

1.一方の側の区域における当局又はその指定する機関が,当該一方の側の投資家に対し,他方の側の区域内にある当該投資家の投資財産に関連する損害の填補に係る契約,保証契約又は保険契約に基づいて支払を行う場合には,次のことが承認される。

(a) 当該支払の原因となった当該投資家の権利又は請求権が当該当局又は機関に譲渡されること。

(b) 当該当局又は機関が,代位により,当該投資家の当初の権利又は請求権と内容及び範囲において同じ権利又は請求権を行使する権利を有すること。

2.1に規定する権利又は請求権の譲渡に基づき一方の側の区域における当局又は機関に対して行われる支払及びこのようにして支払われた資金の移転は,第12条,第13条及び第15条の関連規定に従って行われる。

第15条

1.一方の側の区域に向けた又は当該区域からの全ての資金の移転であって,一方の側の区域内にある他方の側の投資家の投資財産に関連するものは,遅滞なく,かつ,自由に行われる。この資金の移転には,特に次のものが含まれる。

 (a) 投資財産を維持し,又は増大させるための当初の資金及び追加的な資金

 (b) 利益,利子,資本利得,配当,使用料,手数料その他投資財産から生ずる収益

 (c) 融資の返済その他の契約に基づいて行われる支払であって,投資財産に関連するもの

 (d) 投資財産の全部又は一部の売却又は清算によって得られる収入

 (e)一方の側の区域内にある投資財産に関連した活動に従事する他方の側から赴任した従業員が得た収入その他の報酬

 (f) 第12条及び第13条の規定に従って行われる支払

 (g) 第17条の規定に基づく紛争の処理の結果として生ずる支払

2.資金の移転は,遅滞なく,かつ,自由利用可能通貨により移転の日の市場における為替相場で行われる。

3.1及び2の規定にかかわらず,次の事項に関する法令の衡平,無差別かつ誠実な適用により資金の移転が遅延され,又は妨げられることがあることが了解される。

 (a) 破産,支払不能又は債権者の権利の保護

 (b) 証券,先物,オプション及び金融派生商品の発行,交換又は取引

 (c) 刑事犯罪

 (d) 通貨その他の支払手段の移転に関する報告又は記録の保存

 (e) 裁決手続又は訴訟手続における命令又は判決の履行

第16条

 第1条の規定に鑑み,いずれの一方の側も,この取決めの解釈,適用又は実施に影響を及ぼす問題に関して他方の側が行う申入れに対し好意的な考慮を払うものとし,かつ,当該申入れに関する協議のための適当な機会を与える。

第17条

1.この条の規定において,「投資紛争」とは,一方の側の区域における当局と他方の側の投資家との間の紛争であって,当該投資家に,一方の側の区域内における当該投資家の投資財産又は投資活動に関して損失又は損害が生じているものをいう。

2.投資紛争は,可能な限り,投資紛争の当事者である投資家(以下この条において「紛争投資家」という。)と当該投資紛争の当事者である他方の側の区域の関係当局との間の友好的な協議又は交渉により解決される(以下この条において,紛争投資家と投資紛争の関係当局とを併せて「紛争当事者」という。)。

3.この条のいかなる規定も,紛争投資家が他方の側の区域内において行政的又は司法的解決を求めることを妨げるものではないことが確認される。

4.関係当局に対して書面により協議又は交渉が要請された日から3か月以内にそのような協議又は交渉により投資紛争が解決されない場合には,当該投資紛争は,紛争当事者が相互に合意することを条件として,国際的な調停又は仲裁(国際連合国際商取引法委員会の仲裁規則に基づく仲裁,国際商業会議所の仲裁規則に基づく仲裁又は紛争当事者が合意するその他の仲裁規則に基づく仲裁を含む。)に付託されることができる。

5.いずれの一方の側も,4にいう調停又は仲裁であって紛争投資家が選択するものへの投資紛争の付託に対して一方の側の区域における当局が同意するよう促す。

6.紛争投資家が他方の側の区域内において投資財産及び投資活動に関し損失又は損害を被ったことを知った日又は知るべきであった日のいずれか早い方の日から3年が経過している場合には,投資紛争は,4にいう調停又は仲裁に付託されることはできない。

7.

 (a) 投資紛争が他方の側の区域における司法裁判所,行政裁判所若しくは行政機関又は他の拘束力を有する紛争解決のための制度に付託された場合には,そのような救済手段において最終決定が行われる前に紛争投資家が当該区域における法令に従って請求を取り下げる場合に限り,4にいう調停又は仲裁は,求められることができる。

 (b)投資紛争が4に規定する調停又は仲裁に付託された場合には,当該投資紛争は,他方の側の区域における司法裁判所,行政裁判所若しくは行政機関又は他の拘束力を有する紛争解決のための制度に付託されない。

8.投資紛争が4の規定により仲裁に付託され,仲裁裁判所が設置される場合には,

 (a) 仲裁裁判所は,この取決めに従って,係争中の事案につき決定を行う。

 (b) 仲裁は,紛争当事者が別段の合意をする場合を除くほか,いずれか一方の側の区域又は1958年6月10日にニューヨークで作成された外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(以下この条において「ニューヨーク条約」という。)の締約国において行う。

 (c)仲裁裁判所の決定又は裁定は,紛争当事者を拘束する。当該決定又は裁定は,執行が求められている場所における有効な決定又は裁定の執行に関する関係法令及び関連する国際法に従って執行される。

 (d)仲裁裁判所が行う決定又は仲裁裁判所が下す裁定に係る救済措置は,損害賠償又は原状回復に限る。

9.4の規定により仲裁に付託される請求は,いずれの側の区域における仲裁決定又は裁定の承認及び執行に関しても,ニューヨーク条約第1条の適用上,商事上の関係又は取引から生じたものとみなされる。

10.投資紛争が国際的な調停又は仲裁に付託された場合には,双方は,関連する情報(係争中の事案,手続の状況並びに他の実質事項及び手続事項を含む。)を可能な範囲内で提供される。

11.いずれの一方の側も,紛争当事者への書面による通知を行った場合には,この取決めの解釈に関する問題につき,調停機関又は仲裁裁判所に対し,関連する情報を提供し,又は意見を提出することができる。

第18条

1.いずれの一方の側の区域においても,次の措置が採用され,又は実施されることがあることが了解される。ただし,他方の側の投資家に対する恣意的若しくは不当な差別の手段又は他方の側の投資家の投資財産に対する偽装した制限となるような態様で適用されるものでないことを条件とする。

 (a)人,動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置

 (b)公衆の道徳の保護又は公の秩序のために必要な措置

 注釈:公の秩序を理由とする例外は,社会のいずれかの基本的な利益に対し真正かつ重大な脅威がもたらされる場合に限り,援用され得る。

 (c) この取決めの規定に適合する法令の遵守の確保に必要な措置。この措置には,次の事項に関する措置が含まれる。

  (i)欺まん的若しくは詐欺的な行為の防止又は契約の不履行がもたらす結果の処理

  (ii)個人の情報を処理し,及び公表することに関連する私生活の保護又は個人の記録及び勘定の秘密の保護

  (iii)安全

 (d) 安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認められる次の措置

  (i) 戦時,武力紛争その他の緊急時にとられる措置

  (ii)兵器の不拡散に係る政策又は国際協定の実施に関連してとられる措置

 (e) 国際の平和及び安全の維持のため国際連合憲章の下で行われる取組に寄与することを目的としてとられる措置

2.いずれか一方の側の区域において1に規定する措置がとられる場合には,一方の側は,当該措置が実施される前に又はその後できる限り速やかに,当該措置についての要素であって次に掲げるものを,他方の側に通報する。

 (a)関係の分野及び小分野又は事項

 (b)当該措置により影響を受けるこの取決めの規定

 (c)当該措置の法的根拠

 (d)当該措置の簡潔な説明

 (e)当該措置の目的

第19条

1.いずれの一方の側においても,次のいずれかに該当するときは,国境を越える資本取引に関する措置であって第3条の規定に適合しないもの及び第15条の規定に適合しない措置が採用され,又は維持されることがあることが了解される。

 (a)一方の側の区域において国際収支及び対外支払に関して重大な困難が生じている場合又は生ずるおそれがある場合

 (b)例外的な状況において,資金の移転が経済全般の運営,特に当該一方の側の区域における通貨及び外国為替に係る政策に重大な困難をもたらし,又はもたらすおそれがある状況にある場合

2.1にいう措置は次のことに適合するものとする。

 (a)国際通貨基金協定に適合するものであること。

 (b)1にいう状況に対処するために必要な限度を超えないものであること。

 (c)一時的なものであり,かつ,事情が許す限り速やかに廃止されるものであること。

 (d)他方の側に対し,速やかに通報されるものであること。

 (e)他方の側の投資家の商業上,経済上又は資金上の利益に対し不必要な損害を与えることを避けるものであること。

第20条

 いずれの一方の側の区域においても,信用秩序の維持のための金融サービスに関連する措置(投資家,預金者,保険契約者若しくは信託上の義務を金融サービスを提供する企業が負う者を保護し,又は金融体系の健全性及び安全性を確保するための措置を含む。)がとられることがあることが了解される。ただし,他方の側の投資家の投資活動を損なうための手段として用いられるものでないことを条件とする。

第21条

1.いずれの一方の側の区域においても,知的財産権は十分かつ効果的に保護され,また,知的財産の保護に関する制度は効率的かつ透明性のある方法で運用される。この目的のため,双方は,いずれか一方の側の要請があった場合には,投資家の投資財産に悪影響を及ぼしていると認められる要因が除去されるよう,速やかに協議する。

2.この取決めは,いずれか一方の側の区域において効力を有する知的財産権の保護に関する多数国間協定に基づく権利の行使又は義務の実施に影響を与えるものではないことが了解される。

3.第4条の規定にかかわらず,いずれか一方の側の区域において知的財産権の保護に関する多数国間協定に基づき他の国又は地域の投資家及びその投資財産に与えられる待遇は,当該多数国間協定が他方の側の区域において効力を有さない場合には,他方の側の投資家及びその投資財産に対して与えられないことがあることが了解される。

第22条

この取決めのいかなる規定も,租税に係る課税措置については,対象としない。

第23条

1.双方は,この取決めの目的を達成するため,次のことを任務とする合同委員会(以下「委員会」という)を設置する。

 (a)この取決めの実施及び運用について討議すること。

 (b)第8条1にいう例外措置であっていずれか一方の側の区域において維持され,改正され,修正され,又は採用されるものについて,その削減又は撤廃に寄与することを目的として討議すること。

 (c)第8条2にいう例外措置であっていずれか一方の側の区域において採用され,又は維持されるものについて,投資家にとり良好な条件の整備を促進することを目的として討議すること。

 (d)投資に関連するその他の事項であってこの取決めに関係するものについて討議すること。

2.委員会は,必要に応じ,この取決めの機能を強化し,又はこの取決めの目的を達成するため,双方のコンセンサス方式による決定により,双方に対し適当な決定又は勧告を行うことができる。

3.委員会は,双方の代表者から成る。委員会は,双方の合意により,討議する問題に関連する必要な専門知識を有する関連機関の代表者を招請すること及び民間部門との共同会合を開催することができる。

4.委員会は,任務を遂行するための手続規則を定める。

5.委員会は,小委員会を設置し,当該小委員会に対して特定の作業を委任することができる。

6.委員会及び5の規定に基づき設置された小委員会は,いずれか一方の側の要請により,会合する。

第24条

 いずれの一方の側も,健康,安全及び環境に関する措置の緩和又は労働基準の引下げを通じた他方の側の投資家及びその他の国又は地域の投資家による投資の奨励が適当ではないことを認める。

第25条

1.いずれの一方の側によっても,他方の側の投資家であって他方の側の企業であるものが他の国又は地域の投資家によって所有され,又は支配されており,かつ,次のいずれかの場合に該当するときは,当該他方の側の投資家及びその投資財産に対し,この取決めによる利益が否認されることがあることが了解される。

 (a)当該他の国又は地域に関する措置であって当該他の国又は地域の企業との取引を禁止するもの若しくは当該他の国又は地域の企業若しくはその投資財産に対してこの取決めによる利益を与えることにより当該措置に違反し,若しくは当該措置を阻害することとなるものが採用され,又は維持されている場合

 (b)当該他の国又は地域に関する措置であって一方の側の区域における現行の法令に従って投資を禁止し,若しくは制限するものが採用され又は維持されている場合

2.いずれの一方の側によっても,他方の側の投資家であって他方の側の企業であるものが他の国又は地域の投資家によって所有され,又は支配されており,かつ,当該企業が他方の側の区域内において実質的な事業活動を行っていないときは,当該他方の側の投資家及びその投資財産に対し,この取決めによる利益が否認されることがあることが了解される。

 注釈1:この条の規定において,1(b)にいう現行の法令において規定される場合を除き,

 (a)企業が投資家によって「所有」されるとは,当該投資家が当該企業の50パーセントを超える持分を所有する場合をいう。

 (b)企業が投資家によって「支配」されるとは,当該投資家が投資企業の役員の過半数を指名し,又は当該企業の活動につき法的に指示する権限を有する場合をいう。

 注釈2:いずれの一方の側も,1及び2に規定する利益の否認のための条件に変更が生ずる場合には,他方の側に対し事前に通報する。そのような場合には,双方は,必要に応じ,この条の規定の見直し又は改正を目的として協議する。

第26条

1.この取決めは,双方がそれぞれの手続が完了した旨を相互に通報する日に効力を生ずる。この取決めは,6に定めるところに従って終了する場合を除き,10年間効力を有する。

2.この取決めは,一方の側の投資家の投資財産であってこの取決めの効力発生の前に他方の側の区域内において関係法令に従って取得されたものも対象とする。

3.この取決めの効力発生の前に生じた事態に起因する請求又はこの取決めの効力発生の前に既に解決されている請求については,この取決めの対象とならないことが了解される。

4.附属書は,この取決めの不可分の一部を成す。

5.いずれの一方の側も,この取決めを改正するため,いつでも他方の側との協議を要請することができる。

6.いずれの一方の側も,一年前に他方の側に対して書面による通告を行うことにより,この取決めを終了させることができる。

この取決めは,英語により作成し,交流協会の代表及び亜東関係協会の代表は,

以上の証拠として,2011年9月22日に台北にて,これに署名した。