[文書名] 極東委員会及聨合国対日理事会付託条項
甲 極東委員会
極東諮問委員会ニ代ルベキ極東委員会ノ設置ニ関シテハ中華民国ノ同意ヲ得テ意見ノ一致ニ到達セリ極東委員会ニ関スル付託条項ハ左ノ如シ
一 委員会ノ設置
「ソヴィエト」社会主義共和国聨邦,聨合王国,合衆国,中華民国,「フランス」国,「オランダ」国,「カナダ」,「オーストラリア」,「ニュー,ジーランド」,「インド」及「フィリピン」ノ代表者ヨリ成ル極東委員会ハ茲ニ設置セラル
二 任務
甲 極東委員会ノ任務ハ左ノ如シ
一 日本国ガ降伏条項ニ基ク自国ノ義務ヲ完遂スルニ付準拠スベキ政策,原則及基準ヲ作成スルコト
二 聨合国最高司令官ニ対シ発セラレタル指令又ハ最高司令官ガ執リタル行動ニシテ委員会ノ権限内ニ在ル政策決定ニ関係アルモノヲ参加国ノ要請アリタルトキ検討スルコト
三 後ニ掲グル五ノ二ニ規定セラルル投票ノ手続ニ従ヒ到達セラレタル参加国政府間ノ合意ニ依リ委員会ノ任務ニ属セシメラルル他ノ事項ヲ審議スルコト
乙 委員会ハ軍事行動ノ遂行ニ関シ又ハ領土ノ調整ニ関シテハ勧告ヲ為スコトナカルベシ
丙 委員会ハ其ノ活動ニ関シテハ聨合国対日理事会ガ設置セラレタル事実ヨリ出発シ且合衆国政府ヨリ最高司令官ヘノ命令系統及最高司令官ノ占領軍隊ニ対スル指揮ヲ含ム日本国ニ於ケル現存ノ管理機構ヲ尊重スベシ
三 合衆国政府ノ任務
一 合衆国政府ハ委員会ノ政策決定ニ従ヒ指令ヲ作成スベク且適当ナル合衆国政府機関ヲ通ジ右指令ヲ最高司令官ニ伝達スベシ最高司令官ハ委員会ノ政策決定ヲ表明スル指令執行ノ任務ヲ課セラルベシ
二 委員会ガ二ノ甲ノ二ニ従ヒ検討セラレタル指令又ハ行動ノ変更セラルベキコトヲ決定スルトキハ委員会ノ右決定ハ政策決定ト看做サルベシ
三 合衆国政府ハ委員会ニ依リ既ニ作成セラレタル政策ニ依リ網羅セラレザリシ緊急事項発生スルトキハ常ニ委員会ガ行動ヲ執ルニ至ル迄ノ間最高司令官ニ対シ中間指令ヲ発スルコトヲ得但シ日本国ノ憲政機構若ハ管理制度ノ根本的変革ヲ規定シ又ハ全体トシテノ日本国政府ノ変更ヲ規定スル指令ハ極東委員会ニ於ケル協議及意見ノ一致ノ達成ノ後ニ於テノミ発セラルベシ
四 発セラレタル一切ノ指令ハ委員会ニ提出セラルベシ
四 他ノ協議方法
委員会ノ設置ハ参加国政府ガ極東問題ニ関シ他ノ協議方法ヲ使用スルコトヲ妨グルコトナカルベシ
五 構成
一 極東委員会ハ本協定ノ当事国タル国ノ各一名ノ代表者ヨリ成ルベシ委員会ノ参加国数ハ参加国間ノ合意ニ依リ状況ガ正当トスル限リ極東ニ在リ又ハ極東ニ領土ヲ有スル他ノ聨合国ノ代表者ヲ加フルコトニ依リ増加セラルルコトヲ得委員会ハ委員会ニ付託セラレタル事項ニシテ委員会ノ参加国ニ非ザル聨合国ニ特ニ関係アルモノニ関スル右聨合国ノ代表者トノ必要ノ場合ニ於ケル充分且適当ナル協議ニ付規定ヲ設クベシ
二 委員会ハ全員一致ニ満タザル投票ニ依リ行動ヲ執ルコトヲ得但シ右行動ハ次ノ四国即チ合衆国,聨合王国,「ソヴィエト」社会主義共和国聨邦及中華民国ノ代表者ヲ含ム一切ノ代表者ノ少クトモ過半数ノ同意ヲ得ベキモノトス
六 所在地及組織
一 極東委員会ハ其ノ本部ヲ「ワシントン」ニ置クベシ右委員会ハ望マシト思考セバ其ノ場合ニ於テハ必要ニ応ジ東京ヲ含ム他ノ場所ニ於テ会合スルコトヲ得右委員会ハ聨合国最高司令官トノ協議ノ為議長ヲ通ジ実行可能ナル取極ヲ為スコトヲ得
二 委員会ノ各代表者ハ非軍人及軍人ノ双方ヲ含ム適当ナル随員ヲ同伴スルコトヲ得
三 委員会ハ其ノ事務局ヲ組織シ,適当ト思考セラルル分科委員会ヲ設ケ且他ノ方法ニ依リ委員会ノ組織及手続ヲ完全ナラシムベシ
七 終了
極東委員会ハ次ノ四国即チ合衆国,聨合王国,「ソヴィエト」社会主義共和国聨邦及中華民国ノ代表者ヲ含ム一切ノ代表者ノ少クトモ過半数ノ同意ニ依リ其ノ趣旨ノ決定ガ為サレタルトキ任務遂行ヲ終止スベシ自己ノ任務遂行ノ終了ニ先チ委員会ハ適当ニ移譲シ得ル任務ヲ参加国政府ガ加盟国タル中間的又ハ常設的安全保障機構ニ移譲スベシ
合衆国政府ガ四国ノ為ニ付託条項ヲ一ニ規定セラレタル他ノ政府ニ提示シ改訂セラレタル基礎ニ於テ委員会ニ参加スルコトヲ右他ノ政府ニ対シ要請スベキコト協定セラレタリ
乙 聨合国対日理事会
聨合国対日理事会ノ設置ニ関シ中華民国ノ同意ヲ得テ左ノ協定ニモ到達セリ
一 降伏条項ノ実施即チ日本国ノ占領及管理竝ニ降伏条項ノ補足的指令ノ執行ニ関シ最高司令官ト協議シ及之ニ助言ヲ与フル為竝ニ本協定ニ於テ許与セラレタル管理権ヲ行使スル為聨合国最高司令官(又ハ其ノ代理者)ヲ議長トシ東京ニ所在地ヲ有スル聨合国理事会ガ設置セラルベシ
二 聨合国理事会ノ委員ハ議長ニシテ且合衆国ノ委員タルベキ最高司令官(又ハ其ノ代理者),一名ノ「ソヴィエト」社会主義共和国聨邦,一名ノ中華民国委員竝ニ聨合王国,「オーストラリア」「ニュー,ジーランド」及「インド」ヲ同時ニ代表スル一名ノ委員ヨリ成ルベシ
三 各委員ハ軍人及非軍人ノ顧問ヨリ成ル適当ナル随員ヲ有スル権利ヲ与ヘラルベシ
四 聨合国理事会ハ二週間毎ニ一回ヨリ少カラズ会合スベシ
五 最高司令官ハ降伏条項ノ執行即チ日本国ノ占領及管理竝ニ降伏条項ノ補足的指令執行ノ為ノ一切ノ命令ヲ発スベシ一切ノ場合ニ於テ行動ハ日本国ニ於ケル唯一ノ聨合国ノ為ノ執行権者タル最高司令官ノ下ニ且之ヲ通ジ遂行セラルベシ最高司令官ハ事態ノ緊急性ノ許ス限リ重要事項ニ関スル命令ノ発出ニ先チ理事会ト協議シ且之ニ通知スベシ右事項ニ関スル最高司令官ノ決定ハ支配的タルベシ
六 日本国ノ管理制度ノ変革,憲政機構ノ根本的変革及全体トシテノ日本国政府ノ変更ニ関スル問題ニ付テノ極東委員会ノ政策決定ノ執行ニ関シ理事会ノ一委員ガ最高司令官(又ハ其ノ代理者)ト意見一致セザルトキハ最高司令官ハ極東委員会ニ於テ意見一致ガ達成セラルル迄右問題ニ関スル命令ノ発出ヲ差控フベシ
七 必要アル場合ニ於テハ最高司令官ハ聨合国理事会ノ他ノ聨合国代表トノ適当ナル予備的協議ノ後日本国政府ノ個々ノ大臣ノ変更ニ関シ又ハ個々ノ閣員ノ辞職ニ依リ生ジタル欠員ノ補充ニ関シ決定ヲ為スコトヲ得