データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米安保条約草案(安全保障に関する日米条約案)

[場所] 
[年月日] 1950年10月11日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),119−120頁.外務省および外交史料館所蔵文書.
[備考] 
[全文]

 B作業 安全保證条約研究

 両国は,すべての国民及び政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し,これがため,国際の平和と安全とが国際連合憲章の目的及び原則に従って国際連合によって維持し増進されるよう衷心から希望する。

 両国は,国際の平和及び安全の維持に必要な限り,国際連合が連合の加盟国でない国の安全についても憲章によって責務を有することに留意する。

 日本国憲法は,日本国民が平和愛好諸国の公正と信義に信頼してその安全と生存を保持しようとするものであることを明らかにし,また,正義と秩序とを基調とする国際平和を誠実に希求するため,戦争を放棄し軍備を保持しないことを定めた。合衆国は,かような国が安全に生存しうるような世界を招来することが国際連合の窮局の目標であることを確信し,また,かような国に対する侵略は,国際連合憲章の原則に従って,迅速且つ有効に阻止されなければならないとの確信を有する。

 (国際連合の一九五 年第  期総会は,その  月  日の決議により,軍備を有しない日本国の安全を確保することは国際の平和と安全を維持することを最も重要な任務とする国際連合の責任であることを確認し,差当りこの責任を米国が国際連合のために負担するよう要請することを決議した。)

 よって両国政府は次の諸条を協定した。

  第一条

 アメリカ合衆国は,国際連合のために,軍備を有しない日本国の安全を確保する責に任ずる。

  第二条

 国際連合が,その決定を即時且つ有効に実施するための軍隊を有しないのにかんがみ,国際連合が日本国に対する侵略行為の存在を決定したときは,アメリカ合衆国は右の侵略を排除するため直ちに一切の措置をとるものとし,日本は,その憲法の許す一切の援助及び協力をなすものとする。

 前項の協定は憲章第五十一条の適用を妨げるものではない。

  第三条

 前条の目的のために,アメリカ合衆国の兵力が日本国領域内に常駐することに,両国は同意する。

 合衆国の兵力の駐屯地点及び数は第九条の委員会で定める。

  第四条

 両国は,締約国の領土の保全,政治的独立又は安全が脅かされていると認めるときはいつでも,協議する。(北大西洋条約第三条)

  第五条

 日本国に駐屯する合衆国の兵力は,第九条の委員会の決定するところに従い日本領域内において既存の施設を使用し,新に施設を建設することができる。

  第六条

 日本国に駐屯する合衆国の兵力のための経費は,合衆国の負担とする。但し第九条の委員会の決定に従い日本国政府が提供する既存の施設又は役務についての経費は,右の委員会の決定するところに従って両国政府が分担する。但し,アメリカ合衆国は,日本国経済の実状にかんがみ,日本国の分担額の決定にあたっては,日本国の一般民生と経済自立に支障を及ぼさないように好意的考慮を払うものとする。

  第七条

 日本国に常駐するアメリカ合衆国の兵力は,外国に駐屯する一国の兵力が,国際法上通常享有する特権及び免除を享有する。

 前項の規定の適用について将来の紛争を回避するため,第九条の委員会は急速に特権及び免除について,具体的な準則を取り極めねばならない。

  第八条

 両国の友好関係を促進し且つ維持するために,アメリカ合衆国は同国の日本常駐の兵力又はこれに属する個人の行為により日本国民の身体財産に対して損害が発生した場合には,即時且つ公正な補償をなすことに同意する。

(米比軍事基地条約第二十三条)

 これがため,両国は,両国の代表よりなる共同の調査及び補償額の査定のための機関を設け,第九条の委員会の下に置く。

  第九条

 両国は,この条約の実施に関する事項を審議するため,両国の同数の代表をもって構成する委員会を設立する。委員会は,いつでも迅速に会合しうるように組織するものとする。委員会は必要とする補助機関を設置することができる。(北大西洋条約第九条)

  第十条

 両国は,各自の憲法上の手続に従って,この条約を批准し,批准書は,できるだけすみやかに交換せらるべきものとする。

 (第十一条)

 (この条約はすみやかに(できうる限り,条約の実施前に)国際連合総会に提出し,その承認を受けなければならない)

  第十一条

 この条約は批准書交換の日から実施され十年の期間引続き効力を有する。

 両国のいずれかが前記十年の期間満了した時に,この条約を終了させるという意志を右の期間満了の一年間に他方に通告しないときは,更に十年有効とし,以下これにならうものとする。

 いずれの場合においても,国際連合総会が,この条約を終了せしめることを決議したときは,両国はこれを受諾するものとす。

  第十二条

 この条約は,日本文及び英文を正文とする。

 右の証拠として下名の全権委員は,この条約に署名した。

 一九五 年   において作成した。

 (署名)