データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アメリカの対日平和条約に関する七原則

[場所] 
[年月日] 1950年11月24日
[出典] 日米関係資料集 1945−97,82頁.アメリカ学会訳編(五十嵐武士訳)「原典アメリカ史」第6卷,岩波書店,1981年,299−300頁.
[備考] 
[全文]

アメリカの対日平和条約に関する七原則

(一九五〇年一一月二四日)

 合衆国は,戦争状態を終結させ日本に主権を回復し,日本を自由な諸国民からなる〔国際〕社会にその対等な構成員として復帰させるための,日本との条約を提案する。個別的な事項に関しては,条約は以下で提示する諸原則に沿うものとすべきである。

 一,当事国 日本と戦争状態にあるいずれか,あるいはすべての国で,〔ここに示された〕提案を基礎にして合意を確保し講和を成立させる意志があるもの。

 二,国際連合 日本の加盟は検討されることになる。

 三,領土 日本は,(a)朝鮮の独立を承認し,(b)合衆国を施政権者とする琉球諸島および小笠原諸島の国際連合による信託統治に同意し,(c)台湾,澎湖諸島,南樺太および千島列島の地位に関する,イギリス,ソヴェト連邦,カナダ,合衆国の将来の決定を受諾しなければならない。条約発効後一年以内に何の決定もなされない場合には,国際連合総会が決定する。〔日本は,〕中国における特殊な権利および権益を放棄しなければならない。

 四,安全保障 国際連合による実効的な責任の負担というような別の形での満足できる安全保障上の取決めが達成されるまでの期間,日本地域の国際的な平和と安全保障を維持するために,この条約は,日本の諸施設と合衆国および恐らくは他の諸国の軍隊との間に,継続して協調的な責任〔関係〕が存続するように配慮しなければならない。

 五,政治上および通商上の取決め 日本は,麻薬および漁業に関する多国間の条約に加入することに同意しなければならない。戦前の二ヵ国間の条約は,相互の合意を通じて復活させることができる。新しい通商条約が締結されるまでの期間,日本は通常の例外措置には従うものとして最恵国待遇を与えることができる。

 六,請求権 すべての当事国は,一九四五年九月二日以前の戦争行為から生じた請求権を放棄する。ただし,(a)連合国がそれぞれの領土内において日本人の財産を一般的に取り押えている場合,および(b)日本が連合諸国〔の人々〕の財産を返還する場合,あるいは原状に戻すことができない場合に損害額に関する協定で合意された一定の比率を円で補償する場合は,除くものとする。

 七,係争 請求権に関する係争は,国際司法裁判所長が設置する特別中立裁判所で解決する。その他の係争は,外交的な解決あるいは国際司法裁判所に委ねる。