データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米安保条約草案

[場所] 
[年月日] 1951年2月9日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),388ー390頁.外務省および外交史料館所蔵文書.
[備考] 
[全文]

日本国連合国間平和条約及び国際連合憲章第五十一条の規定に従い作成された集団的自衛のためのアメリカ合衆国及び日本国間協定

  前文

 日本国は,本日連合国と平和条約に署名した。日本は武装を解除されているので,この条約の実施と同時に固有の自衛権を行使する手段をもたなくなる。

 無責任な軍事主義は未だ世界から駆逐されていないので,前記の事態にある日本には危険がある。

 平和条約は,一又は二以上の連合国と集団的自衛取極を締結する権利を日本国に認め,且つ,国際連合憲章は,すべての国家が個別的及び集団的な固有の自衛権を有することを認めている。

 これらの権利の行使に当って,日本国は,自国の防備のための暫定措置として,連合国の一国たる合衆国が日本に対する武力攻撃を阻止するよう日本国内又はその近辺にその軍隊を維持することを希望する。

 合衆国は,平和と安全のために,現在のところ日本国内又はその近辺にある程度の自国軍隊を維持する意思がある。但し,米国は,日本国が,攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則によって平和と安全を増進すること以外の用に役立つ軍備をもつことを常に避けつゝ直接及び間接の攻撃に対する自国領土の防備のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。

よって

 一,日本国は,平和条約及びこの協定の実施と同時に合衆国の陸,空及び海軍を日本国又はその近辺に駐屯させる権利を許与し合衆国は受諾する。この措置は,専ら外部からの武力攻撃に対する日本国の防衛を目的とするものであって,これによって提供された軍隊は日本国の国内事項に干渉する責任又は権限をもたない。一又は二以上の外部の国家による教唆又は干渉によって惹起された日本国における大規模の国内反乱及び擾乱を制圧するため日本政府の明白な要請に応じて与えられる援助は,日本国の国内事項に対する干渉とは認められない。

 二,第一条に定められた権利の行使される間,日本国は,合衆国の事前の同意なくして,基地又は基地における若しくは基地に関する何らかの権利,権力若しくは機能或は駐兵若しくは演習の権利を,第三国に許与しない。

 三,合衆国軍隊の日本国内又はその近辺における駐屯を規律する条件は,両政府間の行政協定で決定する。

 四,この協定は,国際連合又はその他による日本区域における国際の平和及び安全の維持のため充分な措置を定める国際連合の取極又はそれに代る個別的若しくは集団的安全保障の措置が有効となったと合衆国及び日本国の政府が認めたとき,効力を失うものとする。