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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国連軍構成員等の刑事事件に関する吉田茂首相のマーフィー米大使あて書簡

[場所] 
[年月日] 1952年5月31日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),518頁.外務省および外交史料館所蔵文書.
[備考] 
[全文]

拝啓

朝鮮において作戦している国際連合加盟国の軍隊に関して,千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコでアチソン国務長官と私との間に交換された公文の趣旨を実施するため,具体的にどのような措置が執られるべきであるかについては,私は,すみやかに当事者の間で協定が締結されることを切望するものであります。その間私は,五月二十七日のわれわれの会談に関連して,日本国政府が,これらの軍隊の支持を容易にするため,将来起るかもしれない刑事事件との関連において国際連合加盟国の軍隊の構成員に対し,このような協定が締結されるまでの間,次のような措置を執ることを考えており,且つ,直ちにこれを実施しようとするものであることを明らかにいたしたいと思います。

(一)これらの軍隊の構成員及び軍属ならびにそれらの家族に対する裁判権は,国際法及び国際慣習の準則に従つて行使される。

(二)特にこれらの軍隊の駐留区域外において行われた犯罪事件については,国際法及び国際慣習の確立した準則について不明確の点がある場合には,日本国政府と関係国の当局との間の協議により事件ごとに決定が行われるものとする。

(三)日本国の当局は,罪を犯したこれらの軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族を逮捕したときは,次の(四)に掲げる場合を除いて,犯人をその所属国の軍当局に,原則として,引き渡すように取り計らう。

(四)特別の重要な事由がある場合には,日本国の当局は,犯人を拘置しつつ,前記の(二)のような協議を直ちに行う。このような協議により四十八時間以内に決定が行われない場合には,犯人を,将来日本国の当局に引き渡すべきことを条件として,その所属国の軍当局に引き渡すように努力する。

私は,前記の措置がすべての関係国にとつて満足なものであると信じます。敬具

 千九百五十二年五月三十一日

       内閣総理大臣 吉田 茂

在京米国大使

 ロバート・D・マーフィー殿