データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米友好通商航海条約(日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約)

[場所] 東京
[年月日] 1953年4月2日署名,1953年10月30日効力発生
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),533ー543頁.外務省条約局「条約集」第31集第104巻.
[備考] 
[全文]

 日本国及びアメリカ合衆国は,両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し,並びに両国の国民の間の一層緊密な経済的及び文化的関係を促進することを希望し,また,相互に有利な通商関係を助長し,相互に有益な投資を促進し,並びに相互の権利及び特権を定める取極によつてそれらの目的の達成に寄与することができることを認識しているので,無条件に与えられる最恵国待遇及び内国民待遇の原則を一般的に基礎とする友好通商航海条約を締結することに決定し,そのため,次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。

 日本国

  日本国外務大臣 岡崎勝男

 アメリカ合衆国

  日本国駐在アメリカ合衆国特命全権大使 

          ロバート・マーフィー

 これらの全権委員は,互にその全権委任状を示し,それが妥当であると認められた後,次の諸条を協定した。

   第一条

1 いずれの一方の締約国の国民も,(a)両締約国の領域の間における貿易を営み,若しくはこれに関連する商業活動を行う目的をもつて,(b)当該国民が相当な額の資本を投下した企業若しくは当該国民が現に相当な額の資本を投下する過程にある企業を発展させ,若しくはその企業の運営を指揮する目的をもつて,又は(c)外国人の入国及び在留に関する法令の認めるその他の目的をもつて,他方の締約国の領域に入り,及びその領域に在留することを許される。

2 いずれの一方の締約国の国民も,他方の締約国の領域内において,(a)自由に旅行し,及び自己が選んだ場所に居住し,(b)良心の自由を享有し,(c)公私の宗教上の儀式を行い,(d)国外の公衆に周知させるため資料を収集し,及び送付し,並びに(e)当該領域の内外にある他の者と郵便,電信その他一般に公衆の用に供される手段によつて通信することを許される。

3 本条の規定は,公の秩序を維持し,及び公衆の健康,道徳又は安全を保護するため必要な措置を執る締約国の権利の行使を妨げるものではない。

   第二条

1 いずれの一方の締約国の国民も,他方の締約国の領域内において,いかなる種類の不法な迫害も受けることはなく,且つ,いかなる場合にも国際法の要求する保護及び保障よりも少くない不断の保護及び保障を受けるものとする。

2 いずれか一方の締約国の領域内で他方の締約国の国民が抑留された場合には,その者の要求に基き,もよりの地にあるその者の本国の領事官に直ちに通告されるものとする。その者は,(a)相当且つ人道的な待遇を受け,(b)自己に対する被疑事実を正式に且つ直ちに告げられ,(c)自己の防ぎょ{前2文字強調}のための適当な準備に支障がない限りすみやかに 裁判に付され,及び(d)自己の防ぎょ{前2文字強調}に当然必要なすべての手段(自己が選任する資格のある弁護人の役務を含む。)を与えられる。

   第三条

1 いずれの一方の締約国の国民も,他方の締約国の領域内において,雇用されている間に業務の結果生じた疾病,負傷若しくは死亡又は業務の性質に起因する疾病,負傷若しくは死亡を理由として行う金銭上の補償その他の給付又は役務の提供を定める法令の適用について,内国民待遇を与えられる。

2 本条1に規定する権利及び特権の外,いずれの一方の締約国の国民も,他方の締約国の領域内において,(a)老齢,失業,疾病若しくは身体障害による賃金若しくは所得の喪失又は(b)父,夫その他自己を扶養する者の死亡による経済的扶助の喪失に対し経済上の需要を個別的に審査しないで給付を行う強制的な社会保障制度を定める法令の適用について,内国民待遇を与えられる。

   第四条

1 いずれの一方の締約国および国民及び社会も,その権利の行使及び擁護については,他方の締約国の領域内ですべての審級の裁判所の裁判を受け,及び行政機関に対して申立をする権利に関して,内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。いずれか一方の締約国の会社で他方の締約国の領域内で活動を行つていないものは,その領域内において,登記その他これに類する要件を課されないで,それらの裁判を受け,及び申立をする権利を有するものとする。

2 一方の締約国の国民又は会社と他方の締約国の国民又は会社との間に締結された仲裁による紛争の解決を規定する規定する契約は,いずれの一方の締約国の領域内においても,仲裁手続のために指定された地がその領域外にあるという理由又は仲裁人のうちの一人若しくは二人以上がその締約国の国籍を有しないという理由だけでは,執行することができないものと認めてはならない。その契約に従つて正当にされた判断で,判断された地の法令に基いて確定しており,且つ,執行することができるものは,公の秩序及び善良の風俗に反しない限り,いずれの一方の締約国の管轄裁判所に提起される執行判決を求める訴に関しても既に確定しているものとみなされ,且つ,その判断についてその裁判所から執行判決の言渡を受けることができる。その言渡があつた場合には,その判断に対しては,その地でされる判断に対して与える特権及び執行の手段と同様の特権及び執行の手段を与えるものとする。アメリカ合衆国の領域外でされた判断は,アメリカ合衆国のいずれの州のいずれの裁判所においても,他の諸州でされる判断が受ける承認と同様の限度においてのみ,承認を受けることができるものとする。

   第五条

1 いずれの一方の締約国も,他方の締約国の国民又は会社がその設立した企業,その資本又はその提供した技能,技芸若しくは技術に関し適法に取得した権利又は利益で当該一方の締約国の領域内にあるものを害する虞がある不当な又は差別的な措置を執つてはならない。いずれの一方の締約国も,他方の締約国の国民及び会社が自国の経済的発展のため必要な資本,技能,技芸及び技術を衡平な条件で取得することを不当に妨げてはならない。

2 両締約国は,特にそれぞれの領域内における生産力の増進及び生活水準の向上のため,科学及び技術に関する知識の交換及び利用を促進することに協力することを約束する。

   第六条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社の財産も,他方の締約国の領域内において,不断の保護及び保障を受けるものとする。

2 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,その住居,事務所,倉庫,工場その他の建造物で他方の締約国の領域内にあるものについては,不法な侵入及び妨害を受けないものとする。当該建造物及びその中にある物件について必要がある場合に行う当局の捜索及び検査は,占有者の便宜及び業務の遂行に周到な考慮を払い,法令に従つてのみ行うものとする。

3 いずれの一方の締約国の国民及び会社の財産も,他方の締約国の領域内において,公共のためにする場合を除く外,収用し,又は使用してはならず,また,正当な補償を迅速に行わないで収用し,又は使用してはならない。その補償は,実際に換価することができるもので行わなければならず,また,収用し,又は使用した財産に充分相当する価額のものでなければならない。その補償を決定し,及び実施するため,収用若しくは使用の際又はその前に,適当な準備をしなければならない。

4 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,他方の締約国の領域内において,本条2及び3に規定する事項に関しては,いかなる場合にも,内国民待遇及び最恵国待遇よりも不利でない待遇を与えられる。更に,いずれか一方の締約国の国民又は会社が実質的な利益を有する企業は,他方の締約国の領域内において,私有企業を公有に移し,又は公の管理の下に置くことに関するすべての事項について,内国民待遇及び最恵国待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

   第七条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,直接であると,代理人によつてであると,又は何らかの形態の適法な団体を通じてであるとを問わず,他方の締約国の領域内ですべての種類の商業,工業,金融業その他の事業の活動を行うこと,従つて,(a)支店,代理店,事務所,工場その他その事業の遂行のため適当な施設を設置し,及び維持し,(b)会社に関する当該他方の締約国の一般法に基いて会社を組織し,及び当該他方の締約国の会社における過半数の利益を取得し,並びに(c)自己が設立し,又は取得した企業を支配し,及び経営することに関して,内国民待遇を与えられる。更に,当該国民又は会社が支配する企業は,個人所有の形式であると,会社の形式その他のいずれの形式であるとを問わず,その事業の遂行に関連するすべての事項について,当該他方の締約国の国民又は会社が支配する同様の企業が与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

2 各締約国は,外国人が,その締約国の領域内で公益事業を行う企業若しくは造船,航空運送,水上運送,銀行業務(預金業務又は信託業務に限る。)若しくは土地その他の天然資源の開発を行う企業を設立し,当該企業における利益を取得し,又は当該企業を営むことができる限度を定める権利を留保する。但し,いずれか一方の締約国が,その領域内でそれらの事業を営むことに関して外国人に内国民待遇を与える限度について新たに行う制限は,その実施の際その領域内でそれらの事業を行つており,且つ,他方の締約国の国民又は会社が所有し,又は支配している企業に対しては,適用しない。更に,いずれの一方の締約国も,他方の締約国の運送事業,通信事業又は銀行業を営む会社に対し,その会社が行うことを許される本質的に国際的な業務に必要な機能を営むための支店及び代理店を維持する権利を否認してはならない。

3 本条1の規定は,いずれか一方の締約国が外国人の支配する企業の自国領域内における設立に関して特別の手続を定めることを妨げるものではない。但し,その手続は,本条1に規定する権利を実質的に害するものであつてはならない。

4 各締約国の国民及び会社並びに当該国民又は会社が支配する企業は,本条に規定する事項については,いかなる場合にも,最恵国待遇を与えられる。

   第八条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,他方の締約国の領域内において,自己が選んだ会計士その他の技術者,高級職員,弁護士,代理を業とする者その他の専門家を用いることを許される。更に,当該国民及び会社は,当該領域内における自己の企業又は自己が財政的利益を有する企業の企画及び運営に関し,もつぱら自己のために検査,監査及び技術的調査を行わせ,並びに自己に報告させるという特定の目的で,当該領域内で自由職業に従事するための資格のいかんを問わず,会計士その他の技術者を用いることを許される。

2 いずれの一方の締約国の国民も,外国人たることのみを理由としては,他方の締約国の領域内で自由職業に従事することを禁止されることはない。当該国民は,資格,居住及び権限に関する要件で当該他方の締約国の国民に対して適用されるものに従うことを条件として,当該領域内で自由職業に従事することを許される。

3 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,他方の締約国の領域内で学術,教育,宗教及び慈善の活動を行うことに関して,内国民待遇及び最恵国待遇を与えられ,且つ,その活動を行うため当該他方の締約国の法令に基いて団体を組織する権利を与えられる。

   第九条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,他方の締約国の領域内において(a)第七条又は第八条に基いて行うことを許される活動の遂行及び居住のため適当な土地,建物その他の不動産を賃借し,占有し,及び使用することに関する内国民待遇並びに(b)他方の締約国の関係法令で認められる不動産に関するその他の権利を与えられる。

2 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,他方の締約国の領域内において,すべての種類の動産(無体財産を含む。)を購入,賃借その他の方法によつて取得し,所有し,及び占有することに関して,内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。但し,いずれの一方の締約国も,公共の安全の見地から危険と認められる物及び第七条2の第一文に掲げる活動を行う企業における利益を外国人が所有することについては,第七条その他この条約の規定によつて保障される権利及び特権を害しない範囲内において,制限することができる。

3 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,他方の締約国の領域内にある財産を遺言によると否とを問わず遺産として取得することに関し,当該国民又は会社が外国人又は外国の会社であるという理由で内国民待遇を与えられない場合には,その財産を自由に処分することを許され,且つ,その処分をするため五年を下らない期間を与えられる。

4 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,他方の締約国の領域内において,すべての種類の財産の処分に関して,内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。

   第十条

 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,他方の締約国の領域内において,特許権の取得及び保有並びに商標,営業用の名称及び営業用の標章に関する権利並びにすべての種類の工業所有権に関して,内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。

   第十一条

1 いずれか一方の締約国の国民で他方の締約国の領域内に居住するもの及びいずれか一方の締約国の国民又は会社で他方の締約国の領域内で貿易その他の営利的活動又は学術,教育,宗教若しくは慈善の活動を行うものは,当該領域内において,所得,資本,取引,活動その他の客体について課される租税,手数料その他の課徴金又はその賦課及び徴収に関する要件について,当該他方の締約国の国民又は会社が負担する課徴金又は要件よりも重い課徴金又は要件を課されることはない。

2 いずれか一方の締約国の国民で他方の締約国の領域内に居住せず,且つ,貿易その他の営利的活動を行わないもの及びいずれか一方の締約国の会社で他方の締約国の領域内で貿易その他の営利的活動を行わないものに関しては,当該他方の締約国は,本条1に規定する原則を一般に適用することを目標としなければならない。

3 いずれか一方の締約国の国民及び会社も他方の締約国の領域内において,所得,資本,取引,活動その他の客体について課される租税,手数料その他の課徴金又はその賦課及び徴収に関する要件について,いかなる場合にも,第三国の国民,第三国に居住する者及び第三国の会社が負担する課徴金又は要件よりも重い課徴金又は要件を課されることはない。

4 いずれか一方の締約国の会社で他方の締約国の領域内で貿易その他の営利的活動を行うもの及びいずれか一方の締約国の国民で他方の締約国の領域内で貿易その他の営利的活動を行うが当該領域内に居住しないものについては,当該他方の締約国は,所得,資本その他の標準による租税,手数料その他の課徴金で当該領域に対して適正に割り当てられ,又はあん分{あんに強調}される課徴金をこえるものを課してはならず,また,当該領域に対して適正に割り当てられ,又はあん分{あんに強調}される額に達しない額の控除及び免除を認めてはならない。もつぱら学術,教育,宗教又は慈善の目的のため組織され,且つ,運営される会社についても,また,同様とする。

5 各締約国は,(a)相互主義に基いて租税に関する特定の利益を与える権利,(b)二重課税の防止又は歳入の相互的保護のための協定に基いて租税に関する特別の利益を与える権利並びに(c)自国民及び隣接国に居住する者に対し所得に関する租税及び相続税に関する個人的な免除で自国に居住しないその他の者に認める当該免除よりも有利なものを認める権利を留保する。

   第十二条

1 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,両締約国の領域の間及び他方の締約国の領域と第三国の領域との間における支払,送金及び資金又は金銭証券の移転に関して,当該他方の締約国により内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。

2 いずれの一方の締約国も,その通貨準備の水準が著しく低下することを防止し,又は著しく低い通貨準備を適度に増加するため必要な範囲内で行う場合を除く外,本条5に定める為替制限を行つてはならない。本条の規定は,いずれか一方の締約国が国際通貨基金に対して負う義務を変更するものではなく,また,国際通貨基金が特定の為替制限を行うことを締約国に特に認め,又は要請する場合にその為替制限を行うことを妨げるものではない。

3 いずれの一方の締約国も,前記の2に従つて為替制限を行う場合には,自国民の保健及び福祉に欠くことができない貨物及び役務のための外国為替の利用を確保するため必要なすべての準備をした後,(a)第六条3に掲げる補償として支払われた額,(b)給与,利子,配当金,手終料,権利の使用料,技術的役務に対する報酬その他の所得の額並びに(c)借入金の償還,直接投下資本の償却及び資本の移転に係る額の,他方の締約国の通貨で表示された外国為替による回収について,その他の取引のための特別の需要を考慮して適当な準備をしなければならない。二以上の為替相場が実施されている場合には,当該回収に適用される相場は,国際通貨基金によつて当該取引のため特に承認された相場又は,その承認された相場がないときは,正当な実効相場(為替の取引についての租税又は手数料を含む。)でなければならない。

4 為替制限は,いずれの一方の締約国も,他方の締約国の国民及び会社の請求権,投資,運送,貿易その他の利益又は競争的地位に対して不必要に有害な又はし意的{しに強調}に差別的な方法で行つてはならない。

5 本条において「為替制限」とは,いずれか一方の締約国が課するすべての制限,規制,課徴金,租税その他の要件で,両締約国の領域の間における支払,送金又は資金若しくは金銭証券の移転について負担又は妨害となるものをいう。

   第十三条

 いずれか一方の締約国の国民及び会社で当該締約国の領域内で事業を行うものを代理する商業旅行者は,他方の締約国の領域に入り,及びその領域から出る際並びにその領域に在留する間,関税その他の事項(第十一条5に規定する例外に従うことを条件として,当該商業旅行者,その携帯する見本及び注文の取集めについて課される租税その他の課徴金を含む。)及びその業務の遂行を規律する規制に関して,最恵国待遇を与えられる。

   第十四条

1 各締約国は,いずれの場所から到着したかを問わず,また,運送手段の種類のいかんを問わず,他方の締約国の産品に対し,並びに,径路及び運送手段の種類のいかんを問わず,他方の締約国の領域への輸出に向けられる産品に対し,輸出若しくは輸入に対し若しくはこれに関連して課され,又は輸出品若しくは輸入品のための支払手段の国際的移転に対して課されるすべての種類の関税及び課徴金,当該関税及び課徴金の賦課の方法並びに輸出及び輸入に関連するすべての規則及び手続に関して,最恵国待遇を与える。

2 いずれの一方の締約国も,他方の締約国の産品の輸入又は他方の締約国の領域への産品の輸出について制限又は禁止をしてはならない。但し,すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に制限され,又は禁止される場合は,この限りでない。

3 いずれの一方の締約国も,他方の締約国が重大な利害関係を有する産品の輸出又は輸入について量的制限をする場合には,

(a)当該一方の締約国は,特定の期間中に輸出し,又は輸入することができる産品の総数量又は総価額及びその総数量若しくは総価額又は期間の変更について,原則として事前に公表しなければならない。

(b)当該一方の締約国は,いずれかの第三国に割当を行うときは,その産品の貿易に影響を与える特別の要因に妥当な考慮を払つた上で,他方の締約国が以前の代表的な期間中に供給し,又は供給された産品の総数量又は総価額に比例する割当を当該他方の締約国に与えなければならない。

4 いずれの一方の締約国も,衛生上の理由その他商業的性質を有しない慣習上の理由により,又は詐欺的の若しくは不公正な慣行を防止するため,禁止又は制限をすることができる。但し,その禁止又は制限は,他方の締約国の通商に対してし意的{しに強調}な差別をするものであつてはならない。

5 いずれの一方の締約国の国民及び会社も,輸出及び輸入に関するすべての事項について,他方の締約国により内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。

6 本条の規定は,いずれか一方の締約国が与える次の利益には適用しない。

(a)内国漁業の産品に与える利益

(b)国境貿易を容易にするため隣接国に与える利益

(c)当該一方の締約国が加盟国となる関税同盟又は構成地域となる自由貿易地域の存在に基いて与える利益。但し,当該一方の締約国が,自国の計画を他方の締約国に通報し,且つ,協議のための適当な機会を当該他方の締約国に与える場合に限る。

7 本条2及び3((a)を除く。)の規定にかかわらず,締約国は,貨物の輸出及び輸入について,第十二条に従つて行われる為替制限と同等の効果を有し,又はその為替制限を効果的にするため必要とされる制限又は統制をすることができる。但し,その制限又は統制は,それらの規定から不必要に逸脱してはならず,また,外国との間の非差別的な貿易の最大限度の発展を助長し,並びにその制限の必要を除去するに足りる国際収支状況及び通貨準備をもたらすための政策に適合するものでなければならない。

   第十五条

1 各締約国は,法令及び一般に適用する行政上の決定で,関税,租税その他の課徴金の額,関税のための品目分類並びに輸出品及び輸入品若しくはそのための支払手段の移転についての要件若しくは制限に関するもの又は輸出品及び輸入品の販売,分配若しくは使用に影響を与えるものをすみやかに公表し,並びにその法令及び決定を一律,公平且つ適切に実施しなければならない。行政上新たに定められる要件又は制限で輸入品に影響を与えるものは,衛生上又は公共の安全上の理由で課するものを除く外,一般の慣行として,公表後三十日を経過するまでの間は実施せず,又は公表の際輸送中である産品には適用しなものとする。

2 各締約国は,他方の締約国の国民及び会社並びに他方の締約国の産品を輸入する者が関税に関する事項に関する行政処分(過料を科し,その他不利益処分を行うこと,没取並びに行政機関が行う関税のための分類及び評価の問題についての決定を含む。)について迅速且つ公平な審査を受け,及び正当と認められた場合にその是正を求めることができる訴願及び出訴の手続を定めなければならない。関税及び海運に関する法令に対する違反で書類の作成に関するものを理由とする不利益処分は,当該違反が記載上の過誤から生じた場合又は善意によることが証明された場合には,単に警告として行うため必要な限度をこえるものであつてはならない。

3 各締約国は,一方の締約国の産品を輸出し,又は輸入する者がその産品をいずれか一方の締約国の会社の海上保険に付することを妨げる差別的措置を執つてはならない。この規定は,第十二条の規定の適用を妨げるものではない。

   第十六条

1 いずれの一方の締約国の産品も,他方の締約国の領域内において,国内における課税,販売,分配,保管及び使用に影響があるすべての事項に関して,内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。

2 いずれか一方の締約国の国民若しくは会社又はいずれか一方の締約国の国民若しくは会社の支配する他方の締約国の会社が当該他方の締約国の領域内で生産する物品は,その領域内において,輸出,課税,販売,分配,保管及び使用に影響があるすべての事項に関して,生産する者又は会社のいかんを問わず内国原産の同様の物品が与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

   第十七条

1 各締約国は,(a)その政府が所有し,又は支配する企業及びその領域内で排他的の又は特別の特権を与えられた独占企業又は機関が,他方の締約国の通商に影響を与える輸出又は輸入を伴う販売又は購入を商業的考慮(価格,品質,入手可能性,市場性,運送その他販売又は購入の条件等に関する考慮をいう。)によつてのみ行うべきこと並びに(b)他方の締約国の国民,会社及び通商が,(a)に規定する販売又は購入に参加するため競争する適当な機会を通常の商慣行に従つて与えられるべきことを約束する。

2 各締約国は,他方の締約国の国民,会社及び通商に対し,(a)政府による需品の購入,(b)特権の賦与その他政府による契約及び(c)政府又は排他的の若しくは特別の特権を与えられた独占企業若しくは機関が行う役務の販売に関しては,第三国の国民,会社及び通商に与える待遇と比べて公正且つ衡平な待遇を与えなければならない。

   第十八条

1 両締約国は,競争を制限し,市場への参加を制限し,又は独占的支配を助長する事業上の慣行で商業を行う一若しくは二以上の公私の企業又はそれらの企業の間における結合,協定その他の取極により行われるものが,それぞれの領域の間における通商に有害な影響を与えることがあることについて,一致した意見を有する。従つて,各締約国は他方の締約国の要請があるときは,それらのいかなる事業上の慣行に関しても協議し,及びその有害な影響を除去するため適当と認める措置を執ることに同意する。

2 いずれの一方の締約国の公の所有又は支配に属する企業(社団法人,団体及び政府機関を含む。)も,他方の締約国の領域内で商業,工業,海運業その他の事業の活動を行う場合には,自己又は自己の財産のため,私の所有又は支配に属する企業が課税され,訴えられ,又は裁判の執行を受けることその他当該領域内で負う義務を当該領域内で免除されることを請求し,又はその免除を享有しないものとする。

   第十九条

1 両締約国の領域の間においては,通商及び航海の自由があるものとする。

2 いずれか一方の締約国の国旗を掲げる船舶で,国籍の証明のため当該締約国の法令により要求される書類を備えているものは,公海並びに他方の締約国の港,場所及び水域において,当該一方の締約国の船舶と認められる。

3 いずれの一方の締約国の船舶も,他方の締約国の船舶及び及び第三国の船舶と均等の条件で,外国との間における通商及び航海のため解放された他方の締約国のすべての港,場所及び水域に積荷とともに入る自由を有する。その船舶及び積荷は,当該他方の締約国の港,場所及び水域において,すべての事項に関して内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。

4 いずれの一方の締約国の船舶も,他方の締約国の領域に又はその領域から船舶で輸送することができるすべての産品を輸送する権利に関して,当該他方の締約国によつて内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。それらの産品は,(a)関税その他の課徴金,(b)税関事務及び(c)奨励金,関税の払いもどしその他この種の特権に関して,当該他方の締約国の船舶で輸送される同様の産品が与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

5 いずれの一方の締約国の船舶も,難破し,座礁し,又は他方の締約国の港,場所若しくは水域(外国との間における通商及び航海のため開放されているかどうかを問わない。)にやむを得ず入つた場合には,当該他方の締約国又は第三国の船舶が同様の場合に受ける援助及び保護と同様の援助及び保護を受けるものとし,また,当該他方の締約国又は第三国の船舶が同様の場合に支払うべき租税その他の課徴金と異なる租税その他の課徴金を課されないものとする。いずれか一方の締約国の当該船舶の積荷及びその船舶から救い上げられたすべての物品は,他方の締約国の領域内における消費のため搬入された場合を除く外,関税を免除されるものとする。但し,消費以外の目的のため搬入された物品については,それが当該他方の締約国から搬出されるまでは,歳入の保護のための措置を執ることができる。

6 この条約の他のいかなる規定にもかかわらず,各締約国は,沿岸貿易,内国漁業及び内水航行に関して自国の船舶のため排他的の権利及び特権を留保し,又は相互主義に基く限り外国の船舶に沿岸貿易,内国漁業及び内水航行を許すことができる。

7 本条において「船舶」とは,私の所有又は運航に係るものであると,公の所有又は運行に係るものであるとを問わず,すべての種類の船舶をいう。但し,本条2及び5の場合を除く外,漁船及び軍艦を含まないものとする。

   第二十条

 次の人及び物については,国際通過のため最も便利な径路により各締約国の領域を通過する自由があるものとする。

(a)他方の締約国の国民及びその手荷物

(b)他方の締約国の領域への又はその領域からの途中にあるその他の者及びその手荷物

(c)他方の締約国の領域への又はその領域からの途中にある産品(原産地のいかんを問わない。)

 それらの通過中の人及び物は,関税,通過を理由として課される租税並びに不当な課徴金及び要件を免除されるものとし,また,不必要に遅延させられず,及び不必要な制限を受けないものとする。但し,それらの人及び物は,第一条3に掲げる措置及び通過の特権の濫用を防止するため必要な非差別的な規制に服するものとする。

   第二十一条

1 この条約は,次の措置を執ることを妨げるものではない。

(a)金又は銀の輸出又は輸入を規制する措置

(b)核分裂性物質,核分裂性物質の利用若しくは加工による放射性副産物又は核分裂性物質の原料となる物質に関する措置

(c)武器,弾薬及び軍需品の生産若しくは取引又は軍事施設に供給するため直接若しくは間接に行われるその他の物資の取引を規制する措置

(d)国際の平和及び安全の維持若しくは回復に関する自国の義務を履行し,又は自国の重大な安全上の利益を保護するため必要な措置

(e)第三国の国民がその所有又は管理について直接又は間接に支配的利益を有する会社に対してこの条約に定める利益(法律上の地位を認めること並びに裁判所の裁判を受け,及び行政機関に対して申立をする権利を除く。)を拒否する措置

2 この条約中の貨物に関する最恵国待遇の規定は,アメリカ合衆国又はその準州若しくは属地が相互に与え,又はキューバ共和国,フィリピン共和国,太平洋諸島の信託統治地域若しくはパナマ運河地帯に与える利益については,適用しないものとする。

3 この条約中の貨物の待遇に関する規定は,いずれか一方の締約国が関税及び貿易に関する一般協定の当事国である間は,その締約国が同協定で要求され,又は特に許される措置を執ることを妨げるものではない。更に,いずれの一方の締約国も,その意思によつて同協定の当事国となつていない国に対しては,同協定に基いて取り極めた利益を与えなくてもよい。

4 いずれか一方の締約国の国民で特定の目的のため他方の締約国の領域に入ることを許されるものは,その入国許可の条件として法令により明示的に課される制限に反して営利的職業に従事する権利を有しない。

5 この条約のいかなる規定も,政治的活動を行う権利を与え,又は認めるものと解してはならない。

   第二十二条

1 「内国民待遇」とは,一締約国の領域内で与えられる待遇で,当該締約国のそれぞれ 国民,会社,産品,船舶又はその他の対象が同様の場合にその領域内で与えられる待遇よりも不利でないものをいう。

2 「最恵国待遇」とは,一締約国の領域内で与えられる待遇で,第三国のそれぞれ国民,会社,産品,船舶又はその他の対象が同様の場合にその領域内で与えられる待遇よ りも不利でないものをいう。

3 この条約において「会社」とは,有限責任のものであるかどうかを問わず,また,金銭的利益を目的とするものであるかどうかを問わず,社団法人,組合,会社その他の団体をいう。いずれか一方の締約国の領域内で関係法令に基いて成立した会社は,当該締約国の会社と認められ,且つ,その法律上の地位を他方の締約国の領域内で認められる。

4 この条約の規定に基いて日本国の会社に与えられる内国民待遇は,アメリカ合衆国の いずれの州,準州又は属地においても,当該地域においてアメリカ合衆国の他の州,準州又は属地で創設され,又は組織される会社に与えられる待遇とする。

   第二十三条

 この条約の適用を受ける領域は,各締約国の主権又は権力の下にある陸地及び水域のすべての区域とする。但し,パナマ運河地帯及び太平洋諸島の信託統治地域(アメリカ合衆国大統領が宣言によりこの条約の規定を適用する当該信託統治地域の部分を除く。)を除く。

   第二十四条

1 各締約国は,他方の締約国がこの条約の実施に関する事項について行う申入れに対しては,好意的考慮を払い,且つ,その申入れに関する協議のため適当な機会を与えなければならない。

2 この条約の解釈又は適用に関する両締約国の間の紛争で外交交渉により満足に調整されないものは,両締約国が何らかの平和的手段による解決について合意しなかつたときは,国際司法裁判所に付託するものとする。

   第二十五条

1 この条約は,批准されなければならない。批准書は,できるだけすみやかにワシントンで交換されるものとする。

2 この条約は,批准書の交換の日の後一箇月で効力を生ずる。この条約は,十年間効力を有し,その後は,本条で定めるところにより終了するまで効力を存続する。

3 いずれの一方の締約国も,他方の締約国に対し一年前に文書による予告を与えることによつて,最初の十年の期間の満了の際又はその後いつでもこの条約を終了させることができる。

 以上の証拠として,各全権委員は,この条約に署名調印した。

 千九百五十三年四月二日に東京で,ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

 日本国のために                

   岡崎勝男(印)

 アメリカ合衆国のために

   ロバート・マーフィー(印)