[文書名] 日米友好通商航海条約,議定書
日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約に署名するに当つて,下名の全権委員は,各自の政府により正当に委任を受け,更に,同条約の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。
1 第四条1における「裁判所の裁判を受け,及び行政機関に対して申立をする権利」には,特に,訴訟上の救助,訴訟費用の担保及び裁判のための担保に関する権利を含む。
2 補償の支払を定める第六条3の規定は,いずれか一方の締約国の領域内で収用され,又は使用される財産で他方の締約国の国民又は会社が直接又は間接に利益を有するものについて,準用する。
3 第七条2において「公益事業を行う企業」とは,公共のため通信事業,水道事業,バス,トラック,軌道若しくは鉄道による運送事業又はガス若しくは電気の製造若しくは供給に関する事業を行う企業をいう。
4 第七条4に関しては,いずれの一方の締約国も,鉱業に従事する権利が相互主義に服すべきことを要求することができる。更に,日本国は,その規定によつて,第七条2の第一文に掲げる業種のアメリカ合衆国の国民又は会社の企業に対し,当該国民の住所地又は当該会社が組織されるについて従つた法令若しくは当該会社の主たる事務所の所在地(当該会社が連邦の法令に基いて組織されている場合に限る。)の属するアメリカ合衆国の州又は準州が日本国の国民又は会社の同種の企業に与える待遇よりも有利な待遇を与える義務を負うことはない。
5 第八条2の規定は,公証人及び水先人には適用しない。
6 いずれの一方の締約国も,外資の導入について第十二条2で定める通貨準備の保護のため必要な制限をすることができる。
7 第十四条4に関しては,いずれの一方の締約国も,その法令に従い,貨物の表示に関する要件で貨物の真正の原産地又は製造元が正確に表示されることを確保するため定められるものに従つていない貨物について,自国の領域へのその輸入を禁止し,それを差し押え,その他何らかの方法でその販売を制限し,又は規制することができるものとする。更に,各締約国は,その領域内で生産され,若しくは販売され,又はその領域から輸出された貨物の原産地が他方の締約国の領域又はその領域内の容易に認識される場所であることを直接又は間接に表示する虚偽表示を防止するため適当な措置を執るべきであることに同意する。
8 工業原料又は基本食糧の入手が困難である緊急期間中は,第十六条1の規定は,いずれか一方の締約国が,それらの種類に属する供給不足の輸入品の国内における販売分配又は使用に対する必要な統制で内国原産の同様の物品に関して行う統制と異なるものを実施することを妨げるものではない。いずれの一方の締約国も,その統制を行う場合には,その領域内における他方の締約国の通商の競争的地位に対する損害を最小限度にとどめるような方法でその統制を行わなければならず,また,供給事情により必要と認められる期間をこえてその統制を継続してはならない。
9 第十六条1の内国民待遇の規定にかかわらず,締約国は,すべての映画フィルムの商業的上映のため上映者が実際に使用する映写時間中の最小限度の特定時間を内国原産の映画フィルムの上映に充てることを規定する映写時間の割当に関する規制を維持することができる。映写時間の割当は,各劇場ごとの年間映写時間又はこれに相当するものを基礎として定められ,且つ,協議に付されるものとする。
10 第十七条1の規定の適用上,支払手段の入手可能性に関する考慮は,商業的考慮と認められるものとする。
11 第十七条2( (a)を除く。)及び第十九条4の規定は,郵便業務については適用しない。
12 第二十一条2の規定は, プエルト ・リコについては,その政治的地位に生ずる変化のいかんにかかわらず,適用する。
13 第二十三条の規定は,もつぱら軍事基地として又は一時的な軍事占領によりいずれか一方の締約国の権力の下に置かれている地域並びに千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第三条でその地位を規定している北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。),嬬婦岩の南の南方諸島(小笠原群島,西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島には,適用しない。
14 この条約中の最恵国待遇の規定は,(a)千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第二条に基いて日本国がすべての権利,権原及び請求権を放棄した地域に原籍を有する者に対し,又は(b)同条約第三条に掲げる諸島の原住民及び船舶並びにそれらの諸島との貿易に対して日本国が与える権利及び特権については,適用しない。
15 日本国は,この条約の効力発生の日から三年を経過するまでの間は,外国人が円貨をもつて日本国の企業の発行済の株式(社員の持分を含む。)を取得することについて現に行つている制限を引き続き行うことができる。
以上の証拠として,各全権委員は,この議定書に署名調印した。
千九百五十三年四月二日に東京で,ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
日本国のために
岡崎勝男(印)
アメリカ合衆国のために
ロバート・マーフィー(印)