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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米行政協定第17条改定に関する議定書,公式議事録

[場所] 東京
[年月日] 1953年9月29日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),576ー578頁.外務省条約局「条約集」第31集109巻.
[備考] 
[全文]

1(a)及び2(b)に関し,

 合衆国の軍法に服する者の範囲は,合衆国政府が合同委員会を通じて日本国政府に通知しなければならない。

2(c)に関し,

 両政府は,2(c)に掲げる安全に対するすべての罪に関する詳細及びそれぞれ自国の現行法の規定でそれらの罪を定めるものを相互に通報しなければならない。

3(a)(ii)に関し,

 合衆国軍隊の構成員又は軍属が起訴された場合において,その起訴された罪がもし被告人により犯されたとするならば,その罪が公務執行中の作為又は不作為から生じたものである旨を記載した証明書でその指揮官又は指揮官に代るべき者が発行したものは,反証のない限り,刑事手続のいかなる段階においてもその事実の充分な証拠資料となる。

 前項の陳述は,いかなる意味においても,日本国の刑事訴訟法第三百十八条を害するものと解釈してはならない。

3(c)に関し,

 1 裁判権を行使する第一次の権利の放棄に関する相互の手続は,合同委員会が決定するものとする。

 2 日本国の当局が裁判権を行使する第一次の権利を放棄した事件の裁判及び(a)(ii)に定める罪で日本国又は日本国民に対して犯されたものに係る事件の裁判は,別段の取極が相互に合意されない限り,日本国において,犯罪が行われたと認められる場所から適当な距離内で,直ちに行わなければならない。日本国の当局の代表者は,その裁判に立ち会うことができる。

4に関し,

 合衆国及び日本国の二重国籍者で,合衆国の軍法に服しており,且つ,合衆国が日本国に入れたものは,4の適用上,日本国民とみなさず,合衆国国民とみなす。

5に関し,

 1 日本国の当局は,日本国が裁判権を行使する第一次の権利を有する事件について,合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で合衆国の軍法に服するものを犯人として逮捕したときは,その犯人を拘束する正当な理由及び必要があると思料する場合を除く外,当該犯人を釈放し,合衆国の軍当局による拘禁にゆだねるものとする。但し,日本国の当局がその犯人を取り調べることができることをその釈放の条件とした場合には,日本国の当局の要請があれば,日本国の当局がその犯人をいつでも取り調べることができるようにしなければならない。合衆国の当局は,日本国の当局の要請があれば,日本国の当局がその犯人を起訴した時にその犯人の身柄を日本国の当局に引き渡さなければならない。

2 合衆国の軍当局は,日本国が裁判権を行使する第一次の権利を有するすべての事件について,合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕を直ちに日本国の当局に通告するものとする。

9に関し,

1 本項(a)から(e)までに掲げる権利は,日本国憲法の規定により,日本国の裁判所において裁判を受けるすべての者に対して保障されている。これらの権利の外,合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で日本国の裁判権の下に起訴されたものは,日本国の裁判所において裁判を受けるすべての者に対して日本国の法律が保障するその他の権利を有する。前記のその他の権利は,日本国憲法により保障されている次の権利を含む。

(a)その者は,自己に対する被疑事実を直ちに告げられ,且つ,直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ,抑留又は拘禁されない。また,その者は,正当な理由がなければ,拘禁されず,要求があれば,その理由は,直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

(b)その者は,公平な裁判所の公開裁判を受ける権利を有する。

(c)その者は,自己に不利益な供述を強要されない。

(d)その者は,すべての証人を審問する機会を充分に与えられる。

(e)その者は,残虐な刑罰を科せられることはない。

2 合衆国の当局は,要請すれば,いつでも,合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で日本国の権限の下に拘禁されているものに接見する権利を有する。

3 合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で日本国の裁判権に基いて起訴されたものの裁判に合衆国政府の代表者が立ち会うことに関する9(g)のいかなる規定も,裁判の公開に関する日本国憲法の規定を害するものと解釈してはならない。

10(a)及び10(b)に関し,

1 合衆国の軍当局は,通常,合衆国軍隊が使用し,且つ,その権限に基いて警備している施設及び区域内ですべての逮捕を行うものとする。このことは,合衆国軍隊の権限のある当局が同意する場合又は重大な罪を犯した現行犯人を追跡している場合において日本国の当局が前記の施設又は区域内において逮捕を行うことを妨げるものではない。

 日本国の当局が逮捕することを希望する者で合衆国軍隊の裁判権に服さないものが,合衆国軍隊により使用されている施設又は区域内にある場合には,合衆国の軍当局は,日本国の当局の要請によりその者を逮捕することを約束する。合衆国の軍当局により逮捕された者で合衆国軍隊の裁判権に服さないすべてのものは,直ちに日本国の当局に引き渡さなければならない。

 合衆国の軍当局は,施設又は区域の近傍において,当該施設又は当該区域の安全に対する罪の既遂又は未遂の現行犯に係る者を法の正当な手続に従つて逮捕することができる。これらの者で合衆国軍隊の裁判権に服さないものは,すべて,直ちに日本国の当局に引き渡さなければならない。

2 日本国の当局は,通常,合衆国軍隊が使用し,且つ,その権限に基いて警備している施設若しくは区域内にあるすべての者若しくは財産について,又は所在地のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について,捜索,差押又は検証を行う権利を行使しない。但し,合衆国軍隊の権限のある当局が,日本国の当局によるこれらの捜索,差押又は検証に同意した場合は,この限りでない。

 合衆国軍隊が使用している施設若しくは区域内にある者若しくは財産又は日本国にある合衆国軍隊の財産について,捜索,差押又は検証を行うことを日本国の当局が希望するときは,合衆国の軍当局は,要請により,その捜索,差押又は検証を行うことを約束する。これらの財産で合衆国政府又はその附属機関が所有し又は利用する財産以外のものについて,裁判が行われたときは,合衆国は,それらの財産を裁判に従つて処理するため日本国の当局に引き渡すものとする。

議定書の適用に関し,

 この議定書の規定は,議定書の効力発生前に犯されたいかなる罪にも適用されない。それらの事件に対しては,この議定書の効力発生前に存在した行政協定第十七条の規定が適用されるものとする。

  千九百五十三年九月二十九日に東京で

 日本国外務大臣

  岡崎勝男

 日本国法務大臣

  犬養健

 日本国駐在アメリカ合衆国特命全権大使

  ジョン・M・アリソン