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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国に対する合衆国艦艇の貸与に関する協定

[場所] 東京
[年月日] 1954年5月14日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),647‐649頁.外務省条約局「条約集」第32集第15巻.
[備考] 
[全文]

 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は,相互防衛援助協定を締結したので,

 日本国政府は,アメリカ合衆国政府から若干の艦艇の貸与を受けることを希望しているので,また,

 アメリカ合衆国政府は,日本国政府に対し前記の艦艇を貸与する用意があるので,

 両国政府は,次のとおり協定した。

    第一条

 アメリカ合衆国政府及び日本国政府は,それぞれ,この協定に定める期間中及びこの協定に定める条件で,附属書Aとしてこの協定に添付される表及び将来日本国政府との合意によりこの協定に添付される表に掲げる艦艇を貸し,及び借り受けるものとする。

    第二条

 日本国政府は,千九百五十四年三月八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の規定に従つて,前記の艦艇を占有し,且つ,使用するものとする。

    第三条

 この艦艇の貸与は,この協定に基いて貸与される艦艇の引渡しの日の翌日から起算して五年をこえない期間有効とする。もつとも,両国政府は,日本国政府の要請がある場合には,貸与期間の満了の日の六箇月前に,相互間の合意によつて

定める五年をこえない追加の期間,貸与期間を延長することが適切且つ可能であるかどうかについて協議するものとする。但し,アメリカ合衆国政府は,この協定に基いて貸与したいずれかの艦艇の返還を貸与期間の満了前に要請することが自国の防衛上必要とされるときは,その要請を行うことができる。この場合には,日本国政府は,第八条の規定に従つてその艦艇をすみやかに返還するものとする。

    第四条

 各艦艇は,艦艇内で利用することができる定数品及び予備品(消耗需要品及び燃料を含む。)とともに,相互間で合意した時及び場所において日本国政府に引き渡すものとする。各引渡しは,引渡証書により証明する。日本国政府は,引渡しの時に艦艇内にあるすべてのぎ装品{ぎに強調},器具,燃料,消耗需品,予備部品及び交換用部品を使用する権利を有する。

    第五条

 日本国政府は,艦艇に自国の旗を掲げることができるが,艦艇及び第四条後段に掲げる附属物(燃料,消耗需品,予備部品及び交換用部品を除く。)に対する権原は,アメリカ合衆国政府が有するものとする。日本国政府は,操作上の目的で且つ自己の負担で,艦艇に対するアメリカ合衆国の権原に影響を及ぼすことなく,艦艇の取付品を改変することができる。日本国政府は,別段の合意がない限り,その艦艇を返還する前に,自己の負担で,改変前における取付品の仕様書に従うように,その改変した取付品を原状に回復しなければならない。

    第六条

 日本国政府は,アメリカ合衆国政府の同意を得ないで,艦艇又は艦艇内のぎ装品{ぎに強調},器具,予備部品若しくは交換用部品の物理的占有を放棄してはならず,また,これらに関する図面,仕様書その他の情報を日本国政府の職員又は委託を受けた者以外のいかなる者にも漏らしてはならない。日本国政府は,艦艇内のぎ装品{ぎに強調}について,アメリカ合衆国において定められている秘密保護の等級を同等のものを確保するような秘密保持の措置を執るものとする。

    第七条

 日本国政府は,艦艇の引渡し,使用又は操作に関連してアメリカ合衆国政府に対して生ずるすべての請求書を放棄し,また,前記の事項に関連して第三者が主張するいかなる請求権によつてもアメリカ合衆国が損害を受けないようにするものとする。

    第八条

 艦隊は,第三条の規定する貸与期間の満了の時に,滅失していない限り,アメリカ合衆国政府が指定する時及び場所において,日本国政府に引き渡された時と実質的に同一の状態(通常の消耗又は損害及び侵略者の兵力の行動による損害を除く。)で返還されなければならない。第四条後段に掲げる種類の附属物で返還の時に艦艇内にあり,且つ,アメリカ合衆国の財産でないものは,同国の財産になるものとする。いずれかの艦艇が侵略者の兵力の行動により損害を受け又は滅失したときは,日本国政府は,その損害又は滅失に対する責任を免除されるものつする。いずれかの艦艇が全損となつたと日本国政府が認めるような損害を,なんらかの原因により被つたときは,日本国政府は,全損であると宣言する前に,アメリカ合衆国政府と協議しなければならない。いずれかの艦艇が侵略者の兵力の行動以外の原因により滅失したとき,又はその艦艇が返還の時に最初に引き渡された時と実質的に同一の状態になく,且つ,その同一でない状態が侵略者の兵力の行動による損害の結果若しくは通常の消耗若しくは損傷によるものでないときは,日本国政府は,相互間で合意する公正且つ妥当な補償をアメリカ合衆国に支払うことに同意する。

    第九条

 両国政府は,この協定のため必要な取極を行うものとする。

    第十条

 この協定は,アメリカ合衆国政府が日本国政府から日本国がこの協定を批准した旨の書面による通告を受領した日に効力を生ずる。

 以上の証拠として,署名のために正当に委任された両国政府の代表者は,この艦艇に署名した。

 千九百五十四年五月十四日に東京で,ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

 日本国政府のために

   岡崎勝男(署名)

 アメリカ合衆国政府のために

   ジョン・M・アリソン

   附属書A

 日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の千九百五十四年五月十四日付の日本国に対する合衆国艦艇の貸与に関する協定の規定に従つて日本国政府に貸与される艦隊の表

{表は省略}