データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ネバダ核実験に関する日米往復書簡,ネバダ核実験に関する米国政府の回答

[場所] 
[年月日] 1957年5月13日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),799−800頁.外務省情報文化局「外務省発表集」第5号,116−7頁.
[備考] 要旨
[全文]

 合衆国政府はまず最初に,日本国政府および国民に対して,近く行われるネヴァダ実験は世界における放射能の量を実質的に増加せしめないような方法で行われること,および実験は低位の核分裂装置であり,かつ,気象条件が最も良好な時にのみ行われることを更めて確約する。

 合衆国政府がその国民及ぴ全人類の健康およぴ福祉に対して有する関心は右の一連の実験の各実験に関してとられる極めて高度の安全措置の上に反映されるであろう。

 合衆国政府は核エネルギーの使用が専ら平和目的のみに限られ,すべての核兵器実験は中止さるべきであるとの日本国民の要望に対して共感を有することを再確認する。これらの目的は合衆国政府が一九四六年以来達成しようと努力して来たことである。かかる目的のための合衆国の最も新しい提案は一九五七年一月十四日に国際連合総会において合衆国代表が行つたステートメントの中に含まれている。これらの提案はそれ以後現在ロンドンで会合している国際連合軍縮小委員会に提出され,強い支持を受けている。合衆国はこれらの提案中で,現在の核兵器の貯蔵の増加傾向が阻止され,十分なる安全保障措置を含む具体的な取極に基いてそのような貯蔵の減少が開始されることを条件として核実験を制限し,終局的には終焉せしめる用意があることを明らかにした。ソヴィエト社会主義共和国連邦は合衆国の軍縮提案を繰返し拒否することによつて核爆発の脅威の抑制および核兵器実験の中止への進歩を妨げて来た。

 再軍備の制限および縮小のための充分な監視による協定が存在しない間は,合衆国政府はその国民および他の自由世界に対して,その防衛および戦争防止の能力を強化し,これによつて平和の維持に寄与する責任を有する。歴史は,一方的な弱小は戦争に導くものであることを繰返し示した。従つて,合衆国政府が現在の情勢では核実験を実施せざるを得ないと感ずるのは,侵略を阻止し,平和を維持する目的のためである。

 実験の中止乃至終焉が達成されるまでは,合衆国政府は日本,カナダ,ノールウェーが,最近終了した国際連合総会の会期において共同で提出した提案に従つて国際連合に核実験を登録する方式について他の諸国と協力することにやぶさかでない。加うるに合衆国政府は,同政府が行つた核実験の制限的国際監視についての提案について協定に達しうるものとの希望を持つている。

 そのような協定に先立つて,合衆国政府は自らその一連の実験について発表し,多数諸国からのオブザーヴァーを招請した次第である。

 ネヴァダ実験の実施に当つて合衆国政府はこれらの実験は最も厳重な安全予防の注意を払つて行われ,世界の人々に対して生物学的ないしは医学的に有害と思われる水準の極少部分以上の世界放射能の増加を伴わないようにしてこれらの実験が行われるとの公約をここに再確認する。