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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米安全保障条約と国際連合憲章の関係に関する交換公文

[場所] 
[年月日] 1957年9月14日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),819ー820頁.外務省条約局「条約集」,第35集第31巻.
[備考] 
[全文]

   外務大臣からアメリカ合衆国特命全権大使にあてた書簡

 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は,安全保障条約に基いて執られるすべての措置が国際連合憲章の原則に合致することを確保するため協議することを含めて同条約に関して生ずる問題を検討するため,千九百五十七年六月二十一日のコミュニケに発表された合意に従つて安全保障に関する日米委員会が設置されたことに言及する光栄を有します。安全保障条約及び行政協定の規定は国際連合憲章に含まれる義務と完全に両立するように起草されたというのが日本国政府の見解であります。

 よつて,安全保障に関する委員会によるその任務の遂行に資するため,日本国政府は,同政府及びアメリカ合衆国政府が国際連合憲章との関連における安全保障条約及び行政協定の解釈に関して意見が一致していること,並びに次のことが両政府共通の了解であることを確認いたしたいと思います。

A 安全保障条約は,国際連合憲章に基く両政府の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては,いかなる影響も及ぼすものではなく,また,及ぼすものと解してはならない。

B 国際連合憲章に定めるところに従い,両政府は,その関係することがある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決し,並びにその国際関係において,武力による威嚇又は武力の行使を,いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも,また,国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎む義務を有する。

C 安全保障条約に基いて執られることがある措置(安全保障条約に基いて締結された行政協定に基いて執られることがある措置を含む。)は,国際連合憲章第五十一条の規定が適用されるべきものであるときはいつでも,同条の規定に合致しなければならない。

 本大臣は,貴国政府が前記の日本国政府の了解を確認されれば幸であります。

 本大臣は,以上を申し進めるに際し,ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。

  昭和三十二年九月十四日

      日本国外務大臣 藤山愛一郎

 日本国駐在アメリカ合衆国特命全権大使

  ダグラス・マックアーサー二世閣下

   アメリカ合衆国特命全権大使から外務大臣にあてた書簡

(仮訳)

 書簡をもつて啓上いたします。本使は,英語による訳文が次のとおりである千九百五十七年九月十四日付の閣下の書簡に言及する光栄を有します。 

 (日本側公文省略)

 本使は,さらに,アメリカ合衆国政府が前記の日本国政府の了解を確認すること並びに閣下の書簡及びこの返簡によつて,両政府が国際連合憲障との関連における安全保障条約及び行政協定の解釈に関して意見が一致していることが確認されることを閣下に通報する光栄を有します。

 本使は,以上を申し進めるに際し,ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。

  千九百五十七年九月十四日

     ダグラス・マックアーサー二世

 日本国外務大臣 藤山愛一郎閣下