データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 池田勇人首相とケネディ米大統領の共同声明

[場所] ワシントン
[年月日] 1961年6月22日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),342ー344頁.池田総理の米国及びカナダ訪問(外務省,1961年),53ー6頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 ケネディ大統領と池田総理大臣は,現下の国際情勢及び日米両国の関係について,建設的,かつ,友好的な意見の交換を行ない,本日これを終了した。この会談には,ラスク国務長官,小坂外務大臣及び日米両国の関係官が参加した。

 大統領と総理大臣は,自由を擁護しようと決意している諸国民が当面している種々の問題を討議するとともに,自由と正義に基づく世界平和確立のための努力を一層強化せんとする両国の決意を再確認した。大統領及び総理大臣は,また,世界平和維持機構としての国連の権威を高めることが,両国共通の政策であることを強調した。

 大統領と総理大臣は,アジアの情勢の不安定な局面について関心を表明し,この地域における安定と福祉とに資する方途を見出すため,今後さらに緊密な協議を行なうことに意見の一致をみた。アジアの情勢についての両者の会談においては,中共に関連する諸問題も検討された。両者は,また,両国の韓国との関係についても意見を交換した。

 大統領と総理大臣は,実効的な査察及び管理の措置を伴う核実験停止協定が緊要であることを認めるとともに,かかる協定が世界平和のためきわめて重要であることに意見の一致をみた。両者は,さらに,全面軍縮に向って新たな努力が行なわるべきであるとの確信を表明した。

 大統領と総理大臣は,世界経済情勢を検討した。両者は,全世界の自由諸国が,緊密な協力を続けるべきであり,特に国際貿易の成長と金融の安定を促進するための協定が必要であることについて意見の一致をみた。両者は,日米両国の貿易が秩序ある発展をとげることを期待して,両国が自由な貿易政策をとるべきことに意見の一致をみた。

 大統領と総理大臣は,低開発諸国に対する開発援助の重要性を強調した。総理大臣は,これに関連して東アジアに対する開発援助に特別の関心を表明した。両者は,かかる援助について意見の交換を行なうことに合意し,また,両国が,それぞれの能力の許す範囲内において,積極的な努力を払うことに意見の一致をみた。

 大統領と総理大臣は,日米両国の提携が鞏固な基礎の上に立っていることに満足の意を表明した。両者は,両国間に存するこの提携を強化するために,貿易及び経済問題に関する閣僚級の日米合同委員会を設立し,これによって相互協力及び安全保障条約第2条の目的達成に資することに意見の一致をみた。

 大統領と総理大臣は,また,教育,文化及び科学の分野における両国間の協力をより広範なものとすることの重要性を認めた。このため両者は,二つの日米委員会,すなわち,その一つは両国の間の文化及び教育上の協力の拡大を検討する委員会,もう一つは科学上の協力を促進する方途を研究する委員会を設立することに同意した。

 大統領と総理大臣は,米国の施政下にあるが,同時に日本が潜在主権を保有する琉球及び小笠原諸島に関連する諸事項に関し,意見を交換した。大統領は,米国が琉球住民の安寧と福祉を増進するため一層の努力を払う旨を確言し,さらに,この努力に対する日本の協力を歓迎する旨述べた。総理大臣は,日本がこの目的のため米国と引き続き協力する旨確言した。