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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 施政権返還に関する琉球立法院決議および日本政府見解

[場所] 
[年月日] 1962年2月1日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),407−408頁.琉球立法院事務局「会議録」.「琉球新報」.
[備考] 
[全文]

1.施政権返還決議,日本政府にあてた決議

   施政権返還に関する要請決議

 対日平和条約第三条によつて沖縄を日本から分離することは,正義と平和の精神にもとり,将来に禍根を残し,日本の独立を浸し,国連憲章の規定に反する不当なものである。

 しかるにアメリカ合衆国は,軍事占領に引き続き前記の条約によつて沖縄を日本の統治から分離し,施政権を行使すること十六年に及んでいる。

 この間沖縄住民は日本復帰を訴え続け,琉球政府立法院はその趣旨の決議をもつて繰返し要請し続けてきたが,米国は依然として無期限保持の政策を捨てず,ケネディ大統領は去る一月十八日に合衆国議会に送つた予算教書の中で「米国と自由世界の安全を守るため極東での脅威と緊張が沖縄の軍事基地維持を必要とする限り米国は沖縄の管理責任を引き続き負う」と述べて,従前の態度を改めていない。

 このようなアメリカ合衆国による沖縄統治は,領土の不拡大及び民族自決の方向に反し,国連憲章の信託統治の条件に該当せず,国連加盟国たる日本の主権平等を無視し,統治の実態もまた国連憲章の統治に関する原則に反するものである。

 目下開会中の日本国会において池田首相は「沖縄の施政権返還の実現を促進する」と言明している。よつて祖国政府はその責任において具体的方策を示し,速かに対米折衝を行い,沖縄の施政権返還を一日も早く実現せしめ,もつて住民の期待に応えるよう強く要請する。

 右決議する。

 一九六二年二月一日

琉球政府立法院

内閣総理大臣

衆議院議長  あて

参議院議長

2.施政権返還決議,米政府にあてた決議

   施政権返還に関する要請決議

 対日平和条約第三条によつて沖縄を日本から分離することは,正義と平和の精神にもとり,将来に禍根を残し,日本の独立を浸し,国連憲章の規定に反する不当なものである。

 しかるにアメリカ合衆国は,軍事占領に引き続き前記の条約によつて沖縄を日本の統治から分離し,施政権を行使すること十六年に及んでいる。

 この間沖縄住民は日本復帰を訴え続け,琉球政府立法院はその趣旨の決議をもつて繰返し要請し続けてきたが,米国は依然として無期限保持の政策を捨てず,ケネディ大統領は去る一月十八日に合衆国議会に送つた予算教書の中で「米国と自由世界の安全を守るため極東での脅威と緊張が沖縄の軍事基地維持を必要とする限り米国は沖縄の管理責任を引き続き負う」と述べて,従前の態度を改めていない。

 このようなアメリカ合衆国による沖縄統治は,領土の不拡大及び民族自決の方向に反し,国連憲章の信託統治の条件に該当せず,国連加盟国たる日本の主権平等を無視し,統治の実態もまた国連憲章の統治に関する原則に反するものである。

 われわれは,米国がいかなる国も他の民族をその意志に反し支配してはならないという国連憲章の大精神にのつとつて,国際情勢の如何をとわず,沖縄の施政権を速かに日本国に返還されるよう強く要請する。

 右決議する。

 一九六二年二月一日

琉球政府立法院アメリカ合衆国大統領

アメリカ合衆国上院議長

アメリカ合衆国下院議長

アメリカ合衆国国防長官 あて

アメリカ合衆国駐日大使

琉球列島高等弁務官

3.施政権返還決議,国連および国連加盟各国にあてた決議

  施政権返還に関する要請決議

 対日平和条約第三条によつて沖縄を日本から分離することは,正義と平和の精神にもとり,将来に禍根を残し,日本の独立を浸し,国連憲章の規定に反する不当なものである。

 しかるにアメリカ合衆国は,軍事占領に引き続き前記の条約によつて沖縄を日本の統治から分離し,施政権を行使すること十六年に及んでいる。

 この間沖縄住民は日本復帰を訴え続け,琉球政府立法院はその趣旨の決議をもつて繰返し要請し続けてきたが,米国は依然として無期限保持の政策を捨てず,ケネディ大統領は去る一月十八日に合衆国議会に送つた予算教書の中で「米国と自由世界の安全を守るため極東での脅威と緊張が沖縄の軍事基地維持を必要とする限り米国は沖縄の管理責任を引き続き負う」と述べて,従前の態度を改めていない。

 このようなアメリカ合衆国による沖縄統治は,領土の不拡大及び民族自決の方向に反し,国連憲章の信託統治の条件に該当せず,国連加盟国たる日本の主権平等を無視し,統治の実態もまた国連憲章の統治に関する原則に反するものである。

 われわれは,いかなる理由があるにせよ力によつて民族が分離され他国の支配下に置かれることが,近代世界において許さるべきものでないことを強調する。

 一九六〇年十二月第十五回国連総会において「あらゆる形の植民地主義を速かに,かつ,無条件に終止させることの必要を厳かに宣言する」旨の「植民地諸国,諸人民に対する独立許容に関する宣言」が採択された今日,日本領土内で住民の意志に反して不当な支配がなされていることに対し,国連加盟国諸国が注意を喚起されることを要望し,沖縄に対する日本の主権が速かに完全に回復されるよう尽力されんことを強く要請する。

 右決議する。

 一九六二年二月一日

琉球政府立法院

4.日本政府見解 2月2日 「琉球新報」

植民地とは独立を達成してない地域のことでその住民が外国による征服支配下および搾取の下におかれているものをいうことになっている。沖縄は日本の固有領土で日本は潜在主権を有し施政権を有する米国に返還を要求している。沖縄の立法院も日本復帰を決議している。したがって沖縄は他日日本に復帰することを期待される地域で植民地独立宣言にいう「独立を達成しない地域」に該当するものではない。また,沖縄は米国の施政下に置かれているが,住民の民生福祉の向上のために日米両国が協力して種々の措置を講じておりこれが実効をあげつつある実情からみて沖縄が米国の搾取のもとに置かれている地域であるとは考えられない。この意味においても,沖縄は植民地独立宣言に該当するものとは考えられない。

なお日本は昨年の国連総会で本宣言に賛成投票したが,沖縄は植民地でないとの前提に立ってこれに賛成したものであり,また,国連加盟国のなかで,同宣言案審議の過程において,沖縄が同宣言にいう植民地に含まれるという趣旨を述べたものは一国もなかった。