[文書名] 琉球列島の管理に関する行政命令改正の行政命令(大統領行政命令第11010号)
琉球列島の管理に関する行政命令
第10713号を改正する行政命令
憲法により本官に与えられた権限にもとづき,合衆国大統領兼合衆国軍総司令官として,次のとおり命令する。
第1節 行政命令第10713号の一部改正:「琉球列島の管理」と題する1957年6月5日付行政命令第10713号の第四節,第六節,第八節,第九節及び第十一節を次のとおり改める。
第四節 (a) 国防長官の管轄の下に琉球列島の民政府をおき,その長を琉球列島高等弁務官(以下「高等弁務官」という。)と呼称する。
高等弁務官は,(1)国防長官が国務長官に諮り,大統領の承認を得て合衆国軍隊の現役軍人の中から選任し,(2)この命令の規定によつて与えられた権限を有し,かつ,この命令の規定によつて与えられた義務を行い,(3)自己に与えられたいかなる職務をもその指定する民政府職員に委任することができ,かつ,(4)この命令によつて国防長官から委任され,又は与えられたいかなる権限又は義務をも遂行するものとする。
(b) 高等弁務官の下に民政官と称する文官をおく。民政官は,国防長官が国務長官に諮り,大統領の承認を得て選任し,高等弁務官によつて与えられる権限を有し,高等弁務官が与える義務を行う。
第六節 (a) この命令に別段の定めがある場合を除いて,琉球政府の立法権は,一院制の立法府に属する。立法府の議員は,1962年に琉球住民による直接選挙によつて選出されるものとし,その後は,3年の任期により3年ごとに選出される。
(b) 琉球列島の地域は,おのおの立法府の議員1名を選出する選挙区に引き続き区分されるものとする。現行の29の選挙区は存続するが,選挙区の数又は区域は,高等弁務官の承認を得て琉球政府が制定する立法によつて変更することができる。選挙区を変更するに当つては,各選挙区が比較的まとまつており,飛び地でないこと及び大体同程度の人口を保有することについて,妥当な考慮が払われなければならない。
第八節 (a) 琉球政府の行政権は,琉球人である行政主席に属する。行政主席は,琉球政府のすべての行政機関に対して一般的指揮監督権を有するとともに琉球列島に適用される法令を忠実に執行しなければならない。
(b) (1) 行政主席は,この命令で定める立法府が行い,かつ,高等弁務官が受諾し得る指名にもとづいて,高等弁務官が任命する。任命された行政主席は,同主席を指名した立法府の議員の残任期間及びその後の本項の規定にもとづく後任者の任命又はかかる任命ができないときは本項(2)にもとづく後任者の任命に要する適当な期間,在職するものとする。
(2) 立法府が高等弁務官の定める適当な期間内に受諾できる指名をしない場合又はその他の異例の事情により高等弁務官が必要と認める場合には,指名によらずに行政主席を任命することができる。この(2)にもとづき任命される行政主席の任期は,高等弁務官が定める。
(c) 各地方公共団体の長は,琉球政府の立法府が制定する手続に従つて,当該地方公共団体の住民が選挙する。
第九節 (a) 立法府によつて可決されたすべての立法案は,立法となる前に,行政主席に送付されなければならない。行政主席が立法案を承認するときは,これに署名し,承認しないときは,送付を受けた後15日以内に,異議を添えて立法府に返送しなければならない。立法案が所定の15日以内に返送されないときは,行政主席がこれを承認した場合と同様に立法となる。ただし,立法府の閉会によりその返送が妨げられたときは,この限りでない。この場合には,行政主席が立法案の送付を受けた後,45日以内に承認するときは立法となり,承認しないときは立法とならない。行政主席が異議を添えて立法案を立法府に返送したときは,立法府は,これを再議することができる。再議の結果,立法府の3分の2の多数をもつて原案を可決したときは,行政主席がこれを承認した場合と同様に立法となる。
(b) 立法府で可決された立法案が,金銭支出項目を含むときは,行政主席は,その一項目若しくは数項目,その一部若しくは数部又はその中の一部分若しくは数部分について異議を述べ,当該立法案のその他の項目,部又は部分を承認することができる。行政主席は,この場合,立法案に署名するにあたり,当該立法案中の異議のある項目,部又は部分について,その旨を附記しなければならない。このように異議の附された項目,部又は部分は効力を生じない。立法府が,行政主席のこのような異議をくつがえそうとするときは,先に定めた手続を適用する。前述の目的のための期間の計算については,日曜日及び法定休日を除く。
第十一節 (a) 高等弁務官は,この命令に基く使命を達成するため,必要と認めるときは,法令を公布することができる。高等弁務官は,琉球列島の安全,琉球列島についての外国及び国際機構との関係,合衆国の対外関係又は合衆国若しくはその国民の安全,財産若しくは利害に関して,直接間接に重大な影響があると認めるときは,琉球の立法案,立法又は公務員に関し,(1)すべての立法案,その一部又はその中の一部分を拒否し,(2)すべての立法,その一部又はその中の一部分を制定後,45日以内に無効にし,及び,(3)いかなる公務員をもその職から罷免することができる。高等弁務官は,刑の執行を延期し,減刑し,及び赦免をなす権限を有する。高等弁務官は,安全保障のために欠くべからざる必要があるときは,琉球列島におけるすべての権限を全面的又は部分的に自ら行うことができる。高等弁務官は,本項によつて与えられた権限を行使した場合には,直ちに理由を付して国防長官に報告し,国防長官は,これを国務長官に通告しなければならない。
(b) 本節(a)項の規定によつて与えられた権限を行使するに当つては高等弁務官は,琉球人の権利を充分に尊重し,特にこの命令の第二節の第2段の規定に充分留意しなければならない。
第2節 その他の改正:行政命令第10713号の第十節を次のとおり改める。
(1) 第十節a項(2)の(ロ)中「統一軍法(10U・S・C801et seq.)による軍法会議の審判の対象とならなくても」を削る。
(2) 第十節b項(3)を次のとおり改める。
(3) (イ)軍属,(ロ)合衆国国民である合衆国政府の被雇用者,並びに(ハ)(i)前記の者及び(ii)合衆国軍隊の構成員の家族で琉球人でない者に対する刑事裁判権
第3節 経過規定:(a) この命令は,現職に在る琉球政府行政主席の任期を直ちに終了せしめるものではない。その任期は,この命令によって改正された行政命令第10713号の規定にもとづいて任命される最初の後任者が行政主席に就任したとき又は高等弁務官が別に定める日に終了するものとする。
(b) この命令の施行日に現職にある立法府の議員は,その現在の任期が満了するまで在職するものとする。
(c) この命令による行政命令第10713号の第四節の改正は,1962年7月1日から施行する。その他の部分は,1962年4月1日から施行する。
ホワイト ハウスにおて{前1文字ママとルビ}
1962年3月19日
ジョン {前空白1文字分ママとルビ}F・ケネディ