[文書名] 日米貿易経済合同委員会昼食会におけるケネデイ米大統領演説(12月3日第2回日米貿易経済合同委員会出席の日本側閣僚歓迎午餐会におけるケネディ大統領の挨拶)
皆様
私は,皆様方に対し心から歓迎の意を表したいと思います。この交互に開かれる会合は,1年半以上前に貴方の総理大臣と私との会談から生れて来たものであります。貴方が最初の主人役で,わが方は大変御親切なおもてなしを受けました。
われわれは皆様方を当地にお迎えして大変嬉しく思います。と申しますのは,このような会合は,それを有益なものとするためには儀礼的なもの以上のものでなければならないからであります。この会合は,われわれの良好な関係を維持し,また,太平洋及びアジア地域全体において共同して,かつ,連携してとるべき行動を決定するという,日米両国の関心事たる実際の仕事にとりかからねばなりません。
米国では欧州共同市場の奇跡に大きな関心が注がれていますが,私は,過去10年の日本の計画とその成果こそ真に最も類の無い近代産業の奇跡であると申さねばなりません。人口稠密な島国と10年前にはほとんど静止したと見えた国民が世界のどの工業国より高い経済成長率をもたらし,しかもそれは減少する気配を示しておりません。これは,実に,日本国民自身の努力の結果であり,また,日本国民が享有して来た極めて効果的な指導力の結果であります。
日本がこのように,偉大な,自由なそして当然誇りをもつべき国として抬頭するに当り,米国が少なくとも支援的役割を果したということを私は満足に思っております。貴方の経済担当の大臣も出席した9月の会合の機会に私が当地での昼食会において述べたように,米国は,東,西,南に安全保障を求めています。すなわち,ヨーロッパ,ラテン・アメリカ及び日本に,また,日本を越えてアジアの独立諸国の維持を,求めております。
私は,日米両国は,2つの事項について,ないしは少なくとも2つの面について話し合う必要があるように思います。その1つは,この当面の貿易経済政策という問題であり,この面では日本に関係し,また米国に関係する実に多くの問題があります。これら諸問題は,両国関係をいらだたせるものであり,利害の衝突は必ず起るものであり,それはまた避け得ないのであります。われわれは,強い紐帯を維持するということに両国が有するところの基本的な自己の利益を傷つけることなく,それらの問題を円滑に処理するように努めねばなりません。また貿易について米国が執る措置はすべて,また,同様に日本が執る措置はすべて両国の一部に不満を起さざるを得ないということを認めるものであります。
これらの問題は,処理できるのであります。これらは,調整を必要とします。これらは,困難をひき起すに違いないが,私の考えでは,われわれが直面している主要な問題ではないのであります。しかし,これには定期的に注意を払う必要があり,今回の会合でこれらの問題が討議されんとしていることは私の喜びとするところであります。
東方においては,西ヨーロッパとNATOの発展により,西ヨーロッパと米国との結合は,西ヨーロッパにソ連が進出することを防ぐのに充分な保証を与えているように思われます。われわれの問題は,今や,云うまでもなく,膨張主義的,スターリン的哲学と結びついた,中国における共産主義勢力の勃興に伴い,ある意味でわれわれの大問題は,1つの大問題は,アジアでの共産主義の拡張をどのようにして阻止して,西ヨーロッパが一層繁栄した生活を築き上げる間に,何億という人口を有するアジア全域において中国人が支配的地歩に進出することのないようにするかということであります。さて,このことは,西ヨーロッパに関係する問題であると私は思いますが,しかし,それはまた最も強い立場にある両国,日本と米国に最も直接的に関係する問題であります。米国は,御承知の通り,ラテン・アメリカにおいて共産主義の拡大を阻止する様努力する責任があり,西ヨーロッパ自体において,そして,SEATO条約を通じて東南アジアにおいても同じであり,また同様に,韓国及び中華民国に対し約束をしております。しかし,われわれは1億8,000万の国民でしかありません。われわれは,世界中に非常に薄くちらばっているのです。
中央から統御され,国家的発展上戦闘的段階にある共産帝国には10億の人民がおります。そこで,私は,現在はアジアにとって非常に危険な時期であると思います。私は,われわれが盟友として,日本と米国は盟邦であるので,どういう役割を果すことができるか,今日その本質において単に階級闘争のみならず,第3次世界大戦の国際的階級闘争の信奉者たる共産主義運動によるアジアの支配を防ぐ努力をするため,われわれはどういう役割を果せるかということについて,将来考慮を払うことができることを希望します。
そこで,この度ここにお出になりました皆様が大いに歓迎されるものであるということを申し上げたいと存じます。われわれは,この偉大な努力をすることを相共に約していると考えます。われわれとは日本,米国,西ヨーロッパでありそしてこれらの重要地域から拡がつて独立たらんと欲する他のすべての国々であります。でありますから,皆様はここで大いに歓迎されるのであります。
私は,皆様の安全が米国の安全にとつて重要であると米国が考えていることを知つてお国に帰られることを希望します。われわれは,皆様も同様に感じ,世界の非常に重要な部分における自由の防衛のために有益な役割を演じながら,日本と米国とが,この60年代に行動できることを望んでいます。
ユーダル長官に敬意を表するために山登りをして米国に対する友情をお示しになりたいと思われる閣僚の方がおられましたならば,米国にはそのような山があるということを申し上げたいと思います。大蔵大臣如何ですか。それはとも角,私は,皆様とともに,日本国民,その福祉,繁栄及び平和のために,また,総理大臣とその指導力のために,そして,ここにおられる皆様日本政府の方々のために,そして,なかんずく天皇陛下の御健康のために乾盃いたしたいと思います。