データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米綿製品協定,日本の業界の声明

[場所] 
[年月日] 1963年8月27日
[出典] 日米関係資料集 1945−97,561−562頁.日本繊維新聞,1963年8月28日.
[備考] 
[全文]

声明書

 昨一九六二年十二月二十八日に開始された対米綿製品交渉は実に二百四十余日間にわたる論議を経て本八月二十七日ようやく妥結した。締結された新協定をみるに,一九六三年については,総量において昨年水準の据置としているにかかわらず,衣類についてのコール天製品の数量制限,その他の生地規制に関する協議条項,四半期輸出量平準化規定の強化,枠ないしシーリング品目の新設,グループIIへの振替え制限また従来日本が綿製品としておらず,かつ国際的にも綿製品とすることについて,きわめて疑問の多い製品をも綿製品とみて規制対象に含ませようとしていること等,種々の制限的条件が追加ないし強化されたことによって,一九六三年の現実の輸出可能量は,実質的に昨年水準を相当に下回ることとなり,率直にいって日本業界としては甚だ不満である。

 特に多数の中小企業の蒙る影響は社会的にも極めて深刻なものがある。かかる諸制限は国際綿製品長期取決めの前文に述べられている「綿製品輸出の機会を増加させる」という根本的な目的に反するものであって誠に遺憾である。

 特に日本以外の諸国の中には過去の実績を上回る対米輸出水準を確保した国があるにもかかわらずすでに述べたように,米国の要望に応じ長期間輸出規制を継続実施してきた日本が実質的には昨年よりも不利な条件の付加されたワクに甘んじなければならないのは不合理もはなはだしいといわざるを得ない。

 このような新協定が実施されれば日本の綿業界の犠牲は引続きさらに増大するものと考えられるが,すでに両国政府の合意によって締結された以上,われわれ業界としては,日米友好の見地から従来の場合と同様に本協定を忠実に順守する。

 国際綿製品長期取決めは,すべての参加国の共有財産である。したがってわれわれは今後米国がこの取決めの基本理念を正しく理解しかりそめにもその独断的解釈運用によって,多くの輸出国を窮地におとしいれることなく,世界綿製品貿易発展のため建設的に協力されることを心から希望するものである。

 対米綿製品交渉協議会,日本紡績協会,日本綿糸布輸出組合,日本繊維製品輸出組合,日本綿スフ織物工業連合会,日本輸出縫製品工業組合連合会,日本莫大小工業組合連合会