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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 沖繩防衛についての稲葉誠一議員らの参議院予算委員会における質疑

[場所] 
[年月日] 1966年3月10日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),651−657頁.衆議院・参議院および各委員会議録「官報(号外)」.
[備考] 
[全文]

○委員長(石原幹市郎君) 午前に引き続き,昭和四十一年度一般会計予算外二案を議題とし,質疑を行ないます。稲葉誠一君。

○稲葉誠一君 総理にお尋ねをいたしますが,最初にいま沖繩から国会{前2文字ママとルビ}議員団の方がおいでになって,祖国への復帰,同時に日本の国政への参加を強く訴えられておるわけですが,これに対しまする総理の御見解といいますか,そうしたものを最初に承らしていただきたい,かように思います。

○国務大臣(佐藤榮作君) 昨年私も沖繩へ参りまして,沖繩の心からの願い,この身で,このはだで感じてまいったのであります。一日も早く祖国復帰,それを実現したい,こういうことでございます。このことが実現するように,またいろいろ私どももくふうし考えておりますが,この基本的態度につきましては,アメリカと十分話し合って,その理解の上にかような事態を実現したい,かようにお答えしておりますし,また,私の考え方も声明しておりますが,この点ではおわかりだと思います。この施政権の返還ができないうちに国政に参加する方法ありやいなや,こういう問題だと思います。どうもただいまのような状態だと,それはやや困難ではないか,かように私は考えております。

○稲葉誠一君 その国政参加がやや困難ということではなくて,それは法律的に何なりいろいろ議論があるかと思いますが,そういうような非常に強い日本人の沖繩県民の要望があるわけですから,そういう点を十分研究をされた後に,国政参加が何らかの形でできるように私は切にお願いといいますか,お祈り,希望をしたいわけですが,再度その点についてお尋ねをしたいと思います。

○国務大臣(安井謙君) ただいま総理お答えのとおりに,特殊の事情,環境に置かれておりますために,いわゆる正規の国政参加,これは現在事実上,不可能な関係にあると私は思っております。しかし,住民の方の非常に熱心な御希望,あるいは沖繩の全体の社会の動きというものにつきましては,日本政府も非常に注意を払っておる。密接なできる限りの情報連絡をとりまして,その住民の方の希望あるいは政治の方向というようなものについては,できるだけの応援をして差し上げる,そういうような実際上の積み上げをやっておるわけです。

○矢山有作君 委員長,ちょっと関連。

 総理に伺いますがね,あなたは去年の夏,沖繩に行かれて,沖繩と本土との一体感をつくり上げなければいかぬということを相当強調されたんですがね,一体感というものは,ただ経済的に金をやればつくり出せるものではないと思うんです。もちろん本土への復帰の問題については,これは平和条約三条の問題,あるいは国連憲章との関連で,いろいろ法律上の論争はあると思う。われわれは平和条約第三条と国連憲章,あるいは国際法の原則に基づいて,これは,アメリカが現在沖繩を占有をしておる法律的な根拠は何もない。それは不法な占有である,こう考えておるし,それが私どもは通説だと思っておる。しかし,その法律論争はおくとしても,あなたが一体感を強調される以上は,これは,沖繩は日本の国土であり,沖繩の人が日本人であるということはあなたも認めておるし,これはだれも認めておる。そうすれぱ,施政権返還,本土復帰のことはしばらくおくとしても,これはやはり政治の姿勢としては,政治的に考えれば,ぜひ国政参加というものは実現すべきだと思う。これは,沖繩の問題はただ単なる技術的な法律解釈の問題じやないですよ。これは技術的な法律解釈の問題じやない。きわめて高い政治性を持った問題なんですよ。したがって,私は,国政に参加させたところで,そのことが直ちに施政権にどうこうという実質的な障害はないと思う。これは政府の姿勢ですよ,参加させるようにやるのかやらぬのかということは。そういう姿勢で今後問題を処理してもらいたい。どうですか。

○国務大臣(佐藤榮作君) 矢山君からただいま鞭撻を受けましたが,ただ,一体感,これを強める,これは,ほんとうに置かれておる沖繩同胞の立場,同時にまた,われわれの立場についても十分理解して,相互理解を深めるということが必要だと思いますし,また,沖繩同胞の願望もいかにして達成させるか,こういうことも考える,これはもう当然考えなければならないことであります。そこで,ただいま具体的な問題で,国政に参加する,参画する,こういう方法が具体的にあるかどうか,具体的にない場合に,この気持ちはわかった,おれもそのつもりで努力する,かように申しましても,それは実現しないもの,かように思います。私は,そういう意昧で,ただいま一体感,相互のその立場についての深い理解を持つ,そしてほんとうに一体になりまして,そして祖国復帰を実現さす,これが今日の私どもの最も真剣に考うべきことだと,かように考えておる。ただいまこういう施政権下に,施政権が別になっていて,そして国政に参画する具体的方法がありやいなや。これもないうちに,いや私は努力します,こういうことは私は申せない。

○亀田得治君 ちょっと委員長,関連して。

 これは法制局長官にお尋ねしますが,私は,国政に参加させようと思えば道はあると思うんです。そういう制度をつくることは可能だと思います。総理の考え方はどうもはっきりしませんが,可能であってもそうさせたくない,まだ時期尚早だとか,そういう意昧なのか,させたいとは思っているんだが,そういう道をつくり上げることが制度上むずかしい,こういう,どちらなのか,総理にまずその気持ちを聞きたいわけです。総理に,まずね。

○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほどの矢山君に答えるのに,私は簡単に突っぱねたと,かように思われると,ただいまの亀田君のような質問が出てくるかと思います。私もこういう点,いま直ちにそういう名案を持っておりませんけれども,十分検討すべきことは,そういうことはもちろんやるつもりてございます。しかし,ただいたずらにこの席におきまして,努力します,どうします。こういうことを申すのは,私は,かえって不親切だと,かように思っておるわけであります。

○亀田得治君 長官,ちょっと制度上の可能性の問題について。

○政府委員(高辻正巳君) お答えを申し上げます。ただいま総理がおっしやいましたように,国政参加という問題につきましては,要するに,その願望が十分に実現ができるような方法でどういう方法があるかということについて,十分な考慮をめぐらせて検討していくべきだということでございます。ただいまそれについて軽々しく結論を出すのもいかがかと思います。十分に検討さしていただきたいと思います。

○亀田得治君 あなたに聞いているのは,そういう政治的な立場を聞いておるのじゃなしに,専門的な立場で,そういう制度をつくろうと思えばつくれる道があるのでしょう。これを,あなたは専門家だから聞いておるわけです。初めからそういう,専門的に見たってそんなことはできないのだと言うなら,これは話にならぬです。われわれは,それは可能だと見ておるから,それで総理に,可能だか

らお願いしたい一これはさらに別個な角度になるわけです。あなたには,専門の立場から忠実に答えてもらわなければだめだ。

○政府委員(高辻正巳君) 法律技術の問題でございますので,具体的な問題として御指摘があれば,それについてお答えしたいと思います。実は法制局で,現在,これこれこういう方法について具体的に検討しておるという事実がございませんので,もしも御質問があるなら,その中身をお示し願って,それについてお答えをさしていただきたいと思います。

○亀田得治君 それでは一つだけ聞きましょう。たとえぱ,国会の議席を与える,これは可能でしょう。ちやんとそういうように制度を変えれぱ,できるでしょう。

○政府委員(高辻正巳君) 国会の議席を与える,これは,通常から言えぱ,国会は国民の代表機関でございますので,そこの国民の代表者として出てくるというのが第一点。それから第二点としては,そこに出てきた人が議決に参加するということが当然のあれだろうと思います。その前提としては,選挙の施行によって選挙されてくるということが必要だろうと思いますが,その三段階についてもいろいろな問題がございましょうが,まず最初の,選挙の施行ということになりますと,沖繩において公職選挙法の施行ということが直ちにできるわけでございませんので,そういう意昧で,それが直ちに法律上可能であるというお答えを,いま,するわけにはまいりません。

○亀田得治君 関連だから遠慮しておくけれども,そういう答弁ではちょっとぐあいが悪いな。

○矢山有作君 私は,法制局長官に,何も法律上のどうこういう解釈を聞こうとは思わない。問題は,総理に聞きたいのです。総理が祖国との一体感を強調するなら,当然,国政参加という問題を真剣に考えるべきだ。なぜ,国政参加をさして施政権に障害があるか。国政参加をさせるのだというあなたの腹がきまらぬのに,技術的な問題を検討することはできないでしょう。あなたが国政参加をさせるのだという腹をきめさえすれぱ,あとは,どういう方法によって国政参加をさせるか,それは,高辻法制局長官が検討したらいいのであって,あなたの腹がきまらぬうちに,法制局長官が国政参加の方向に向かって技術的な検討できるわけがない。その点で腹をきめなさい。

○国務大臣(佐藤榮作君) 簡単に腹をきめるわけにいきません。御承知のように,他国の施政権下にあるその同胞を,それを私のほうの日本の国政に参加さすと,こういうことはそれは簡単にはまいりません。

  (中略一編者による)

○稲葉誠一君 いまの問題はですね,ほかに質問をして,また返ってくるかもわかりません。そこで問題は,沖繩が攻撃を受けたときに,一体日本はどうするのかということですね,このことをお聞きしたいと思うんですが。

○国務大臣(椎名悦三郎君) 沖繩が攻撃を受けた場合には,米軍がこの防衛に当たります。そうして民生の{前1文字ママとルビ}福祉の問題については,日本がこれに当たる,そういう立場になっております。

○稲葉誠一君 いまの答弁でいいですか,いいですか,念を押しておきますから,いいですね。

 そうするとあれですか,あなたが,前にというか,沖繩がそれじや攻撃をされた場合には,日本としてはですね,それを手をこまねいて見ておるわけですか。一ちょっと待ってくれ,総理に聞いているんだから,大事なことなんだから。そんなこと法律論じゃないですよ。

○国務大臣(佐藤榮作君) これは日米合意議事録で,日本が対処するということでございますから。私は,気持ちの上から申してですね,同胞,その立場について深い同情を持ち,また,一体的な考え方を持っておりますので,そういう点も,これは感情の問題でございますが,十分ひとつ目的を達するように,日米間で協議をしていく,かように考えております。

○稲葉誠一君 そんなこと聞いてるんじやなくてね,あなたは前に勝間田さんの質問のときに,日本国民らしき行動をとるんだと,こう言っておるんですよね,言っておるでしょ。それはどういう意味ですか。

○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま答えたとおりであります。

○稲葉誠一君 あの,私がね,なぜこういう質問をするかということは,これはぽくはほんとうはね,いろいろ意昧があるわけですよ。これはあなたは先のほうを読まれて,用心されておるのかもわかりませんけれども,日本国民らしき行動をとるということは,そうするとあれですか,全部それはもう米軍にまかせっぱなしになっちやうわけですか,戦闘そのものは。それでいいんですか。

○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま沖繩が置かれておる状況は,私が申すまでもなく,アメリカの施政権下にあるわけでございます。したがいまして,やはり第一次的にはアメリカということだと思います。私どもが,ただいま同胞だと,かように申し,あるいは潜在主権を持っておると,こういう立場でも,これは独自で独断専行というわけにはいかない,この点を申し上げておるわけです。

○稲葉誠一君 一次的にはアメリカが守るのは,まあ話はわかりました。そうすると,日本はどうするというのですか,そうすると。そこ大事なところなんです。これは沖繩の島民が一番心配していることです。それは横須賀や佐世保と違うわけですよ。あとで聞きますけれども,沖繩の場合はどうするのですか。

○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど来申しますように,私どもも日本人,また沖繩同胞もこれも日本人,そういう立場において私どもはこれを見殺しにするというわけにはいかない,私どもがこの日本人として当然なすべきことはする,しかし,この場所が第一義的に施政権下にあるのだと,アメリカの施政権下にあるのだ,こういうことを十分考えてわれわれは行動するということを実は申しておるわけなんです。だから,いまにも私どもは飛んでいきたいような気がする,そういう事態でございますよ。そういうことがさらに法律的にどうなるかということもありますから,法律的にもよく十分検討していただきたいと思います。その辺は法制局長官に答えさせます。

○稲葉誠一君 法律的に検討するのも必要だと思いますがね。沖繩は日本なんでしょう。日本の国土が攻撃を受けたときに日本は手を出せないわけですか。自衛権の発動ができないというわけですか。

○政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。総理が申されましたように,沖繩の地位との関連を除いてこの御答弁をするわけにまいりませんので,私が一応お答え申し上げます。

 御指摘のように,沖繩はわが領域であり沖繩の住民はわが国民である,したがって,そこに対する武力攻撃があれぱ,これはわが国に対する武力攻撃だということで,そこには自衛権というものが成立をいたします。しかし,御承知のように,これも十分に御承知のように,沖繩につきましては施政権がございまして,沖繩に対する武力攻撃に対処するということもまたその一部をなしております。したがって,総理が言われましたように,その武力攻撃がありました際に防衛の衝に当たるのはアメリカ合衆国であるわけです。で日本は,実はいま申しましたような施政権がアメリカにあるというそこが日本の固有の領域とは現状は違っておる。そこで,アメリカ合衆国の施政権のもとにあるわけでございますから,アメリカ合衆国の施政権がこれを許せば,それは話はまた別でございますが,施政権のあるという前提において考えますときに,武力攻撃に対処するのはアメリカであるとこれは言わざるを得ない。もしもアメリカ合衆国がこの施政権の作用として日本国の防衛自体についてまた別段のあれがあれぱ,これは話は別でございますが,原理,原則としては,いま申し上げたようなことにならざるを得ない,こういうことでございます。

○稲葉誠一君 これはいろいろ誤解を招いたりなんかするぽくは質問になると思うのですがね。ぽくも用心しておるつもりです。そうすると,あれですか,沖繩がかりに,沖繩の基地というのは,これは横須賀や佐世保と違うのですか,性質が。

○政府委員(高辻正巳君) 沖繩における施政権のもとにある状態と,それから日本の安全保障条約上の施設,区域にある部分と,それは言うまでもなく,当然に法律上の性格が違います。

○稲葉誠一君 そういう意昧じゃなくて,基地としての性格,防衛的な意昧での防衛上における基地としての性格…。

○政府委員(高辻正巳君) おことばの意味が十分に理解できないのですが,この沖繩における状態は,沖繩が施政権を持っておるという施政権の行使の作用としてそこには出てまいるわけでございます。日本の本土内における施設,区域は,これは安保条約の規定するところに従ってアメリカ合衆国の軍隊がこれを使用できる。これはまあ条文そのままを申し上げたようなものでございますが,要するに,そういう違いであると考えます。

○稲葉誠一君 そうすると,沖繩が攻撃されたときに自衛隊としては沖繩へ派遣,派兵というか,それはできないわけですか。

○国務大臣(松野頼三君) 日本の国民の保護という立場で出動したいという態勢がございますが,法律,条約のもとにおいては直ちに自衛隊が日本国内における出動命令のままで出動することはできません。

○稲葉誠一君 何か,いまの何ですか前のほうは,改正したいというのですか。

○国務大臣(松野頼三君) 第一義的には自衛隊が直ちに出動するという態勢ではございません。

○稲葉誠一君 そうすると,なぜこういう質問をするかといえぱ,横須賀や佐世保はいわゆる補給基地なんだと,こう盛んに言っているわけですね。だから,そこはある国,特定の国から攻撃を受けることはないのだ,こう言われている。いままでね,あなた方の言われるのは。沖繩は作戦基地なわけですわね。核基地になっている。これは議論があるとしても常識的にそういわれている。そこでそこから向こうへ飛び立っていけぱ,相手方から沖繩はやられる危険性がある。その場合に日本は黙って見ているわけじゃないでしょう。日本人らしき行動をとるということは,結局そこへ自衛隊が出動していって,そのことから日本が戦争に巻き込まれる危険性というものが出てくるのじゃないですか。そういう論理の発展になるのじゃないですか。そうでなくちゃおかしいじゃないですか。

○国務大臣(佐藤榮作君) 沖繩はただいまはアメリカが施政権を持っておる。横須賀や佐世保は日本がりっぱななにですから,これは違いますね。だから,その施政権下にある,外国の施政権下にあるところとないところ,これはもう別だということがまず一つ。そうして,だから沖繩が攻撃された場合に,それじじゃこれをわれわれは見過ごしているかというと,沖繩に対する潜在主権もあるし,沖繩住民はわれわれの同胞だ,こういう立場でございますから,それは私どももただ腕をこまねいて見ておる,経済協力ばかりだと,こういうようななまやさしいものじゃないと私は思います。だから,そういう意昧で,これに対して第一義的にアメリカがこれを守るにいたしましても,私どもも沖繩同胞のために,日本人らしくその一体としての防衛の任に当たる,こういうことは考えられるだろう。それはアメリカと私どもが十分相談することだ,協議を遂げることだ,これを協議なしに,これは日本だということで私ども飛び出すわけにはいかない。しかし,この希望を述べれぱ,必ずアメリカも私どもを入れてくれるだろう,また,入れさすつもりでおりますよ。そういうところがやっぱり日本人らしきことをやると,かように私は思います。その点はそれでいいだろうと思いますが,そういう場合に,その結果,日本がそれに{前1文字ママとルビ}防衛をしたら,今度は日本が戦争に巻き込まれて攻撃を受けると,こういうことになるのじゃないか,こういう事態を御心配のようですが,それはそのときにならないと,これは私わからないと,かように思います。

○稲葉誠一君 そのときにならないとわからないということは,あれですね,あなたのお考えを突き詰めていけば,日本が戦争に巻き込まれる危険性があるということも考えられるということになりますね。ならざるを得ないですよ,あなたの考え方でいけば。当然ですよ。一ちょっと待って。総理の考え方だ。あたりまえですよ,それは。それは沖繩に核基地があるからですよ。核がないとしても,軍事基地があって,作戦基地があって,それからベトナムやなんかへ飛んで行っているからじゃないですか。そこに問題が出てくるのではないですか。当然ですよ,論理の帰結として。

○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの問題で,これはいろいろ御議論もあると思いますが,しかし私は,沖繩の同胞に対しまして,私どもそれを見のがすわけにいかぬ,かように考えております。したがいまして,同時にまた沖繩が軍事基地である,こういうことを御指摘で,これが戦争への危険だと,かようにも言われますが,同時に,これは軍事基地であることによるいわゆる戦争抑止力,これも見のがすわけにもいかぬ,私はかように思います。

○稲葉誠一君 問題が前の問題とあとの問題,二つあるわけですけれどもね。しかし,どうなるかわからないというのは,ぼくは総理として非常に無責任だと思いますよ。これはおかしいじゃないですか。ぽくは,沖繩に基地があって,そこでそれが攻撃されることから,だから戦争に日本が巻き込まれる危険があるんじゃないか,こういう質問をしたわけです。そうしたらあなたは,そのときになってみなくちゃわからぬ,どうなるかわからないと言うから,どうなるかわからないということは,それは場合によっては戦争に日本が巻き込まれる危険性があるんじゃないかと,論理の発展で私は聞いているわけです。そうなるんじゃないですか。一いやいや,総理と防衛庁長官と話は違うんですよ。あなたの話を聞いているとそうなりますよ。ならないんならならないで理由を説明していただきたい,わからないんならわからないで。一ちょっと待ってください。総理に聞いている。

○国務大臣(佐藤榮作君) どうも私にはそこのところがわかりません。

○稲葉誠一君 わからないというのはどういう意味ですか。戦争に巻き込まれるかどうかわからない,こういう意昧ですか。それならそれでけっこうです。

○国務大臣(佐藤榮作君)私は,そういう事態のときにどうなるか,それがわからないと申しておるのです。

○亀田得治君 委員長,ちょっと議事進行。これは稲葉君も一定の時間で大事な質問を非常にしぽってやっているんです。同じことを何回も繰り返しておると質問者が非常に困る,そんな,わからないというようなことでね。そういうことはないというのか,一部そういう危険性があるという意昧なのか,これはやはりはっきりしてもらいませんとね。

○国務大臣(佐藤榮作君) 私がわからないということを申しましたが,しかし私は,この沖繩に米軍がいること,これは戦争抑止カが十分にあると,かように私は確信をいたしておりますので,さような事態,私は戦争に巻き込まれるということはないと,かように私は思っております。

○亀田得治君 そうすると,先ほどの答えは訂正されるわけですね。さっきはわからぬ,わからぬと二回おっしやっておるわけです。

○国務大臣(佐藤榮作君)いまあまりにも仮定的な話ですから,先ほどのように答えましたが,しかし,この点がもう仮定でないとおっしゃれぱ,ただいまのように最終的な結論を申し上げておきます。

○亀田得治君 そうすると,これは委員長,どうなんです。最終的な答えと,こうおっしゃるから,当然前のやつは不明確だからこれは間違っておると。正確に言えば間違っておる。取り消しというのは非常にかどが立つからそういうふうに言われたんだろうと思いますが,そう理解していいですね。一一委員長からはっきりしておいてください。こういう大事な質問……。

○委員長(石原幹市郎君) それじゃ答弁がないようでありますから……。

○亀田得治君 私は取り消してもらったほうがいいと思っておる。

○国務大臣(佐藤榮作君) 私はまあただいま申し上げたように,戦争抑止力を確信しておりますから,そういう事態については心配はない,こういうことを申し上げました。これとぷつかるような答弁がありましたら,それはいかようにでも御自由にひとつしていただきたいと思います。

○亀田得治君 これは委員長に注文。議事進行。委員長どうする。御自由にしてくれ一委員長調べて訂正してください。

○委員長(石原幹市郎君) 総理が最終的に答弁をされたのでありますから,それが答弁であると私は解すべきであると思います。

○亀田得治君 矛盾するところがあれば適当に処理してくださいということをおっしゃっておる。速記録をちょっと調べてください。

○委員長(石原幹市郎君) 私,ただいま申し上げましたように,総理が最終の答弁をされたんでありますから,それが総理の答弁であると,こう考えていただいていいと思うのであります。

○小林武君 それはおかしい。総理があそこまで言ったんだから,その取り扱いは,委員長がやることですよ。

○委員長(石原幹市郎君)それじゃちょっと速記とめてください。

  〔速記中止〕

○委員長(石原幹市郎君) 速記をつけてください。ただいまの問題につきましては,私よりもお答えしたところでありまするが,なお速記録を調べて,食い違いがあれぱ善処いたします。

  (後略一編者による)