[文書名] 第五回日米貿易経済合同委員会共同コミュニケ
一 第五回日米貿易経済合同委員会は、昭和四一年七月五日、六日、七日、京都において椎名悦三郎外務大臣議長の下に、開催された。
委員会は、アジアにおける最近の事態の発展に重点をおいて世界情勢一般を検討し、アジアには世界の諸国に対する憂慮の原因となる大きな問題があることに留意した。
委員会は、この地域における諸国の間における協力関係を強化する必要についての自覚が増加していることに元気づけられた。
委員会は、アジアにおける情勢が同地域の平和及び繁栄を達成することを助けるため、日米両国の側における一層の努力を必要としていることを認めた。
二(一) 委員会は、互恵的な経済関係を育成するための両国政府の努力が過去一年間に二、三の重要な二国間懸案に満足すべき解決をもたらしたことを満足の念をもって認めた。
しかしながら、委員会は、両国間の急速に増大している経済関係に伴い、両国間に問題が時おり生じうることを認識した。両国代表団は、両国の経済成長を促進し、かつ、貿易の持続的発展を保証するに当り、相互に役立つような政策の効果的遂行のために、日米両国間において協力する必要があることにつき合意した。
(二) 委員会は、米国における持続的な好況及び日本の一九六五年の不況からの着実な回復に満足した。両国代表団は、両国の経済及び今後の着実な成長の見通しに関し、長時間にわたって意見を交換した。委員会は、日米両国間の一九六五年の貿易が驚異的な成長を示し、総額四五億ドルに達したことを認めた。
(三) 委員会は、国際収支の均衡を達成するための米国の努力の進捗ぶりを検討し、日本の現在の国際収支の改善を認めた。
(四) 両国代表団は、両国間における商品と資本の流れに関し、活発な意見の行換を行なった。同代表団は、米国政府によって行なわれている関税評価方法の検討と、日本国政府によるその輸入数量制限に関する継続的検討に留意した。同代表団は両国政府が過度に制限的になる可能性のある貿易慣行を軽減する可能性を二国間においてのみならず、多角的場においても、不断に再検討すべきことに合意した。
日本及び米国は、経済成長に寄与する要素としての国際投資の重要性を認め、また、双方における対外投資の水準の上昇が、実質的な利益をもたらすであろうとの確信を表明した。米国代表団は、日本の対米投資に対する歓迎の意を繰返した。日本代表団は、日本における外国の直接投資に関する制限を、緩和する意図を表明したが、日本の経済構造に内在する過渡的問題に関する適当な配慮の必要性を説明した。
(五) 委員会は、漁業に関する諸問題につき意見を交換した。
両国は、北太平洋漁業条約改訂に関する諸懸案及び漁業の分野につき両国間に生ずることあるべきその他の問題を相互理解と協力の精神をもって解決する努力を継続することを合意した。
(六) 両国代表団は、海運、航空及び観光問題に関し、活発な意見の交換を行ない、今後協議を継続することにつき合意した。
三 委員会は、次の如き分野において日米両国のみならずその他の諸国にとって関心のある事項につき密接な協力を継続することの重要性を認めた。
(一) 委員会は、世界貿易に対する関税及び非関税障害の低減のためのケネディ・ラウンド関税交渉の成功が両国にとって極めて重要なことを認めた。
両国代表団は、交渉のペースが促進されているという徴候を歓迎し、世界貿易の拡大に向っての一層の前進を実質的に強化する如き結論に一九六七年春までに到達する必要を強調した。
委員会のメンバーは、両国政府が両国のオファーから最大限の通商上の利益を獲得するために現実的な方法で、かつ他の関係諸国と協力の上、努力を継続すべきことを合意した。
(二) 委員会は、東西貿易関係における発展及びこの分野における両国政府の政策につき意見を交換した。日本及び共産圏諸国の間の貿易の増大をもたらした経済環境に言及しつつ、日本代表団は、日本政府がこれらの国との通商関係を政経分離の原則に基づいて発展させる意向であることを述べた。米国代表団は、中共、北鮮、または北ヴィエトナムと経済関係をもたない理由及び米州機構によるキューバに対する経済禁輸の理由について述べた。共産圏諸国に対する長期信用に対する反対を表明する一方、米国代表団は、ソ連及び東欧諸国との非戦略物資の貿易を、これら諸国とのコミュニケーション及び接触の途を発展させることに対する米国の関心に関連して検討中であることを指摘した。
四 委員会は、低開発諸国に対する経済援助に関する諸問題を討議し、両国の援助政策に関し、意見を交換した。
委員会は、アジア及び極東諸国における地域的協力に対する関心の増大の証拠を歓迎した。委員会は、両国が関係している諸活動を検討し、さらに日本が積極的に参加しているその他の活動に留意した。委員会は、その将来の役割がきわめて広範な潜在的意義をもつものとみられるアジア開発銀行の設立に期待した。日本代表団は、一九六六年四月東京で開催された東南アジア開発閣僚会議において、参加諸国がその経済開発のために一層の努力を行ないたいとの強い希望を表明し、また、農業開発がこの地域の安定した進歩のために最も重要であることにつき合意したことを報告した。委員会は、日本がその経済援助を大幅に拡充する意図を有する旨の同会議における佐藤総理大臣の言明に留意した。米国代表団は、一九六五年四月七日、ジョンソン大統領が、経済及び政治制度の間に存在する多様性にもかかわらず平和のために専心している東南アジアにおけるそれら社会の経済的、社会的必要を充たすために行なわれるアジアの諸計画に対し、米国の資源による援助を約束した際にジョンソン大統領が求めた広範な目的に対する米国の関心を再確認した。委員会は、アジア地域、特に東南アジアにおける永続的平和が、国民の福祉を向上するためアジア人によって取られるイニシアティヴに対する先進国からの協力に依存することを合意した。
五(一) 両国代表団は、米国における日本の農業労働者の訓練を継続するための両国間の合意に対し、満足の意を表明した。委員会は、一九六一年箱根における第一回合同委員会において両国における賃金問題をよりよく理解するものと信じて、開始された賃金共同研究が近く成功裡に終了する見込みであることを満足をもって予見した。委員会は、人的資源の開発促進は、人間の潜在能力を活用し、かつ経済成長に伴って生ずる雇用問題に対処するための重要な手段であることに留意した。
(二) 委員会は、天然資源の開発利用に関する日米会議の中間報告を受領した。委員会は、天然資源問題に関する日米専門家間の理解の促進に貢献する交流活動が引続き進捗していることに満足した。
六 委員会は、第五回合同委員会が両国の相互理解と両国関係の強化に貢献したことを合意した。両国代表団は、米国における次回会合に期待する。
七 日本側委員は、椎名外務大臣、福田大蔵大臣、坂田農林大臣、三木通産大臣、小平労働大臣、中村運輸大臣、藤山経済企画庁長官であり、武内駐米大使が同席した。
米国側委員は、ラスク国務長官、ユードル内務長官、フリーマン農務長官、コナー商務長官、ワーツ労働長官、バー財務次官、オーカン大統領府経済諮問委員会委員であり、ライシャワー駐日大使が同席した。